いつも通りのメイド喫茶。店内も変わらず可愛いらしいものだ。
そこで、出雲が用意してくれたアールグレイの紅茶を飲みながら、松樹は本を読んでいる。 かつては兄の梅樹がいない場所にいたいからという理由で、メイド喫茶に通っていたが、今その理由は変わっている。 ちらりと本から目を向ければ、出雲が常連の客と話をしている。短い丈のメイド服を着て、髪にリボンをつけている出雲は、客には彼の容姿もあり、女性にしか見えないだろう。
「出雲ちゃん、オムライスに絵を描いて」
客は嬉しそうに、出雲に要求する。常連客の一人だ。
「何をお描きしましょうか、ご主人様」
仕事用の営業スマイルを出雲が作る。
その背後のテーブルにいる初めて来たらしい男が出雲のスカートを食い入るように見ている。このメイド喫茶のメイド服は短い。スカートの中があわよくば見えたりしないかが気になるのだろう。 松樹はジロリと睨みつけると、その客は慌てて視線を逸らした。 ふん、とまた読書に勤しもうとすると、出雲が声を掛けてきた。オムライスに絵を描く作業は終わったらしい。
「よ、松樹。相変わらず難しい本読んでるな。何か食べるか?」
男だとわかっていても、やはりメイド姿のときは、出雲は女性に見える。
「いや、紅茶だけでいい」
「そっか。じゃあ、俺他の客のところに行くな」
ぱたぱたと駆け出す出雲は小動物のようだ。
視線がつい向いてしまう。 本から目を離し、出雲を見ていると「何見てるんだ、このムッツリスケベ」と梅樹の声がすぐ背後で聞こえた。
「兄貴!」
振り返るとやはり、梅樹である。 にやにやと悪い顔をさせている。
「何で貴様が来てるんだ」
「暇だから、遊びに来ちゃいました」
「貴様は猫カフェにでも行ってろ!」
乱暴なやり取りをしてしまうが、梅樹との険悪だった関係が少し改善した。そのきっかけを作ったのが出雲だ。 感謝をしてるのだ、これでも。
「喧嘩はやめろよ」と気付いた二人の間に割って入る出雲に、少しだけ松樹は口角を上げた。


出雲が心配で(自分が見事に出雲を女性だと思って、惚れかけたし、それに恩もあるから)、松樹はメイド喫茶に通ってるのかなと思いました。あと、構ってくれるから嬉しいのかと(←)