光陰矢の如し、とはまさにこのことなのだとそう思う。 ロイが軍務に復帰して日々はあっという間に過ぎていく。 元々、大総統が取り仕切っていた国だ。 いなくなれば、根本から変わるのは目に見えていたことだ。 軍の地位が変わることはないだろうが、それでも、議会への権力の移動を行っていかなければならない。 しかし、この状態では時間がかかりそうだ。

片方しかないその瞳に太陽の光が目に刺さる。 きっとその空の向こうに、エドワードもいるのだろうと何故かそんなことを思う。 自分はそれほどまでにエドワードを気に掛けていたのだと気付いた。 ホークアイに言わせれば、今更何を言っているんですか、と言われそうだ。

「大佐」
そんなホークアイから声が掛かる。 今、他の者たちは出払っており、執務室には二人だけだった。
「何だね?」
「お客様がお見えになりました」
少しだけ、ホークアイの顔が嬉しそうだったのは、長年の付き合いからだ。
「誰だね?」

嫌味な上司が来たのか、とそう思うロイの前に現れたのは、少年だった。 見覚えがある、とそう思うのは、いつか写真立てで顔を見たからだ、とそう思う。 やはり、兄弟らしく、顔が似ていた。

「アルフォンス・エルリックだね」
「はい。お久し振りですね」

ロイが鎧姿ではないアルフォンスを見たのはこれが初めてだった。 あのとき、何かもが忙しく、ロイの重症の身の上だった。 そのため、会いたいという気持ちがあっても会うことが難しかった。 身体が戻ったことをも祝っていない。 記憶をなくしたと聞いていたが、それは間違っていなかったらしく、表情がどこかぎこちない。 仕方がないことだとそう思いながらも、どこか寂しいと感じている自分がいる。 他の者もいれば良かったとそう思うのだが、多忙なのだから、仕方がない。

「ずっとお会いしたいと思ってたんですけど、遅くなって」
「いや、そんなことを思う必要はないよ」
「お世話になってたって聞いて、行く前に挨拶しようと思って。ごめんなさい、忙しい時期に」
「構わないよ」
続けての言葉にアルフォンスは安堵したようだった。
「ボク、錬金術を学ぼうを思ってるんです」
酷く、驚いた。
きっと、身体を取り戻したアルフォンスにエドワードが願うのは普通の幸せだろう。 アルフォンスの為に、と尽くしてきたエドワードがそれを思わないわけではない。
「今から師匠のところに行くんです。その前に挨拶がしたいとそう思って」
「何故また錬金術を?」
「兄さんを探す為です」
「それは…」
「いつもいつもボクの為に兄さんが動いてくれていました。だから、今度はボクが兄さんを見つけたいんです」
「―――――見つけたら何がしたい?」
そう聞くと、アルフォンスはにやりと笑った。
「一発殴ってやりたいです」

笑ってしまいそうだった。 そして、同時に年甲斐もなく泣きそうだった。





君の帰りをこんなにも待っている者がいるよ。
勿論、私も。
だから、早く帰って来なさい。
昔も、今も変わらず君が帰ってくるのを待っているから。