「読む人」をスケッチしようと思ったのには単純な理由があった。絵画の歴史というのは人間を描くことそのものだ。だから人間が描けなくて、どうして絵描きだと言えようか。手軽に人間を描く方法、それは街頭スケッチだ。読む人は読んでいる(あたりまえ)。だから、動かない、あるいは最小限の動きしかしない。しかも本に集中しているから、こちらがスケッチしていても気がつかない。よって、気兼ねなく(でも多少は気兼ねしつつ)その姿を観察し、鉛筆を走らせることができる。だが、いくらなんでもスケッチブックを抱えてというのはマズイ。ちょうど都合良く、装幀の仕事をしていると、ツカ見本というものがたまってくる。ツカ見本というのは、印刷していない本、ノートのようなものである。これに書店の書皮を被せて、一見、ふつうの本のように見せかける。要するに、本にメモをしているおやじ、そんなふうに装うわけである。そうやっておもむろに電車の中、駅のホーム、書店の前などで本を読む人々を観察する。スケッチする。ファッションや髪型にも詳しくなり、人間ていうのは何て奇妙で面白い生き物か、ということを改めて思い知る。【イメージのサイズは統一しています。実寸は幅11cm前後です】


























