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2005年11月30日(水)停電
●早朝から目が覚める。まだ外は真っ暗。窓から見る街の様子は、十九世紀ヨーロッパの場末に迷い込んだという雰囲気。アポリネールの『異端教祖株式会社』の読後感がちょうどこんな感じなのだ。部屋の電灯を点けると、パッと灯って、すぐに消えた。これはよくホテルの廊下などに用いられているのと同じような時限式の電灯か?
などとマジメに考えた。

午前六時ちょっと過ぎ、コーランの読経が町中に響き渡る。とくにこのホテルのすぐ隣がモスクなのでかなり大きな音である。異国情緒と言えば言える。パッチリ目が開いてしまう。仕方がないのでスケッチブックに昨日の記録をつける。電灯のスイッチを入れるとこんどはバッチリ。六時から普通にもどるのかな?
などと本気で考えた。
夜が明けてきた。空が白んで街路に人の気配がし始めた。
犬の散歩
他のメンバーはまだ動きだしそうにないので、朝食まで、近所を歩くことにする。フロントのお兄さんに地図はないかと尋ねてみるも、英語がほとんど片言ていどしか通じない。「テンミニッツ」と繰り返すので、ホテルの名刺だけもらって、彼の指差す方へ街路を進んで行く。角を曲がって、昨日のケバブ・ハウスを確認した。ふと前方を見ると巨大なモスクがそびえている。朝日を神々しく反映している。イスタンブルに来たんだ!とようやく納得できた一瞬だった。スルタナメット・ジャミイ、通称ブルー・モスク(ブルー・アンド・ホワイトの陶磁タイルで装飾されているところからそう呼ばれるとか)。
ブルー・モスク
ブルー・モスクの海側(上の写真で光が当たっている側)を迂回して石畳の道を歩く。壁がいかにも古い。しかし通勤の自家用車がひっきりになしに通って危ないのだ。しばらく歩くともうひとつドームが見えてきた。きっとアヤ・ソフィア(ギリシャ語でハギヤ・ソフィア、聖智教会)だろう。なるほど、フロントのお兄ちゃんが「テン・ミニッツ」と言ったはずだ、十分あればぐるりと回ってこられる。けれども、そっちの方へは行かず、海側へ下る。自慢じゃないが、方向感覚はいいのだ。絨毯商をはじめ、飲食店もそろそろ開店の準備をしようとしているところ。午前八時半くらい。

野良犬がのんびりと日向ぼっこ。エサをもらってしゃぶりつくワンコも。また野良猫がむちゃ多い。猫ストーカーにはイスタンブル、たまりませんぜ、へへへ(?)。モハメットが猫好きだったところから、今でも猫を大切にするという話を聞いたが、真偽のほどは分からない。

昨夜、ちらっと耳にした木造の古い建物がある通りを探す。大方の建物は石やレンガを積み上げて漆喰などを塗っただけ。汚れるとその上にペンキを重ねてゆくのでどことなく安っぽい。はげ落ち始めたところに風情が出る。石畳は、例えば猫の写真を見ていただくと分かるが、石と石の隙間を土か砂で埋めるだけだ。セメントのような接着剤を使っている気配はない。だから草が生えている。実際、街頭で工事をしているところを目撃したけれど、黒っぽい土に水(?)のようなものを掛けてそこへ石とかタイルを載せているだけのように思えた。
チューリップの装飾がトルコらしい
トルコという国自体に樹木が少ないそうで、木造の建物はそんなに多くはないようだが、それでもかなり残っていた。だいたいが風化して味が出ている。この街路へせり出した二階部分は新潟の町屋(9/11、12)とそっくりではないか。「OTOPARK」とあるのは駐車場の意味(ただの空き地だった)。

九時少し前に無事ホテルに戻る。まったくうまいぐあいにぐるりと界隈を一周してホテルの前に戻ることができた。朝食のために最上階のサンルームのような見晴らしのいい部屋へ。螺旋階段を上る。狭いビルはたいていこの螺旋階段のようだった。段のひとつひとつがショートケーキのような細長い三角形だ。
しかもなぜか停電。早朝に電灯が消えたのも単なる停電が理由だった。階段が急なので薄暗くては危なっかしい。Aさんは日本で眼の手術をしたばかり、暗いとほとんど見えないのだ。しかし、最上階の見晴らしはすばらしかった。マルマラ海が一望できる。マルマラ海はボスポラス海峡とダーダネルス海峡の間にあり、多くの船舶が往来している。つい最近まで座礁したまま放置されていた船があったらしいが、いつの間にか片付けられているとか。下の写真では左がボスポラス海峡方面。
拡声器のあるモスクの塔とマルマラ海
さて朝食にありつく時間。セルフサービスで好きなものを皿に取って食べる。パンが五種類。オリーブが三種類、プロセス・チーズにカッテージ・チーズ、トマト、キュウリ、ゆで卵、ヨーグルトにコーンフレーク、ジャムが二種、ジュースはオレンジとネクタリンのようなもの、水、紅茶にコーヒー(ちなみにコーヒーのことをトルコでは「ネスカフェ」、コーラのことを「ペプシ」と言うそうだ。コカ・コーラでもペプシなのだ)。
手前からコーンフレーク、ジャム二種、オリーブ三種類
サモワール。湯と紅茶の注ぎ口があ、好みの濃さにする。
ヨーグルトはやや固めだが美味しい。
2005年11月29日(火)ビーフ・オア・パスタ
●京成の新津田沼から乗って京成津田沼で乗り換え空港第2ビル駅下車。第2ターミナルビルに入るところで検問あり。パスポートの提示を求められる。こんなところでとは予想してなかった。首から吊り下げた袋に入れてシャツの下だったのでちょっと慌てる。四階のレストラン街で朝食代わりのきつねうどんを食べる。この階には三省堂書店と改造社書店が入っている。
そもそも、どうしてトルコへ行くのかということだが、十五年来、ウンチクの絵のコレクターであるAさんが、ここ何年かトルコにはまってしまって、頻繁に出かけていることから、誘われ続けて、ようやく今日、同行させてもらうことになったのである。むろん、何か新しい絵のモチーフを探すことができるかも知れないという期待もかなりある。古本は、どうみても、短期間では難しいから、あきらめていた。一行は他に、二度目のBさん(39歳)、初めてのCさん(60歳)とDさん(65歳)の合計五人。男ばかりのグループ旅行である。正直、行く先が思いやられた。
Aさんは搭乗口前のコンビニでペットボトルの水と梅のおにぎりを仕入れる。梅は日持ちがするし、旅中ちょっと食べるのにいいのだそうだ。JALとトルコ航空の共同運行便、飛行機はトルコ航空のエアバスA340-300。空いている。14時40分、ほぼ予定通り離陸。機内食は「ビーフかパスタ」というので「パスタ」にする。ペンネにキノコの白ソース。ミニ寿司、サラダ、お菓子、パンなど。ワインのミニボトルはボルドーだった(まずい)。
機内上映の新作アメリカ映画三本、すべて見てしまう。「STEALTH」(「ステルス」ロブ・コーエン、2005)、「THE
PERFECT MAN」(マーク・ロスマン、2005)、「BAD NEWS BEARS」(リチャード・リンクレイター、2005)。「ステルス」はステルス機でアジアを秘密爆撃するチームをめぐる愛と友情と裏切り。「THE
PERFECT MAN」は娘と母親の自分探しの物語。「がんばれ!ベアーズ/ニュー・シーズン」は言うまでもなくウォルター・マッソー版のリメイク(1976年版の原題は「THE
BAD NEWS BEARS」、「次の対戦相手はベアーズだ、これは悪い報せだぜ」という決まり文句のようなものから)。それぞれ楽しめた。
トルコ航空機内で出た紙ナプキン
●現地午後七時三十分(日本時間午前二時三十分)頃、イスタンブルのアタチュルク空港着。出来たばかりのきれいな空港だ。簡単な入国審査があって、荷物を受け取り(トルコ航空は荷物がどうこうということを聞いていたが、問題はなかった。ただしウンチクは機内持ち込み手荷物一個とショルダーバッグのみ。Aさんなどは着たきりスズメの手提げ袋一個、しかも中身はトルコへのお土産ばかりという軽装)、出口に待っていたAさん知人オメル氏と合流してVWのワンボックスでホテルへ直行する。予想していたよりもずっと温暖でみんな驚く。先週までは寒波がきていたのだ(デイリー・スムースの読者諸氏は新潟を思い出していただきたい、ウンチク、けっこう晴れ男なのである)。
郊外風景は東京もパリもここもさほど変わらない。街頭がオレンジ色。黄色いタクシーがとにかく多い。後で聞いたところではフィアットと合弁で作っているやや旧式の四角張った車でほとんどのタクシーはこの車種らしい。丸いラインの新車(ヒュンダイなど)もときおり見かけた。なかば壊れた城壁を超えて旧市街に入ると風景はかなり変わる。石畳の坂道(バルセロナを思い出した)を上がり下がりしてホテルへ。午後八時半頃。トルコ語ではホテルのことをオテル(OTEL)というそうだ。まあ、ペンションと言った方が正しいくらいのホテルではあった。なおトルコはイスラム教の国なのだが、言語はアルファベットで表記される。独自のアクセント記号がついているものの、やはりスーフィー文字などよりもずっと取っつきやすい。
トルコのサッカーが好きで二年半ほど滞在しているワタナベ氏(ヤフー!スポーツのSPORTSNAVI.COMに記事を書いている)も加わって七人でAさんの馴染みのケバブ・ハウスへ。「てきとうに」との一言で、けっこう次々出てくるのだが、さすがに、日本時間午前四時では、食欲もわかない。しかし珍しさも手伝ってあれこれつまみ食い。どれも案外とさっぱりした味付けだ。まず、出たのがこれ。

なんだ? ナンです。ゴマがふってある。手前の野菜サラダはトマト、キュウリ、ししとう、レモンにオリーブ・オイル、好みで塩を。スープや肉料理なども、薄い味付けになっており、塩をふりかけて食べるようだ。

ちょっとピンボケだが、手前が羊肉の煮込み、次ぎが鶏肉、次ぎはケバブ、次は牛肉。右手中程にあるコップの白い飲料はアニスから作ったイエニ・ラク(ライオンの乳)と呼ばれる強い酒。透明な酒に水を加えると白濁する。
「ギリシャのウーゾと同じですか?」と尋ねると、オメル氏は
「ギリシャ人がまねしたんだよ」と答える。Aさんがとっさに返す。
「ギリシャ人はトルコが真似したって言ってるよ、きっと」

トルコ時間午後十一時過ぎにホテルに戻る。家族部屋に三人で入りダブルベッドを使わせてもらう。三角形の部屋である。カメラ側にもう一室あり、そちらはツインルーム。疲れているが、緊張感もあり、目がさえてなかなか寝付けなかった。
●12時58分、京都駅。新幹線のホームへ上がって行くと、市田ひろみ(タレント、服飾評論家)ら一行に遭遇する。テレビで見るのとあまり変わらない感じだ。これはさい先がいいのだろうか、そうではないのか、ちょっと迷うところ。
15時46分、東京駅着。待ち合わせしていた編集者のSさん、見当たらず、うろうろしていたら、それらしき女性が車掌さんと話していた。慌ててホームを間違えたらしい。ついでに入場券も紛失。ドンマイ。駅の中のファミレスのようなところでグレープフルーツ・ジュースを飲みながら、打ち合わせ。一時間ほどで別れる。
津田沼の東横インへ。東横インの会員なので、成田にいちばん近い所ということで決めたが、品川の方が良かったかもしれない(成田エクスプレスに乗れる)。津田沼という街自体が初めてだった。