休暇の間、エドワードはアパートを探すことに専念していた。
が、それは表層だけで、エドワードはロイの世話を焼くことに邁進していた。
そうしなければ、ロイは自分の体調に気を遣わないのだ。
エドワードは自分にはあれこれ言う癖に、とそう文句の一つが言いたくなる気持ちを押さえ込んで、ロイの為に食事を作っていた。
そうしている間に、掛かってくる電話の主の存在が気にじかかった。
電話はそれ以降、掛かってくる様子がなかった。
しかし、エドワードとしては相手が誰でロイにとってどんな存在なのか、そ
の二点が電話がかかって来ない分、想像が無限に広がっていた。
一度だけ、エドワードは口を開きかけた。
「あのさ、准将…」
「何だ?」
「えっとさ」
答えを知ってしまえば、きっとこの気持ちに整理がつく、とエドワードは信じていた。
が、いざ、口にしようとすると何もかも壊れてしまうようで、エドワードの唇の動きは止まってしまった。
それについて、ロイは不審に思ったろうが、敢えて聞こうとはしなかった。
こうしてロイの食事を作っていると、何でその女性はロイの為に食事を作らないのだろうとそう憤りが走った。
仕事から帰ってくるとロイはそのままシャワーを浴び、一口の食事も摂らずに寝入ってしまうことがあると本人から聞いた。
そう聞くと、長男の性であろうか、思い人が相手からか、食事を作らなければならないという思いがエドワードの中で芽生えた。
アパートで暮らしていたときに、料理の腕は向上していたので、別段問題はなかった。
そして、そのことについてロイも了承し、結果、朝食、夕食はなるべく家で食事をすることにする、と言った。
二人で食卓を囲むことに僅かながらの優越感、そして満足を覚えた。例え、それが短い間だとしても。
エドワードが思考を膨らませている中、ロイもまた考えることがあった。
エドワードがロイの家に来る前、気にかかったこと。何故、エドワードが男性と付き合っていることになったのか。
そのことについて気にかかり、ロイは直接ハボックに聞いてみた。
「どうしてお前は、エドワードが男と付き合ってると言い出したんだ?」
「いや、俺はそんなこと言ってないっすよ。ただ男と一緒に暮らしてると」
「ほお。なら、お前は私に向かってエドワードと性的関係があるのか聞いただろう?そのことも違うと言う気か?」
「いや、本当に!ちょっと言葉が大袈裟だったかなあとは思いましたけど、でも…」
「誰から聞いた?」
その言葉を掛けた途端、ハボックはうなだれてしまった。口止めをされたわけではないだろうが、親しい者から聞いたのだろう。
「言えません」
「言え。命令だ」
「何か俺、悪いことしましたか?」
「罪状を1から述べようか?」
「いや、結構です」
そして、一つ、目の前の上官を持ったことを後悔しながら、「新しく入ってきた若い軍人からです」とハボックは答えた。
ロイはもう少し詳しく言えないのか、と舌打ちをしたい気持ちを堪えた。
部下の口が思う以上に固かったことを再認識する。
「エドワードと同じ士官学校出か?」
「多分」
「曖昧だな」
「ケチつけるなら、聞かなければ良かったじゃないですか!」
そう文句を言うハボックの言葉を聞き流しながら、ロイは質問を続けた。
「その若い軍人は中央司令部に配属されているのか?」
「いいえ」
何かの用事で中央司令部にやって来たという。その軍人に聞けば、
エドワードのことについて詳しいことを知っているのかもしれない。
しかし、いっそのこと――。
ロイの瞼に浮かんだのは、あの同居人の女性だった。あの女性とは、あの電話が会って以降、顔を合わせていない。
しかし、あの女性の心境を考えれば、今ごろ罪悪感に駆られていることだろう。
だとしたら、誰にでも口を開き易い現状になっているのではないだろうか。彼女と連絡を取れば――。
「でも、どうしたんですか?行き成りそんなこと聞いてきて…」
「気にかかることは早く解決しておいた方がいいからな」
ハボックはわかったような、わからないようなそんな顔でロイを見ていたが、ロイは気にしたりなどしなかった。
「あ、あの准将!」
仕事に取り掛かろうとしたロイにハボックが声を掛けてきた。
「また大将は一緒に俺たちと働くんですよね?」
一瞬何故聞くのかとそう思った。そう言えば、と以前エドワードに仕事を辞めるよう勧めていたことを思い出す。
今では、遠い昔のようだ。もうとっくに手放すことは出来ない段階まで来てしまっている。
「当然だろう」
その言葉にハボックは一瞬聞かなかったふりをすればよかったとそう後悔しているのをロイは知らなかった。
気が急いていたのだと思う。早く、物事を解決したかった。そうすれば、少しエドワードに近づく気がしたのだ。
ロイはそれから、女性に連絡をした。彼女も自分に共感してくれる相手を求めていることがよくわかる声音で言葉を紡いだ。
そして、休暇である明日、ロイは彼女と会う約束をしている。なので、ロイは気もそぞろで、食事をしていた。
「あのさ、明日は休みなんだろ?明日はどうするんだよ」
エドワードの休暇もまた、明日で終わりだった。明後日からはまた仕事が始まる。
そのことについて、多少の煩わしさがないわけではない。それでも、また一緒に仕事を出来るのだ、とそう思うとやはり嬉しかった。
「ああ。明日は用事があって。帰りは遅くなるかもしれないから、夕食は要らないよ」
「………………デート?」
聞かなければいいとそう思うものの、聞かずにはいられない。
気もそぞろになっているのは、それが原因なのか。ロイの一挙一動に目を向けてしまう自分をエドワードは感じずにいられない。
「いや、仕事だよ」
「ふーん。そっか。忙しいんだな、准将は。お気の毒」
そう言葉を掛けながらも、心の底では安堵していた。そうだ、と言われていたら、平静に出来ていたかわからない。
例え、ロイの言葉が嘘だとしても。
→
|
|