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2002.4.3 横浜物理サークル発行


目次

巻頭言                      すた 181-182
3月例会の報告              まとめby山本明利+鈴木健夫 182-185
(1) 星の折り紙
(2) 12人の怒れる男
(3) 炎のダイオード
(4) 電気の授業報告
(5) 理科室燃える
(6) 燃料電池

電気の授業メモ                                 小沢 啓 186-197
「ヘルムホルツ」――――――石原純著『偉い科学者』より         198-201

編集後記                                        すた    202

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巻頭言

新しい年度が始まりました。皆さんの準備はいかがですか。
昨年度は、私にとってはかなり、いや非常に大変な1年間でした。(毎年そうなのですが、昨年度は別格でした。)教員になって20年ですが、その中でも大変さで記憶に残る年だったと思います。今の学校に来てから、2巡目の担任でしたが、その仕事に振り回される1年間でした。要因は二つあります。
一つは、予想以上に生徒指導上のトラブルが大変だったこと。しかも、それが悪い方悪い方に進んでいきました。最終的には、担任を1年間して何も残らないという心境になってしまう事態で終わってしまいました。私の力量不足もありますが、そもそも担任になったのも、望んでなったのです。私自身が強い希望を出さなければ担任になりませんでした。しかし、結果としてやらない方がよかったという状態になってしまったことが悔しい。
もう一つの要因は、時間的余裕がまったくなかったこと。1巡目の1年担任の時も大変でしたが、持ち時間は今回より少なかったし、校内の会議の量も今と比較にならないくらい少ないものでした。今は、再来年の再編統合を控えて、そのための会議の時間がどんどん入ってきます。一つのことを決めるにも、統合の相手校とのすりあわせをするために2倍から3倍の時間がかかります。しかも、そこで決めなければいけないことは、再編統合がなければまったく考えなくてもよいことなのです。ただでさえ生徒指導上とトラブルとその対応の会議で忙しい学校なのに、この再編の負担は常軌を逸しています。正直なところ、再編がなければもっと今の学校に腰を据えていてもいいという気持ちがありましたが、今は早く逃げ出したい。もっと教育にとっても自分自身にとっても生産的なことに時間を費やしたい。そう思っても、それが実現しません。
せめてもの心のよりどころは、授業です。授業自体は今まで同様、成立していると言うにはほど遠い状態ですが、今の校内に、授業をよくしていこうというムードがあります。そのための委員会ができていて、学期に数回のペースで授業公開とその研究会をしたりしています。2月には私の授業を公開してビデオ撮りをし、それを分析して研究会をするという試みもなされました。(4月例会ではそれを紹介するつもりです。)今年度は私は担任を下りるので、少なくとも生徒指導上のトラブルで振り回される時間は大幅に減るはずです。その他の仕事は相変わらずですが、今年は授業で勝負する年にしようと、決意を新たにしているところです。

すた


   


月例会報告(まとめby山本明利+鈴木健夫)

日時:2002年3月6日(水)17時〜20時半

会場:東京電機大学神田キャンパス・7号館505教室

参加:21

内容:

(1)  星の折り紙 工藤さんの発表

 前回の例会で時間がなくて詳しく教えてもらえなかった、「洋紙の縦横比をうまく応用した星形の折り方」を、工藤さんに指南してもらいました。

 洋紙の縦横比1:√2と星形の頂角36°のタンジェントの近似をうまく利用しています。洋紙の長い方を3%弱切り縮めて、対角線に沿って折ると、星形の頂角が作れるのです。あとはこの角度をうまく5個作るように折り進めていきます。折り紙は論理的なのです。

 

(2)  12人の怒れる男 市江さんの発表

 ヘンリー・フォンダ主演のクラシックな「裁判もの」映画の紹介。

 17歳の不良少年が犯したとされる殺人をめぐり、12人の陪審員が評決のための討論を展開します。ヘンリー・フォンダ扮する「8番の男」はただ一人少年の無罪を主張し、地道に論理的に他の11人を説得していきます。

 例会では、これを物理の授業で見せるのはどうか、という疑問が出されましたが、LHRだと自分の担任しているクラスでしか見せることができません。市江さんはこれを授業で見せることで、科学的・合理的なものの考え方というスタンスを示す教材として提示することにこだわっているのです。

 

 

 

(3)  炎のダイオード 山本の紹介と追試

 椚座淳介氏のWebページ「突撃実験室」(http://www.exp.org/)に紹介されていた実験の追試です。トーチバーナーの火炎に電流を流すと、ダイオードのような整流作用を示すというものです。

トーチバーナーを用意し、火炎の中に炭素電極(グラファイト棒)を差し込んで、トーチのノズル部との間の抵抗をテスターで測定します。このテスターは赤いリード側が高電位ですが、炭素電極側を赤リードにつないだときのみ、抵抗値が測定できました。つまりノズルから炭素電極に向かって電子が移動するような電流が流れるのです。逆極性にすると電流は流れません。

 炎はプラズマ状態なので電流が流れること自体はそれほど不思議ではありません。問題は電流に方向性があることです。炎の勢いに乗って電子が移動するという説は、下の写真のように鉄釘と炭素電極を組み合わせた実験で即刻否定されました。つまり、電極の位置を入れ替えて、釘の方を下流に持っていってもやはり電流は流れるのです。電子はプラズマ流をさかのぼることもできます。

 おそらく金属は熱電子放出を起こしやすいが、グラファイトは電子を放出しにくい、つまり仕事関数の違いによるのではないかという結論を見ましたが、電極の種類や組み合わせを変えるなどしてさらに追求してみたいところです。

 

 

 

 

(4)  電気の授業報告 小沢さんの発表

 高2電気の授業の実践報告です。小沢さんは「場」から入ると、どうも授業がうまくいかないという実態を踏まえ、直流回路から入ることにして、電位差概念の定着を目指しました。小沢さんオリジナルの数々の実験器具と共に、授業のシナリオが紹介されました。中学校までに習得しているだろうと我々が思っていることでも、いざ実験をさせると、実はわかっていないということが明らかになってきます。

 上の写真は豆電球の回路。並列と直列を組み合わせると、なぜか並列にした方が光らない。まず生徒に「あれっ」と思わせるのがねらいです。このあと各部の電圧・電流を測定します。写真右上は抵抗が電位差分割器としてはたらくことを示す実験器具。右下は、その拡大写真です。

 写真下左は抵抗、CdSセル、サーミスタをとりつけた基板。抵抗による電位差分割の概念がつかめれば、光センサー、温度センサーとしてのはたらきが理解できます。AdvancingPhysicsと同じような展開です。下右は光が当たったときにブザーが鳴り止む回路を組んだところ。

 次は乾電池の内部抵抗の存在に気づかせる授業展開の例。テーブルタップに電球を次々に並列接続していくと、それぞれの電球の光り方がだんだん暗くなってきます。ここでまた「あれっ」と思わせて、コードの途中にはさんだ抵抗器を見せて種明かしをします。電池で起こる内部抵抗による電圧降下を目に見える形で示すのです。

 今回は発表者が少なかったので、時間を充分使って討論をし、授業のことを語り合いながらの発表となり、有意義でした。

 

 

 

 

(5)  理科室燃える 平松さんの発表

   川崎で起きた理科室火災の推定原因について解説がありました。亜鉛末を水酸化ナトリウム水溶液に入れ、加熱して銅板にメッキする実験で、使用後の亜鉛末をゴミ箱に捨てたところから出火したらしい。亜鉛末の表面がフレッシュになったため、空気中の酸素と結びついて発熱したものと思われます。

 一部マスコミで水酸化ナトリウムが発熱などと報道されたのは誤りだろうといいます。新聞記事の「金メッキ」も不適切な表現だろうとの指摘がありました。

 何はともあれ、われわれも事故防止のため、こうした事例の研究は重視したいところです。

 

(6)  燃料電池 渡辺さんの発表

 渡辺さんは、中村理科の新型燃料電池教材を紹介してくれました。電気分解と燃料電池発電の両方をひとつの装置でおこなうことができます。太陽電池で、水から水素と酸素を作り、その水素と酸素を利用して、燃料電池として電気を作るしくみです。

 写真の二つの円筒形水槽にはさまれたメッシュの部分が燃料電池の心臓部です。電極間に電圧を加えると、電気分解で円筒形水槽の上部に酸素と水素がたまります。それらが触媒のはたらきで再結合するとき電流が生み出されます。

 この燃料電池に自動車ユニットをつけると、燃料電池をエネルギー源として自動車を走らせる演示できます。2003年登場予定の市販の燃料電池自動車を、教材で先取り体験することができるエネルギー実験セットです。本年4月から発売予定だそうです。中村理科のカタログでは、B10-2047 燃料電池自動車NIX(二クス)価格39,800円。

 



     


(編集後記)

3ヶ月ぶりのニュース編集作業です。今回は、市江さんが愛娘(奥さんも!)に会いに行き不在のため、私が復活しました。この2ヶ月間、正直なところ市江さんにバトンタッチして、かなり楽をさせてもらっていました。ニュース編集・印刷作業は、精神的な負担はないのですが、時間的にはかなりの負担でした。でも忙しいときにこそこういう仕事をすることで精神的バランスを保てていたのかもしれません。また、5月号からは市江編集長が復帰する予定です。しかし、前と違い編集長が忙しいときにすぐバトンタッチできる体制ができています。市江さんも無理せずに、楽しみながら続けて下さい。

(すた)