◆ スオミ・ピアノ・スクール公開講座
〜監修者・ピアニスト 舘野泉氏を迎えて〜 報告

去る2月23日(水)、伊藤楽器船橋イトウミュージックシアターにて、舘野泉先生をお迎えして、久保春代先生によるスオミ・ピアノ・スクール公開講座が行われました。

当日は87名もの方が参加され会場は満員となりました。その中には今回全く初めてスオミの講座に参加する方も数多くいらしたようで、沢山の方にスオミの素晴らしさを知っていただく良い機会になったのではないでしょうか。
前半は久保先生による講座で、まず初めにスオミが生まれた国フィンランドについての興味深いお話がありました。本当に寒さの厳しいフィンランドでは、長い冬をどう越すかを考えて夏を過ごすとのこと。この事から長い目で物事を考えることが身に付いている。フィンランドは音楽の分野でも近年めざましい成果を挙げているが、それは戦後、教育改革が行われ、その成果が今現れ始めて来たと言えるとの事でした。
「スオミ」の特徴としては、
♪子供の心を大切にしている。
♪自発性を養う(即興が取り入れられている)。
♪ 奏法(脱力など)、理論などもストレートに取り入れられている。
♪現代曲も取り入れられている。
♪ 色々な国の文化に目を向けれられるような曲が入っている(豊かな音楽性を養う)。
♪教材そのものが、芸術性豊かな世界を持っており、魅力的である。
などが挙げられるが、これはシベリウスアカデミーの教育の特徴と一致している。
教育とは教え込む事ではなく、自らが学ぶ事を助ける(見守る)ことである。「たとえじれったくとも…」という言葉がとても印象的でした。
その後は、スオミの“音楽への旅立ち“を中心に、実際にテキストのページをめくりながら、久保先生の分かりやすい説明がありました。途中、”黒鍵を弾きましょう“や”のぼるよ トントン“のところでは、初めて受講された方々に生徒役になっていただき、実際に音を出しながら、とても和気あいあいとした雰囲気で行われました。
限られた時間の中で、アーティキュレーション、移調、フラジオレット(音程の勉強)、カノン(フーガの勉強に通じる)などスオミの魅力を丁寧に、また大変更率良く伝えていただきました。
内容が各巻ごとに螺旋階段状に少しずつ高度になっていく例として、即興のところが取り上げられ、旅立ちの“おや いろいろなおとがきこえてきますね”が1巻では“赤いはし”、“おばけのはなし”になり、2巻では“むかで”に発展するまでを音を出しながら解説していただけたので、初めての方々にもとても興味深かったようです。また、他のテキストではなかなか無いスオミの魅力を伝えていただけたようです。

そしてこの後、後半は、いよいよ舘野先生がいつもの温かい笑顔で登場されました。すぐに、まず1曲演奏してくださいました。曲目はハンガリーの作曲家、ピアニスト、また教育者として生涯の大半を過ごしたドホナーニの「左手のための作品」(12のエチュードより)。先生はこの曲がものすごく好きになり、この半年以上、ピアノを弾き始める時はこの曲から始めていらっしゃるそうです。一日の始めにとても気持ちの良い曲とおっしゃる通り、とても複雑な動きをする曲なのですが、本当にやわらかくて素敵な曲でした。
続けてもう1曲、スクリャービンの「左手のためのノクターン」OP.9を弾いてくださいました。息遣いが直接感じられるほど間近で先生の演奏を聴くことが出来、何か魔法にかかったような、全身の力がふっと抜けるような感覚を味わいました。素晴らしい演奏に感動し涙ぐんでいる方も多かったようです。
その後は久保先生が舘野先生に質問をされる形式で、色々なお話を伺うことができました。先生は、お父様から最初に(正式には5歳の5月5日の端午の節句〜)ピアノの手ほどきを受けられたそうです。(お父様はチェリスト、お母様はピアニストです。)お父様の教え方は、その時の曲の感じに合わせて即興で物語を作って弾かせるというとてもユニークなものだったそうで、先生はその物語の中にすっかり引きこまれていったそうです。(ちなみに先生のご兄弟の3人は芸大、お1人は桐朋に進まれ、皆様音楽家になられたそうですが、このような教えを受けたのは先生だけだったということです。)
 そういったバックグラウンドをお持ちの先生が”スオミ“と出会われた時、今までの教本とは切り口が違っていて、音楽をやる子どもたちも考えながら、先生の方もその場その場で子どもたちに対応していろいろ考えて、コミュニケーションがあってお互いに育てていくといったものが感じられ、日本にこのような教本が紹介されればとてもいいなあと思われたそうなのです。
 そんな舘野先生も高校生の時に、もっと上手にならなくては、もっと弾けなければダメだと思いだして、だんだん追い詰められて悪い方へ行ってしまい、身体もガチガチになり、音の響きも硬くなってしまったという時期があったとのことです。そのような時、コハンスキー先生に出会って、脱力を初めて教えていただき、それで自分は生き返ったという感じがしたそうです。コハンスキー先生が最初にくださったのが、意外なことにハノンとツェルニー60番で、それを脱力して弾く、つまり自分の身体の状態をチェックしながら力を抜いて弾くということで、それが楽しくて嬉しくて、そのようにして2,3ヶ月勉強し、それからショパンやリストのエチュードを全部やったそうです。
 今の先生からは身体がガチガチだなんて想像もできませんが、“脱力”がいかに大切かを考えさせられるお話を伺うことができました。
 また年に1度の学校コンサートでの、子どもたちの現代音楽に対する柔軟で純粋な反応についてもユーモラスにお話して下さいました。
そして最後にもう1曲、カッチーニのアヴェ・マリアを弾いて下さり、素敵な演奏の余韻を残し、講座が終わりました。
終了後、CDを購入された方に先生がサインをして下さるとのことで、沢山の方の長い行列ができました!! お疲れにならないかと心配でしたが、1人ずつに丁寧にサインやお話をして下さるご様子に、また先生の温かいお人柄を感じました。 (神谷)


 会員の感想より

先日2/23のピアニスト舘野泉さんをお迎えしてのスオミの講座は、お話と演奏ともに素晴らしく、2週間近くたった今も、舘野さんがお話をされた時の表情と声と、言葉の数々と、ピアノの音色が、はっきりと目に耳に浮かび感動がよみがえります。
前半の久保先生の、フィンランドの風土に根ざした国民性、シベリウス・アカデミーの教育理念、スオミの特徴などのお話もとても興味深く、また、限られた時間の中で要点を押さえて本の解説をして下さり、具体的な指導法やスオミの優れた点がとても良く分かり、頭の中がすっきり整理されました。
はじめてお会いした舘野泉さんは、率直で飾らない温かみのあるお人柄で、ゆっくりとお話されることばの1つ1つが、まるで大切な音楽のように心に響きました。登場された瞬間に、会場全体に特別な風が吹いたように感じました。そしてお話を語るようにピアノの演奏をして下さいました。久保先生のインタビュー形式によるお2人の会話が、とても楽しかったです。
3曲演奏して下さった中で、スクリャービンもカッチーニももちろんですが、特にドホナーニの曲が印象深く心に残っています。教育の目的で書かれた片隅に忘れ去られていたであろう練習曲を、音楽作品としてあれほど素敵に演奏なさっていて…。リヒャルト・シュトラウスと同時代の魅力的な響きがしました。
その日のコンディションを知るためにも、毎日必ずこの曲から練習を始められるとのこと。自分の心や身体からの声に耳を澄まし、作品や音楽を大切にしてピアノをひくことの意味をあらためて教えられました。
吉松隆編曲のカッチーニのアヴェ・マリアは静かな美しい曲で、さっそく楽譜を買いに行き、まだ耳にはっきり残っている館野さんの演奏の記憶に導かれて、弾いてみました。いつも力が入り過ぎで悩んでいるピアノが、少しは脱力できて弾けたように思います。
ゆっくりと右手でサインして下さった『アイノラ抒情曲集』のCDをいま聴いています。解説にある舘野泉さんの次の文章が心に沁みました。「この録音では…多くの箇所で右手を添えてみた。弾いていると、萌えだした若葉のように優しい感触がある。まだ力はないけれど、どこまで育ってくれるだろうか。」
できることなら、いつまでもそこに座って、久保先生と対談されながらの舘野さんの演奏を聴き続けていたかったです。 (T)


今回は、久保春代先生の公開講座と舘野泉先生の演奏と二重の素晴らしい時間を得ることが出来ました。
 スオミの講座には、初めての方がかなりいらしたみたいでした。フィンランドの厳しい自然の中から未来を見据えて生まれたスオミのお話や、創造性を育む柔軟な発想のメソードに、初めて参加された方々もきっと共感を持たれた事でしょう。そういう私も通信のみでご無沙汰でしたが、久保先生の温かいお人柄がはしばしに伺われて生徒になった気分でとても楽しく聴講出来ました。益々、すそ野が広がることを切に願いながら・・・
また、舘野先生の演奏を間近に聞けて美しい音の余韻がいつまでも心に残っています。この感動の時間を持てましたのも浜本先生をはじめ、会員の皆様のお力添えがあったことだと感謝しています。本当に有難うございました。 (I)


たいへん多くの方がいらっしゃいましたことに驚きました。
スオミの教材を初めて目になさった方も多そうで、久保先生はスオミのテキストの中でも即興演奏のページを主にご説明くださいましたが(音楽への旅立ち:P.13、P.25、1巻:P.14、P.47など)、1つ1つに歓声や、「おもしろそうねー。」というお声が聞かれるなど、スオミのことを知っていただく大変良い機会になったのではないかと思いました。
また音楽への旅立ち:P.22、P.23のページをしっかりとご説明下さいまして、日本の子供たちのためにフィンランドの音楽そのままではない曲、日本でよく知られている曲を編纂されていますことも、よくご理解いただけたのではないかと思います。フィンランドの教材という少しなじみがうすいイメージがなくなったのではないかと思いました。
舘野先生の生演奏を楽しめ、先生のお話から舘野先生がスオミを良いと思われた理由もよく分かり、ますますスオミ教材に興味をお持ちになられる方も多くいらっしゃるのではないかと思いました。
全体的に、舘野先生の演奏会ではなく、スオミの講座ということが全面に出ていて、分かりやすい、興味を持たれるきっかけとしてはちょうどすばらしい講座だったと思います。
ありがとうございました。 (M)


実際の演奏を交えての久保先生の講座は分かり易く、他にはないスオミテキストの特徴や大切なところを再び実感し、学び直すことができました。それとともに、ピアノの持つ表現力の可能性が広がっていくのも感じました。
続く舘野先生の演奏でますます心は音楽で満たされ、感情があふれていきました。
私にとってはとても印象に残る講座でしたが、参加された多くの方にとっても深く心に残る講座だったと思います。 (K)


2時間という時間が短く感じられました。改めてスオミを学び、つくづくスオミと共に子供に関わっていけることを幸せに思いました。
舘野先生のお話もスオミに繋がるものでしたし、演奏も素晴らしくて、最後にお話もでき、コツコツと研究会で学んできたご褒美にも思えました。素晴らしいセミナーを有難うございました。
会場の反応も良かったのでスオミの今後の発展に期待したいと思います。 (H)




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