ハイデリヒが冷たい土の中に埋められたのを確認した。 ノーアがそんな彼の前で踊っている。 綺麗な舞だった。 それでも、気持ちは浮上したりしなかった。

拳銃に撃たれて、ハイデリヒは死んでしまった。 撃たれる瞬間一体何を感じていたのだろうとそう思う。 あれだけ、ロケットに情熱を持っていた彼が、ロケットには乗ることが出来なかった。 どうして、ハイデリヒはエドワードをロケットに乗せたのだろう。 自分ではなく。 帰りたいことを知っていたからだろうか。

何人もの人間がアルフォンス・ハイデリヒの墓へ集まっていた。 短い人生を終えてしまった彼に対して一体何を思っているのか。その中にはオーベルトもいたが、顔を合わせたりしなかった。

あまりエドワードの知らない音楽が奏でられている中、ノーアがくるくると踊り続けている。 踊る度に、ノーアの黒い髪が、スカートが舞い上がる。 人の心を読める彼女はきっと、ハイデリヒの病気のことを知っていた。 今、どんな気持ちで踊っているのだろう、とそんなことを思う。

「兄さん。僕、アルフォンスさんのことをあまり知らないんだけど」
エドワードはアルフォンスに向かって、少しだけ視線を向けた。
「ロケットを一緒に研究していたんだよね?」
そう言うアルフォンスの顔が少しだけ哀しそうに映る。 自分と同じ顔をした、名前も同じな人間が死んだのだ。心の中ではどんなことを思っているのだろうと漠然と思う。 自分たちの目的の為に、落としてしまった命。

「ああ」
「僕にそっくりだったね」
「ああ」
「兄さんにとってどういう人だったの?」

どういう人ってどういう意味なんだろう。 言葉で説明出来るものなのだろうか。

「いい奴だったよ」

それだけ、言うのが精一杯だった。 本当にいい奴だった。 優しい。 だからか、自分の病気のことさえ何一つ話してくれなかった。 言ってくれれば良かったのに。 きっと、言えなかったのだろうとそう思う。 夢を語っていたハイデリヒのことを思い出した。どこか儚げな彼を。

「兄さん、僕は一緒にいるからね。これからもずっと」
「そうだな」

そうだな、と呟いた言葉から、涙が滲みそうになった。一瞬で、瞼が熱を持った。 等価交換、という言葉を思い出してしまうのは、きっと錬金術師だからなのだろうか。 そんな自分が心底嫌になる。 隣にいる弟であるアルフォンスはハイデリヒよりも身長が低く、髪は一本に束ねられ、赤いコートの上から揺れていた。 アメストリスにいた頃の自分を連想させるような。

アメストリスへと扉が開かれ、会いたかった人たちに再会したときにもう自分の望みは叶ったとそう思った。 そして、今、隣にはアルフォンスがいる。しなくてはならないこともある。

生きていくよ、と冷たい墓の中にいるハイデリヒにそう語りかけた。










おやすみ、ハイデリヒ。