山本善行[e-古本泣き笑い日記]

古本泣き笑い日記10


古本泣き笑い日記9


十月二十六日(火)

 石神井書林古書目録届く。欲しい本がいっぱい。赤貧の身がつらい。例えば、小林秀雄『おふえりや遺文』がほしい。目録にはカバーの有無の記述がないが、21000円は安いのでは。昭和八年、三才社、限定400部である。


 溜め息つきながら見ていくと、永田耕衣『わが物心帖』(昭和55年、文化出版局)があったので、すぐに電話する。
 内堀さんと少し話す。耕衣のこの本、なかなかない、という話。
 永田耕衣が、身近に置く骨董や美術品などについて、じつに個性的な散文で語っている。私の愛読する一冊。
 この本を注文したのは、湯川書房の湯川さんに頼まれていたからなのだ。二ヶ月ぐらい探したのだけれど、どこにも全く姿を見せなかった。
 「ブッキッシュ」の校正届く。私は、鴨居玲のエッセイ集『踊り候え』(風来舎)について書かせてもらった。
 ブックオフ三条店に寄ると、白水社Uブックスが105円ででていた。マンディアルグ『黒い美術館』(生田耕作訳)、『城の中のイギリス人』(澁澤龍彦訳)、『燠火』(生田耕作訳)、『狼の太陽』(生田耕作訳)ルイ・アラゴン『イレーヌ』(生田耕作訳)を買う。
 他に「樹林」2004年冬号があった。目次を見ると、杉山平一単行本未収録エッセイ集とある。読んでみると貴重な内容だ。「立原道造と喫茶店」は林さんに、「中原中也の詩の反復」には高森文夫が出てくるので扉野君にコピーしよう。それに、村岡眞澄さんの文章もあった。


十月二十九日(金)

 湯川書房に永田耕衣『わが物心帖』を持っていく。永田耕衣の話をあれこれしているところに、お客さん。水仁舎という出版社をなさっている北見さんだと紹介される。造本も編集も出版も手掛けているという。湯川さんの本を出したいとのこと。でも湯川さんは丁重に断っている。私も一度かっこよく断ってみたい。
 湯川さんの弱味を見つけて攻めましょうよ、と全面協力を約束する。
 湯川さんに明日からいよいよ青空古本まつりが始まると言うと、
「山本さんが臨川に挑むところを見に行こうか」と言ってくださる。

 永田耕衣『わが物心帖』(昭和55年、文化出版局)


十月三十日(土)、知恩寺青空古本まつり

 天気予報どおり雨がぱらぱらしている。強く降り出しそうで心配だ。
 知恩寺の境内を見て回る。全体の配置を把握してから、臨川の前。雨のせいかいつもより少ない人だかりだ。でもいつもの面々は当たり前のように取り巻いている。うまく最前列に入る。待っているあいだ、カバーの上から手で触って、本の大きさや函の有る無し、さらには題名まで想像する。毎年同じことを繰り返して、同ことを書いている。
 いつもとちがったのは、ぱっと目の前のカバーめくると、そこには仏教書が並んでいたことだ。何てこった、こうなると移動はむずかしいのだ。でも走って反対側にまわり、最前列には入れないものの、何とか手を伸ばし一冊だけ手に取る。ちらっと『爐邊夜話集』と見えた。すごい本だ。値段も中も見ず、確保する。あとでゆっくり味わおう。
 他の本も見ようとするがとても無理。押すなあー、なんて声も聞こえる。本当にぐいぐい押しているおっさんがいる。女性も混じっての争いにたじたじとなる。私にはもう、これぞ、という一冊があるので、退散することにして、文庫の方にまわる。文庫新書は100円。文庫を数冊買って、少し落ち着いた棚をゆっくり見た。
 臨川での購入本。
 坂口安吾『爐邊夜話集』(昭和16年、スタイル社)200円、平井照敏『言語論』(昭和42年、思潮社、識語署名入り)200円、宮尾しげを『日本小話集』(昭和31年、高文社)100円、植草甚一『バードとかれの仲間たち』(昭和51年、晶文社)100円、城市郎『発禁本』(昭和40年、桃源選書)200円、堀口大学訳『詩人のなぷきん』(昭和4年、第一書房)100円。
 文庫は『森有正エッセー集成1』(ちくま学芸文庫)100円、ベンヤミン『図説写真小史』(ちくま学芸文庫)100円、大熊喜邦『江戸建築叢話』(中公文庫)100円、ヤノーホ『カフカとの対話』(ちくま学芸文庫)100円、山岸外史『人間太宰治』(ちくま文庫)100円など。
 次は100円均一コーナーへ。臨川の戦いを避けたのか、林さんの姿が見える。
 残念ながら、あまり買う本がなかった。
 野呂栄太郎『日本資本主義発達史』(昭和7年、鐵塔書院)、ズーダーマン『故郷』島村抱月訳、(大正3年、金尾文淵堂)。佐藤寛『幻想夜曲』(大正15年、紅玉堂書店)など。

 ズーダーマン『故郷』島村抱月訳、(大正3年、金尾文淵堂)

 雨が強くなってきたので、林さんと、いつものように「進々堂」に入り、いつものようにカレーセットを食べる。
 今年はちょっとした本が鞄に入っている。特別な一冊なので、濡れないように、この本だけ鞄に入れておいた。席に着くとすぐ、
「こんなんどうですか」
と自慢げに『爐邊夜話集』を見せた。じっと表紙に見入る林さん。
 でもどうしたんだろう、なかなか本を開かない。早く奥付を見て欲しい。昭和16年、スタイル社の本なのだから、はやく、すごいですね、とか何とか、驚きの声をあげて欲しい。
 すると林さんの第一声はこうだった。
「これ落書きですね」
 本を受け取り眼鏡をはずして調べてみたら、確かに色鉛筆で何十もぐるぐる円が描かれている。ご丁寧に裏にもちゃんと描いている。
 しゃれた装画ではなかったのか。はっきり激しいショックを受ける。泣きはしなかったけど、顔つきは変わっていたと思う。
「えー、まさか…きついなあ…」
 本当は何も言いたくなかったが、仕方ないので、
「安吾がむしゃくしゃして書いたんやろ、それか安吾の子供か…」
と大きな声で誤魔化すしかなかった。

 坂口安吾『爐邊夜話集』(昭和16年、スタイル社)


十月三十一日(日)

 今年は思文閣でも古本まつりがあるという。あまり期待せずに2階にあがる。値段を見て驚いた。まるで私のための小部屋のような感じだ。文庫、新書が50円からになっている。だらけきっていた身体がしゃんとなり、目にも力が宿った。
 矢川澄子『兎とよばれた女』(昭和58年、筑摩書房)100円、色川武大『怪しい来客簿』(昭和52年、話の特集)200円、アンドレ・ブルトン編『黒いユーモア選集』(昭和43年、国文社)上、100円、『伊東静雄詩集』(岩波文庫)100円、『アテネ文庫解説目録』(1956年、3月)100円、和田芳恵『暗い流れ』(集英社文庫)50円、矢内原伊作『抵抗詩人アラゴン』(アテネ文庫)100円、『泉鏡花』(ちくま日本文学全集)50円、小山清『落穂拾い・雪の宿』(旺文社文庫)50円、大仏次郎『角兵衛獅子』(講談社少年倶楽部文庫)100円、ハーバート・リード『芸術の意味』(みすずぶっくす)100円など。
 これといった特別なものはなかったが、持っている本も多かったが、値段が安いので、気楽に買うことができた。
 まあこんなもんだろう、と満足して知恩寺にもどる。
 前田愛『樋口一葉の世界』(平凡社ライブラリー)100円、『内田百間』(ちくま日本文学全集)100円、田中清光詩集『にがい愛』100円、『香月泰男遺作展』200円、『萩原朔太郎』(近代文学鑑賞講座)100円など。
 家に戻ると子供たちがハローウィーンだとかなんとか言って騒いでいるので、喫茶店「迷子」に逃げる。久しぶりに三月書房の宍戸さんと話ができた。
 宍戸さん、50年ほど前に、書肆ユリイカの伊達得夫、昭森社の森谷均と会った事があると言われる。
「伊達さん、どこか坪内祐三さんに似た感じでしたねえ」
 取次の鈴木書店に書肆ユリイカや昭森社の本も取り扱うように頼みに行ったという。
「当時はこうと思ったらすぐに飛んでいったんです」 
 直接会って頼むというのがすごい。古本以外、自分でぶつかっていくということが少なくなってきている私なので、反省した。
 このあと「そうですかねえ」とか「うう…ん」という相づちを打つしかない、ここでは書けない人物評になる。


十一月一日(月)

 今日も雨模様。追加を期待して思文閣へ。十時前に着くが、すでに先着がいた。みんな考える事は同じか。といっても数人だけど。階段で開店までじっと我慢して並んだ。
 富士正晴『贋・海賊の歌』(昭和42年、未来社)200円、『広瀬正年小詩集』(昭和39年、ヴァイキングクラブ、250部限定)300円、辰野隆『独語と対話』(昭和三十一年、実業之日本社)50円、ディクスン・カー『連続殺人事件』(昭和36年、創元推理文庫)50円、「幻想文学」創刊号(昭和57年)300円。

『広瀬正年小詩集』(昭和39年、ヴァイキングクラブ、250部限定)

「幻想文学」創刊号(昭和57年)

 杉本秀太郎『続・洛中生息』(昭和54年、みすず書房)には、献呈署名があり200円だった。
 富士正晴や杉本秀太郎、山田稔といった関西ゆかりの作家の本が出ていた。ヴァイキングクラブの『広瀬正年小詩集』に出会えたのもよかった。広瀬正年という詩人は知らなかったが、井口浩が序のなかで、「恢復期」は、日本語で書かれた、最も光耀に満ちた詩の一つだろう。と言い、富士正晴は、あとがき、で広瀬との出会いを語っている。
 知らない著者の本をその場で開き、少し読んでみる、なかなかやるじゃないかと思う、そんなことも楽しい。
 「幻想文学」創刊号も、中井英夫のエッセイ、澁澤龍彦インタビュー、荒俣宏インタビュー、ブックガイド、などと充実した内容だ。
 知恩寺にもどるが何も買えず、夕方、もう一度、思文閣へ。また追加があった。どうやら今年は「思文閣詣」ということになりそう。もうなっているか。

『小林秀雄文學讀本』(昭和十一年、竹村書房、青山二郎装)

 『小林秀雄文學讀本』(昭和十一年、竹村書房、青山二郎装)には杉本秀太郎の署名あり。函が傷んでいたが100円だ。最初この本、小林秀雄論を集めたものだと思っていた。そうではなくて、編者の笠原健治郎が小林秀雄の文章を選びだし再構築したものだったのだ。笠原健次郎は小林秀雄の府立一中時代からの友人。小林秀雄の文章が細切れに出てくるので、もの足らなく感じるが、いろんな形で読めるのはうれしい。
 図書新聞双書の『書誌小林秀雄』によると、
  本書は小林研究の歴史的文献と言うのみならず、収録のうちの数章は、この後の小林の著書にも収められることなく、
  
その意味でも貴重な価値を持つものと言えよう。
 新しい『小林秀雄全集』には、生前、小林が収録することを厳禁したベルグソン論も入ったので、『小林秀雄文學讀本』の文章も収録されているかも知れない。
 その他、富士正晴『紙魚の退屈』(昭和47年、人文書院)300円、小林秀雄『芸術随想』(昭和41年、新潮社)100円、上林暁『武蔵野』(教養文庫)50円など。

 富士正晴『紙魚の退屈』(昭和47年、人文書院)


十一月二日(火)

 今日も十時前に思文閣に着く。礼儀正しい社員ばかりで気持ちよい。
 なにげなく300円の棚を見ている私。高橋和巳の本が数冊並んでいる。『捨子物語』を手にとってみる。高橋和巳の本を手に取るのは何十年ぶりだろう。よく見る河出書房の『捨子物語』とはどこかちがうように感じたのだ。そんな注意深い自分をほめてやりたい。奥付を見ると、昭和33年、足立書房だ。高橋和巳が自費出版した本だ。たしかその当時のことを、高橋たか子が『高橋和巳の思い出』(構想社)で書いていた。高橋和巳の「独り碁」が始まったのはこの『捨子物語』の頃からだということも書いてあった。読み返してみよう。でも『高橋和巳の思い出』はどこにしまったのだろう。

 高橋和巳『捨子物語』(昭和33年、足立書房)

 澁澤龍彦『秘密結社の手帖』(昭和41年、早川ライブラリ)100円。この新書版のかわいい奴を取る手のはやかったこと。いやあ、実にいい本だ。

 澁澤龍彦『秘密結社の手帖』(昭和41年、早川ライブラリ)

 鈴木信太郎『虚の焦点』(昭和45年、中央大学出版部)は100円だったので、持っているが買っておく。
 知恩寺ものぞく。
 赤尾照文堂、3册500円の台をチェックすると、中上健次『地の果て至上の時』(昭和58年、新潮社)が目についた。こんな大きな本、いつもなら手にとらないが、函から出すと、なんと毛筆署名が現れた。力強い堂々とした署名だ。あとの二冊を選ぶのに時間かかった。米川正夫『鈍・根・才』(昭和37年、河出書房新社)と白洲正子『遊鬼』に決めた。『鈍・根・才』は、米川正夫の自伝だ。
 調子にのって、一冊500円の方も見てしまう。それがよかった。鏡花全集の月報を集めた『鏡花全集月報』(昭和61年、岩波書店、非売品)があった。月報を読むのは楽しい。それで、また調子にのって、ジイド全集別巻『ジイド研究』(昭和14年、建設社)も購入した。
 萩書房、2册500円台で。幸田露伴『幻談』(昭和16年、日本評論社)と富岡多恵子『壷中庵異聞』(昭和49年、文藝春秋、横尾忠則装)にする。
 娘と待ち合わせをしてたのに、なかなか来ない。一度家に戻ることにする。たぶんお父ちゃんの異様な姿をみて、恐くなって帰ってしまったのだろう。
 家にも居なかった。ショックがことのほか大きかったのかも。仕方ないので、もう一度、思文閣へ向かう。何回も何回も来ているので、顔も買い方もばれているみたいで、恥ずかしい。
 中谷宇吉郎『極北の氷の下の町』(昭和41年、暮らしの手帖社)50円、江口雄輔『久生十蘭』(平成6年、白水社)300円、島京子『夜の訪れ』(昭和40年、ヴァイキングクラブ、富士正晴装)100円。矢代幸雄『水墨画』(岩波新書)50円、若山牧水『みなかみ紀行』(中公文庫)50円、宮尾しげを『旅に拾った話』(中公文庫)50円など。
 自分でもちょっとやりすぎだと思うのは、このあと、私は重い荷物を抱えて、ブックオフにも寄っているのだ。そこまでしなくてもいいのに、と今は思うのだが…。

 中谷宇吉郎『極北の氷の下の町』(昭和41年、暮らしの手帖社)


十一月三日(水)文化の日

 青空古本まつりの最終日。今日も忙しくなりそうだ。
 思文閣の前で「砂の書」の店主を紹介される。
 思文閣を出るとき、半額券を頂く。4時からだそうだ。これはまたすごい事になりそう。半額ということは、文庫新書が25円ということだ。
 4時までたっぷり時間があるので、とりあえず知恩寺へ。行ったり来たりで忙しい。100円均一コーナーではもう、500円詰め放題、をやっている。やめておこうとも思ったが、人が、がんがん袋に古本を詰めているのを見ていると、じっとしてられなくなった。それで、遊び遊び、と言いながら500円、払った。
 ロープで囲まれた中に入ると、
「いちど外にでて又戻ってきてもいいのかなあ」とか「にいちゃんほんとに何冊詰めてもええんか」という声が聞こえる。みんな楽しそうだ。
 私は4時からの思文閣があるので、ほどほどにして次ぎのような本を袋に入れた。

 石原郁子『アントニオーニの誘惑』(平成4年、筑摩書房)

 石原郁子『アントニオーニの誘惑』(平成4年、筑摩書房)、池内紀『ことばの演芸館』(昭和59年、白水社)、別冊国文学「宮沢賢治必携」、ユリイカ「宮沢賢治」、飯守勘一『わんまんだんぎ』(昭和32年、新聞時代社)、『カリブの龍巻』(ガルシア・マルケスの研究読本)、福原麟太郎『人生十二の智慧』(昭和29年、新潮社)、埴谷雄高『影絵の世界』(平成4年、筑摩叢書)、中沢新一『ケルビムのぶどう酒』(平成4年、河出書房新社)、北野和博詩集『公園から』(平成15年、編集工房ノア)、サントリークォータリー(村上春樹執筆)、リルケ『ロダン』(岩波文庫)、彷書月刊二冊(柳原白蓮、殿山のタイちゃん)。
 袋の三分の二ぐらいにしておくが、それでもかなり重い。これで家に置きに帰らなければならなくなった。
 時間は大丈夫だけれど、4時からだといって4時に行けば出遅れるだろう。かといって早く行き過ぎると4時前に次のようなアナウンスがあるかも知れない。
 「今お持ちになっている古本をいったん精算してください、あっそこの人、棚に戻さないでください、みなさん、そのままレジのほうに」
 戻そうとした私は仕方なくレジに並ぶはめに。
 そんなことも考えたが、まあそれでもいいかと思い、三時ごろ思文閣へ。
 いやあ楽しめました。買った本を書き出してみよう。
 小出楢重『めでたき風景』(昭和5年、創元社)1000円、鍋井克之『閑中忙人』(昭和28年、朝日新聞社)250円。どちらも画家のエッセイで、状態もいいのにこの値段。特にめずらしい本ではないが、こんな安い値段が付いているのは見たことない。どちらも著者の絵が入った楽しい本である。

 小出楢重『めでたき風景』(昭和5年、創元社)

 鍋井克之『閑中忙人』(昭和28年、朝日新聞社)

 森田草平『文章道と漱石先生』(大正8年、春陽堂)250円、ミシェル・ジュリ『熱い太陽、深海魚』(松浦寿輝訳、昭和56年、サンリオSF文庫)150円。『熱い太陽、深海魚』は、訳者が詩人の松浦寿輝だということもあって、サンリオ文庫のなかでも、人気のある、それゆえ、なかなか見ない一冊である。1万円ぐらいするのではないか。

 ミシェル・ジュリ『熱い太陽、深海魚』(松浦寿輝訳、昭和56年、サンリオSF文庫)

 『江戸川乱歩全集』(13巻、14巻、探偵小説40年の巻)二冊で500円、ウィリアム・モリス『サンダリング・フラッド』(昭和53年、月刊ペン社)250円、横溝正史『八つ墓村』(角川文庫白背)25円、牧野信一『鬼涙村』(旺文社文庫)25円、埴谷雄高『闇のなかの思想』(三一新書)50円、秋山安三郎『東京えちけっと』(昭和28年、創元新書)25円、吉行淳之介・篠山紀信『ヴェニス 光と影』(新潮文庫)25円、コールリッヂ『シェイクスピア論』(岩波文庫)25円、坂口安吾『堕落論』(昭和34年、現代選書)50円、古井由吉『円陣を組む女たち』(中公文庫)25円、佐藤春夫『新編 退屈読本』(創元文庫)25円、アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言・溶ける魚』(岩波文庫)25円、金子光晴『絶望の精神史』(カッパブックス)25円、小林秀雄『芸術家』(昭和26年、新潮叢書)50円、日沼倫太郎『現代作家案内』(昭和42年、三一新書)25円、『橋本多佳子句集』(昭和35年、角川文庫)100円、花森安治『逆立ちの世の中』(昭和29年、河出新書)25円、レニエ『生きている過去』(岩波文庫)25円、『西洋の詩を讀む人に』(昭和31年、創元社、花森安治装)25円、ヴァレリー『テスト氏』(福武文庫)25円、スティーブンソン『怪奇短編集』(福武文庫)25円、ラーゲルレーフ『幻の馬車』(角川リバイバル)25円。

 小林秀雄『芸術家』(昭和26年、新潮叢書)

 秋山安三郎『東京えちけっと』(昭和28年、創元新書)

 花森安治『逆立ちの世の中』(昭和29年、河出新書)

『西洋の詩を讀む人に』(昭和31年、創元社、花森安治装)

 雑誌「ヴァイキング」も30册ぐらいあった。半額なので一冊50円だ。少し迷ったがこれは買わなかった。昭和28年の「久坂葉子追悼号」などを探すが、残念ながらなかった。
 「砂の書」の店主、いい本買っていた。本を読みながら選んでいる姿もいい感じだった。
 本を左手一本で抱えてぐるぐる回っていたので腕がいたい。(右手はいい本を抜き取るときのために空けておかねばならない)もちろん数えてはいないが、100周ぐらい、見落としはないかと同じところを回っていたのではないか。何ごとも簡単にはいかないのだ。
 私の経験では、こういうときは肘の内側がいたくなる。こんなことを続けていると、古本の持ち過ぎで肘の手術、ということも考えられるので、注意しないといけない。
「赤貧古本道の山本善行さん、古本の持ち過ぎで、肘の手術」なんてことになるかも。でもこれだけ買えればそれでもいいか。
 喫茶店「迷子」へ、自慢しに行く。
 会計は古本で払う。自慢と受け取られると困るが、赤貧山本は珈琲も古本で飲むのだ。今日は、新潮日本文学アルバムの『北原白秋』で飲んだ。カラーブックスの竹久夢二でも飲んだし「太陽」でも飲んだことがある。またまた変な話だが、ここのマスター、古本にパラフィンまくのが上手。とくに函にまくのはプロ級だ。今度教えてもらおう。


十一月四日(木)

 吉岡書店の店頭。お祭りの後なので、今日はもういいかと思うが、駅までの道に古本屋があるので仕方ない。
 100円の箱の中に面白そうな本が見えた。三笠新書、瀧口修造『近代藝術』。三笠文庫もあった。双葉十三郎『アメリカ映画入門』、飯島正『フランス映画入門』、早川ポケットミステリー、ディクスン・カー『妖女の隠れ家』、瀬木慎一『視覚芸術論』(老鶴圃新書)、獅子文六『南国滑稽譚』、フォークナー『兵士の給与』上下。
 最初、100円の箱のなかに、フォークナーの『兵士の給与』上下が紛れ込んでて、1000円の値が付いていた。でもこの文庫はあまり見ないので、二冊千円は特別高いとは言えない。ちょうど店のおばちゃんがいてたので、
「これ、ゼロ一個多いのかなあ」と半分冗談のように笑顔で言うと、本と値段を見て「あれ、本当やねえ」、あっさり100円になった。
 言うてみるもんだ。


十一月五日(金)

 なんとこの日も古本屋へ。大阪かっぱ横町のワゴンセールなので仕方ない。
 最近気合いがはいっているのは、少し早く着いたことでもわかる。
 ちょうど本を店頭に並べているところだ。ほとんど人もいない。これだ、これでなくては。
 まず『サントリーのすべて』を手に取る。これは新書。柳原良平のイラストもいっぱい入っている。100円。レッシング『ミンナ・フォン・バルンヘルム』(日本評論社の世界古典文庫)100円。
 梁山泊で、「サントリークォータリー」35、開高健特集300円。図書新聞双書の『書誌小林秀雄』300円。
 この本、小林秀雄ファンなら持っておくべき一冊だと思った。例えば、昭和12年に野田書房(書房私版)『ランボオ論』(限定49部、一般市販は20部)についても詳しく記されて、全ヴァリアントを示すという徹底ぶりだ。
 ただ、私がこの日買ったものには、15ページほどの落丁があったので、後日、京都府立図書館でコピーするという手間がかかった。
 でもそれもまた楽し。


古本泣き笑い日記10

[upload date : Nov. 18, 2004]