2004年7月31日(土)汗ふけど付箋ばかりが増えていく

 iPodでビル・クリントンの自伝を読める、いや、聞けるそうだ。実際、発売直後数分で何千ものダウロードが行われた。梅田望夫氏の日記にそういう記事が出ている。文章を耳で聴くというのはアメリカではかなり普及しているらしい。ウンチクもラジオを聴きながら絵を描くことが多いので、朗読番組というのは嫌いじゃない。印象に残っているのは、井伏鱒二の「黒い雨」、文庫で読んだときにはさほどとも思わなかったが、朗読で見直した(聴き直した?)。梅田氏は青空文庫などからダウンロードして自分好みに編集し持ち運べるiPod並にカッコイイ活字ビュアーが欲しいと書いておられるが、iPodに朗読コンピレーションを作るというのも悪くない。問題はコンテンツをどこから仕入れるか・・・。ちなみに大阪心斎橋にもアップル直営店がオープンするらしい。

 先日の麦書房『本』の紹介つづき。第四号では、品川力「織田作之助の手紙」連載が始まっている。品川所蔵の書簡類を公開。《杉山平一君にこの間心斎橋大丸で会ひました》《昨日、杉山君より来信、次に。「オダの小説読んだ。オダの口調にしたがへば、なかなか読ませる、詳しくは、家でよみ、つゞけて阪急でバスで、そしてどこかの橋の上でよみ終つた》(昭和十四年四月四日)などとあるが、杉山さんの読んだ織田の小説は「雨」(「青春の逆説」の原型)だろうか。または《ぼく、新聞社を止しました。吉本興業にはいり、アチヤコの脚本を書くことになり、近々漫才師アチヤコ氏と面接するつもり。自称エンタツことぼくとアチヤコ氏の面会は、胸たかなるものがあります。でせう?》(昭和十四年四月二十七日)などというのは面白い。新聞社というのは織物新聞社か。織田の年譜には吉本興業に入るということは見えず、日本工業新聞社に入社している。

 サッカーのヨルダン戦はハラハラさせられた。PK戦というのは分からないものだ。試合会場となった重慶は、かつて昭和十五年(一九四〇)五月十八日から九月五日まで七十二回にわたって日本海軍による無差別爆撃が行われたことでゲルニカなどとともに歴史に刻まれている。日本チームに対するブーイングも仕方がないだろう。昭和十五年夏といえば、織田作が『夫婦善哉』を創元社から刊行した時期にあたる。

 織田作之助『夫婦善哉』大地書房、昭22


2004年7月30日(金)トウキビの騒ぎに騒ぐ野分かな

 『書林』という古書目録を入手した。昭和二十九年、大阪桜橋、高尾彦四郎書店発行である。巻号の記載はない(下図)。表2に記された「古本屋気質」というエッセイが興味深いので紹介する。

 佐野昌一という見知らぬ客から注文が続き、三度目にやや高額な浮世絵を送ったところ、なしのつぶて。困ったなと思っていると、横溝正史から「私は海野十三の友人であるが御承知の通り海野は此程亡くなつた」、だから送ってもらった浮世絵は私が引き取ってもよいという内容だった。佐野昌一は海野十三の本名だった。高尾は「若し貴方が御引取下さるならば其代金は誠に僅少ながら海野様の御仏前にお供へ下さい」と返事をした。横溝は浮世絵を買い取り(1,800円だったそうだ)霊前に供えた。後日、江戸川乱歩から「来る日故海野十三君の忌に当り追悼会を営むべく候間是非貴下の御出席を賜り度此段御案内申上候」の挨拶状が届いたというのである。三人の作家が《一連の厚い情誼に囲まれて居る事を痛感》したと結んでいる。なお海野が死亡したのは昭和二十四年五月十七日。

 『扶桑書房古書目録』71号届く。武田麟太郎初期資料一括50万円。『塔』(塔社、一九二二年五月号)65,000円。『詩・現実』(武蔵野書院)全五冊揃、95,000円(これは淀野隆三編集だ)。伊達得夫の『ユリイカ』揃53冊、240,000円。『海』(中央公論社)揃181冊、380,000円などもある。ハア〜と眺めて終わり。

 何気なくテレビをつけると、高校野球の大阪大会決勝が放送されていた。桐蔭対PL。11回から見始めたが、12回に大雨が降り始め中断した。そこでミカンを連れて桂川へ散歩に出かけた。河川敷で遊んでいると、突如として大粒の雨が横殴りに降り始めた。這々の体で帰宅。野球は再開されていたが、まだ決着は着いていなかった。結局15回引き分け、明日、再試合となる。ご苦労さま。

 『書林』高尾彦四郎書店、一九五四年


2004年7月29日(木)限界は6分茹でよと夏パスタ

 最近のパスタは、どこでも細麺が主流だが、6分茹でとなると、まるでそうめんみたいだ。十数分は茹でる普通の太さがいいのだけれど、この熱暑、料理人までが茹で上がってしまう。

 町内会の役員として全面遊泳禁止の桂川を監視する当番の日。朝十時、桂大橋の東詰河川敷にあるテントに集合。花火の燃えカスを拾ったくらいで、あとは何もせずただ日陰に座っているだけ。『一茶俳句集』(岩波文庫、一九九〇年、新訂)持参でひまつぶし。「夏の雲朝からだるう見えにけり」

 なかで、一茶の「生残る我にかゝるや艸の露」が目に留まった。これは火葬場で亡父の遺骨を拾った朝の作だそうだ。昔はバーナーなんかないから、山辺で遺体を焼いて、翌朝、冷めた頃合いに戻って骨を拾った。だから朝露がかかるわけだ。与謝蕪村にも「骨拾ふ人にしたしき菫かな」という句があるし、万葉集にも「玉梓の妹は玉かもあしひきの清き山辺に撒けば散りぬ」(作者未詳)という、愛妻を火葬にしてその骨を山に撒いた男の歌がある。これだって冷めた灰を清き山まで運んで行ったわけだろうが、冷めるまで一夜を待つ気持ちって複雑だろうなあ。現代はハイ、一丁あがり!という感じだけど。

 火葬といえば、先日、バリ島のウブドゥ王家最後の王の最後の子供(94歳のおばあさん)の豪勢な火葬の様子が報道された。ところがバリで没後すぐに火葬を出せるのはブラフマナ階級かよほどの金持ちだけだそうで、庶民は一旦土葬にしておいて、金を貯めてから火葬を出すそうだ。五年か十年に一度まとめてやるらしい(バリ帰りの人に聞いた)。ただこれは費用の問題でなく、複葬(二度埋葬する、「もがり」と似ている)の習慣なのではなかろうか。沖縄にも洗骨という風習とともに複葬が残っているそうだが、バリとの連続性を感じさせる。逆に考えれば、すぐに火葬する支配階層は別の文化を持つ種族だったのかもしれない。エヘン、と思っていたら、葬祭研究所のページでちゃんと説明されていた。

 『一栄堂書店古書目録』51号。今回は巻頭にずらりと並んだトラック、三輪自動車、バスなどのカタログが圧巻。値段も相当いいが、これは欲しくなる。ひとつ発見、昭和九年に『殺す人、殺さるる人』(沢田順二郎、大誠堂)というタイトルの本があったこと。

 例によって妻が録画したウッディ・アレンの映画「マンハッタン殺人ミステリー」(1993)を見てしまう。ダイアン・キートンとの中年夫婦のコンビがミステリー仕立てのドタバタを演じる。二人は「アニーホール」(1977)そして「マンハッタン」(1979)以来の共演とか。ずっこけギャグ連発だが、脇も良く、最後まで引っ張る。古い映画館や安ホテル、随所にジャズの名曲を織り込んだマンハッタン映画の佳作。76点といこう。

 梶井基次郎『城のある町にて』創元選書、昭16二版


2004年7月28日(水)月の海 空に溶け入る宵だるき

 ミカン ア・ラ・モード PART3』が完成しました。いよいよミカンがわが家にやってきた頃まで遡ります。神戸での幼きミカンの日々、友だちワンコもわんさか登場。絵はがきセットもあるよ。

 松本八郎より関口安義『悲運の哲学者―評伝藤岡蔵六』(EDI、二〇〇四年)届く。和辻哲郎に学者生命を絶たれた秀才藤岡蔵六の生涯を追う。芥川龍之介の友人調べがここまで徹底して一冊になるというのもちょっとすごい。造本はいつもながらのEDIらしいシンプル・リッチで読みやすい。

 『編集狂時代』の『頓智』失敗談のあたりを読む。創刊号は12万部刷ったそうだ。実売6万5千部。二号が実売4万、三号が1万7千、四号が1万2千・・・、十号で終刊になった。累計赤字は粗利益ベースで6千万円。創刊号から数冊はウンチクも買ったが、はっきり言って面白くなかった。「花も実もある本屋さん特集」くらいか、印象に残るのは。《しかし、ぼくはそれほど、この挫折で落ち込んではいなかった》そうだ。編集者はこれぐらい強気でなきゃやっていけないね。

 大島なえさんの「ほんの手帖」13号。手書きとパソコン組の文章がええかげんにレイアウトされた不思議なペラ一枚。怖いモノ見たい人はnae58625@yahoo.co.jpまで。ほんの一句「宵山の囃子からりん涼ひとつ」はいいじゃないですか。

 早稲田古本祭の目録『古本共和国』用に「sumus12」広告版下を製作。以下情報は「早稲田古本村通信」第39号より。

■『古本共和国』予約受付開始
早稲田青空古本祭(10月1日〜6日)の記念目録『古本共和国』の予約受付を開始します。メルマガ読者の方の予約分は古書現世で受けます。定価100円+送料180円の計280円分の切手を下記へお送りください。
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2−16−17 古書現世内『古本共和国』予約係
■記念目録『古本共和国』19号 特集記事約20頁 古書目録約90頁 定価100円(税込)9月14日発行予定(書店での販売は17日ごろから)
特集・早稲田古書店街即売展史2 BIGBOX古書感謝市
昨年に引き続き、早稲田の古本市の歴史を振り返ります。今年は30周年を迎えた高田馬場駅前BIGBOXでの古書感謝市の歩みを古書店主のインタビューで振り返ります。
【目次】

◎「古書感謝市」誕生/五十嵐智(五十嵐書店)、日野原一壽(金峯堂書店)

◎岡崎武志さんのイラスト・文で綴るBIGBOX思い出話

◎6階以後/飯島治昭(三幸書房)、東正治(鶴本書店)

◎早稲田古書店街即売展史年表

 ル・サージュ『ジル・ブラース物語』高桐書院、昭24


2004年7月27日(火)キイウイの軒に宿借るにわか雨

 『モクローくん通信』18号届く。高知のタンポポ書店の店主片岡千歳氏が桑島玄二宛献呈署名入り島尾敏雄『単独旅行者』(真善美社、一九四八年)を桑島からもらったという記述あり。桑島玄二については『sumus』12号参照。そして、いよいよモクローくん大感謝祭が古書ほうろうで7月30日から始まるそうだ。初日には河内紀さん、佐藤真砂さん、向井透史さんら出演のトークイベントが開催される。詳しくははてなダイアリー・ナンダロウアヤシゲな日々などにて確認されたし。

 中野書店在庫だより『古本倶楽部』158号。『檸檬』(武蔵野書院、一九三一年)初版函付210,000円か・・・。山口誓子短冊「野分過ぐ木の扉のノックするどくして」(31,500円)。取り急ぎ、藤沢桓夫『大阪手帖』(三島書房、一九四六年)を注文。第一藝文社の天野忠が二冊出ていたのも気になった。

 「仏ワイン、脱低迷へ・・・」という記事(朝日7/26)あり。そういえば最近、まったくフランス産ワインを買わなくなった。だってまずいもの。もっぱらチリとオーストラリア。安くてそこそこいける。どうもバブル期の頃からフランスワインは名声に胡座をかいていたようだ。超高級はいざ知らず、低価格帯のワインがさっぱり。単純に宣伝費用をかけるだけではダメだろう。おいしくて手頃なワインを作ればいいのである。1980年にボルドーにしばらく滞在していたが、ほんとに美味しかった、ボトルを持参して樽から量り売りしてもらうようなヴァン・ド・ターブルでさえも。

 中島らも死去!

 井伏鱒二『夏の狐』三島書房、昭22


2004年7月26日(月)おめでとうが嬉しくない夏の朝

 本日はウンチクの誕生日である。まったくおめでたくない。しかし妻と食事に出かけた。三条川端東南角(以前はバス・ステーションだったところ、地下は三条京阪の駅)にKYOUENというレストラン街のようなものができている。広く庭をとって二階建てのバンガロー風な建物が並んでいるので、ちょっと変わった景観だ(デザイナーはジェイソン・P・バンヘリック)。そこのカノビアーノ京都でイタリアン。前菜は野菜取り合わせに生ハム、モッツァレラ(野菜は七〜八種類、新鮮で美味)、次が豚頬肉と冬瓜(うまく味が浸みていた)のパスタ。メインは骨付き羊肉(オーストラリア産)を炙ったものにアスパラと茄子添え。ここまでは十分に合格点、とくに野菜がやや固茹でだがうまく調理されていたしバゲット(全粒粉系の細身)もおいしい。ところがドルチェがイマイチ(見かけだけ)、エスプレッソと紅茶は平凡にすぎる。シメが弱いにしても、全体には満足。一人3,150円。ついでに言えば飲物はウンチクはビール、妻はキールを所望した。水は無料(ちなみに、なんばパークスのスッド・ポンテヴェッキオではタダの水はなく、ミネラルを必ず注文させられる。味は上サーフィン級。食卓が狭く落ち着かないのが難点)。

 妻と別れて三条のBOOKOFFのぞく。湯川書房、三条の十字屋と寄って、丸善で松田哲夫『編集狂時代』(新潮文庫、二〇〇四年)を買ったときに山本とバッタリ。海文堂書店のフェアーの様子などを聞く。予想以上の盛況で、店長の福岡さんは飲み会でビールがすすんだとか。希少バックナンバーはあっという間に売り切れたそうで、『sumus』の実力を再認識したそうだ。

 はてなダイアリー・ナンダロウアヤシゲな日々の25日に山之口泉『父・山之口貘』(思潮社、1985年)の引用があり、《私が二年になった頃から、毎日決まった時分に家を出て池袋に向うのが、父の習慣になった》云々とか。これって戦前の行動とまったく同じじゃないだろうか。戦前も貘さんは池袋西口を根城にしていた。西口の喫茶店横丁で原稿を書き、沖縄酒房などに移動という習慣だったようだ(宇佐美承『池袋モンパルナス』集英社、一九九〇年)。

 湯川さんから扉野が掘り出しものをしたと聞いたので、夜分に電話する。永田耕衣の句集『吹毛集』(近藤書店、一九五五年、自筆句入り)を『関西赤貧古本道』二冊分で(!)。「鮒釣る人水を釣る人寒風吹き」「水を釣つて帰る寒鮒釣一人」「無花果落葉個々定位置に茫然と」などが好みとか。また、9月に恵文社一乗寺店でモダンジュース共同企画の「鴨居羊子・細江英公 ミス・ペテン」(9月14日〜27日)開催予定。ナリコさん解説執筆中とのこと、楽しみです。

 ルナアル『葡萄畑の葡萄作り』岸田国士訳、高桐書院、昭22


2004年7月25日(日)天井扇ページをゆらす書店あり

 はてなダイアリー・ナンダロウアヤシゲな日々に海野弘さんが『月刊みんぱく』ので『sumus』や『BOOKISH』のことを取り上げてくださっているという記事あり。『馬込文学地図』(中公文庫、一九八四年)の解説を海野さんが書かれているとも。さっそく参照してみると、《臼田坂下というのは不思議な通りで、それほど長くはないのに、古本屋が二軒もあり、少年の頃、私はいつも通っていた。その一軒の山王書房のご主人は、この本にもちらりと出てくるが、馬込文士村の生き字引のような人で、文士たちの本や色紙をいつも飾っていた》とある。山王書房のご主人というのが先日(6/30)ここでも取り上げた関口良雄さん。

 洲之内徹について調べているときに大森山王のあたりをずっと歩いた思い出がある。とにかく坂が多く、外国人が古くから住み着いていたせいか、洋館や教会も多い。山王書房はむろんとっくに閉店していたが、海岸側の商店街にわりといい古本屋さんがあり、野口冨士男ら編集の雑誌『風景』を数冊買ったことを覚えている。

 高田渡のCD「ごあいさつ」、自宅で聴き直すと、悪くない。「生活の柄」の歌詞は山之口貘なのだが、かなりアレンジしてある。初めて原詩を読んだときには、高校時代に耳に馴染んでいた歌詞とかなり違うので驚いた。例えば、「浮浪者」は「浮浪人」だし、《ねむれないのです》は《ねむれたのでもあつたのか!》(『山之口貘全集』思潮社、一九七五年)という感嘆符付きの反語になっているのだ。教科書で習った『レ・ミゼラブル』があんなに長大な作品だったと知ったときと同じようなショックを受けた。

 『彷書月刊』8月号のマンガ「ブンブン堂のグレちゃん」に三月書房そっくりの店が登場していた。そういうご主人であって、そういう意味でもユニークな書店である。古い扇風機が天井に取り付けてある。

 池田小菊『かがみ』全国書房、昭17


2004年7月24日(土)小包と郵便受けの蝉の殻

 木村徳三氏には『文芸編集者 その跫音』(TBSブリタニカ、一九八二年)という著作があると西秋さんが教えてくれた。調べてみると、この本は大空社から『文芸編集者の戦中戦後』として一九九五年に再刊(『文芸編集者その跫音』の2版)されているが、両著とも現在購入可能のようである(TBSブリタニカは阪急コミュニケーションズに変わっている)。阪急コミュニケーションズと言えば、《旧青山ブックセンターの新宿店、ルミネ2店は8月1日(日)にブックファーストとして再オープン。取引は大阪屋》という情報も西秋さんから。

 『彷書月刊』8月号届く。特集「明治人のアジア体験」。長谷川郁夫さんの連載に『小沼丹全集』(未知谷、二〇〇四年)を編集した高松政弘さんの話が出ている。筑摩書房時代には『清水町先生』、みすず書房に移って『珈琲挽き』『福寿草』を編集し、未知谷で全集にとりかかった。作家というのはこういう人たちによって存在し続けるに違いない。梶井基次郎の刊行に生涯奔走した淀野隆三もそうなのだ。「ナナフシの散歩道」に先日のsumusフェアーの報告あり、楽しかった一日が蘇った。

 『寺山修司倶楽部』会報15号(東京都杉並区永福2-17-12 楠山方 寺山修司倶楽部)届く。シナリオ「足利尊氏」掲載、『演劇実験室万有引力』12号、寺山修司記念館チラシ、最近発表された寺山関係の記事コピーなどなど同封。寺山ファンは永遠に不滅です! 作家というのはこういう人たちによって存在し続けるに違いない。

 デユマ『三銃士』生島遼一訳、世界文学社、昭23 


2004年7月23日(金)汗ポタリポタリグラシン縮緬に

 昨日の庄野の原稿についての随想だが、横光と川端がそんな原稿を本当に書いていたのかどうか、『横光利一展』(西武美術館、一九八二年)と『横光利一と川端康成展』(世田谷文学館、一九九九年)の図録で比較してみた。ところがどうだ、つぶしが多いのは横光の原稿であって、川端の原稿は、掲載図版からのみ判断すれば、あまり直しのない、読みやすい原稿である(戦後はもちろん、「禽獣」「水晶幻想」あたりもさほど直しはない)。対して横光はつぶしも書き加えも多く、「旅愁」など惨憺たるもので、ある種、芸術的とも言える代物。では、そもそも庄野の原稿はどうなのか? 今年の七夕目録(532番)に出品があった。これといって特徴に乏しい書きぶりである。

 庄野でもうひとつ、『本』3号に木村徳三「「人間」創刊の思い出から」というエッセイが載っているが、そこに庄野が登場している。《永年勤めていた改造社が解散させられたために都落ちした私》のところへ、昭和二十年九月に川端康成から電報が届く。鎌倉に出向いて川端に会ってみると、鎌倉文庫から雑誌を発刊するから編集を引き受けてくれという依頼だった。好きに作っていいというお墨付きをもらった木村は《籍を置いていた丹波市の出版会社養徳社の社長と、同社に私を推薦してくれた庄野誠一氏に私の決心を諒承してもらって辞職すると、一意この『人間』という名の新しい雑誌の編集に取りかかった》のだそうである。甲鳥書林に関連して庄野について触れたので(拙著『古本デッサン帳』参照)、ついつい目が留まる。

 あまりにも暑い。マイルスのCD「クールの誕生 BIRTH OF THE COOL」(東芝EMI、1995、元盤は1949〜1950録音)を聴くも効果なし(あたりまえ)。

 川端康成『高原』養徳社、昭20


2004年7月22日(木)夏木立、自転車にのって立ち読みへ

 『本』の紹介つづき。2号。庄野誠一「作家の原稿」、昭和の初めには原稿用紙の見本を持って作家を訪れ注文をとって歩く人がいたということである。『文藝春秋』などの編集者だった庄野は横光利一の原稿をたくさん所持していた。横光は原稿に書き込みが多いのが特徴で、さらに初校ゲラにもものすごくアカを入れる作家だった。ところが所蔵していたそれら初稿の原稿用紙は誤って戦争中に風呂の焚き付けにしてしまった(空襲で焼けたというならともかく、何とももったいない!)。他に、川端康成の原稿は消しが多くて、活字にすると半分ぐらいになった、宇野浩二は几帳面にマスを埋めていたとも書いている。

 と、ここでEDIの藤城さんよりファックスが入った。『週刊朝日』7月30日号に内堀弘さんが松本八郎著『エディトリアルデザイン事始』(朗文堂、一九八九年)を取り上げて活字について面白い話を書いているのを知らせてくれた。そういえば、『エディトリアルデザイン事始』には「四百字詰原稿用紙の話」という一文がある。結論だけ引けば、明治以降、活版の普及とともに、コスト計算をしやすくするため、活字の文選箱(五号活字20本×40本入り)を基準にしたところから、四百字詰原稿用紙が考案された、というもの。活字の使用本数で印刷コストが決まるわけだ。

 なお福岡市中央区の福岡ビルの丸善で今日からEDIフェアーが開催されている。EDIの出版物はほぼすべて入手可能、「サンパン特別号」を先着50部無料で配布、場所は2階の「フェアスペース」で、8月中旬まで開催の予定とのこと。お近くの方はぜひのぞいていただきたい。

 『火曜日』79号(火曜日の会、神戸市長田区池田上町25 安水方)が送られてくる。「詩的雑談 西脇順三郎と竹中郁」と題された飯島耕一・安水稔和両氏の対談が抜群におもしろい。飯島氏が西脇に初めて会ったのは『滝口修造の詩的実験』(思潮社、一九六七年)の出版記念会で、その後自宅に招かれ、酔っぱらった西脇が雅楽の踊りの真似をしたとか、改めて招かれたときには「六時間いなさい」と命じられて六時間、西脇の駄洒落や笑い話につき合ったとか。また、滝口存命中、飯島氏はジャン・コクトーを読まなかった(滝口はコクトーを認めていなかった)。没後、翻訳を頼まれて読んでみるととてもおもしろいので感心した、などなど。

 そうそう、帰郷中にレンタルビデオで見た「北京ヴァイオリン」はなかなかのものだった。物語的には、こんな映画どこかにあったな、という感じはぬぐえないけれども、チェン・カイコーの演出はさすが。何より中国の発展の様子が具体的にはっきり分かった。

 横光利一『雪解』養徳社、昭21


2004年7月21日(水)古本屋だったなと思う八百屋あり

 愛車のバッテリーがあがってしまった。というのは、一昨日、帰洛の途中、天王山トンネルを出てライトを消したつもりがスモールライトが点きっぱなしなっていたらしく、駐車した後も気づかず、一日半ですっかり電気がなくなってしまった。JAFにコールして三十分以内にはエンジンがかかったが、ちょっと遠出しようということで、今日は京都の町中まで出かけた。

 まず岡崎公園の山崎書店に寄ると、なにやら夏休みとかで、店を閉めて模様替えを行っていた。丸太町川端のギャラリー恵風で畠中光享・平岡靖弘二人展をのぞいて、東大路の叡電元田中駅を少し上がった右側にあるタケリア(タコス屋)パチャンガで昼食。ランチセットはタコス2または3種、サルサ、ミニサラダ、飲物(マテ茶、コーヒーなど、暑いときにはウイルキンソン・ジンジャーエールがgood)。これで680〜880円。繊細な味です(tel.075-712-7891)。

 白川通りのガケ書房へ。石の外壁ですぐに見つかる。山本善行堂はなかなかの品揃え、値段もうまいところを衝いている。店内にはチャールズ・ブロンソン(先日死去)の写真が飾ってあったり、なつかしアイテムと今時な品々が雑多に、しかし選び抜かれて配置されている感じだ。こういう店にありがちなイヤミなところがない。で、高田渡のCD「ファースト・アルバム ごあいさつ」(ベルウッド名盤コレクション)を買ってしまう。元盤は一九七一年。高校時代、友達に借りて何度も何度も聞きました。すぐに車のプレイヤーで再生。少し残念だが、若き日の印象は蘇らなかった。こんなに端正なロマネスクな感じだったのかなあと不思議に思う。でもイノダのコーヒーはちょいといいね。

  湯川秀樹『半生の記』甲鳥書林、昭30


2004年7月20日(火)熱さ身をつらぬく様に蝉時雨

 留守中の最大ニュースは青山ブックセンターの自己破産申告である。新文化に六本木店の撤収作業の様子がアップされている。個展の度によく通った店なので(たいして買わなかったけど)、とても残念だ。

 ボビー・フィッシャー(チェスの元世界チャンピオン)が成田の入管で拘束されたという報道もあった(朝日7/16)。一九九二年に内戦下の新ユーゴでアメリカ政府の警告書を文字通り唾棄して宿敵スパスキーと対戦したことはまだ記憶に新しい。お元気そうで何より。

 帰郷する直前に届いた書物雑誌『本』(麥書房、一九六四〜六九年)を田舎まで持ち帰って、暇に任せて読んだ。全24冊のうちの17冊だけ入手(じつは全揃いが先日の神田古書会館のsumusフェアーで行われた振り市に出品され、南陀楼とY氏の競り合いになって15,000円でY氏の手に落ちたという記憶が鮮明だったのだ)。10号までが並製の針金綴じ64〜96頁、11〜17号は中綴じ16頁。簡素というか粗末な造りだが、内容は素晴らしい。

 創刊号、平野謙「『大学左派』のことなど」に松田伊之介が編集発行者だった雑誌「イスクラ」のことが触れられていて、とても参考になった。前号「サンパン」で松田伊之介については藤沢桓夫が書き残している他何も分からないと書いたので、新しい情報である。他には佐々木桔梗「私の仕事」も面白い。《京都での私の学生生活は、最初の秋を迎えた或る日、四条大宮のM書店で堀辰雄の『ルウベンスの偽画』を入手したことによって、完全に切換えられてしまった》。そして雑誌『近代生活』(近代生活社、一九二九〜三二年、39冊)の細目連載がまた何とも労作。

 野見山朱鳥『続忘れ得ぬ俳句』書林新甲鳥、昭30
  


2004年7月19日(月)うろこ雲ふるさとの空も彼方へと

 京都にもどる。やれやれ、疲れた。帰郷する直前、わがアトリエのエアコンが作動しなくなった。そのままにして帰郷、すると、妻の実家に泊まったとき、やはりエアコンが壊れてしまった。1994年以来という猛暑の夏になんたること。翌95年には阪神淡路大震災があった。十年ぶりの猛暑だそうだ。来年、いやなことが起こらなければいいが・・・。

 留守中に日本著作権教育研究会から著作物使用許諾書などが届いていた。拙著『喫茶店の時代』(編集工房ノア、二〇〇二年)の一部が今年の大阪産業大学の入試問題に使用されていたそうで、その問題をCD-ROMおよびインターネットに掲載したいということらしい。許諾しますが、それにしても、入試問題に使われるとは予想外だった。教科書的にならないようにというのが著作時の一つの目安だったから。

 神戸、海文堂書店での汗だくフェアーははてなダイアリー:ナンダロウアヤシゲな日々によれば、なかなかの盛況だったらしい。しかし、そのときにどうも締め切りに関して不穏当な発言が同人から飛び出したようで、これは聞き捨てなりませんな。海文堂書店のホームページにサイン会の写真がアップされている。

 『APIED』5号(アピエ社 京都市北区上賀茂今井河原町5-6)が届いていた。今回はサン=テグジュペリ『星の王子さま』がテーマ。いろいろな人たちがこの本について語っている。石神井書林内堀弘さんの短いエッセイが逸品。和田ヒロミさんの短編小説のような作品も印象に残る。ウンチクはこの書名が誤訳であることを今更ながら書き立てている。LE PETIT PRINCE がどうして「星の王子さま」ってことになるのか?(うまい邦題だと思いますが、正しい訳ではないでしょう)。この著作は翻訳権を岩波が独占所有しているのか、完訳としては内藤濯訳でしか読めないようである。こういう物語こそ、いろいろな人の訳で読まれるべきではないだろうか。

 そうそう、留守中に、にとべさんがデイリー・スムース6月分を探し出してくれました。感謝感激です。カエさんも俳句を保存しておいてくれました。お礼申し上げます。再構築しますので、少々お待ちを。

 三宅周太郎『演劇手帳』甲文社、昭22


2004年7月9日(金)夏の道、蜂と行く手を譲り合い

 明日からよんどころない事情で帰郷しますので、19日までお休みです。

 郷里は香川県の東かがわ市白鳥(しろとり)。去年4月から市になった。それまでは大川郡白鳥町、香川県の東部、徳島との県境付近になる。讃岐といえばうどんの本場、しかし讃岐でも本当の本場は県中部から西。最近ではうどんガイド本もいろいろ出ており、われわれより、よほど観光客の人たちの方が詳しいようだ。

 白鳥では麺工房「六車」(むぐるま、白鳥に多い姓)という店がおすすめ。なかでも「釜ぬきうどん」がやみつきになる一品。ゆでたてのうどんを丼に入れ、生卵、削りカツオ、ネギをのせ、その上からだし醤油を好みの量だけぶっかけてかき混ぜる、あとはツルツル掻き込むだけ。大、中、小(それぞれ3玉、1.5〜2玉、1玉)とあるが、中が手頃。

 あとは国道沿い三本松高校の入口交差点脇にあるラーメン屋「吾割安」(ごわりやす、なおこのサイト地図で示されている位置は間違っているので要注意)が行きつけの店でイチオシだ。残念ながら、古本屋はない。ちょっと前まで「ブック・マーケット」三本松店があったのだが、閉店してしまった。さびし〜い。

 遠藤哲夫さんの『汁かけめし快食學』(ちくま文庫、二〇〇四年)が届く。ガツガツと読める楽しさ。著者は料理の本質が解っている。汁かけに徹底してこだわった料理本案内にもなっており、本好きをも満足させるガイドブックとしても重宝。やはり遠藤さんの少年期の体験を通してつづられたナス汁ぶっかけが印象的。カレーライス探求にも深いものがある。ちなみに「ネコまんま」アンケートだが、昭和31年香川県高松市生まれの妻は醤油と鰹節をかけたものと認識していたそうだ。

 『ifeel夏号(紀伊國屋書店)届く。特集「いまもういちどやさしく学ぶ構造主義」。《浅田彰さんの『構造と力』が出て「ポスト構造主義」が時代のキーワードとなったのがほぼ二十年前》という発言から始まる内田樹×鈴木晶対談、他。一九八五、六年頃『構造と力』が神戸平野の古本屋山田書店の棚に差してあったのがいまも鮮やかに思い出される。買わなかったけど、もちろん。構造主義というのは主義というより道具だろう。道具は思想(これ禁句だそう)の形象化かもしれないけれど。欲を言えば電子頭脳や遺伝子工学の発展とからめたような論考がひとつ欲しかった。「構造」というのは工学的な用語、発想である。

 また64頁には南陀楼綾繁インタビューも掲載されている。「はてなダイアリー:ナンダロウアヤシゲな日々」に7月11日(日)午後3時から◆「sumus」&「幻堂出版」真夏の ドサクサ・汗だく サイン会に関するいろいろと耳寄りな情報あり。

 森田草平『夏目漱石』甲鳥書林、昭18


2004年7月8日(木)七夕に黒白赤黄の書物あり

 ホームページをあれこれリビルドする。6月のデイリー・スムースがほとんどなくなっていることを知る。とほほほ。こまめなバックアップの必要性を痛感。ウエッブ上にアップしてあったデータまで消してしまった、ドジ(どこかに残ってませんか?)。

 朝、郵便局のCDで現金を出そうとして失敗、窓口で印鑑を使っておろす。カードにまつわるトラブルだった。また、プリンターの紙を排出するための小さなローラーが一個外れた。直そうとして、結局、使えなくしてしまう。排紙自体には問題はないけど、トラブルつづきに運勢の低下を感じる。

 『井上多喜三郎全集』(田村修一・外村彰編、サンライズ出版)の予約案内が届く。滋賀県安土町の詩人である。外村彰『近江の詩人 井上多喜三郎』(サンライズ出版、二〇〇二年)という労作評伝でおおよそのことは知っていたが、全集にまでこぎつけたことは喜ばしい。八月末までに予約すると千円少々値引きになる。サンライズ出版は近江関係のまじめな出版社だが、名前がパチモンぽいので損しているんじゃないかなあ、余計なお世話だけど。

 松屋浅草第六回古本まつりの目録届く。当たり前ながら東京関係が多い。一点、めぼしいもの発見、即注文(まだ内緒)。

 プロ野球とは言うものの、実は阪神と巨人以外のチームはみんなアマチュア野球だったというのが、このところの合併1リーグ化問題ではっきりした。それならいまさら赤字がどうこう言うのはおかしいし、赤字球団が合併しても赤字が増えるだけじゃないかな。思うに、これまでのパ・リーグの惨状はリーグ制度云々じゃなくて、単純に、無能経営の結果ではないだろうか。プロ野球もビッグバンを受け入れて、阪神・巨人以外はアマになり、社会人野球も含めた自由なインディペンデント・リーグを作るべきかもしれない。ライブドアやキーナート氏も球団を持てるし、野茂選手の球団もあるよ。そうなるとTV中継は阪神・巨人戦ばっかりで、連日、日本シリーズだ(ジョーダンですよ、真に受けないでね)。

 ヴェルハーレン『ルーベンス』甲鳥書林、昭18


2004年7月7日(水)笹なりの紙の西瓜も寝苦しげ

 京都は連日の35度突破。パソコンの狂いも暑さのためか。7月11日(日)午後3時から◆「sumus」&「幻堂出版」真夏の ドサクサ・汗だく サイン会もカウントダウンになってきたが、暑さにめげずご参加ください。

 一昨日の話題、ゾッキの得意な版元について読者の方よりご教示あり。《沖積舎は伊丹三樹彦の長女夫妻の会社ですよ。“内田朝雄クラス”って、とても解り易い表現(笑)。故・成田三樹男も名悪役でしたし、俳句の人でもありました》。なるほど、そうでしたか、たしかに伊丹さんルートと思われる本も多いですね。

 こちらも読者の方より、拙作「ついり空乱書いよいよ手がつかず」に対して寸感として返句あり、いわく「打水を遠く廻つて犬が過ぎ」(『新川柳一万句集』磯部甲陽堂、一九二七年、より)。情景が浮かぶ佳作である。感謝です。

 「晶文社図書目録1973年版」を復刻して何がおもしろいんでしょう? という素朴な質問が若者よりあり。在りし日の晶文社(まだ健在ですが)を瞠目して見よ! という企画です。目録にプラスしてインタビュー、アンケートなども盛り込む予定。ただし発行は来年です。

 中谷治宇二郎についての論考が岩手の千葉さんより届く。治宇二郎(1902-36)は中谷宇吉郎の弟で、小説は芥川の注目を引くほど巧みだったが、考古学へ転じ、パリに留学、著書に『日本石器時代提要』(甲鳥書林、一九四三年)などがある。パリで胸を悪くして帰国、療養先の湯布院で没している。享年三十四。

 梅原龍三郎『ルノワルの追憶』甲鳥書林、昭19


2004年7月6日(火)夏枯れのピテカントロプス荒れ荒ぶ

 愛用のiMacが突然不調になり、真夏に冷や汗10リッター。大きな故障ではなく、ソフトをリストアしたらどうにかこうにか復旧はしたが、メールのメモリー、「sumus」ホームページの情報のかなりの部分が消滅してしまった。とくにトップ・ページと今月のデイリー・スムースが打撃を受けた(外付けHDに記憶させておくのを怠ったのだ)。ヨヨヨヨヨ(泣き)。ということで、すでにアップしてあるページはそのまま閲覧できるので問題ないものの、それを更新するのがとても面倒くさい。

 そこで、あっさりと新しいURLを入手して、新規にdaily-sumusを独立させることにした。バックグラウンドの挿入方法も分かったので、すこし趣向を変えてみる。これで一日潰れました。

 横光利一『菜種』甲鳥書林、昭16



2004年7月6日(火)夏枯れのピテカントロプス荒れ荒ぶ

トラブル発生! 新しいページを開きました。


2004年7月5日(月)枝豆の太りぐあいに喉鳴らす

 「[書評]のメルマガ」171号。南陀楼綾繁大奮闘連続イベント開催情報。

 7月10日(土)夜7時から『ナンダロウアヤシゲな日々』刊行記念茶話会、題して「本の海で溺れています」。場所:定有堂書店ホール/〒680-0037 鳥取市元町121/TEL&FAX: 0857-27-6035 e-mail: teiyu@nifty.com

 7月11日(日)午後3時から「sumus」&「幻堂出版」真夏の ドサクサ・汗だく サイン会

 7月30日(金)〜8月22日(日)「第一回モクローくん大感謝祭」《「モクローくん通信」の愛読者や古本好きの方に向けて、千駄木の素敵な古本屋「古書ほうろう」の特設コーナーにて、3週間の展示販売を行ないます。初日にはイベントも開催します》/古書ほうろう/東京都文京区千駄木3-25-5/TEL/FAX 03-3824-3388/e-mail horo@yanesen.net

 いつも面白い塩山芳明さんの連載「版元様の御殿拝見(22)沖積舎の巻」にこんな一文が。《それより何より、定価で買うのがアホらしい。実は沖積舎にはもう一つの顔が。未知谷、タッシェンジャパン、青弓社、フィルム・アート社、ギャップ出版社他と並ぶ(04年夏現在)、神保町ゾッキ市場におけるキングメーカー(悪役で言うなら、天津敏、内田朝雄クラスだ)》。ゾッキっていうのは新刊処分本のことである。普通は倒産した版元の本が流れるが、売れない本が溜まってきたら整理するところもあるというわけ。一度やるとクセになるらしい。

 南陀楼が日記「ナンダロウアヤシゲな日々」を始めた。聞いてなかったよ〜。現世さんが教えてくれたので、ここでバラす。

 岡崎日記に《晶文社図書目録1973年版をやっと見つける。これ、スムース文庫で復刊するつもりだったのだ。林さん、やっと見つかりました! 業務連絡終り》の記述あり。また無くさないようにコピーを取って送っておいて欲しいな。

 みずのわ出版の柳原氏来宅。装幀の依頼。そして、なんとウンチクの本を作ろうという命知らずな計画の相談。ささいなところに凝ってみようじゃないかと意見を出し合う。もう少し具体化したらお知らせいたす。


2004年7月4日(日)夏痩せの吾を恨むな裸本(はだかぼん)

 「ブ」で買ったCD「THE GENTLE SIDE OF COLTRANE」(GRP RECORDS,1991、元盤は1974)を聴きながら絵を描く。うだる暑さ。プロディーサーのマイケル・クースクナの解説を読む。コルトレーンに「talent」はあるが、それは「gift」じゃない云々。コルトレーンはものすごく練習熱心なプレーヤーだったらしい。ちょうどギターの巨匠セゴビアと同じだ。

 クースクナ(Cuscuna)の解説はなかなか熱いものがあるので、彼について調べてみると、ペンシルヴェニア大学時代からラジオのDJとして活動しジャズのコンサートやレコードのプロデュースもやっていたらしい。アトランティックのスタッフを経てフリーになり、ブルーノートのプロデューサーを勤めたのち、1982年にモザイクMOSAICレーベルを友人チャーリー・ルーリーとともに興している。初リリースのボックス・セットが「THE COMPLETE BLUE NOTE RECORDINGS OF THELONIOUS MONK」(1983)。この企画をキャピトルに断られて自らレーベルを作ることになったという。

 で、コルトレーンのジェントル・サイドだが、やはり最後の十八番(アルバムの13曲目ですが)だったという「I WANT TO TALK ABOUT YOU」がいい。ドラムスのエルヴィン・ジョーンズはつい先頃亡くなった。

 TV録画で「フェアリーテイル」(スターリッジ、1998)を見る。コナン・ドイル卿をピーター・オトゥールが、魔術師フーディニをハーベイ・カイテルが演じる。第一次世界大戦下、イギリスの風俗描写が見所だ。ヨークシャーの片田舎に住む二人の少女が妖精と仲良くなってカメラで妖精を撮影したところ、ひょんなことからそれが国中の話題になるというお話(実話だそうだ)。それはどうでもいいが、少女のお父さんが、ドサまわりのチェス名人と村代表として賭けチェスをやるシーンは印象的だった。人垣のなかで対局している様子が「王将」の世界やなあ〜と感心。映画自体はサブマリーン級。

 その直後、妻に勧められて読んだジェフリー・アーチャーの短編小説「終盤戦 THE ENDGAME」がまたけっこう面白かった。妻子を亡くした大金持ちの老人が遺産を弟妹たちの誰にどう譲るか、考えた末に一芝居を打つ。その過程でチェスの駒が重要な役割を果たす。ENDGAMEというのは文字通り一局の終わり、王を詰ますかどうかという戦いを指す。人生最後のゲームにひっかけているのだろう。「終盤戦」は将棋用語への直訳だが、ひとひねりしてもよかった。あるいは単に「エンドゲーム」か。『十四の嘘と真実』(永井淳訳、新潮文庫、2001年)収録。


2004年7月3日(土)背もかすれすねた風情の裸本(はだかぼん)

 一昨日、海文堂書店へ「sumus」&「幻堂出版」真夏の ドサクサ・汗だくサイン会用の荷物を発送した。バックナンバーは12、11、9号だけなのだが、昨日の話では山本がそれ以外の号もいくつか持参して販売するそうだ。欠号のある方はぜひ参加されたし。品切中の『借家と古本』も並ぶ予定。

 西秋学さんよりペリカン書房品川力さんについての情報をいただく。《多分ですが、まだお亡くなりになってないんじゃないかなあ。訃報を見た記憶がないんです。でもご存命なら100歳!?。著書には明治37年(1904)生とあります》。以前、古書好きは長寿と書いたが、品川さんは別格だ。西秋さんの御祖父様も93歳にしてバリバリ現役とか。

 『未来』7月号届く。向井氏の連載第二回「早稲田古書店街外史2 安藤書店」掲載。プロジェクトXみたいな語り口!

 『立原道造記念館』30号。開館七周年だそうだ。立原えりか女史が立原体験を《のびやかでしあわせな病気のようだった》と形容しているのは言い得て妙。

 遠藤哲夫さんより『汁かけめし快食學』(ちくま文庫)7月9日発売、発行予告ハガキが届く。面白そうなので待ち遠しい。遠藤さんのサイト→ ザ大衆食


2004年7月2日(金)濃淡を透かして裸本(らほん)のペン署名

 大阪天満橋のOMM(大阪マーチャンダイズ・マート)へ。古書ブックフェアー(近畿ブロック連合大古書まつり)の初日。午前十時十分前に到着。二百人余りの行列ができている。みんな熱心だ。女性が増えたとはいえ、九割方は男性、しかも中年以上が過半数。一種特殊な空気が漂う。十時開場、まずは安物の絵葉書をほじくる、これといってなし。絵葉書を展示(壁面展示ですぞ)している店などもあり、図柄によっては値段もかなり高額になっている。デフレ傾向の強い近年の古書界では珍しく急騰している商品と言えるだろう。

 絵葉書空振りで急に力が抜けた。あとはぷらぷら。300円均一で石濱恒夫『大阪ろまん』(全国書房、一九六七年)、織田作之助『夫婦善哉』(大地書房、一九四七年)、山本有三『ふしやくしんみやう』(創元社、一九四二年)、横光利一『菜種』(甲鳥書林、一九四一年、これは扉野より)、各200円で内田魯庵『文学者となる法』、堀辰雄『聖家族』、梶井基次郎『檸檬』・・・もち、名著複刻全集(日本近代文学館、ほるぷ)。

 こんなモンでもけっこう満足だったが、赤茶の背表紙に惹かれて抜いた『A POTTER'S BOOK』(BERNARD LEACH , FABER AND FABER LIMITED ,1951)、本自体はまったくどうってことないハードカバーの一冊、abebooks.comでも$10少々、ところがよく見ると、扉のところにリーチのペン署名と1953の文字が焦茶のインクで書き込まれていた。1,575円なので有難く買わせていただく。

 正午過ぎ、『BOOKISH』の八子さん、中尾さん、前田くん、ニトベさん、K先生(午前中の授業さぼってます)、山本、扉野らと昼食。山本は珍しく両手にパンパンのビニール袋を下げている、と思ったら臨川書店が例によって特売していたのだ。ガケ書房の善行堂、よく売れているらしい。皆でお茶を飲みながら『BOOKISH』次号の特集(画家のエッセイ、タイトル未定)について意見を述べる。

 前田くんより『ARE』8号の伊藤重夫さんインタビューのなかでウンチクがテクノについて語っている部分に関して「意外でした」との感想あり。ちょうどあの頃は息子がケン・イシイなどをしきりに聴いていた時期だったので影響されていたのだ。ここしばらくはいわゆるモダン・ジャズばかり聴いているから、すっかりご無沙汰だが、去年「古本市場」で拾ったHARDFLOORの「TB RESUSCITAION」(MOONSHINE MUSIC,1993)がめっぽう気に入っている。このCD、ROLAND TB 303 というシンセサイザーの発明者対して献じられているのがオチャメ。


2004年7月1日(木)雑書さえ陽を懼れつつ夏祓

 気紛れにトップページに背景を入れてみた(本当は背景の入れ方がやっと分かった)。拙作水彩画である。読みにくいかな。

 黒海先生よりタイの絵葉書。アユタヤの古跡に赤い花が敷き詰められている。『coto』拙文への感想あり。《「ゴッドハンド」拝読、本郷の古書店主品川力というのが―存否不詳―東京方面では著名で、何か探書の不足を言うと早い時は翌々日、あまり会うこと無くとも1、2週すると、「ハイ、これでは」とニコニコしながら示されたもので、私も昭和16、7〜20年まで持ち、読んでいた『中学時代』(住田正一著)をなくして、ぼやいてたらすぐにキレイなのをみつけて貰いました》とか。品川さんも伝説の古本屋さんである。

 Calo Bookshop & Cafeよりカロ・ニュース。新着図書情報など。《大竹伸朗作品集 『UK77(ユーケーナナナナ)』入荷しました。B5上製カバー装、656頁(4C144頁)、7350円 大竹伸朗、21歳。パンク吹き荒れるロンドンでみたものの大部分。写真とコラージュ・ノートによる、著者77〜78年の英国滞在の記録。粒子の粗いモノクロ写真、街で拾ったものを貼り付けたノート、非常にボリュームのあるアーティストブックです》。何を隠そう、ウンチクは大竹伸朗氏と武蔵野美大の入学時同級生なのだ。大竹氏はその後すぐに休学したり外国へ行ったりと並の美大生ではなかった。ウンチクは平凡な学生であった(たぶん)。