春、とは長く、辛い冬を送っていた者たちにとっては恵みの季節だ。 温かな日差しが降り注ぎ、冬を送っていた者たちを慰めてくれる。

冬には見つけられなかった花たちが一斉に花弁を開かせる。 空気は暖かい。 雪は姿を消す。 町は賑やかくなってくるのを肌で感じる。 鮮やかな色彩が目立つようになってくる。

そして、春とは総じて、気持ちにゆとりが出来る季節でもある。 それは冬を越えた者たちに特有のものだ。

「春ですね」

部下のハボックの言葉に、ロイは「そうだな」とそう返した。 窓を見遣る。 そこには以前あった白い絨毯は消え去っている。 今は、緑が覆い尽くしていた。

「俺のところにも春が来ないかなあ」
「何だ、またふられたのか」
ちらりと顔を向けると、「大佐、誰か紹介して下さい!」と泣きつかれた。
「自分で見つけろ」
「俺がふられるのは大佐のせいでもあるんですよ、責任取ってください」
「お前に魅力がなかったからだろう」
「酷っ!大佐の鬼!」

しっしっとハボックを追い払い、ロイは再び書類に取りかかる。
追い払われたハボックをブレダが慰めている。

(春、か)

ペンを動かしながら、エドワードのことを考えた。 エドワードからの連絡は冬以降ない。 とりあえず、今いる北部の町の住所だけ知らせるだけで、素っ気のない会話で終わった。 もう暦の上では春だ。 今頃、どうしているのか、とそう考えてしまう。

ちらりと窓外に目を向ければ、緑の中に色とりどりの花が咲いているのが見て取れた。 もう雪など欠片も見当たらない。 季節とは巡り来るもの。 当然と言えば、当然だろう。 時間は絶えず、動いている。 それでも。

早く顔を見せにくればいい。 例え、元の身体を取り戻したのだとしても。 そして、また、元の身体を取り戻せてなかったとしても。 今はただ顔を見たい。

春をずっと待ちわびていたから。

「大佐、エドワード君がこれからこちらに来られるそうです」
ホークアイが執務室に入ってきた後に、そう告げた。
手には書類の束を持っているところ、追加の書類だろう。
「そうか」
どうだったんだろうか、とそう思いつつ、ロイは自然と口元が笑っていた。

冬はもう終わったのだ。