■3月4日(金)〜13日(日)、東京高輪の啓祐堂ギャラリーで「読む人」林哲夫素描展を行います。記念絵葉書セットも出来ました(8枚500円・送料100円)。sumus_co@yahoo.co.jp
2005年2月28日(月)古傷を自慢げに見せ梅まつり
朝の散歩で久しぶりに出会ったミッキー(ダックス16歳)の飼い主さんと立ち話。ミカンの手術の傷跡を見せる。「まあ!」と驚いてもらい、ちょっと得意に。各地で梅まつり開催中。
まだまだ在庫ありと思っていたスムース文庫『八木福次郎さん聞き書き』がいくら探してもない。品切れとなってしまった。そう言えば、一月の地下展に合わせて書肆アクセスさんへ納品したが、あれが最後だったようだ。今のところ増刷よりも新刊という方針なので、まだ入手されていない方は至急アクセスさんへ。
スムース文庫『ヒコーキ野郎』も好評である。先週の月曜日に産経新聞大阪版に連載中の「絵葉書珍列館」で取り上げたところ、宝塚にお住まいというバロン滋野のお孫さんより連絡が入った。資料がいろいろ残っているそうだ。さっそく扉野良人に知らせる。
Nマナブ氏より、東京ステーションギャラリーで4月2日〜5月15日に佐野繁次郎展が開催されますよと教えていただいた。さっそく東京ステーションギャラリーのサイトを見ると、《本展は1950年代の油彩画を中心に、素描、装幀、デザイン関連資料など約200点で佐野繁次郎の魅力を紹介します》とあった。楽しみだ。ちょうど次回の地下展(5月8日〜10日、詳しくは後日)に合わせて上京する予定なので観覧できるだろう。佐野再評価の機運が高まってきたのは嬉しい限り。
今朝も雪が。中学校の校庭は砂糖衣のようにうっすらと白い。
晩鮭亭さんは古書店すむーす堂のお客様だということが昨日の日常に書かれていた。『芸術新潮』の洲之内徹特集を買ってくださったそうだ。有り難う御座います。一度、注文いただいて品切れだったのだが、すぐ次のを補充しておいたもの。だから案内状をお送りしたのだ。それにしても、セドロー日記でも今回の目録では『洲之内徹の風景』が人気だとあったし、どうして単行本の気まぐれシリーズを継続しないかなあ、新潮社さん。全集出してくれたら「この出版社がエライ」にまた推薦します(?!)。
今月20日にニューヨークで行われた Guernsey's(ガーンジ−ズ?)のジャズ・オークションでチャーリー・パーカーのアルト・サックスが261,750ドル(27,748,750円)の高値で落札された(AFPによる。22日付け朝日新聞では225,000ドルとなっている)。チャン夫人がバードの没後も自らのベッドの下にずっと隠しておいたもので、彼女の死の直前に娘に遺贈されたという。
これ以外にもジャズ・ファンにはたまらない出品物が多かったようで、コルトレーンの「至高の愛」の自筆譜面(13,600,000円)、モンクのハイスクール時代のノート(「誰もが良い新聞を読むべきだ」などと書かれているそうだ。なんと7,434,000円)、ディジー・ガレズピーのトレードマークだった上向きに曲がったトランペット(3,255,000円)などなど。
なおコルトレーンのテナー・サックスは50万ドルというオープニング・ビッドに誰も声が出ず、引けとなった。
朝から近所の中学校で小学生のサッカー試合があるのか、ボールを持った子供たちが集まっていた。桜の枝には蕾がつんつん尖っている。昼過ぎには粉雪が舞った。
「書肆アクセス半畳日記」に「読む人」展そしてP-BOOKの丁寧な紹介がされていて感動(!)、思わず、東を向いてジサブロウ菩薩様へ手を合わせる。ほんとうに深謝です。
『Lmagazine』4月号を立ち読み。「天声善語」第二回は三条のブックオフ紹介。大山定一『ドイツをあるく』(知道出版、二〇〇四年)なんて本が出ていたんだ。知らなかった。これを「ブ」でとは・・・。ところで文中に不思議な製版ミスがあった。《楽しい》とあるべきところが《楽 い》となっていたのだ。「しがない」ってか?
「ブ」といえば、京都では宝ヶ池に新店舗ができたようだ。地下鉄国際会館駅から西へすぐのところ(2/19オープン)。
知らなかったと言えば、世界文化社から洲之内徹のアンソロジー第二弾『しゃれのめす』が刊行されてたということを「晩鮭亭日常」を読むまで知らなかった。新刊情報にはうといもので助かるなあ。また、晩鮭亭(VANジャケット?)さんのところに「読む人」展の案内状が届いたとも書かれていて、どなたかなあ? と思わず考えてしまう。4日から6日の三日間はだいたい会場に張り付いています。どなた様も気軽に一声かけてください。
萬字屋書店より『善本古書』9号届く。大阪の11店が参加した合同目録。初めてもらった。思わず引き込まれる内容だ。自筆ものから文芸美術全般を網羅しており、値段も安いというわけではないにせよ、大阪らしい値頃感はある。戦後に出ていた『女性』という雑誌の図版に佐野繁次郎画(?)の表紙が見えている。7冊15,000円なので、ウッと思う。渡辺一夫装の『一九四六文学的考察』(福永武彦他、真善美社、一九四七年)は12,000円だ。これはわれわれ(ウンチク+西村氏)の渡辺装幀本リストに漏れている。北園克衛『若いコロニイ』(国文社、一九五三年)署名入り12,000円もあって、目に毒な目録。
ターコイズにハマってしまったナベツマ。ヤフオクで一番小さなココットロンド16cmをゲット(ココットロンドとは「丸鍋」のこと)。多分、先日紹介したペールイエローの28cmスキレットと製造時期が同時代と思われる。蓋の内側と鍋底にある「A」の刻印は、直径16cmの意味である。つまり、ABCDEFG→16cm18cm20cm22cm24cm26cm28cmと置き換えることができる。最初、チョコレートブラウンの丸鍋をゲットした折に、刻印がBとあったので「まあ、B級品にあたってしもうた!」とガッカリしたが、あとでそうではないことが判明。ほっ。


(**)50年代以前なのだろうか? 蓋のつまみがずいぶん現行の物とは異なる。16cmというと、ほんとにチビでかわいい鍋なのだ。
17日の朝、近所の鉢植えが荒らされていたと書いた。今朝もまた同じように三色菫などが抜き捨てられていた。同一犯人であろうが、この執拗さはどうも常人の仕業ではないらしいとのこと。身近でそういう人間が増えてくると、日本もそろそろ末法の世かなどとつい思ってしまう。
古書現世『逍遙』65号届く。文字がすべてゴチック体になったのがまず目を引いた。本文にゴチック体を使うなどもってのほかじゃ〜「喝!」とM翁あたりが怒るかもしれないが、これはすっきりして案外読みやすい。念願の和田芳恵『筑摩書房の三十年』(筑摩書房、一九七〇年)をメールで注文、入手確認。よく見かける本だが、なぜか買い逃していた。
古本市場へ。もっとも家から近い古本店。ほとんど空振りながら、今日はまずまずだった。グスタフ・マイリンク『ゴーレム』(河出書房新社、一九九〇年)、高橋たか子『高橋和巳の思い出』(構想社、一九八九年重版)、宮崎学『突破者』(南風社、一九九六年)、ベルヌ『20世紀のパリ』(ブロンズ新社、一九九五年)各105円、グレゴリー青山『旅のグ』(旅行人、一九九六年)525円。構想社は坂本一亀の出版社である。
『タイタンズを忘れない』(イェーキン、2000)を録画で見る。予想していたよりテンポがよくて、アメフトの試合シーンも無難に処理していた。細かい演出もいい。実話に基づくそうで、友情・努力・勝利、少々お涙頂戴の予定調和的な部分はあるものの、十分楽しめた。デンゼル・ワシントンかっこよすぎ。何事も勝たなきゃだめ・・・か(ホリエモンも忘れるな!)。79点。
『帰らざる風景』はトラブったが、同時進行だった和田作郎『水晶の海』(みずのわ出版)は無事仕上がって今日届いた。ウンチク装幀本。今どきではなく、ちょっと前の小説本のような雰囲気にしてみた。画はピエロ・デラ・フランチェスカ(有元利夫じゃないよ)。
和田作郎『水晶の海』みずのわ出版、林哲夫装幀
エバーウエアーの計量スプーン。素敵なフォルム。
みずのわ出版柳原氏より電話あり。『帰らざる風景』、本文印刷に不可解なミスが発見され、刷り直しとなったそうだ。早くて3月1日出来。これだと「読む人」展の初日にギリギリ間に合うか、という感じである。なかなか難産だ。
税務署へ申告書類を提出した後、足を伸ばして東大路通田中里の前交差点上る東側のタケリア・パチャンガで昼食。ご主人が作っていたので手早くしかも美味だった(バイトくんのときにはちょっと落ちる)。福田屋書店をのぞこうと思ったら車が停められず断念、文庫堂まで北上したところ定休日(ううう、こんな日もあるさ)。萩書房の200円均一棚で鬱憤晴らし。和田信賢『放送ばなし』(青山商店出版部、一九四六年)花森安治装幀。語る徳川夢声氏という写真も掲載されている。『少年少女劇名作選
学校劇編』(新潮社、一九四九年)、こちらには村山知義のカットが12点ほど入っている。また岡村夫二の目次カットもある。多少慰められる。
他に『主婦之友二月号付録 婦人の手紙』(主婦之友社、一九三四年)100円には、当時の著名人の書簡と顔写真が多数掲載されていた。「茅野雅子女史の葉書」に注目、茅野女史は面長の美人だ。ドイツ文学者茅野蕭々夫人で歌人。夫婦二人で著した随筆集『朝の果実』(岩波書店、一九三八年)などがある。また「人気者の葉書」コーナーも面白い。例えば、徳川夢声《オドロイたですね昨夜は!/お蔭様で本日はウン〓(繰り返し記号)/唸って寝とるですホントに/お宅で飲まされたやつは/若しやメチルで・・・・/オット失礼》(宛先不明)。島成園の《画がお役に立って嬉しく存じ/ます/仰せの如く今は展覧/会など見るより映/画の絵(かりにデートリッヒ/などの芸術)/をみる方がずっと強く心/をうたれますね考へて見/なければならない事で/す 仕事に対する/ひたむきな情熱―之/が欲しいとツク〓(繰り返し記号)思ひ/ます》(宛先不明)など、今となっては貴重な資料だ。
和田信賢『放送ばなし』青山商店出版部、一九四六年、花森安治装幀
花粉飛散盛んなりとのニュースあり。不思議なことに、四年前から徐々に花粉症が軽くなり、昨年はほとんど出なかった。今年も今のところ大丈夫。二十年来苦しめられてきたが、理由が分からないので不気味である。
『彷書月刊』3月号、特集・マキノ撮影所。《大正デモクラシーから昭和初期アナキズムの時代にかけて、カリスマ親父牧野省三に惹かれるように集まった血気盛んな若者たちが、御曹司の正博らとともに公私交えた激しい融合分裂を繰り広げ、度重なる火災や内紛状態のストライキなど、スクリーンの内と外とで見世物性のきわめて高いドラマを華々しく展開し、散っていった軌跡が鮮烈に描かれている》(冨田美香「マキノ映画の魅力」より)。
田村さんの日録「ナナフシの散歩道」にこうある。《一月号に出した当店目録のうち『ふるほんやたいへいき』がエラい人気だ。あおって売切必至と書いたけど、本当にそうかもしれないなア》・・・う〜ん、さすがというか『彷書月刊』の読者のみなさん、新刊ですむーす堂に注文してくれよ〜と言いたくなるが、自らの所業を省みて、これも運命かと納得する。しかし実際、残部少なくなってきました。まだの方はお早めに。
その田村七痴庵さんから『読む人』の感想ハガキ。宛名が林哲夫忘茶庵(わすれちゃいやん)様となっていた。七痴庵(ななちゃん)にそう言われては、リンダこまっちゃう。忘茶庵には深〜い命名の謂われがあるのです(いずれそのうち)。きっと来月号では『読む人』句入り署名本が目録に並びますな。
【K(家電)ツマ通信・安く家電を買う楽しみの巻】
ナベツマ愛用のオーブンがとうとう壊れてしまった。20年ちかく使ったので充分元はとれているはずだが、買い換えはちと痛い。何より、電気オーブン単体はもう製造されていないので、オーブントースターのデカ版かオーブンレンジを買うしかない。
そこで、久々にKツマに変身して、市場調査に乗り出してみた。以前10万円ちかくしていたオーブンレンジが、今や6万円くらいで買える時代なんね、安くなったもんだ、感心感心。で、まず価格ドットコムで人気の機種をチェックし、候補を2つにしぼった。T社とN社の旗艦(フラッグシップ)モデル。
ここからが正念場、掲示板の調査である。ネットの進歩で一番ありがたいのが、メーカーの情報だけでなく買い手側の情報が得られること。価格ドットコムでは、使い勝手がどうとか、メリットデメリットについて、ユーザーからの情報がてんこ盛りなのは非常に助かるのだ。加えて、どこで買ったとか、どこが安いとか、販売価格についての情報も刻々と書き込まれる。
Kツマは、Yカメラ・Yデンキ・R天のネットショップを手始めに、近所の家電量販店のKジマ、Yデンキと価格を調査。結局、価格ドットコムに最安価格ランキング一位で紹介されていた広島の無名ネット店に、掲示板での評判が良かったN社のオーブンレンジをネット注文した。(定価税込94500円が税込49000円なり!)
最後に、Yデンキ店員との店頭やりとりをどうぞ!
Kツマ「このN社のオーブンレンジ、そちらさまのチラシによると週末は店頭価格の22%引きなんざんしょ?」
Yデンキ「はい、なんと60200円です」
Kツマ「まあ、お高い! Kジマは税込み送料込みで5万円ぽっきりっておっしゃってますけど?」
Yデンキ「ウッ! ちょっとお待ちください。聞いてきまっ」
・・・・しばらく店員いずこかに消える・・・・
Yデンキ「お客さん、5万5千円で10%ポイントで如何ですかねー、うちもうこれがぎりぎりですわああ」
Kツマ「ということは実質49500円でございますか?」
Yデンキ「ズバリ、そうです」
Kツマ「で、在庫はございますの?」
Yデンキ「いえ、人気商品ですので、2週間程お持ちいただくことになります!」
Kツマ「おほほほほほ、メルド!!」
(**)駆け引きは、近所同士で競わせることが有効だが、いずこの店も在庫切れではしょうがない。ちなみに、そのオーブンレンジ、本日到着した(ネット店を利用するときは、多少手数料がかかっても代引きが安心)。
『sumus』9号で紹介した「ケンショク「食」資料室」がようやく公開閲覧を再開することとなった。案内葉書によると4月1日からである。月〜金の13:00〜17:30、閲覧は無料だが、電話または往復葉書での予約申し込みが必要。〒543-0002
大阪市天王寺区上汐3丁目6番12号 健康食品株式会社内 電話06-6773-3948。最寄駅は地下鉄谷町線および千日前線の「谷町九丁目」、下車4分。移転前の場所と谷九交差点を挟んで反対側(東南側)になる。書籍45,000冊、雑誌70,000冊、他の食資料がびっしり。関西ではピカイチ。ライバルは味の素の「食の文化ライブラリー」だそうだ。
「書物の歴史と保存修復に関する研究会」がNPO法人として昨年末に発足、再スタートを切った。新しいホームページも開設されている。代表理事は松村恒(大妻女子大教授)、板倉正子(書物修復家)。松村氏は東大印哲出身、といえば分かる人には分かるユニークな方。自称「親和のプリンス」だったが(藤原紀香を教えたことがご自慢のタネ)、大妻に移られ、ご結婚された。おお妻のプリンスである。
印刷学会出版部からのお知らせメールに三省堂が『聚珍録』を刊行するとあった。『聚珍録(しゅうちんろく)』、圖説=近世・近代日本〈文字―印刷〉文化史、府川充男撰輯/B5判ケース入り・全3巻セット価格47,250円(本体45,000円)(分売不可)、《近世・近代日本印刷史関係の定説を全面的に書き換える初めての通史! 本書は,活字の字体・書体・組版の研究から,現在のデジタルフォントの設計にまで示唆を与える3巻構成の大冊で,幕末から昭和期に至る日本の活字(漢字・仮名・約物類を含む)字体組版の歴史を,三千点を超える豊富な図版をもって余すところなく論じた。全三巻(第一巻【字體】,第二巻【書體】,第三巻【假名】,総3,344ページ)》、かなりそそられる内容であるが、実際、どのくらい売れるのだろうか。
知人にもらった『翼の王国』二月号、「中国風聞帖」という記事に中国の書店事情が紹介されていた。北京の「中関村図書大厦」は8800平米(約2700坪)の広さで、アジア最大と言われるジュンク堂書店池袋本店6600平米(2000坪)を凌ぐという。ただし書籍数は70万冊とジュンク堂150万冊の半分以下だが、その分、ゆったり坐って読める「長城家具」(特製の長椅子)が設置され学生たちの人気を集めているらしい。また「timezone8」というアメリカ人ロバート・パーネル氏が経営する美術書店は北京の芸術運動の発火点となったそうで、中国のアート事情が一望できる書店だとのこと。
まだ日時は確定ではないが、三月末ごろ、岡崎武志の帰洛に合わせて、おそらく28日か29日の夕方、京都で「スムース友の会」を、岡崎・林の出版記念を兼ねて、開催することがほぼ決定した。古書漫談、古本オークション、サイン会などを予定している。会場・参加定員・参加費など決まり次第お知らせします!
山本善行のe版「古本泣き笑い日記10 2004年冬」アップしました。
お待ちどうさまでした。山本善行のe版「古本泣き笑い日記10 2004年冬」アップしました。書影がまだですが、取り急ぎテクストのみ。相変わらずいい本を激安で買ってます!
一区切りついたので、部屋を片づけつつ積み上げている本を整理していたら、芥川龍之介の『沙羅の花』(改造社、一九二二年)が出てきた。どこで買ったのだろうか・・・としばらく考えてみると、どうやら去年の六月の地下展のときのようだ。スムース同人のオークションでまとめて落とした一冊だった。念のためと思って「日本の古本屋」で調べると、ヒットした一件は驚くべき値段である。ただしウンチク本は函なしで背が少々ゆるんでいるから評価は十分の一ぐらいか。それにしても、なんだか得した気分。昔読んで印象に残っていた「葱」という短編が収録されているのも嬉しい。
芥川龍之介『沙羅の花』小穴隆一装幀
検印紙、ようやく完成。あとは本が出来上がるのを待つだけ。啓祐堂ギャラリーに荷物を発送する準備。DMの発送準備。そうそう、『季刊銀花』に書肆啓祐堂が3ページにわたり紹介されている。
『航空情報』という雑誌に『1914年ヒコーキ野郎のフランス便り』(スムース文庫06)が紹介されているらしく、電話注文が入る。たしかに、航空情報には違いない。バロン滋野は最初のフランス留学から戻った明治45年より所沢の「臨時軍用気球研究会」で操縦指導を行っていた。その前年に徳川大尉が日本初の飛行を所沢飛行場で成功させていた。10メートルの高さで800メートルほど飛行したそうだ。ライト兄弟に遅れること6年である。
上京するまでに『サンパン』次号の原稿を仕上げておこうと下書きにかかる。小野松二の京大時代まで。寿岳文章と英文科の同級生だったらしい。しかも選科生というところまで同じ。ともに昭和二年(1927)卒業。生年は小野1901年、寿岳1900年。選科生とは何かということは『サンパン』誌上にて。
古本市場で石川滋彦『日曜画家の水彩画入門』(実業之日本社、一九七七年)を拾う、105円。画風としては石井柏亭の系統に属するといってもいいだろうが、堅実で穏やかな作風は嫌いではない。この人の入門シリーズは昔よく見かけたものだ。現在さすがに新刊では入手できない。古書だと1000円前後。
高木四郎の本をネットで捜して入手した。『食べもの随筆 京のあじ』(六月社、一九五六年)500円(三四郎古書店)。六月社は大久保恒次『うまいもん巡礼』(一九五六年)や小島政二郎『随筆あまカラ』(一九五六年)などを同時に刊行している大阪の版元だが、これらは要するに雑誌『あまカラ』(甘辛社)の人脈になろう(『sumus』9号参照)。『京のあじ』のカバーに高木四郎の略歴が記されているので、参考までに全文を引用しておく。
《明治四十二年(1909)京都に生る。京都府立第三中学校卒業。津田青楓氏に師事。二科展出品後、須田國太郎氏に師事。独立展出品。戦後公募展に出品せず。現在、京都に居住す。》
『京のあじ』は雑誌『茶道月報』連載の随筆をまとめたとのことだが、かなりしっかりした内容で、挿絵のタッチからしても、西の木村荘八という感じだ。これは拾いものだった。
田中栞さんより『古本屋の古女房1』(胡蝶の会、二〇〇五年)届く。『古本屋の女房』(平凡社、二〇〇四年)の続編という体裁で古ニョボ愛読者には必読なのだが、残念ながら少部数限定出版だとか。普及版『古本屋の女房2』を待ちたい。
中尾さんより電話あり。『BOOKISH』次号が山田稔特集(これは画期的な特集だ)ということで、山田氏から現在発売中の『BOOKISH』画家のポルトレ特集号について、ウンチク稿の鍋井克之が面白かったという感想が届いたそうだ。山田氏も鍋井ファンとのこと。もし選集が刊行されるならぜひ予約したいとまで・・・う〜ん、残念ながらそういう話は聞かない(どなたか奇特な版元は居られませんか? 隠れ鍋井ファンはけっこう多いですよ)
ニューヨークのナショナル・アカデミー美術館で「Surrealism
USA」展が開催されている(2/17-5/8)。以前話題にしたピーター・ブルームが、ブルトンから仲間に誘われて丁重に断ったというようなこともあったらしいが、近年、急速に進んだアメリカ国内におけるシュールレアリスム運動についての研究成果が展示されているようだ。
水内鬼灯『集雲抄』和敬書店、一九四七年、高木四郎装幀
キツネかタヌキにケムにまかれたような気分のナベツマは、まっええわ、と送料35ドルで手を打った。最悪、船便でやってくるだけやん。あんまし神経質にやってたら、こっちの身が持たへん。お師匠さま(マンレイ石原氏のこと)もそう言ってたような気もするし。
そうして一週間が過ぎた頃、なんと本当にエアーでご到着。しか〜も、荷物の中に「これはフリーギフトだよ!」と書かれたガラスのキャンドル立て2本セットが同梱されていた。重い! 計ったら500グラムもあった。
なんでやー、こんなヘンなもん入れるくらいやったら、送料減らせよー、アメリカン!!(でも良かった、ほっ。)

◆50年代あたりではなかろうか、と思われるふる〜いタイプのスキレット。もち新品、当時のシールが貼られているレアもの。菱形の囲みの中に数字が入って
いるのが、これまでのなかで一番古いヴィンテージもの。横に見えているのがあこがれだったふる〜いタイプのル・クルーゼ包装紙。う〜ん、フ・ル〜イ!!!
額縁の調達に寺町まで。三条の「ブ」と尚学堂はお定まりのコース。句集用の和本を二冊入手。湯川書房に寄って『読む人』を渡す。湯川さんはツカ見本を作ったことがないそうだ。本の在庫は課税対象になるので仕方なく処分することもあるそうだが、ゲラ刷りはどうしても捨てられず、倉庫に積み上げてあるという。
帰宅すると、みずのわ出版柳原氏より電話あり。『帰らざる風景』に厚紙のカバーを付ける予定なのだが、その見本が指定通りに上がっていない(文字の位置がズレている)という。厚紙の文字は灰黒色の箔押で、これは製本所の仕事だ。正確に入れてもらうように厳重に指示し直すしかない。最後まで気が抜けない。その後はひたすらハンコ捺し。
録画で『僕らのアナ・バナナ』(エドワード・ノートン、2002)を見る。ニューヨークのユダヤ人社会がかなりよく分かる。演出はまずまずだが、ちょっと長い。67点。この映画の最後でアン・バンクロフトがスナップ写真を撮るシーンがあり、「ホールド・イット
Hold it !」(そのまま、じっとして)と言っていた。ふむふむ、そういう掛け声もアリか。
朝、近所の医院の前の鉢植えが荒らされて、警官が事情聴取していた。もう少し先では、救急車が停まって病人を搬出していた。朝食のテーブルに着くと消防車のサイレンが通り過ぎて行った。世の中いろいろ大変だ。
検印の続き。まだまだ終わらない。途中で『読む人』の注文がまとめて入ったので、その発送準備。書肆アクセス、海文堂書店には並んでおります。三月書房と古書現世、聖智文庫にもあります。
夕方、録画しておいた『呪怨』(清水崇、2002)を見る。だんだんギャグになっていく・・・、ラスト意味わからん。50点。ぜんぜん関係ないけど、バルタン星人、恐かったなあ。ナベツマによれば、大竹しのぶの『黒い家』(森田芳光、1999)が恐いよ〜、生身の人間の方がゼッタイ恐いとのこと。
遠藤瓔子『安部譲二と暮らした七年間 青山『ロブロイ』物語』(世界文化社、一九八七年)ざっと読む。赤坂のジャズ・クラブ「ロブロイ」の思い出。前半はヤクザ、後半は芸能人や作家の話。安部の名前など借りずにもっとちゃんと書けばとても大事な証言になったろうに、惜しい。来日したクインシー・ジョーンズは誰に教わったか《苦院死、と戒名みたいなサインを》したそうだ。
Fさんより「小津安二郎の世界展」(大丸・四条烏丸、3月3〜8日)のチケット、チラシ、ポスターいただく。岡崎が「お茶漬けの味」を見なさいというそのスチール写真がチラシにあった。
西田書店に注文した室生犀星『人間街』(南北書園、一九四六年)届く。竣介ではなかったが、けっこういい表紙だ。筆記体で「Yugoh」と読めるサインが入っている。
室生犀星『人間街』南北書園
ウンチク近刊『帰らざる風景』には検印紙を貼り付ける予定である。で、検印紙を作らなければならない。和紙を5センチ角ていどの小片に切る。ざっと850枚。同数のごく薄い抑え紙も切る。次に、装飾となる模様をリノリュームに彫り(みずのわ出版にちなんで渦巻きの形)、まずそれを和紙片に印刷というか捺印してゆく(四隅に渦巻き、ということは3400回)。さらにその中央に「林」の印を押すのである。昨日からやっているが、まだ道半ば・・・なのに判子を押しているだけで肩はゴリゴリ、指にタコができてしまった。(書肆アクセスさんの日録に目次紹介が出ています)
扶桑書房よりハズレの葉書。作品社の『梶井基次郎小説全集』。これは所持しているが、「普及版」というところに惹かれた。注文の際、何度ファックスしても話し中でつながらなかったので半ばあきらめていた。保昌先生の一巻本選集を読んでいると、作品社の本にはたいてい同一タイトルの上製本と普及本があることについて、上製(ハードカバー)が返品になったときに表紙だけ改装してソフトカバーにして再配本したのではないか、という推測が述べられていた。妥当な見解だと思う。
『日本古書通信』907号。井上宗雄「回想の句会」、加藤楸邨の句会に寺山修司がちょいと顔を出したことや、大橋巨泉も出席していたことなど、早稲田の俳句研究会を中心に。高梨章「大橋図書館と芥川龍之介」、芥川が十歳にして大橋図書館通いをしていたのかどうかについての考察。結論は十二歳明治三十七年から。川島幸希「続署名本の世界」は蒲原有明。『春鳥集』(本郷書院、一九〇五年)の「袋紙意匠」は青木繁・坂本繁三郎(繁二郎)の共案、伊上凡骨彫だという。「袋紙意匠」はカバーデザインのこと(英語のカバーは「表紙」を意味する、ジャケットと言うべきだが、慣例に従う)。特集「わが古書目録を語る・下」には石神井書林さんや、セドロー向井氏も執筆している。向井くん、ぶっちゃけの内容はムチャ分かりやすい。《勝負はこれからだ》って、頼もしいね。目録ページでは日本古書通信社古書部の小型本特集が注目に値する。山本文庫、手帖文庫、版画荘文庫、細川文庫、正チャン文庫などなど。
向井くんの日記に『日本古書通信』の裏に『BOOKISH』の広告が出ていて驚いたとあったが、じつは先月、編集のTさんからウンチクに電話があって「交換広告どうですか?」というので『sumus』はしばらく出ないし・・・と躊躇していたら、『BOOKISH』の話だった(うちは編集部じゃないんですけど)。八子さんの電話をお教えした。
【ナベツマ通信・ハガレンの巻】
ハガレン、「鋼の錬金術師」・・・、ナベとの関連は・・・「鋳物」と「鋼」の類似性、と無理矢理つくってみようとしたが・・・やはり・・・まったく・・・、ない!!
本日ナベツマは、「わたしの書斎」と呼んでる近所の本屋でアエラを立ち読みした。なんと、そこにはハガレンについての記事が掲載されていた(もちろんそのアエラはお買い上げ)。おおっ、単行本はもう1200万部に達したのか、すごい!
ナベツマの愛するもののなかに、漫画は大きなウエートを占めている。元々漫画家志望だった蘊蓄斎などは、小学生の時に親から「漫画家だけにはならないでくれ!」と懇願されて、しかたなく絵描きになったという経緯を持っている(今考えると「絵描きだけにはならないでくれ!」と言って欲しかった)。
そのハガレン、この春休みにUSJ(大阪のユニヴァーサル・スタジオ・ジャパン)でアトラクションとして、親子参加型の「錬金術ワークショップ」が開催、とラジオで聞いたところだった。なんでも、講座途中にホムンクルスが乱入し、みんなを巻き込んでの闘いとなるんだそうな。わくわく、ドキドキものだわね。バイトの兄ちゃんたち、ご苦労さん!
【うんちくコーナー】荒川弘(あらかわひろむ)著『鋼の錬金術師』は月刊誌『少年ガンガン』連載中の人気コミック。単行本は9巻で1200万部を突破したという。10巻が三月発売予定。アニメ(TBS系)は2003年10月〜04年10月放映。このDVDも販売100万本に達する見込み。米国でも7万本が売れているとか。デイリー・スムースでも昨年五月(5/8)に触れている。
アメリカ人教師が近所の中学にも来ているらしく、朝の散歩のときにすれ違った。そのうしろから歩いてきた女生徒が「グッ、グッ、グモー」と口ごもるように繰り返しているのが面白かった。先生の発音を真似していたんだね。
昨日の昼すぎ、自家用車でのミカン散歩の帰りに、ネズミ取りに引っかかった。いきなり旗を出されて、脇道へ誘導された。スピードも出していないし、信号も守っているのに、なぜ? その辺でよく待ち伏せをやっているのは知っていたけれど、やっとその正体が分かった。シートベルト(or
携帯通話)を取り締まっていたのだ。で、むろんちゃんとシートベルトはしていたので、ようするに、路肩でチェックしていた警官の見間違いだった。「だんなさん、すみませんね、見間違えることもありますので、ご理解くださいね」と白バイのヘルメットを被っていた警官があやまった。それにしても「だんなさん」って、他に呼びようないのかなあ。
カエさんより、バレンタインデイはビル・エヴァンスの「You
Must Believe in Spring」を聴いてすごしたというメール。《ジャケットのCharles・Burchfieldの絵も良い。期待と不安を縒り合わせて萌える木々》とあった。バーチフィールド(1893-1967)という画家はあまりよく知らないが、エドワード・ホッパー(1882-1967)あたりと同世代のようである。アメリカの自然風景を描いた作品が多い。付句もいただく。なお、小生、ネット上では「忘茶庵」ではなく「聞空」と号している。
老桜うろに芽を吹く名なし草(聞空)
若き日の夢 語り継ぐもの(カエ)
『ちょうちょぼっこ図書目録』4号届く。ひと月たつのは早いものである。中野のタコシェさんが三月にぼっこさんで出張販売するとのおしらせあり。
大島なえさんより『海辺のピクニック』という写真絵葉書セット届く。神戸(東灘?)の海岸あたりがオシャレにレイアウトされている。
古本酒場コクテイル書房のチラシ、および「古本屋のグラ・ヒック展」(ゴゴシマ屋・石丸澄子さんのポスター展)DM届く。岡崎武志トークショー(2月15日、3月15日)他、イヴェントも盛りだくさん。ちょうど上京中なので、一夜、拝見させていただきたいと思う。
古本屋のグラ・ヒック展DM
そうそう、徳島の北島町立図書館・創世ホールにて、九條今日子・講演会「夫・寺山修司を語る」が開催される。チラシ届く。3月20日(日)午後2時開場。聞き手・白石征。
『扶桑書房古書目録』74号届く。青山二郎の装幀原画(島木健作『或る作家の手記』のための試作)25,000円・・・そうとう動かされる。『大山定一』(創樹社、一九七七年)3,000、中戸川吉二『イボタの虫』(一九一九年)9,800、原口統三『二十才のエチュード』(一九四七年)3,000、水守亀之助『帰れる父』(一九二〇年)イタミ本2,800、あたりに目がとまる。雑誌『作品』の複刻されていない巻号は欲しいものの、おおよそ各8,000円では手が出ない。
『みはる書房目録』53号、これもいつも面白い内容だ。長沖一『大阪の女』(白鯨書房、一九四七年)7,800円、だとか『双樹(クオタリー)』(双樹社、一九四七年)1、2輯、各3,000円などに惹かれる。
海月書林さんの佐野繁次郎『銀座百点』特集をセドローくんの日記から覗いてみる。いや、すばらしい。うちの佐野本サイトもがんばらなきゃ。しかしさすがの値段だ。
終日作業。Sさんより一昨日届いた手紙いわく《雑誌ため込んだ男の床落ち事故、悪夢の如く、ぞっとしました。我家も、この数年もう本を買うな!
階下の人下敷きになったらどうするのと言われ続けています。林様は、古書目録一通り目を通したら潔く処分されてますか? 岡崎氏や山本氏の様に心のおもむくまま買い度いと思い乍ら、現実、手元に置く本、処分すべき本の選択の岐路に立たされて居ります》・・・いや、これは永遠のアポリアである。ちなみにウンチクは目録類は段ボールに詰めて郷里の古納屋に押し込んでいる。ネズミがかじりつくほど愛読しているようである、やれやれ。
南陀楼綾繁企画の「一箱古本市」に参加することにした(むろん一箱送るだけ)。4月30日。詳しくはナンダロウアヤシゲな日々にて。
昨日は、啓祐堂の個展を仲介してくれた岩田氏が京都に来られたので、寺町三条上るの「スマート」で食事をしながら、展示の打ち合わせがてら、氏の得意な演芸関係の話をいろいろうかがう。その後、アスタルテ書房を一緒にのぞいて別れた。久しぶりのアスタルテでは、石川達三『赤虫島日誌』(東京八雲書店、一九四三年、青山二郎装幀)800円、水内鬼灯『集雲抄』(和敬書店、一九四七年、高木四郎装幀)200円、関口冬子『歌集火と水と』(正和堂書房、一九二九年、鏑木清方装幀)100円などを求める。天神さんに行けない分のうっぷんばらし。『赤虫島日誌』は状態がいまいち。きれいだともっと高いはず。『集雲抄』の版元・和敬書店は京都の出版社、あとがきに《この書の成るについて、畏友天野忠君に深く謝するところがあり》と書かれている。『歌集火と水と』は清方装幀(表紙・見返は木版画刷り)ながら、カバーなし、汚れ、見返しに書き込み、新聞切抜貼付。関口冬子は『明星』に歌を出しているというくらいしか分からない。ただ、中扉が博物画・細密挿絵で知られる牧野四子吉の木版画(象徴派ふうの虞美人草の図)である。さらに書肆大学堂(三条寺町東)の未見シールも付いて100円はうれしい。
昼間、遊んだ分、夜は展示のための下準備にかかりきり。そしてそれは今日も終日続く。まだ終わらない。
書肆アクセス畠中さんよりメールあり。《P-BOOKシリーズ『古本屋を怒らす方法』『さらば、父たち』『句集 書影』がなくなってしましました。また、各20部お願いします》とのことで、嬉しい限り。フル回転で増刷します(!)。『読む人』句入り本も近日中に納品の予定です。お近くの方はぜひ店頭でご覧下さい。
石川達三『赤虫島日誌』東京八雲書店、一九四三年、青山二郎装幀
Mさんよりメールあり。《今日天神さんに行ってきました。百円均一には雑誌「文学界」がずらりと並んでいました。拾ってきたのは『現代・詩の作り方研究』近代文藝社昭和5年、花田清輝『映画的思考』裸本、『楡の花』甲文社裸本とかです。厚生書店という私には聞きなれない店で『映画わずらい』浦辺粂子・菅井一郎・河津清三郎というのを見つけたので買いました。300円。(『脇役本』に載ってました)また、『自然主義文学盛衰史』他創元文庫を2冊各50円も買いました。この店だけは棚がスカスカになっていましたから、きっと昨日はすごかったのではないかと思います。山本さんが行っておられたら報告をお聞きしたいものです。それから、他の店に、日記で話題にしておられた南北書園の本『書物と世間』がありましたが、検印紙を見るだけにしました。以上です》、『書物と世間』は架蔵しているが、検印紙の絵も竣介だろうと思う。
岡崎日記に中原中也全集別巻のために佐々木幹郎氏が購入した音楽学者の野村良雄の日記(30万円)というのは、岡崎が見つけ、月の輪さんが買い取ったものだという話が出ていてビックリ。岡崎もエライが、月の輪さんもエライ、佐々木氏もまったくエライ人だ。三人三様にエライ。
【ナベツマ通信・ターコイズの巻】
ターコイズ、といえば「トルコ石色」「新橋色」、ほれあの巻取式のホースの色とかを想像してしまうナベツマ。(詳しくは蘊蓄斎から。)
ナベツマは、1月末にヤフオクでターコイズのスキレットに入札した。誰も興味を持たなかったようで、ずうっとスタート価格のまま最終日を迎えた一品だった。しめしめ、一度でいいからスタート価格のまま落札してみたい、と常々願っていたので、「いける!」という感触を得た。と、油断していたら、なんと終了を5分切ったところで、価格が上がった。くっそー! 入れてきたのは、まだ1ヶしか落札していない新人さんである。
ヤフオクでは、終了5分を切ったところで新たな入札があると、多くが5分づつの延長になるシステムになっている。この点、eBayでは延長のシステムはないから、本当に競ってくるオークションでは、終了間際は怒濤の入札になる。故に、そのための秘密兵器も売られているようであり、まっ日本流にそれを名付けば「eBay早押し高橋名人(連射で子どもたちのカリスマ的ゲーマーであったゲームソフト会社ハドソンの社員)」といったところか。
で、どうなったの、そのターコイズ? そりゃもちろん、そんな新人さんは吹き飛ばしたわさ。

◆60年代のヴィンテージスキレット。底のバックスタンプの様子がかなり現行タイプと異なる。また、ターコイズ色自体が50〜60年代にしか製作されていないようであり、以前落札したペールイエローのスキレットより更に古いタイプとなる。美しい・・(この写真ではうまく色が出ていない、もっと濃い色です)。
【うんちくコーナー】ターコイズ turquoise(土耳古石)は古代から旅人や軍人の守護石として珍重されてきた。ブラジル、中国、メキシコなどで産出されるが、アリゾナのスリーピング・ビューティ鉱山のトルコ石は良質なことで知られる。ダイヤを10とした場合の硬度は6と柔らかく、汗などによっても変色する。英米仏ともに12月の誕生石。青空の色。また、ターコイズ・ブルーに似た「新橋色」というのは、明治中期に導入された合成染料によって初めて出現したもので、当時の政財界の人々が集まるハイカラ好みの場所とされていた東京新橋の芸者たちに愛好されたことから流行し、そこからこの名前で呼ばれるようになった。彼女らは置屋のあった金春新道から金春芸者とも呼ばれるので「金春色」ともいう。旧幕以来の花柳界と対抗する意味も新橋色には籠められていたようだ。
伊豆では桜が咲いたとか。昨日のサッカー、後半の後半、テレビの前を通り過ぎようとして、思わず立ったまま最後まで見てしまった。結局、ゴールキーパーが勝敗を分けたようだ。あそこでパンチはないでしょ、キャッチでしょ。むろん大黒の体の回転が素晴らしく、これまで日本のフォワード陣に欠けていたキレがあった。それにしても、開局以来の視聴率とは、どういうこと・・・。
今日から大阪天満宮の古本まつり。個展の準備と出版に関連する雑用が山積しており、今回は出かけられそうにもない。天神さんの百円均一、いつもかなりいいものがあるので残念だ。
古本倶楽部と西田書店の目録、ようやくめくり終わる。ふう。なぜか南北書園の本が目についた。伊藤整『微笑』(南北書園、一九四七年)、室生犀星『人間街』(南北書園、一九四六年)。ナンポクショエンは昭和21年から24年あたりに活動していた出版社。『sumus』5号にも書いたが、松本竣介が装幀・装画を担当した本がかなりある。竹村書房の竹村旦は戦時統合のなかで出版を断念したのだが、戦後になって、南北書園に入って出版界に返り咲いたらしい(発行者は瀧眞次郎)。ずっと興味を持ってはいるのだが、あまり本が出ない。伊藤整は一時南北書園に勤めていたという関係だし、『微笑』は国会図書館にも所蔵されていない。ただし8400円だ。竣介本ならばと思ったが、どうも違うらしいので注文は断念した。犀星のほうは葉書を出しておく。
美術エッセイ集『歸らざる風景』の最終校正に大阪の印刷所まで出向く。いくらやっても直すところは出てくるものだ。しかし、なんとか作業にピリオドを打ち、印刷にかかるとこまで漕ぎ着けた。月末までには出来上がる予定。高輪で初売りになるだろう。書肆アクセスさんにも同時に並ぶと思う。また、スムース文庫07『読む人』も完成した。今回は都合によりこれ一冊だけの発行となった。500円、送料100円(ご希望の方に句入り署名いたします)。sumus_co@yahoo.co.jp
林哲夫スケッチ画集『読む人』スムース文庫07
2005年2月8日(火)猫の恋古書目録に首ったけ
中野書店の『古本倶楽部』と西田書店の目録が届いて、どちらもぎっしりの内容に、思わず時間を取られる。目録は、よほど忙しくない限り、全ページをめくる主義(めくるだけですが・・・)。
書評のメルマガ200号、201号。年頭恒例のアンケート企画「この版元がエライ!」を配信している。かなり面白い。ヴァラエティに富んでいる。松本翁の文中《【おまけ情報】昨年末発行の『群』第2期第5号には、満田さんの詳細な「六隅許六」論考が掲載。「渡辺一夫 装幀・画戯」フアンには必読ですゾ》とあって気になる。問い合わせの葉書を投函。
ミカンの手術代金の一部を保険でカバーするため、動物病院に頼んでおいた証明書類を取りに出かけた。ついでだから昼食は外で摂ろうということになり、四条烏丸あたりまで遠出する。雑誌で目星をつけたピザの店、正午を過ぎ、定休日でもなく、ネオンも点っているが、扉は閉まっている。次にその近くのパン屋、年中無休と紹介されているのに火水定休となっていてガックリ。じゃ、どこでもいいわと駐車場を探すが、どこも満員。しかたがない、Uターンして四条通天神橋京都外大前にあるモスバーガーへ向かうことに。途中、五条堀川の「ブ」で雑誌を二三拾う。「腹へった〜」とモスバの前までたどりついてビックリ。改装工事中のため休み(!)、こんな日もあるさ。
東京豊島区の木造アパート二階、大量の雑誌をためこんでいた男の部屋の床が抜けて一階に落下し、男は雑誌の中に埋まってしまうという珍事故が6日に起こったそうだ(共同)。雑誌とともに落下した75歳の男は全身打撲で重傷。救出に二時間を要した。階下の住人は屋根が抜けそうだということで警察へ相談に行っていて留守だった。雑誌の量は高さ50センチに積み上げて30メートルに及ぶとか。週刊誌や漫画雑誌だということなので、仮に一冊平均1センチの厚み、B5判の短辺18センチとして計算すれば、ざっと8,300冊。一冊平均200グラムとすれば、1.7トン近くなる。わが家も木造なので人ごとではない。
『花』第一輯(新生社、一九四七年三月一日発行)届く。美術雑誌のようなのだが、武者小路実篤を巻頭に、永井荷風、谷崎潤一郎、井伏鱒二、久保田万太郎、広津和郎、吉井勇、正宗白鳥、辰野隆、青野季吉、里見〓、長与善郎らの随筆を揃え、画家では中川一政、鏑木清方、鍋井克之、石井柏亭と文筆の立つところを集めている。挿絵が鳥海青児に野口弥太郎。
いやあ、またやっちまったわ。今度はeBayで落札させられてしまったナベツマ。いきさつはこうである。
外国人落札者(アメリカ人からみて我々のこと)には、支払い方法としてクレジットカードが使えて簡単なPayPalがある。が、為替かチェックしかダメなオークションがあることは以前も述べたとおりで、それらのなかには為替を送る方法として「BidPay(ネット為替)」が使用可能な場合がある(*「PayPal」「BidPay」については蘊蓄斎におまかせ)。
そこで「BidPayやってみようかな?」と思いたったナベツマは、やめときゃいいのに、そのBidPayがOKなオークションに入札してみた。ところが、そのあとBidPayのHPをよくよく眺めていると、これがPayPalと比べると相当ややこしいやら面倒やら。それで、今度は「途中で入札キャンセル試しにやってみようかな?」ということになり(なんでぇ?)、出品者に次のようなメールを送った。
「すみませーん、マネーオーダー、日本から10日以上(その出品者は支払いは終了後7日以内と期限を明記)かかるだっしぃ、わたしBidPay難しくてだめあるよー。お願いだから、この入札、キャンセルしてほしいーでーす!」
もちろん返事は来なかった。入札前の、送料の告知には即答だったにも関わらず。困ったなー、と思いつつ、終了までの日々を悶々と過ごしていたナベツマは、あるときふとそのオークションを眺めていて、おぇっと気づいた。BidPayのロゴがでかでかとオークションの出品物の写真中心に出現していたのである。
タヌキじいさんはキツネ娘がうまくBidPayに導かれるように、リンクを自身のオークションサイトに張りつけていたのである。そこにはこう書いてあった。「このオークションの出品者はこのBidPayを新たにアップしました!」。アップした日時は、もちろんキツネ娘のメールの直後。
こうして、キツネ娘は自らの目論見にはまり、タヌキじいさんはおバカな日本人にナベを買わせることに成功したんだと。めでたし、めでたし・・・???
【うんちくコーナー】「PayPal」はオンライン上の決済を容易に安全に行うシステムで1998年に組織され2002年にebay
Inc.によって買収された。本社はカリフォルニアのサンノゼ。2003年にウエッビー・ベスト・ファイナンス・サイト賞などを受賞している。加入するとわずかの手数料を支払うことによってペイパルを通して取引が行われ、取引の安全が保証される。ただしebayにおける取引のみが対象になる。詳しくはサイトを参照のこと。「BidPay」も同様な仲介システムだが、買い手の支払い方法はUSドルのチェック、為替、ポンド・スターリングのチェックの三種類。これらはウエスターン・ユニオン(1851年に創立された電報会社、1871年に為替業を開始)を通じて行われる。いずれにせよ情報管理を「PayPal」「BidPay」が行うことによって直接取引に起こりがちなフロード(不正行為)の危険性を低くするということである。
佐野繁次郎の装幀本『士魂商才』(武田泰淳、文藝春秋新社、一九五八年)をある方からいただく。戦後企業小説のはしりだとか。現在は岩波書店から出ている。なお「士魂商才」という言葉は渋沢栄一の造語(『論語と算盤』忠誠堂、一九二七年)で、論語を読み直した渋沢が「金を儲けて良いことに使え」と孔子さまも説いておられると主張しているそうである。右手にソロバン、左手にハナタバじゃないロンゴ、だとか。
武田泰淳『士魂商才』、装幀=佐野繁次郎
昨日届いていた第74回新宿古書展の目録を眺める。表紙は永島慎二。古書現世、安値(!)、しょっぱなの植草本なんかみょうに安い。他に『古木鉄太郎全集』(同刊行会、一九八八年、4冊)が一万円!(安藤書店)、ほとんど読んだことがないので(雑誌『作品』に掲載されていたものを一篇読んだが、いい作品だった)、食指がちょっと動く。フルキと発音して松本八郎に「コキです」と訂正された記憶アリ。ネットで調べると「コギ」となっている例も多い。松本翁を信じよう。
ヤフー・フランスのニュースを見ていると、来る10日、青山にピエール・エルメの「バー・ショコラ」がオープンするとあった。ざっと記事(AFP)を流し読みしたところでは、「フランス菓子界のスター」エルメは1998年に第一号店をホテル・ニューオータニに、2000年にサロン・ド・テを東京ディズニーランド内に開き、満を持したパリ一号店は2002(じつは2001らしい)年にボナパルト街(サンジェルマン・デプレ教会の近く)に、さらに昨年末、フェランディ料理学校内にアトリエを開設した。そして今月東京に日本第三号店を開くというのだ。
エルメ氏は1961年、アルザス生まれ、14歳でガストン・ルノートルに師事し、20歳でフォションのシェフ・パティシエに就任、さらに老舗ラデュレを立て直し、その後、独立したということらしい。ルノートルとフォションで育ったのなら日本がいかに有望な市場であるかということは実感していたのだろう。東京で初お目見えというのは、パリジャンたちを歯がみさせたかもしれない。エルメ氏の写真と紹介が『TITLE』3月号にドーンと掲載されている。興味のある方はどうぞご覧あれ。
ちなみにバレンタインデー(英語ではセイント・ヴァレンタインズ・デイ、フランス語ではラ・サン・ヴァランタン)の2月14日というのは、禁令を破って若人たちを密かに結婚させていた司祭ヴァレンチノ(本名というかイタリア人だからね)がローマ皇帝クラウディウス二世に処刑された日である。西暦268年のこと。
3月4日〜13日、東京は高輪の啓祐堂ギャラリーで「読む人」林哲夫素描展を行います。本日、案内状と記念絵葉書セットが出来ました(8枚500円・送料100円)。「読む人」スケッチ100点出品予定、むろんすべて
on sale です。初日、二日目あたりは上京して会場に居るつもりですので、ぜひおいで下さい。
読む人 en lisant 案内状
午前中、動物病院へ。ミカンの抜糸。五分ほどで終了。キズの治り具合も順調とのことで安心する。
『第14回サンシャインシティ大古本まつり』目録届く。けっこう欲しくなるものが出ていた。小林かいちの絵葉書2点(5,250、6,300円)、カバヤ文庫四種(各4,000円)、西村真琴『凡人経』(書物展望社、一九三五年)8,400円、『書物往来』(従吾所好社、一九二四年)1〜3号(各2,100円)、『雄鶏通信』(雄鶏社、一九四五年〜)創刊号から8号分(10,500円)などなど。
架蔵の『雄鶏通信』3巻1号(一九四七年一月号)春山行夫編集
今日も昼間っからeBayやってたナベツマ、ペールイエローのヴィンテージでかスキレットの落札(今年に入って3回目)となった。直径28cmというのだからかなりデカい。前回のソースパンも20cmとデカかった。送料も半端じゃないのに、なぜデカいのばっかし落札するのか?
だってみんなが欲しがらないから安値で落札できるもん。
で、現在送料でもめてるんだよな、これが。ナベツマは入札前に必ず出品者にブツの送料を尋ねてから、その返答をみて納得いったら入札することにしている。今回もその返答では「航空便40ドル、船便27ドル」だったのに、落札したところでやってきたinvoice(明細記入請求書)には、船便35ドルとなっていた。つまり船便27ドルは7パウンド小包に相当するのだが、invoiceにはその倍の14パウンド小包になってる計算なのだ。そうすると、航空便では63ドルもの送料になってしまう。
あに考えてるんだこの出品者は?? さてさて、ことの顛末はまたの機会に。
(**)ナベツマに次のような質問が寄せられました。
「私、エバーウエアの計量スプーンを愛用していた者です。あることがきっかけで、その大切な計量スプーンをなくしてしまいました。聞けば、製造元の東新プレスはもう廃業してしまった模様で、あちこち探しまわっていますが、見つかりません。はやしさまはエバーウエアをお使いのご様子。お持ちではありませんか?」。
残念ながら、ナベツマはエバーウエアは「鍋」のみの所有で、計量スプーンは別のメーカー品でした。小さじをお探しとのこと、5ccのエバーウエアの計量スプーンを所有されていて、譲渡が可能な方、ひとつこちらまでご連絡いただけませんでしょうか? sumus_co@yahoo.co.jp
恵方巻とは、また妙なものが流行る。ローソンは150万本用意したとニュースで伝えていた。まさに福は内であろう。
節分に祇園では「おばけ」といって仮装して神社に参詣する風習がある。また「追難」と呼ばれる疫病神を追い払う古代中国の儀式が節分の起源と言われるが、宮中では黄金四つ目の疫神を楯を打つことや桃の弓を放つことによって退散させる儀式が平安朝ごろから行われていたという。明治初年に一旦途絶え、昭和四年に復活したそうだ(『俳諧歳時記』改造社、一九三三年、による)。おそらく起源はもっと古く古代オリエントあたりになるのではないかと思う。たしかそんな神話を読んだ記憶があるが、今すぐ出典が分からない。楯を打つというもの病害を追い払うための古くからの対処法である。弓を鳴らすとか、穀物の虫害を避けるためにドンチャカ楽器を鳴らしてまわるという風習も広く見られる。イランの映画にもそんなシーンがあった。
柊と鰯の頭を門口にさすという風習も節分にはある。『土佐日記』(十世紀)にすでに出ているそうだが、当時は鰯でなく鯔(ぼら)だったとか。鬼が嫌うものを飾るというのも各地各時代に見られる。鬼や悪霊にもちゃんと弱点があるという考えがいかにも人間らしいという気がする。今どきのゲームのキャラ造りにも通じる。なお「鬼」というのは悪を為す死霊のことで、つまりかつては人間だったのだ。
『pen』2月15日号をツマが買って来た。「植草甚一のように、歩いてみたい。男の東京マップ」特集。ペンらしいと言えばペンらしい東京ショップ案内。月並みと新味とが適度に混ざっている。西荻のゴゴシマヤさんがデーンと紹介されているのはグッド(!)。谷中の地図でアラン・ウエスト・ギャラリーの位置が少し間違っているようだ。このすぐ近くの内澤アトリエに泊まらせてもらったことがあるので気になってしまう(詳しくは東京日記参照)。
深夜からシンシンと雪が降り積もり、起きてみると10センチ以上になっていた。凍えて、絵筆を持つ気にもならず、終日、読書して過ごす。途中、装幀原稿の色校が届いたので、少々修正の指示をファックスして、本日の仕事終わり。
『花や人影』の山下清伝「清残影」にいたく感心する。非常に思い入れの深い対象をつとめて冷静に描写しながら、その本質に迫ろうとする筆致が心地よい。山下清についてはほとんど興味がなかったが、さっそく小沢信男さんにいただいた『裸の大将一代記』(筑摩書房、二〇〇〇年)を引っ張り出して拾い読みしてみた。小沢さんは客観的な目で、というか、時代と自分自身を山下清に重ね合わせているので、ちょうど「清残影」の注釈のようにして読める。
他者に心を開かず、本音を洩らさなかった山下清が、式場俊三によれば、「問答有用」(昭和31年、当時『週刊朝日』連載)でゲストとして徳川夢声と対談したときに《すっかり気をゆるした清は、めずらしく自分の世界の尺度で世間さまと語りあってみたのである。》《語りおわったとき、清は裸になっている自分に気がついておじけづいた。いままでいい気になってみては世間からしっぺ返しを食わされつづけてきたこの男は、このまま楽々すごせるはずはないと思ったのか、翌々日早朝、自分だけの世界にもどるために宿舎から姿を消してしまった》ということだ。この問答の梗概は『裸の大将一代記』に収録されているが、「兵隊の位にすると自分はどのくらい?」という執拗な質問責めで、さすがの夢声もかわすのが精一杯。それでいて、式場の言うように、清は饒舌に思うところを吐露している。これが夢声の芸、人柄であろうか。小沢氏によれば「兵隊の位」は流行語になったそうである。
式場は満州文藝春秋社時代に小尾十三『雑巾先生』(一九四五年)を担当した編集者だった。西秋さんは復刻版(中野書店、一九八七年)のしおりのコピーを同封してくれたので、式場の『雑巾先生』に関する回想も読むことができた。これは『花や人影』に追補すべき大切な一文である。深謝。
吉野源三郎『人間の尊さを守ろう』(山の木書店、一九五〇年、二刷、初版は一九四八年)をある人に贈られる。初見の渡辺一夫装幀本。「あとがき」に吉野が富本一枝に謝意を表しているので、調べてみると、山の木書店は富本の始めた出版社のようである(発行者は野口守栄となっている)。陶芸家富本憲吉夫人の一枝は『青鞜』に加わっていた尾竹紅吉で、彼女が雑誌『番紅花』(さふらん、一九一四年)を創刊するにあたって表紙画を富本に頼んだことがきっかけで二人は結ばれた。戦後、憲吉は単身奈良で作陶、残された一枝は大谷藤子の協力により出版社「山の木書店」を始めた。辰野隆他『シラノ物語』(一九四九年)、壺井栄『柿の木のある家』(一九五〇年)、横塚光雄『ジァンヌ・ダルク』
(一九五〇年)などを出版している。
吉野源三郎『人間の尊さを守ろう』、装幀=渡辺一夫
西秋書店より式場俊三の『花や人影』(牧羊社、一九八二年)が届く。早速「人や」の章を読み始めるが、めっぽう面白い。小林秀雄と山下清のあくびを対照させた「あくび」は傑作だ。「『文学界』出張校正室」は吉田健一の原稿が初めて活字になった当時の回想で、例の「はせ川」も登場する。
《健一さんが、前夜「はせ川」という飲屋で、はじめて酔っぱらった中原中也さんにあって、とてもこわかったという話をした。それについてはこっちの方が先輩なので、「中也さんが酔っぱらったら、目をそらしちゃだめなんだ、だまって顔をみていると、むこうの方でそっぽをむく」というと健一さんが「そんなの、つらいな」といいかけてギョッとした顔になった。おかま帽をかぶった中也さんが、ほんとに入ってきたのである。》
いや、面白い。編集者の文章のついでになるが、今日、ふっと手に取った『文芸臨時増刊・高橋和巳追悼特集号』(河出書房新社、一九七一年七月)に掲載されていた坂本一亀「回想」にも感心した。この雑誌は冬の大古本市に出品したのだが、売れずに戻ってきたもので、まったく読んでもいなかったのだ(高橋和巳に興味がなかったからである)。なんと、坂本は祇園縄手通の小料理屋「ちとせ」で昭和三十六年六月下旬に高橋に初めて会ったという。おお、「ちとせ」はこの日録でも記したと思うが、生田の実家である。親しい店の名前が出てくるとは予想しなかっただけに驚いた。そう言えば、女将さんから「多田先生(多田道太郎氏のこと)もよう見えてましたえ」と聞いた記憶がある。坂本たちは「ちとせ」の後もその夜を飲み歩き、高橋は長編『悲の器』を完成させることを約束する。坂本は翌日、富士正晴の自宅へ出向き、仲間たちと深夜まで語らい、富士の書斎に泊まる・・・・。それにしてもみんな昔はよく飲んだんだなあ。
そうそう、山田稔氏が高橋の回想のなかで《小説はうまいが評論の書けぬ作家がいてもおかしくないように、評論は書けるが小説はうまくないということは、その文学者にとってけっして不名誉なことではない。論ずることと描くことはやはり別のことなのだ。》と書いておられる。まあ、創作と評論を区別する必要もないのではないかと思わないでもないが、向き不向きはあるかもしれない。
式場俊三『花や人影』、装幀=川島羊三
川島羊三は井上靖『本覚坊遺文』、庄野潤三『早春』などの装幀も手がけている。
『さっぽろの古本屋』2号届く。鈴木翁二表紙画のおしゃれな装幀。巻頭にエッセイが並ぶのもいい。須賀章雅氏の「古川さんの冷蔵庫」は先日紹介した『古本えぞの細道』の古川実氏の追悼文で、しみじみと読ませる。目録の内容も多岐に渡り、充実している。ウンチクとしては、美術系はとくに無かったが、文学系には欲しいものがいくつかあった。