YPCニュース
167
200
2.2.8 横浜物理サークル発行巻頭言
市江 寛 135
1月例会の報告
まとめby山本明利 編集by市江 寛 136-142
(0) デビッド・アッシャー博士「しし座流星群」を語る(理科部会物理研修会・天文講演会)
(1) しし座流星群の写真
(2) 友紀効果
(3) 液体窒素による霧箱?
(4) タマゴ落とし
(5) SONYのICカード
(6) ルーローの四面体最終バージョン
(7) 電流と電圧の教え方
(8) 物理で使える100円パズル
(9) 知恵の輪
(10) 大阪日本橋みやげ
(11) トゲヌキレンズ
(12) 浮沈子用たれビン
(13) コミケのお土産
(14) エネルギー授業実践報告
(15) 物理学史断章
理科教室2002年1月号 ミニ実験とともに学ぶ波の授業
小沢 啓 143-145
定幅でなかった「ルーローの四面体」
車田浩道 146-147
物理の授業をどう始めるか
宮崎幸一 148-155
※ハイパーリンクで飛べない記事は、Web上にアップされていないものです。技術上の問題等で、すべて対応することは不可能です。また、ニュースは投稿原稿で構成されていて、その主要部分はWeb上で読めないので、お読みになりたい場合は、紙メディア版ニュースか、年1回発行されるニュース合本をご購読下さい。紙メディア版ニュースご購読は、1年間2000円です。ニュース合本は、1冊1500円です。申し込み方法等は、鈴木健夫までメールにてお問い合わせください。メール問合せ先は、トップページからリンクしています。
今回は忙しいすたさんに代わって、鎌倉学園の市江がニュース原稿の編集をやることになりました。私も暇というわけではないのですが、日頃の恩返しに少しでもなればと思っています。
前会の例会で、私が使っているオームの法則の授業プリント(中2)を参加者の皆さんに見てもらいました。最近、小沢さんが授業の内容について熱心に発表されているのに刺激されて、これと言って新しいことはなかったのですが(そのためニュースには載せていません。)、「こんな風にやっています。」だけでも何かのきっかけになるのではと考え、思い切って発表することにしました。すると、電流の「水流モデル」の是非についていろいろ議論が沸き起こり、今回の例会では宮田さんが私の発表を受ける形で、ご自分の授業プリントを紹介してくれました。その中で私は、自分の授業の中に自分では気付いていない大きな穴があることを知りました。
私だけでなく、誰もがそれぞれこだわりをもって授業をしていることと思います。そうしたこだわりをぶつけ合うことで、よりよい教材が出来ていくとしたら、これほど有意義なことはないでしょう。他の方々がどんな風に授業をしているのか、それを知るだけでもとても参考になります。さらに議論が起これば、問題点もはっきりします。それは、改善への第一歩です。わたしが、YPCの例会に期待していることは、こんなことなのかもしれません。しばらくは、生徒の誤解をまねかない、より良い電流モデルはないものか、少し考えてみようと思っています。
市江
1月例会報告(まとめby山本明利+鈴木健夫)
日時:2002年1月9日(水)17時〜20時半
会場:慶応義塾高校
参加:計32人
内容:
(0)デビッド・アッシャー博士「しし座流星群」を語る(理科部会物理研修会・天文講演会)
例会に先立って、会場に隣接する慶應大学理工学部矢上キャンパス創想館にて、しし座流星群の流星雨予報で有名な英国の若き天文学者、デビッド・ジョン・アッシャー博士の講演会が開かれました。神奈川県理科部会物理研修委員会が主催し、ブリティッシュカウンシルおよび日本スペースガード協会の協力で実現した夢のような講演会で、100人にのぼる空前の聴講者を集め、大好評でした。
公演後、アッシャー博士を囲んで記念撮影するYPCメンバー。博士が持っているのは、宮崎さんが撮影し、プレゼントした写真です。
(1)しし座流星群の写真 広瀬さんのビデオ・写真販売と宮崎さんの発表
昨秋11月19日未明のしし座流星群は、おそらく一生に一度のすばらしいスペクタクルでした。YPCメンバーも各地に散って、貴重な記録を残すことができました。今回の例会はそれらの成果を持ち寄って交換し合う機会になりました。
まず、前回の例会で宮崎さんが紹介し、注文を受け付けてくれた青少年センター科学部天文課広瀬洋治氏が西臼塚で撮影した記録ビデオ(NEPTUNE100使用)と写真(左側の4枚)が販売されました。流星痕の写真が特に見事でした。加えて右上の1枚の写真は車田さんがコミケで入手してきてくれたも
ので、5分間露出の1枚の写真に20個もの流星が写っています。宮崎さんが八ヶ岳観音平で撮影し、アッシャー博士にプレゼントした写真は、次回予約販売される予定です。
右はカラープリンタの発色が、フォトプリント用紙の種類によって異なることを説明する宮崎さん。気に入った発色が得られたら、ペーパーの種類を変えてはいけないということです。
(2)友紀効果 車田さんの発表
MeSci実験工房の中川友紀子さんが超伝導体でネオジム磁石の浮上実験を行っていたところ、ネオジム磁石が液体窒素の中に誤って落ちて偶然発見した現象だそうです。液体窒素に円柱状の金属を入れると自然に転がります。容器の壁にぶつかっては転がり、箱の中で往復運動を繰り返します。磁石である必要はなく、銅、アルミの円柱状のものでも同じ結果が得られました。液体窒素を金属円柱が全部つかるくらいの深さにしてもよく転がりますが、完全に冷えきって熱平衡に達すると転がらなくなります。
詳細な機構はまだ解明されていませんが、円柱に触れて気化し、立ち上る窒素の泡がトルクを生じさせていることは間違いなさそうです。
(3)液体窒素による霧箱? 車田さんの発表

容器に液体窒素をいれ、容器からの窒素蒸発の気流が安定すると表面に無数のVの字状の飛跡が見えてきます。横から光を当てて観察するとよく見えます。空気中のラドンの崩壊による放射線の飛跡だという説もありましたが、例会の席で放射線源を脇に置いて観察するなど、検討を加えた結果、どうやら放射線ではなく、液体窒素の飛沫が描く放物線らしいという結論に達しました。それにしても、幻想的な光景です。液体窒素にこういう楽しみ方があるとは知りませんでした。
(4)タマゴ落とし 井上徳也さんの発表
運動量と力積の授業の中で、4階の高さから落としても生玉子が割れないように包装するという課題を生徒に課したところ、実に奇抜なアイデアや個性豊かなデザインのものを作製してくれました。使用してよい材料は、新聞紙、ストロー、画用紙などです。作品はパラシュート型とショックアブソーバ型に大別されます。
この課題に取り組むと、運動量と力積の関係の理解がスムースになるとのこと。写真はいずれも合格作品。
(5)SONYのICカード 車田さんの発表

好奇心旺盛な車田さんは、発売になったばかりのJRの「Suica」(Super Urban Intelligent CArd)を分解してしまいました。すると、なんとSONYのロゴが現れました(分解することを見越したつくり?)。左上の黒丸の所にICチップがモールドされているようです。プリントされたコイルとコンデンサーと思われるくし状の部分が見られます。技術の詳細は不明。
(6)ルーローの四面体最終バージョン 車田さんの発表
車田さんの「ルーローの四面体量産計画」が最終局面を迎えました。精密金属バージョンから型取りした大量生産タイプです。左はハイキャスト、右はリゴラックという樹脂を使用しています。販売が楽しみです。
定幅図形と思われていたルーローの四面体は、実は厳密には定幅でないことが車田さんによって報告されました。板書で説明する車田さん。約2.5%の膨らみをどう定幅にするかが今後の課題だそうです。
(7)電流と電圧の教え方 宮田さんの発表
中学生に対して、電流と電圧の概念をどう教えるか。前回例会の市江の水流モデルを用いた教授法の発表を受けて、宮田さんは授業で実践しているビー玉モデルによる教授法を紹介してくれました。ピンボールのような多数の釘がうってある斜面が抵抗に見立ててあります。
モデルの当否をめぐり、前回に引き続き熱い討論が展開されました。結局、どちらのモデルも、並列・直列などにあまり深入りすると無理が来ます。モデルは、その限界を踏まえつつ、初学者のイメージ作りの助けとして適切に用いるべきだという結論に達したが、もっと時間をかけてこのような教育論を深めたいものです。
(8)物理で使える100円パズル 鈴木健夫さんの発表
ダイソーのマジックコーナーで見かけたパズル。「不思議な十字架」と「ノアの箱船」です。物理の授業でもツカミに使えそうなグッズです。
「不思議な十字架」は内部でスライドする2本の棒が、掛け金のようになって縦にしても横にしてもはずれない。しかし、「ある操作」を行うと、ご覧の通り。内部の棒が手も触れないのに引っ込んでしまい、十字架が分離します。買えばタネあかしがついてきます。
中央のくぼみに落ち込んでいる二つの鉄球を、両端のゴールに入れるには、どうしたらよいでしょう。透明塩ビのふたがかぶさっていて、直接手を触れることはできません。傾けると一方が転げ落ちてしまいます。しかし、「ある操作」を行うと、二つの鉄球は同時にゴールに入ります。こちらはポピュラーですね。
(9)知恵の輪 徳永眞由美さんの販売会
暮れに、車田さんの紹介で、YPCの楽屋でちょっと話題になった知恵の輪です。スタンダードなものですが、意外と解き方を知っている人は少ないようです。徳永さんは、この知恵の輪を自作して例会で分けてくれました。まるで本物の製品のようなできばえです。右の写真のようにボタンホールに通して・・・さあ、はずしてみましょう。ちなみにひもは伸びませんし、とりはずしもできません。
(10)
大阪日本橋みやげ 鈴木亮太郎さんの販売会
亮太郎さんが大阪の電気街で見つけたOAタップです。一見、どこにでもありそうなシロモノですが、よく見ると電流計がついています。何かに使えないでしょうか。
(11) トゲヌキレンズ 平松さんの発表
平松さんが100円ショップ(ダイソー系ではありません。)で仕入れてきたルーペ付きトゲヌキピンセットです。ちょうどピンセットの先にピントが合っているのでとても使いやすいです。老眼が増えてきたYPCでは、人気商品になるでしょう(^^;)。¥580では買いませんが、¥100ならGETですね。
こちらは同じシリーズのミニマイクロレンズで、15倍のルーペです。これと偏光板を組み合わせ、簡易鉱物顕微鏡を作る実践があります。
(12) 浮沈子用たれビン 奥野さんの発表
浮沈子用のたれビンにとことんこだわる奥野さんが今回見つけてきたのは、ドラえもんのたれビンです。トイザらスで3個入りが250円。他に、キティちゃんのたれビンは、サンリオショップで4個入り300円だそうです。これで回る浮沈子をつくれば、大人気まちがいないでしょう。
はちみつの容器の口を溶かしてふさげば、ペットボトルに入らない大きな浮沈子もらくらく入ります。
(13) コミケのお土産 車田さんの発表
車田さんがコミケすなわち「コミックマーケット」で仕入れてきたものを披露してくれました。入場するだけでも大変という人気のイベントです。各方面の「オタク」たちの出色の作品が広い会場いっぱいに並ぶそうです。 写真は「ロボフェスタ川崎大会」CDです。格闘ロボットの開発から競技模様がMpegとして記録されています。

こちらは「モデルロケットの大会」のCDです。大会の模様と龍勢祭り(10月14日)がMpegで記録されています。かなり大型のアマチュアロケットや、デザイン懲りまくりのロケットが大空をめざすようすが多数収録されています。
(14) エネルギー授業実践報告 小沢さんの発表
小沢さんが科教協関ブロ川崎大会(2001.11)で発表したものを、例会の席で改めて発表してくれました。
小沢さんは、毎年エネルギーの単元から生徒が離れていく感じがして、それは明らかに授業がまずいのだろうという課題意識がありました。そこで、今年は(1)力学の初歩の授業、(2)エネルギーの導入、を丁寧におこなうことを課題に取り組んでいます。今回はそのうちの(2)の発表です。
例会の議論の中で「手に持ったものを水平に動かしても仕事はゼロってどういうこと?」「負の仕事って何?」という生徒の素朴な疑問に、物理的な意味がすっと入るような伝え方で答えるのは難しいですが、それにチャレンジしていかなければならない、という新たな課題を得ました。議論していると、メンバーそれぞれの「手の内」が明らかになってくる。これも収穫です。これからの例会でも議論を大切にしていきたいものです。
左はゴムひもを引き伸ばし、弾性エネルギーを実感させるシーン、右はおもちゃの吹き矢で仕事が距離に比例することを示しているシーン。
(15) 物理学史断章 徳永恵里子さんの紹介
徳島の西條敏美先生の新著『物理学史断章――現代物理学への十二の小径――』恒星社厚生閣、2800円。いろいろな学会誌、雑誌に掲載された西條先生の科学史論文を集大成したものです。サブタイトルのとおり、現代物理学の形成につながった12のエピソードが綴られています。原典に当たりながらの緻密な研究です。巻末の山本義隆論、広重徹論も、他書では読めない興味深い記事です。ぜひ座右に置きたい一冊です。
車田 浩道@横浜物理サークル(YPC)
1.はじめに
ルーローの四面体は、ルーローの三角形をヒントに空間における定幅な空間図形をアプローチしたものです。ルーローの三角形の場合には、正三角形の一辺の長さを間隔とする2本の平行線の間で、どのように回転しても、2本の平行線の間にピッタリとはまることは作図から簡単に定幅であることがわります。
2.誤差の発見
では、このルーローの四面体の場合も同様ではないか?と考えて製作しました。ルーローの三角形は正三角形をベースに簡単に作図でき、空間へのアプローチとして正四面体から考えてみました。が、そううまくいかず、製作には試行錯誤のうえ“おむすび”の形をした「ルーローの四面体」が完成しました。(製作過程は別冊「ルーローの四面体製作手順」を参照)
正四面体をベースとしているので、一つの頂点と対する球面の上のどの点との距離も、常に一定であることは明らかです。しかし、空間と平面は違うのではないか?2つの平行な平面の間で、接する点が頂点からはずれる場合がでてくる。例えば、球面と球面の交わってできる稜線上の点とその反対側の点との距離は、はたして、正四面体の一辺と等しくなるのか?稜線と反対側のねじれの位置関係にある稜線は、どの稜線上の任意の点を中心として反対側の稜線は円弧になっている?と見た目で決め付けていて証明してませんでした。製作していながら、ルーローの四面体の製作過程の試行錯誤、シンプルな構造と完成した幾何学的な美しさの前に“もしかしたら・・・”という考えは毛頭もなく、定幅だと決め付けてしまいました。
製作して、ルーローの四面体3つの上に板を置いて転がしてみると、ほんのわずかにデコボコが感じられました。製作過程で頂点が丸まってしまったのが原因で、その分少し小さくなったと考えていました。
![]()
3.定幅率の計算
数学仲間の宮本先生(盛岡第一高校)からの指摘もあり、特別な場所として、球面と球面が交わる曲線、稜線の中点と反対側の稜線の中点との距離を計算してみました。
図1のように正四面体の断面を考えます。1辺の長さを2とします。
まず、正四面体の一辺CDの中点Mと、点Aを結ぶ辺の長さを計算してみましょう。
三平方の定理からAM=
であることがわかります。
図2は正四面体の断面をルーローの四面体に当てはめたものです。
点P,Qは稜線の中点、線分PQと正四面体の一辺ABの交点を点Nとします。
AB⊥PQとなり∠ANMは直角で三角形ANM、ANQは直角三角形となります。
点Aから点Qはルーローの四面体の頂点Aから対する球面までの距離なのでAQ=2となります。
三平方の定理より、直角三角形ANMからAN=1、AM=
、NM=
直角三角形ANQからAN=1、AQ=2、NQ=
MQの長さは、NQ−NM=
―
となります。
ここで、正四面体の一辺の中点と稜線の中点との距離はどこでも同じなのでPN=QNとなるので、
稜線の中点とねじれの位置の稜線の中点との距離PQは、
PQ=PN+QN+NM
=2×(
―
)+
=2
―
≒2×1.7320508−1.41421356
≒2.049880527・・・ となります。
定幅率は、定幅値2に対して、約2.05と予想に反してわずかに2.5%膨らんでいることがわかりました。目をよーく凝らして見ても、わかりずらいです。
4.定幅へのアプローチ
すべての稜線をサンドペーパーで1.25%削り(勘に頼って)、ルーローの四面体に板を乗せて転がすとき、板や床、ルーローの四面体自体のへこみ具合などを考慮に入れると、スムーズに転がり定幅だと錯覚してしまうほどです。
今後のアプローチとして、
1. 膨らんでいる稜線の削り
2. 稜線の膨らみ2.5%を定幅値(2.049880527・・・ )とし、頂点付近を膨らませる
3. 「球」以外に定幅立体は無いことの証明
が考えられます。