daily sumus デイリー・スムース

[林蘊蓄斎]

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2004年5月31日(月)ついり空、乱書いよいよ手が付かず

 Yさんがスムース文庫の『一読書人の日記1935-84』の著者をほぼ特定して知らせてくださった。どうやらすでに亡くなられているらしいが、住所の変遷などからして、まず間違いないであろう。日記の内容からすれば、捜索は可能だと思っていたが、Yさんの的確な調査には舌を巻く。原本の所蔵者に伝えたいと思う。(古書店シールを有り難うございました)

 地下室展の展示物を用意する。この梱包が終われば、部屋も片付くことになる。早いもので五月も終わりだ。地下室展まであと二週間。

 『京都古書籍・古書画資料目録』5号届く。世の中にはいろいろなものが売りに出ているものである。お金があれば、古画の軸物(772、773番あたり)など買ってみたい。若山牧水の短歌軸「かんがへて飲みはじめたる一合の/二合のさけの夏のゆふぐれ 牧水」35万円も、たいしてうまい字ではないけれど、なんとなくいい。室生犀星残雪』(竹村書房、1943年)が8400円で出ている。すむーす堂にずっと売れずにあったが、最近売れた。400円。

 昨日触れた間村俊一さんの俳句、とてもブッキシュでいいのだ。間村さんの雑誌『たまや』創刊号からいくつか引いてみると、「ふるさとは橋多き町西行忌」「星ひとつ亡びつゝあり蜆汁」「つばくらめ淫蕩の書は閉じて待つ」「行春や人妻の足十文半」「阿部定も遠き昭和の櫻かな」、というようなかんじである。


2004年5月30日(日)短夜や箱庭に虫の集いたる

 Caloさんでのトークショーは盛況だった。橋爪伸也さん、気さくな方。ペナントについての想い出とこだわりなどを語る。著者の谷本くんもまた熱く語り、どうやらペナントがライフワークになりそうだとのこと。途中で脱線した「画鋲」への着眼も面白い。「押しピン」と言うのは関西だけだと橋爪さん。トーク終了後、出版記念パーティとなる。橋爪さんのお兄さんにはいつもお世話になっているので挨拶しておく。拙宅の近くにお住まいだということが判明。http://www.calobookshop.com/

 扉野夫妻、Mさんと「夢の反射-山下陽子コンパクト・オブジェ展-」をのぞく。アトリエ箱庭(大阪市中央区北浜2-3-15忠兵衛ビル7F、tel.06-6203-5877、〜6月13日、オープン時間は必ず確認が必要です)。まさにコンパクトな会場で山下さんの作品をランプをかざしながら観賞する。ちょっと余所では味わえない感覚。店内には古書店「とらんぷ堂」の本棚もあり、これがなかなかの品揃え。壁には東郷青児のデッサンや書簡(山田伸吉宛!《丸木砂土先生によろしく》)。ワインがすすみました。

 扉野情報では百万遍のある古書店が名前を変えるということだ。まだ開店してそんなにならないのに、どうしてだろう。また、Mさんによれば、ガケ書房は元回転寿司店だったそうだ。回る本屋も悪くなかったかも(?)。「ブルータス」の6月15日発売号が古本屋特集だとか。Kのつく街に古本屋多しというこじつけで京都、金沢、倉敷などを取材してあるようだ。

 発売中の『季刊銀花』が間村俊一さんの装幀と俳句と鉛筆画を紹介している。執筆は堀江敏幸さん。また田中栞さんのイラストルポで全国の女性のやっている書店の紹介もある。とらんぷ堂、ちょうちょうぼっこ、上々堂など。


2004年5月29日(土)黒ばえのカーテン揺らす空箱ぞ

 sumusが一段落したのでアトリエと書斎の模様替えを行っている。手作り本棚も配置した。そこへ何を並べるか、段ボール箱を開けては迷う。忘れていた本が出るたびに手が止まる。

 夕方から大阪へ出る予定。午後5時から (受付は午後4時50分から)Calo Bookshop and Cafe において「ペナントとは、想い出そのものである」のトークショー。


2004年5月28日(金)影のびて百円洋書の熱さます

 昼前、山崎書店に寄って月の輪目録を渡し、しばらく雑談。「月の輪さん、おもしろいねえ」と感心しきり。そして「京都でもそのうちに何かおもしろいことをやりますよ!」という決意を表明あり。期待しましょう。

 もらったチケットで近代美術館の「COLORS ファッションと色彩」展を見る。言いたかないけどロクデモナイ。常設展のピカソのキュービズム時代の銅版画、長谷川潔室の『転身の頌』その他の木版画はよかった。

 水明洞書店の店頭、洋書が100円均一で多数放出されていた。アメリカの某大学日本校の図書館印が押してある。バブル時代の産物の残物か。“BLACK MUSIC IN AMERICA”J.HASKINS,THOMAS Y.CROWELL,1987、“FOLKSINGERS AND FOLKSONGS IN AMERICA”R.M.LAWLESS,GREENWOOD PRESS,1981、などを抜き出す。他には、高松でベケット特集の雑誌を買ったせいだろうか、自然に目についたので“BECKETT IN THE THEATRE”D.MACMILLAN AND M.FEHSENFELD,JOHN CALDER,1988、を。「ゴドーを待ちながら Waiting for Godot/EN ATTENDANT GODOT」がパリのオデオン座で1961年に上演されたとき(初演は1953年パリ)、舞台に立つ一本の樹はジャコメッティが制作したのだそうだ。

 三条木屋町上るの「月餅や」でよもぎだんごを買おうと思ったら、四月いっぱいで終了とのこと。うっかりしていた。冷凍よもぎは使わないから旬の時期だけしか出していないそうだ。ここは、わらびもちも絶品(和三盆を使ったあっさりとした漉餡をまるめて、本物のわらび粉のジェリーで包み、京黄粉をたっぷりまぶしたもの、ごっくん)。

 河原町三条上る二本目を東に入ってすぐ(ずっと行けば湯川書房)のビルの三階に最近できたトルコ料理店「イスタンブール・サライ」でランチ。なにやら京都初のトルコ・レストランだとか。あっさりした味付けだった。トルコのパンがおいしい。

 アスタルテ書房へ。12号を卸す。ここでも洋書づいて“AIN'T WE GOT FUN? - ESSAYS,LYRICS,AND STORIES OF THE TWENTIES”B.H.SOLOMON,THE NEW AMERICAN LIBRARY,1980、と“The Nude”KENNETH CLARK,PENGUIN BOOKS,1970、を。佐々木さんと雑談。何必館のサラ・ムーン展と京都芸術センターの「connect with 60'―記憶の断片集―」が最近見た展覧会ではよかったそうだ。後者は30日まで開催中。

 帰宅すると、書肆アクセス畠中さんよりメール。スムース文庫がもう売り切れてしまったので追加注文お願いします、とのこと。12号といっしょに受注していたのをうっかり忘れていた。申し訳ありません。日曜日に発送させていただきます。

 河内紀さんの『ラジオの学校』(筑摩書房、2004年)を読んでいると、晩年(1966年)のジョン・コルトレーンにインタビューした様子が描かれていた。ベトナム戦争について? という問いに対してコルトレーンは《私は戦争は大嫌いだ。それだけだ。》と答えたという。サッチモが「この素晴らしき世界 A Wonderful World」をベトナム兵士を送るために演奏していた映像をふと思い出した。映画「グッドモーニング・ベトナム」(バリー・レヴィンソン、1987)では爆撃シーンにこの歌がかぶせられていて印象的だった。とにかく誰もがこう叫べばいいのだ、《私は戦争は大嫌いだ》、ザッツ・オール。


2004年5月27日(木)衣更え白木の本棚ふし多し

 昨日の朝、南陀楼よりメールあり、《「sumus」発送、お疲れ様でした。昨日から月の輪目録がいつ届くかと、ポストの前をうろうろ。林さんは装幀者だからきっと早く届いたんですよね》。そうです。そして今朝、山本よりメールあり。《やっと昨日、月の輪とどきました。期待に違わずすごいですね。古書目録をこえてしまった感じです。これ以上いくと注文など出来なくなるのではないでしょうか。昨日は、正座して、読みました。それですぐ電話で注文したのですが、もう売り切れてました。高橋氏のことばは、「これ林さんです」ということでした。洲之内のハガキです。また見せて下さいね》。もちろん。


2004年5月26日(水)パラソルがふるふるページもぴりぴり

 『月の輪書林古書目録十三』、まとめて送ってもらうことになっているが、まだ1冊しか届いていない。それにしても、よくぞここまで手間ヒマかけて作り上げたなあ、と感心するほかない力作だ。李奉昌の予審訊問調書もたいへんおもしろく、小説を読んでいるような錯覚さえ起こす。さらに、かつて中央公論社の編集者だった直木賞作家綱淵謙錠の日記と芥川賞作家石川利光の青春日記がこれまた最高。どちらも自筆本から抜き書きして読み物に仕立てているのであるが、二人とも立ち寄った店(カフェー、喫茶店、レストランなど)の名前をちゃんと書き残しているところがじつによろしい。もちろん、みんな売り物だ。アナキスト古本屋・高橋徹が描き上げた「乱」の時代に脱帽である。

 岡崎の日記が更新されたので読んでいると、阿佐ヶ谷会で堀江敏幸さんに会った話が出ている。《帰りぎわ、できたばかりの「スムース」第12号を5册、川本さん始めに手渡す。堀江さんに渡すと、「ああ、これ、ぼく以前に買いました」と言われる。堀江さんが「スムース」を買っていた。そういえば、そんな話、林さんから聞いたっけ。堀江さん、この日「新潮」の締めきりがあったらしく、新潮社の人が三人もいたことでプレッシャーになったようだ。「いやあ、まずいですねえ」と。堀江さん、なんだかいい人》、いや初耳です。
http://www3.tky.3web.ne.jp/~honnoumi/frame.okadiary04.5.htm


2004年5月25日(火)あらたまる簾(すだれ)の内に朝うごく

 古書店シールが乏しくなってきたと書いたとたん、お二人の方からご寄贈をたまわった。せっかくの御厚意ですので、ありがたく使わせていただきます。

 『モクローくん通信』16号に宿題が出ている。1、『月の輪書林古書目録十三』のいちばんよかったページ、その理由。2、いちばん欲しい本(注文したしないにかかわらず)。この二問に200〜400字程度で答えよ。次号は「まるごと一号ツキノヴァ特集」だとさ。締切6月5日。kawakami@honco.net

 『彷書月刊』6月号。「ナナフシの散歩道」を読むと、田村さんの故郷・大津市鹿関町、そこの田村家に若き横光利一が逗留していたことがあるという。大正13年。その家で田村さんの父上が生まれた。さらに後年、保昌正夫先生が調査に訪れた、というので二度ビックリ。さすがである。

 国際美術館のSさんより手紙。今月中に大阪・中之島へ移転が完了するそうだ。11月3日に「デュシャンと20世紀美術」展でオープンするとか。ところが「デュシャンと20世紀美術」のタイトルが示すようにワンマンショーができなくなったらしい。信じがたい。


2004年5月24日(月)月の輪の影やさしくも持ち重り

 原画とレイアウト指定を送って、まるまる一年と少し。ようやくにして『月の輪書林古書目録十三 特集「李奉昌不敬事件」予審訊問調書』が仕上がった。今朝届いた。欲を言えば切りがない。到らぬところばかりが目に立ってくる。しかし、こうして出来上がったことを何より月の輪主人高橋さんのために喜びたい。その内容は、古書目録の歴史を塗り替えた、というか逸脱したとさえ思える、凄いものである。出品書籍・資料をもっとも活用したのは月の輪主人その人なのではないか。これからじっくり何日も楽しめそうだ。tel.03-3734-2696 fax.03-3734-2763


2004年5月23日(日)大島のひじき届いてしおりひも

 「sumus」第12号、の発送ひとまず終了。一息つく。

 雑誌『pen』(阪急コミュミケーションズ)6月1日号が「やっぱり楽しい、文字のデザイン」特集。土門拳『ヒロシマ』(研光社、1958年)の文字がすばらしい佐野繁次郎と、河野鷹思、花森安治の見開きはほんとうに楽しい。立花文穂もいい。それに較べて海外タイポはまったく新味がない。「ブルーノート」のジャケットもこんなのしかなかったの?

 最近、ちょっと注意を引かれたニュース。スーパードルフィーやフィギアで知られるボークス(京都市下京区)が竹内栖鳳の旧邸・霞中庵(右京区)を買い取って「人形の里」として4月にオープンさせたこと。これまで竹内栖鳳記念館として公開されていたが、所有者が倒産、休館していた。丸太町通りの西のはずれにある霞中庵の前を通るたびに休館後どうなるのか気になっていた。革新児栖鳳とスーパードルフィーならけっこう相性はいいかもしれない。

 昨日のキース・ジャレットで思い立って「VIENNA CONCERT」(POLYDOR K.K.1997)を聞いている。行くところまで行った感じかなあ。


2004年5月22日(土)誤植あり落ち込み深く夏籠(けごも)りす

 「sumus」第12号、の書評欄で井上明彦さんの著書『湊川新開地ガイドブック』(新開地アートストリート実行委員会、2003年)を『新開地ガイドブック』と紹介してしまいまいました。申し訳ありません。訂正してお詫び致します。これ、とっても楽しい本です。

 さらにお詫びいたします。「sumus」第12号、巻末広告「りーち」さんのメール・アドレスおよびURLが間違っておりました。訂正いたします。申しわけございません。 現在はこちらです。books-arts@riichi.com http://www.riichi.com/

 今号のインタビューゲスト、河内紀さんがキースジャレットとごく親しいそうですよ、とEDIの藤城さんが教えてくださる。とにかくすごいです。http://www.j-wave.co.jp/original/bodyandsoul/cgi-bin/prog2.cgi?ct=7&date=20040509

 古書現世・向井透史さんより掌本『古書の聞き耳』(胡蝶の会、2004年)いただく。『逍遥』に掲載された店番日記をまとめたもの。三冊目。部数が少ないのが難点だが、いつも書いているように、軽妙で味のある古書掌編集だ。興味のある方はダメモトで現世さんまで(k-gensei@nifty.com)。

 昼食のついでに、ヤマト運輸の事務所まで持参して、残りの封筒を発送してしまう。そこから、恵文社一乗寺店まで足を伸ばし、「模擬書店空中線書局」の展示を見る。思いの外、沢山の出品物に圧倒される。繊細で丁寧な造りの本ばかりである。『瀧口修造の詩的実験』(思潮社、1967年)や書肆山田の『草子』に強い影響を受けたというが、さらに先鋭な間さんらしい感覚で貫かれている。ケイブンシャ一乗寺店

 古書店シール、そろそろ乏しくなってきたので、検印紙に衣更え。これは山本の本から。


2004年5月21日(金)折れ傘の捨てられる大風一過

 「sumus」第12号、の発送用意に終日かかりきり。午後、扉野が手伝いに来てくれる。地下室展のフリペが届き、それを封入して、とにかく一段落。同人宛および大口納入先は本日発送。申しわけありませんが、定期購読のみなさんへは明日発送します。しばしお待ちください。クロネコ・メール便は数日かかる地域もあります。この点もご容赦ください。

 「sumus」第12号、の注文をしてくださった方が「稀覯本の世界」の「Salon De 書痴」という、噂にだけ聞いていたサイトを教えてくださった。../../www.geocities.co.jp/Bookend-Ango/4314/kakologue23.html
この日録の18日に書いた「天下無敵の札」の周辺だとか、筑摩書房から刊行されることになっている新・立原道造全集に関するせめぎ合い、などなど、このサイトは必見。おくればせながら、お気に入りに登録した。

 昨日の朝日新聞に豆本「おまめ」の柴田尚美さんが紹介されていた。先日、訪問した貸本喫茶「ちょうちょぼっこ」の隣りに店舗がある(そのときにはお休みでした)。「sumus」第12号の定期購読発送リストに柴田さんの名前を見たところだったので、お会いしたことはないが、親近感を感じた。

 金田一春彦さんが亡くなられた。印象深く覚えているのは「笑っていいとも」にレギュラー出演していたとき、「豚もおだてりゃ、木に登る」という諺についての質問があったときのこと。記憶しておられる方がいらっしゃるかどうか、この「諺」、反町隆史が織田信長に扮していた数年前の大河ドラマで、その信長が吐いたセリフにも出てきたのだ。「豚もおだてりゃ、木に登るというではないか、がはははは」とかなんとか。しかし実は、諺でも何でもなくて、タツノコプロのアニメ「タイムボカン」シリーズに使われていたギャグである。金田一先生はちゃんとそのことを指摘されていた。たしか一九八〇年代の終わり頃じゃなかったかと思うが、そのころから諺だと勘違いされていたようだ。それにしても信長の口から聞くとは思わなかった。


2004年5月20日(木)すれちがうドクダミ匂ってトラック便

 「sumus」第12号、完成しました。ざっと読み返してみたところ、大きなミスは無いようです、やれやれ一安心。発送準備にかかります。表紙は小出版社へのオマージュとして、敬愛する細川書店の細川叢書から借用しました。

 佐川急便で届いた15包みの荷物。仕分け作業をしていると、運転手が戻ってきて「メール便のシールが見えましたが、うちはもっと安くしますよ」とセールスが始まった。佐川美術館のチケットまで用意していた。現在、「sumus」の発送はヤマト運輸を使っており、300グラムまで160円、まあいわば正規の値段で発送しているのだが、佐川のお兄さんはかなりの割引値段を提示した。熾烈な争いである。郵便よりもまだ信頼性において劣るけれども(何度か届かないというトラブルがあった)、選択肢が増えるのはいいことだ。

 梱包の合間に「早稲田古本村通信」32号(http://www.w-furuhon.net)をナナメ読む。松本八郎の連載「早稲田の文人たち 第13回 加能作次郎(中編)」を読んでいると、《秋には『スムース文庫』の一冊として、『加能作次郎 三冊の遺著』(仮題)を出す予定です》とある。知らなかった。でも、楽しみに原稿(版下?)待ってます。

 マン・レイ石原さんより、マン・レイ展オープニング・レセプションのインヴィテイションが届く。6月2日だ。残念ながら出席できないが、地下室展(http://underg.cocolog-nifty.com/tikasitu/)のイヴェントに合わせて上京するので、展覧会はぜひ見たいと思う。7月10日には石原さんと飯沢耕太郎さんの対談も予定されているそうだ。興味のある方はぜひお出かけを。../manrayist/daybook2004-5.html

 『書肆啓祐堂誌〈黄金の馬車〉』8号届く。黒木まがりさんの「美しい本の話」に『MADAME BLANCHE』全17冊の写真が出ていて感動的。吉岡実の『液體』(自家版、1940年)、『昏睡季節』(自家版、1941年)もいい。http://www.keiyudoh.com/

 さて、月の輪書林目録、とうとう出来上がりまで秒読みに入りましたぞ。24日に長野の印刷所より発送だそうです。ドキドキします。


2004年5月19日(水)尿(いばり)させ、ほほけのげしの行方追う

 「sumus」第12号、いよいよ明日、到着の予定です。発送準備に数日かかります。しばしお待ち下さい。直販のご注文も受け付けておりますので、どうぞよろしく。

 Caloさんよりメール・ニュース、「ペナント・ジャパン」展関連トーク・イベント開催とのこと。5月29日(土)午後5時から (受付は午後4時50分から)橋爪紳也(大阪市立大学大学院助教授)・谷本研・三木学・近代ナリコ(ペナント・ジャパン執筆陣)の各氏が集合するそうだ。《リアルタイムのペナント世代とも言える橋爪先生をお迎えし、一回り年下の「ペナント・ジャパン」執筆陣がその魅力を語る》、会費1000円(税込・1ドリンク付)、定員30名(要予約)会場・ご予約先 Calo Bookshop and Cafe(info@calobookshop.com)。

 蒼穹舎より写真集三冊届く。楢橋朝子『フニクリフニクラ photographs 1998-2003』(2003年)、井上青龍『IRRESISTIBLE STEPS 1956-1988』(2003年)、小島一郎『hysteric Eleven』(2004年)。どれも見応えがある。楢橋さんのボーヨーとした目のつけどころがなんともおもしろい。小島一郎は1964年に39歳で死去した写真家。晩年の極端にハイ・キーな、文字イラスト・モードでコピーしたような作品がいい。今ちょうど、新宿の二会場で出版記念展覧会が開かれている。プレイスMおよび、小島のトランプ。

 山崎書店より『草の根』20号届く。津田青楓草稿1枚自画像貼り付け(25000円)に惹かれる。先日、現物を見たときには値段を訊くのがためらわれたが、これくらいになるのか。http://www.artbooks.jp/

 『みはる書房目録』43号(tel.03-3294-3444)。初めてもらった目録、おもしろい。名古屋豆本がまとめて出ている。春山行夫『月の出る町』にちょっと気持が動く。クセのある本の並びだ。

 山本よりメールあり。《「ガケ書房」に古本置くことになりました。「古書善行堂」(こしょぜんこうどう)オープンしました。いい本を出していきたいと思ってます。また見てやってください》、さすが、噂のガケ書房、これは必見。http://www.h7.dion.ne.jp/~gakegake/gakedex.htm


2004年5月18日(火)碧雨なり古書店さがすふるさとは

 しばらく郷里に帰っていた。義母が検査したり入院したりと、一週間あまり、あたふたと過ごしてしまった。ただ、忙中閑あり、というとカッコイイが、送り迎えていどにしか役に立たない男なので、時間つぶしに「ブ」をのぞいたり、雨中、南陀楼に教えてもらった讃州堂書店を訪ねたりした。

 栗林公園前の「ブ」では、先日の澁澤龍彦全集の端本がまだあるかと思ったが、さすがにきれいさっぱり売れていた。阿川弘之『志賀直哉』(岩波書店、1994年)上下二冊210円だけ拾う。この「ブ」はジャズのCDが案外と揃っていた。欲しいものもあったが、結局、階上のダイソー(100円ショップ)でバド・パウエルの安直ベスト盤200円を買っただけ。

 讃州堂書店はさすがモクローくん推薦の店。開店二十七年(現在地は十六年)だそうだが、まったく存在を知らなかったのは迂闊だった。文学・美術・社会科学・雑誌・紙モノ・郷土史など、幅広く取り扱っている。まずは『永田助太郎詩集』(近藤東・君本昌久編、蜘蛛出版社、1979年)を1500円で。これについては「sumus」12号で扉野が論じている。詳しくはそちらに譲るが、永田助太郎(1908-47)はたいへんおもしろい詩人である。和文・英文取り混ぜた言葉の洪水というか、機関銃というかんじがする。ほんの一例を「時間II」(初出『新領土』1938年1月号)より。

   Is it too early to have a cooktail?
   How about a drink?
  オオ 今シバシ マタレヨ! 今シバシ!オーTriton ヨ 僕ハ永遠ニ
   しやつきんダラケダ!ダメダ!!忘レナイデ水ニ流シテ。
  オオ空間モナク、時間モナイ、ソレハ話スコトモ不可能ナ寂シイ所、
   オー母ノ国、道ナンゾナイ、マダ誰モ歩イタ事モナイ、歩イテハイケナイ
   ソンナ道、bell ! オドカシツコナシニシヤウーゼ
  ソコハ実モアル花モアル カケロカケロ!!
     丁カ 半カ
     半カ 丁カ
  Oh! hell dive ! アア苦痛ヨ アア不満ヨ クソッ!

 また、少々傷んだ『文学時代』(1931年8月号、新潮社)を1500円で。これは表紙が佐野繁次郎なのでうれしい発見。文学雑誌というよりも戦後の男性週刊誌に近い感覚がある。例えば「巷の辞典」にいわく、

《◆プチ・エロ――プチ・ブルのプチへ、エロを加はへたものである。つまり小エロで、身体が発育し切らない少女を指して言ふのだ。もしくは、女があまり色つぽくない場合など、これである。だが、エロよりもグロの多い世間で、これには一脈の新鮮味が感じられはしないだらうか》。

 昭和6年の夏はこういう時代だった。「プチ」というのが、昨今、少女ことばとして「プチ家出」などと用いられていたことを思うと、不思議な感じがする。

 帰郷中に、金子兜太『放浪行乞 山頭火百二十句』(集英社文庫、1992年)を読了。『サラダ記念日』と同じぐらいマネしやすい俳句である。放哉ほどの絶妙な描写力はないが、その抽象的な単純さには魅かれるものがある。「秋風あるいてもあるいても」「もりもりもりあがる雲へ歩む」「山ふかくして白い花」「うつむいて石ころばかり」・・・熊谷守一の油絵みたいだ。だが、いちばん印象的だったのはその死に様。句集『草木塔』(八雲書林、1940年)が刊行された直後、当時住んでいた愛媛の一草庵に仲間が集まって句会を開いているとき、主は酔っぱらって寝入ってしまっていた。いつものことだと皆は散会したが、朝になっても起き出してくることはなかった。心臓麻痺だったという。

 で、あまり関係ないけれど、JR高松駅の周辺が大々的に再開発され、最近オープンしたあるビルの一角にラーメン街ができていた。そのなかに旭川「山頭火」が出店していた。ここはたいへんな人気店で開店以来の行列つづきらしい。当初、2時間待ちも当たり前だったというからビックリ。行列ぎらいの蘊蓄斎は神戸の「山神山人」でごく盛りラーメンを食べて満足した。いけます。

 以下は留守中に届いていた郵便物など。

 まず、内澤旬子さんの個展DM「本の世界のはじっこから」CRAFT碧鱗堂BOOKS、第一回展示会、5月13日〜6月1日、cafe NOMAD(文京区根津2-19-5、tel.03-3822-2341)《手にとって、読んで笑える本作りを目指しております》だそうです。

 『古書目録 ロードス通信』17号(tel.078-261-0250)。店主「ご挨拶」は間島保夫さんの追悼文。これが秀逸だ。間島さんが五車堂久保田さんを見舞うくだりは哀切かぎりない。《間島さんのどこをどう切っても本しか出てこないのはわかっていた》・・・

 『海鳴り』16号(編集工房ノア、tel.06-6373-3641)。巻頭、山田稔「ある冬の夜のこと――坂本一亀追想」は読ませる。坂本一亀は坂本龍一の父で河出書房の名物編集者だった。「ばかやろう!」というのが口癖だったらしい。坂本と山田の両人が互いに「ばかやろう」「ばかやろう」と怒鳴り合う(いたわり合う)光景が印象的に描かれている。「ばかやろう」は偶然開いた杉本秀太郎『パリの電球』にも登場していた。《「バカヤロウ。きさまは東京にきていて、なぜ、おれに会いにこねえのか。バカヤロウ」/だれかれの見境なく人をバカヤロウ呼ばわりするこの人には、高橋和己が小説『悲の器』を公けにした前後、しばしば京都で会い、上京して飲みあかしたこともあったが、例のバカヤロウにはいつも閉口した》。評伝に田邊園子『伝説の編集者 坂本一亀とその時代』(作品社、2003年)がある。

 『日本古書通信』898号、やっぱり川島さんだ。《三島本は買い気旺盛で札の強い若手の古本屋が複数いるから、久々に「天下無敵の札」を入れたところ、二番手は意外にも大ベテランであった》云々。総革装の『獣の戯れ』特別本に対する情熱である。このハングリー精神は何なのかなあ。


2004年5月8日(土)檸檬花の艶(なま)めきて蟻の登りくる

 玄関の小庭に伸びた草を引く。冬場に枯らしてしまったと思った月下美人に小さな芽が出ていて救われる。

 EDIの藤城さんより、福岡の喫茶店情報をいただく。福岡市文学館開館記念展「カフェと文学〜レイロで会いましょう」が一昨年行われていたことを知る。同じく「余は発見せり〜伊達得夫と旧制福高の文学山脈〜」なども興味深い展覧である。
http://toshokan.city.fukuoka.jp/bungakukan/html/bungakukan.html

 Caloさんより「ペナント・ジャパン in 大阪」開催のメール。5月24日(月)〜6月5日(土)、京都で見逃した方はぜひどうぞ。

 妻がはまっているアニメ「鋼の錬金術師」(TBS系、土曜午後6時、荒川弘/スクウェア・エニックス)につき合わされる。「人は何かを得るためには同等の対価を支払わなければならない」という等価交換の法則、このテーマが気に入っているんだそうだ。今年の第8回手塚治虫文化賞(http://www.asahi.com/tezuka/)にノミネートされたが、岡崎京子の「ヘルタースケルター」に大賞が決まって「なんでや〜!」と怒り爆発の妻であった。錬金術やホムンクルスが人気アニメの題材となるというのは、世紀末以来の安倍清明ブームからの流れを感じるし、また、イタリアでクローン人間がぞくぞく誕生(!)したというニュースとも呼応して、何か空恐ろしいものがある。この先、われわれは、対価としてどれほどのものを支払うことになるのだろうか・・・。「西行も桜の下から生き返り」ウンチク。

 明日からしばらくデイリー・スムースお休みです。再開は18日の予定。「sumus」12号もそのころには出来上がっているでしょう。しばらくお待ち下さい。


2004年5月7日(金)鞄さげ薔薇の蕾をいとおしむ

 [本]のメルマガ」176号から、うわさに聞いていたポプラ社の「古本道場」をのぞく。道場主・岡崎武志に作家の角田光代さんが入門するというスタイルで古書店めぐりを展開する。写真もたっぷり臨場感あるレポだ。(http://www.webpoplar.com/beech/

 山下陽子さんより「夢の反射―山下陽子コンパクト・オブジェ展―」のDM。5月24日〜6月13日、アトリエ箱庭(大阪市中央区北浜2-3-15忠兵衛ビル7F、tel.06-6203-5877)。コーティングにも凝ったうつくしいハガキだ。山下陽子さんのサイトはhttp://www1.odn.ne.jp/graveuryy/

 ケイブンシャ一乗寺店では「模擬書店空中線書局」が開催される。5月18日〜31日。空中線書局とアトリエ空中線の本が一堂に見られるそうだ。間女史は東上されると聞いた。

 散歩のときにすこし足を伸ばし、袋のデパートトミエ(丸太町通千本東入北側)で『ミカン ア・ラ・モード』および「sumus」用のポリエチレン袋を買う。たくさん種類がありすぎて、こちらで選ぶというわけにはいかないのが歯がゆい。


2004年5月6日(木)GWすぎればCDならぶ人

 水彩続き、まずまず。午後、すむーす堂の本をメール便にて発送する。

 『紙魚の手帳』(東京エディトリアルセンター、fax.03-3470-2075)26号届く。田中栞さんの新連載「四面書架」第一回「本の奥付は信用できない」がおもしろい。奥付にもケッサクな間違いがいろいろとあるものだ。田中女史は本業が校正だから、奥付に限らず《そこにある文字はすべて疑わずにいられない》という。お気の毒さま。なお、愚妻はこの雑誌が届くたびに「ざこのてちょうが来たわよ」と言う。バカ「しみのてちょう」だよ。多川先生、すみません。

 その愚妻が「あなた、そろそろ10にしたら? 今度は名前があなた好みよ」というので、MACお宝鑑定団をのぞいたら、《Appleが、6月28日から開催する「Worldwide Developers Conference 2004」において、Steve Jobs CEOによる基調講演を行い、そこで次期Mac OS Xである「Mac OS X v10.4 "Tiger."」をプレビュー披露すると発表していました》という書き込みがあった。Mac OS X のシリーズにはバージョンごとに、ジャガー、パンサーなど、動物の名前がついている。「タイガー」かあ、う〜んいい名前だ。考えてみるか。


2004年5月5日(水)桃の葉のうすき緑の反りぐあい

 午前中、漱石本の水彩つづき。漱石本といっても複刻版なので、もうひとつ思うような絵にならない。『鶉籠』(春陽堂、明治40年)の初版は十数万円、再版でも一万円前後はしているようだ。それとは別に古い文庫本をいくつか描く。

 『一冊の本』(朝日新聞社)5月号、金井美恵子の「目白雑録2/1」が痛快。目に余る日本人の愚かさについてこれぐらいはっきり、しかも的確に、ものを言う人がもっといてもいいだろう。アメリカのジャーナリズムがまったく機能していない(囚人虐待など去年から周知の事実だったらしい)など、他人事ではない、ポチのジャーナリズムでは困るのだ。

 午後五時に山崎書店へ。「第1回手作りArtbook展」の打ち上げパーティー。ビールでカンパイ、おそうざい、おにぎりなどをつまみながら歓談。とくに、フィンランド人の女性版画家トゥーラさんといろいろ話す(在日15年でニホンゴぺらぺらでーす)。お国には、ムーミンみたいな類の妖怪や妖精がたくさんいるのだそうだ。彼女も出会ったことがあるし、研究してもいるとのこと。学生時代にヒッチハイク旅行をしていて、アキ・カウリスマキ監督の車に乗せてもらった経験があるというので驚く。さらに美術学校の近くでカウリスマキ監督が撮影していたこともあり、映画を観ると昔の知り合いが出演しているのだとか。フィンランド人しか分からないようなギャグがちりばめられているらしい。

 また、例の活字を消してしまった本の出品者福本さんともお話できた。一冊まるごと摩滅するために二ヶ月を要したそうだ。ご苦労様です。他には、古雑誌などを材料にしてブロックを作り、その故紙ブロックで、巨大な壁や柱を組み上げるというようなインスタレーションもやっている。近々「山こま莊オープンアトリエ」5月18、22、23、29、30日、12時〜19時(京都市左京区北門前町486山こま莊、二条通を東大路から東へ一本目を南に入る)で彼女たちの作品にお目にかかれます。さらに『きのこる』(SPORE、http://www007.upp.so-net.ne.jp/soma/spore/)というケッサクなミニコミにも参加、福本女史に注目です。

 扉野、山本のすむーす堂出品本をここで受け取り帰宅。発送用意をする。中公文庫に人気集中。吉田健一『書架記』に7人。


2004年5月4日(火)五月雨小口のゆるみこころなし

 昨日の郵便物。中尾さんから個人雑誌『CABIN』6号。富士正晴「VIKING CLUB第一回集会に於いて行はれたる演説」はケッサクだ。山本が「書物随筆を読む楽しみ」、扉野が「空想の選択」を寄稿している。小沢信男さん、佐々木幹夫さん、松尾尊〓さんらの寄稿もあり、多士済々。

 小野先生からUBC目録の最終的直しと「関西洋楽のふるさと深江文化村/フォーラム・室内楽演奏」5月29日(http://www.gcenter-hyogo.jp/)のチラシ。《ロシア革命と第二次世界大戦の狭間の時代、スラヴ系音楽家たちが愛した「深江文化村」と「文化ハウス」は、関西洋楽界の旗手となる多くの音楽家たちを生み出す揺籃となったのでした》と小野先生が書かれている。

 『軟骨珍聞』127号。つげ師(つげ義春さんです)の写真がいいですなあ。

 〓(浜)田研吾氏より『はんなり。和多田勝』(私家版、2004年)。和多田勝は、おもに大阪で、テレビ、ラジオ、エッセイ、イラストと多方面にわたって活躍した。没後十年を機に発行され、年譜、参考文献も完備する。滝沢修、徳川夢声につづくまんじゅう本シリーズにカンパイ。

 「アンダーグラウンド・ブック・カフェ 地下室の古書展」(6月13〜15日、東京古書会館)の目録のために「sumus」12号特集「小出版社の冒険」展出品リストの版下を刷り出す。ようやく仕上げになる。


2004年5月3日(月)汗ふきふき本の重みがビアーの泡

 南陀楼、今日も大阪を巡るというので、くっついて行くことに。まずは梅田の新阪急ビルに新装開店したBook 1st.へ。TVで開店を報じていたとき、向かいにある旭屋書店の店長さんが、偵察した印象を「きれいな店ですね」と評していたが、それがすべてだと思った。褐色の書棚がシック。しか〜し、蘊蓄斎の本を置いてないようでは合格点はあげられません。とはいうものの、記念に、南陀楼も寄稿している『L magazine』(京阪神エルマガジン社)6月号を買う。「いい文字のある店は、いい店だ。」特集で、これがちょっとしたアイデア賞もの。巻頭がわれらの「スタンド」だ。

 口直しに(?)堂島のジュンク堂へ。さすがの品揃え。ただし「シーナ書店なのだ。」の棚はナンなのだ。シーナさんが売るんじゃなきゃ意味ないよ。現在、たぶん、新古書店の100円(ていどの)均一棚で見かける作家トップ3に入るのがシーナさんなのだ。これって、暴落した大型株みたいなのもので、今が「買い」なのかな(?)。ノア・コーナーに『朗読の日』が並んでいた。

 川を渡り、大同生命ビルの東横を南下して四番目の通り(大阪では東西は通り、南北は筋というらしい)の角のビル5F、「Calo Bookshop and Cafe」へたどり着く。ちょうど12時。日記にあったとおりの「ブーー!」というエレベーターだ。石川さんに挨拶するなり、「ミカン ア・ラ・モード、売り切れたんです」との報告を受け喜ぶ。ありがたきしあわせ。

 久家さんの写真展は終わって、展示スペースにはMILBOOKSの古書が並んでいた。スジがいい本です。スキもない(ちえっ)。そして、むろん、Caloさんの棚もなかなか見モノ。書物に淫していない感じがとてもいい。ゆったりとテーブル席を占領して、ハイネケンとパンのおつまみ(オリーブ・オイルにちょいと浸ける)を食しながら書棚を眺めるというのがとても気持いい。とくに人の往来でホコリが舞うような巨大新刊書店から逃れてきた身としてはビアーの喉ごしもひときわ良くなろうというもの。

 肥後橋駅から地下鉄四つ橋線に乗り、四つ橋駅下車5分。「貸本喫茶ちょうちょぼっこ」へ。階段途中、帰りがけの中尾さんにバッタリ。「古書市、分散してや」とぼやいて去る。その「おとなの古書市」開催中。あ、これ欲しい、と思ったら、貸本の棚だったりして、慣れるまでにすこし時間を要しました。本の趣味がいい。小池寿子『屍体狩り』(白水社、1993年)400円と、森拓也『おいしいアジア怪しい食の旅』(ワニ文庫、1999年)100円をゲット。本の営業のプロ、Kさんと合流、さらに南陀楼が『L magazine』の編集者女史を呼んだので四人で書物談義をしばし。エルマガは元気がいい。元気がよくて休みなしだとか。

 南陀楼は今夜東京へ戻るので、もう一軒、Kさんと本屋のハシゴ、こちらは帰宅。途中、ハービスプラザの地下2階「BURDIGALA」でパン・ド・ミ(山形パン)とパン・オ・セーグル・フリュイ(ライ麦パン)を買う。「ブルディガラ」とはラテン語でボルドーの意味だそう(たしかパリはリュテシア)。なるほど、ここのレストランにはボルドーのワイン・ボトルが並ぶ。ランチ(なぜかイタリアン)の味はサーフィン級。広尾、玉川高島屋にも出店あり。
 


2004年5月2日(日)薫風に頁の折れもゆれている

 昨日、大島なえさんより『本の話』5月号が送られてきていたのを開く。岡崎が「私説・文春文庫三十年史」を執筆している。文春文庫の創刊は1974年、「行(1)く(9)な(7)、良(4)い子よ文春文庫」と記憶せよとのこと、そのこころは・・・直接読まれたし。

 野見山朱鳥『忘れ得ぬ俳句』から、河童の画家として知られた小川芋銭の項を読む。「春の日を一杯に浴び画もかかず」、なるほどなるほど。

 妻が、四条大丸百貨店の地下出入口(阪急烏丸駅の東出口を出てすぐ)横に新しくできたヴィタメール(WITTAMER)という洋菓子店(“パティシエ、グラシェ、コンフィスール、ショコラティエ”と袋に書いてある、ベルギーのブランドだが、製造しているところは神戸)でブラウニー(ナッツとチョコの焼き菓子)を買って帰る。ケーキは高かったので見送ったそうだ。10ヶ入り1050円。なかなかおいしい。

 南陀楼、泊まりに来る。



2004年5月1日(土)メーデーは古書へ行進紙魚の列

 岡崎公園の市立美術館前ではメーデーの演説がにぎやかに行われていたが、みやこめっせ(勧業館)に入ると、こちらは別種の人種であふれていた。これまでになく大勢が開門前から長い行列を作っている。山本と「にとべさん」は前の方だ。そのずっと後ろへ並びに行くと、稲生平太郎さんにばったり。「山本さんの本読みましたよ、金箔書店というのを知らなくて、びっくりして飛んでいきました」。びっくりするほどじゃないと思うが、とにかく稲生さんは、相方のK大のK先生とともに、古書店という古書店に精通しておられるから、プライドが許さなかったのか、旺盛なる探求心である。

 10時少し前に「開門〜」となって雪崩れ込む。まずは絵葉書をチェック。そこへキタガワさんが来た、すごい資料を掘り出す方。蘊蓄斎も恩恵に与っております。さらに南陀楼綾繁が東京から。12時に待ち合わせる。扉野、岡崎にも会ったので、同じく。ケンショク「食」資料室の吉積さんにも逢うべくして逢う。資料室の引っ越しが終わって、平日のうち何日か、出ているそうだ。ここは何かのときには強い味方になってくれる食の本の宝庫。

 とにかく人が多い、買い物カゴがぶつかって、歩くのがまず一苦労。マンレイ石原さんにもお会いする。やはり本を作るときの用紙には苦心されているそうだ。印字上手、試してみるとのこと。人に気圧されて、とくにめぼしい収穫はなかった。岡茂雄『本屋風情』(中公文庫、1983年)、杉本秀太郎『パリの電球』(岩波書店、1990年)、野見山朱鳥『忘れ得ぬ俳句』(書林新甲鳥、1955年)各500円。あとで扉野から『高野素十句集』(書林新甲鳥、1953年)を100円で分けてもらう。

 産経新聞の◯氏と会ったので昼を誘う。入口のところで全員集合。うわさのK大のK先生が近づいて来て「デイリー・スムース拝見してますよ、あのペンネーム、××い名前ですな、わははは」と言って去る。中尾務さんも加わって総勢8名で昼飯に。◯氏は生田誠の同僚だったので、ひとしきり生田ネタで盛り上がる。昨日こっちに来た岡崎が三条の「ブ」で真鍋博の大判の画集を300円で買ったと言い出す。「な、なんやって!」と山本が声をうわずらせて驚く。あそこは山本のシマなのだ。

 ここで、先日ある人から探求を頼まれた中公文庫の書名を一座の強者どもに示してみた。文庫王・岡崎も名前のメモを一目見て「これは持ってないな」とつぶやく。×千円までなら出すと言うなり、みんなの目の色が変わった。1993年発行で、このへんが案外探し難いと、山本。誰がいちばん最初に探し出してくれるのか、楽しみである。

 中尾さんから杉本秀太郎さんのハガキ(コピー)をもらう。さっき杉本さんの本を買ったばかり、奇遇だ。このハガキで杉本さんが言及している太田黒元雄訳、ドビュッシィ著『ムッシュウ・クロッシュ・アンティディレッタント』(第一書房、1931年)を調べたいので、所在を探して欲しいと頼まれる。誰かに検索してもらったが、見つからなかったという(これは簡単にヒットした。ただし、国会図書館のみのようだ。古本屋では7000円付いているのが一件)。

 山本と河原町通りのBook 1st.(旧・駸々堂京宝店)を覗いてから、別れる。丸善の前を通ると、和書のバーゲン・セールをやっている。のぞかざるを得ない(?)。『原石鼎全句集』(沖積舎、1990年)が5250円だ。定価の三分の一。ただ、この句集の版面が気に入らない。森田一朗編『明治フラッシュバック3 ホテル』(筑摩書房、1998年)を840円でゲットして満足とする。『一冊の本』5月号を取る。高島屋の竹久夢二展へ。雑誌『若草』がずらりと並んでいる。いい展示だった。電車中『一冊の本』の杉本エッセイを読みながら帰宅。疲れました。阪神連勝で少し元気になる。