だから、エドワードに会おうとしたのは第三者が介入した方が解決するのではないかとそうヒューズは思ったのだ。 エドワードが軍人になったと聞いてから、一度は挨拶に向かおうと思っていた。 しかし、いざ挨拶に行こうとすると用事が立て続けに起こるもので、なかなか挨拶に行けなかった。 なので、ヒューズとしても丁度よかったのだ。
しかし、ああも感情を剥き出しにして怒っているところなんて珍しいな ロイの姿を思い出した。そして、だからこそ、そこまでさせたエドワードに話が聞きたかったのだ。 恐らく、そう簡単に話してくれないことは予想がついている。
時刻を確認すると就業時間に差しかかっていた。 エドワードは未だ新人だから、手間取っているかもしれないとそう思いもしたが、その場所に入ってみれば、笑い声があった。 エドワードの周りには人垣が築かれ、そこから笑い声が飛び出しているのだ。 笑いの発生源がエドワードにあることに気付いたヒューズはうまくやれているんだなと安心した。 何せ、年がエドワードは若い。うまくやれているのだろうかと少し不安があった。 しかも、以前は国家錬金術師だったのだ。色々厄介なものを抱えていたエドワードはその分年齢よりも大人びていた。 話をしてみれば、ごく普通の少年でしかなかったが、それでも色々と蟠りがあったかもしれないとそう思ったのは懸念であったらしい。 恐らく、ロイも同じ気持ちでエドワードのことが心配だったのだろう。ロイの吐露した言葉には間違いなく心配の二文字があった。




「おい、エド!」
ヒューズはエドワードに呼び掛けた。 振り向いたエドワードは驚いているようだったが、直ぐに喜色が表情に混じった。それを感じ取ってヒューズは笑顔になっていた。
「久しぶりだな、エド」
「中佐こそっ。っていけね、今は大佐だったよな」
「はっはっは。まあ、許してやろう」
以前のエドワードの態度に変わりはない。恐らく、ロイにだけ態度が違うのだろうとそのことに思い至った。 仕事は終わったのかと聞くともう終わったと言うエドワードになら、と「こいつを借りていきます」
とほぼ無理やり拉致し、大衆食堂へと誘った。
そこは美味しいと以前から思っていたところだったので、エドワードも満足したようだった。
「仕事はどうだ、慣れたか?」
「――――みんな、同じことを聞くんだな」
地雷踏んでしまったか、と一瞬思ったが、そんなことはなかったらしい。
「何だ、そんなに聞かれたのか?もううんざりか、その質問には」
「そうじゃないけどさ、なんかちょっとさ…」
「何だ?はっきりしないなあ。お前、そんな性格じゃないだろ」
上目遣いにちらっと見上げてきた瞳は迷っているように感じられた。
「そんなにオレって頼りないのかなあとそう思って」
「何だ、そんなこと…」
もっと深刻なことだろうとそう思っていたと告げるとエドワードは見るからに不満そうに、唇を尖らせた。
「何だよ、深刻なことって」
「いやあ、周りから苛められているとか、やっぱり、軍人は向いていないとか」
「そんなことねえよ。みんなよくしてくれるし、軍人辞めようかって思ったこともない」
最初の印象は間違ってなかったらしい。余程居心地がいいのかもしれない。
「そうか、よかったな」
「うん」
少し、照れくさいのだろうが、ヒューズの言葉にエドワードは肯定した。
「オレのこと年齢とかで判断しないし、熱心に教えてくれるし」
きっとエドワードは満足しているのだろう、言葉の端々でそれが伺えた。 ヒューズは目の前にあるサラダに手をつけながら、それなら何故、と考えた。 何故ロイに対して態度が違うのだろう。恐らく、ロイがエドワードに対して何か言ったのかは想像がつく。 何せ、ロイはエドワードをからかっては楽しむような男なのだ。それがあそこまで怒り心頭するところなど、考え付かない。 しかし、切り出すには難しい。エドワードが頑固なのをヒューズはよく知っていた。 少しかまをかけてみるか、とヒューズは言葉を切り出した。
「あー。ロイの奴がお前のことすごい怒ってたぞ。あんなガキなんて知らんってそう言ってな」
途端にエドワードが仮面をつけたかのように無表情になっていく。
「ふーん。あっそう」
思っていたことだが、どうやら根は深いらしい。
「お前、他に言葉ないのか?」
淡々としすぎている。
「別に准将なんて関係ないから。もう後見人でもないし」
取り付く島がないとはこのことだ。巻き込まれる人間が哀れに思えてくる。
「あー。エド。ロイが何を言ったか知らんが、ロイはお前のことを大事に思っている。 あいつを知る俺からすれば信じられないほどにだ。親友の俺が言っているから間違いないぞ。だから、ロイは今後悔してる」
多分、と付け加えたりはしなかった。どちらかが一歩、歩み寄れば終わることなのだろうから。 それに、間違ったことは言ってはいない。 エドワードにその言葉が浸透するのをヒューズはひたすら待った。
エドワードは信じられないのか、それとも、受け入れられないのか彼方を向いていた。