YPCニュース

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2002.5.18 横浜物理サークル発行


目次

巻頭言                      金子英樹 203-204
4月例会の報告                  まとめby山本明利 204-210
(1) ダイソーの老眼鏡
(2) 授業研究会の報告
(3) 「べからず集」・「自由研究」ビデオ
(4) 青少年センターこどもの日大会
(5) 銅・アルミパイプとネオジム磁石
(6) コイン選別器の改良
(7) 波の独立性を示す実験と赤外線通信
(8) 吸盤と下敷き(伊東家ネタ)
(9) 光るアンテナ
(10) 戸田先生の実験室
(11) パワーズオブテンのフリップブック
(12) 慶應ニューヨーク学院の見学報告
(13) シンガポールサイエンスセンター
(14) EASY SENSEによる中和滴定曲線
(15) 東日本たのしい授業フェスティバル
(16) 簡易真空ポンプ


度数0.5〜5.0の老眼鏡                     喜多 誠 211
磁石一つのコイン選別器                     喜多 誠 212
携帯電話とLED付き光るアンテナ         喜多 誠 213
次世代型データロガー EASY SENSE     山本明利 214-217
「指にX線当てる授業」--新聞記事より 218
「おもしろ科学たんけん工房」紹介記事 219
Advanced Physics研究会 資料より 第4章「Testing Materials」 徳永恵里子 220-223

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巻頭言

私はこの春、10年所属した専門高校から、もうじき100年という伝統ある進学校へ異動をしました。
前任校は職業訓練校の流れを汲む工業高校で、各学年3クラス、県内でも一番規模の小さい方に分類されるこぢんまりとした学校でした。生徒は結構育ちのよい子が多かったのですが、でも、やはり勉強となると苦手で、特に抽象的な思考は「何やってるの?」状態になることがあり、直感的な刺激の方がダイレクトに知恵に結びつく、そんなタイプの授業展開が有意義でした。
さて、新任校はというと、8クラス×3学年の規模、うち選択の授業ばかりで物理が2年生・3年生とも4クラスずつ展開されています。1ヶ月が過ぎましたが、最近私には、五月病か?という自覚症状がでてきています。授業は、すべて選択者が対象ですから、しっかり物理の本質的なところを理解させなくてはいけないと、重責を感じつつ、伴っていかない自分の実力について、かつての不勉強を悔やんでみることもあります。
ただ、本質的には、理屈に走りすぎて、ダイナミックな授業が出来ていないのが原因らしいと思います。なぜなのか、、、裏をしっかりとることにばかり準備を取られて、「これがそれだぞっ!」という、説得力ある視覚的な演出が実験として組めていないからです。
1年目で、どんな器具がどれだけあるのか?生徒の興味・関心はどこにあるのか?というようなことが把握できていないのですから、やむを得ないところもあります。しかし、前任校では、こうやれば食いついてくる、、、なんか釣りをやっているような、釣り名人ならここで仕掛けるというタイミング・餌の種類や疑似餌が、あうんの呼吸になっていました。
教職員は誰でも、多少は、教祖さまになりたいところがあるものだと思います。生徒が、「エッ!何で?」、「あ、そうなのかぁ。」、「ウンウン、解ったゾ。」って反応してくれると、これを読んでくれている方だって、また次の日への活力が生まれてくるのではありませんか?そういうロマンが教職にあるからこそ、こんな劣悪で不当な労働条件や労働環境に、労働市場の原理に逆らってまで、希望し入ってくる人がいるわけではないでしょうか。
こんな、教職の最大の魅力「生徒との感動の共有!」、今のボクにはそれがとても少ないです。
放送部の生徒たちにも、網を仕掛けました。自分のパソコンを持ち込んだり、96年度以降の全国大会ベスト4の番組を次々鑑賞させました。「自分たちならもっとすごいのが作れる」と興味を示しますが、自主性の強い生徒たちなので、職員による干渉を嫌い、過度のアドバイスは逆効果です。3年生しか部員のいない現状を打開するには、是非とも今大会で実績を上げたいところですが、焦っても生徒に煙たがられてしまうでしょう。思いばかりで、なんか素振り・空振り状態です。
湘南台高校でYPCのメンバーの一人、山本先生がなされているように、実験教室にもいろいろ展示をしました。授業の前後、或いは、授業中でも、生徒たちはそれをいじります。面白がっていますが、理屈を知ろうとするというよりは、ただ、授業にはいるのにストップをかけたがっているという子もいます。生徒が求めるものが高いと、ちょっとしたモノだけでは、授業の流れにしっかりと則って、前述のような感動を引き出すことができないかもしれません。今、ボクのやっている授業は、予備校の授業以下という感じです。現実を洞察したかのように斜に構えて、受かればいいんだと考える生徒に対して、一気に予備校的な授業で教祖さまになるのもありか。でも、YPCのメンバーの一人として、それは許されないでしょう。
いろいろ愚痴のように書きましたが、今更のように、いろいろな学校があるのだなあ、と強く感じています。確かに、非行指導、生活指導や掃除の指導など、ほとんど必要がありませんが、また別の面でそれなりに、大変なんだと分かりました。今みなさんがいる学校はどうなところでしょうか?  →つづく

 金子 英樹 @YPC


   


月例会報告(まとめby山本明利)

日時:2002年4月17日(水)17時〜20時半

会場:慶応義塾高校

参加:31

内容:  

(1)  ダイソーの老眼鏡 喜多さんの発表  

 百円ショップ「ダイソー」に新しくお目見えした老眼鏡の新シリーズ。0.5〜5.0の13種のジオプトリーが手に入ります。レンズの大きいフレームのものを選んで光学実験用に使います。0.5の老眼鏡はこの13種の老眼鏡を扱っている店でないと入手できません。

 今回使用したのはジオプトリー0.5と1.0のもの。それぞれ焦点距離は2m,1mなので、教室をカメラにするときのレンズとして手頃です。下のように2枚並べて段ボールの枠にはめ込み、教室の窓にセットして暗幕を閉じる。スクリーンは以前にも紹介のあった、半透明ゴミ袋を木枠にはったもの。

 レンズから1mのところと2mのところでそれぞれ遠景にピントが合い、逆さまの実像が観察できます。倍率の違いも一目瞭然。レンズ2枚で同時に見せるのはなかなかの工夫です。

喜多さん自身のまとめの記事がありますので、ご覧下さい。

 

(2)  授業研究会の報告 鈴木健夫さんの発表  

 鈴木さんは職場で授業を相互に公開しあって記録をとり、批評しあう「授業研究会」を実践しています。例会では自身の授業の様子をビデオで見せてくれました。このときの討論では、生徒を飽きさせないようたくさんの実験を見せるべきなのか、ネタを絞ってじっくりやるべきなのか、また、実験にも見向きもしない生徒にはどうアプローチすべきか、などが話し合われたといいます。

※鈴木による補足:本校では昨年1ヶ月に1回くらいのペースで授業公開と研究会をしてきました。例会で見ていただいたのは、2月に行った私の物理の授業。「こんなにすごい実態か」という声と同時に、「(生徒は)意外としっかりやってる」という声もありました。このときの校内の研究会では、全体の研究会前にビデオを見ながら私がインタビューを受け、その逐語録をテーマ別に分類してプリントするという手法も試みられました。しかし、そのために費やした時間と労力の割りには、研究会自体で討論する時間が確保できず、難しさを感じました。YPCの例会でももっとじっくり授業のあり方についてなどを議論する時間が取れたら、というのが本音ですが。なお、例会では「オシロはきれいな波形のもの(たとえば音叉など)から見せた方がよい」「逆さ振り子は生徒にやらせるべき」「計算・比例関係ぐらいはやった方がよいのでは?」などのアドバイスをいただきました。

 

(3)  「べからず集」・「自由研究」ビデオ 山本のビデオ紹介  

 新課程に合わせ、大日本図書から新たに発売されるNHKビデオ教材シリーズ「理科実験観察集」の紹介。物化生地各分野があるが、物理分野では「物理実験べからず集」と「物理の自由研究」が新企画として特に注目されます。

 べからず集ではその名のとおり、レーザーの取り扱い、ペットボトルの破裂、感電、収斂火災など、実験室で起こりうる事故を想定して、危険防止を訴えています。

※鈴木健夫による補足:このビデオは、山本さんの監修によるものです。

 

(4)  青少年センターこどもの日大会 黒柳さんのPR  

 創立40周年を迎える青少年センターでは、5月5日こどもサイエンスフェスティバル「わくわく天国2002」を開催します。そのPRがされました。このほか黒柳さんからは、日本科学協会の報告書に寄稿された盛口襄氏の理科教育の現状を憂うる記事の紹介がありました。

 

(5)  銅・アルミパイプとネオジム磁石 喜多さんの発表  

 ネオジム磁石を安く購入するなら、知る人ぞ知る「二六製作所」がおすすめですが、これはそこで入手した径20mm、厚さ3mm、価格380円のネオジム磁石を使ったおなじみの「空中浮遊」の実験。磁石は2枚重ねにして使います。この磁石にちょうどいいそろった内径のアルミと銅のパイプを入手することができました。比較実験にもってこいです。落下時間は50cmの長さでアルミは7.7秒、銅は12.8秒です。

   

(6)  コイン選別器の改良 喜多さんの発表

 これも同じ二六製作所のネオジム磁石を用いた実験器具です。渦電流ブレーキを利用した「コイン選別器」ですが、片側の透明板を薄いものにすることで、ネオジム磁石1枚で十分な性能を発揮できるように改良しました。落下地点にコップなどを置いて、コインの種別ごとに分類して受け止めます。詳しくは、喜多さんの記事をご覧下さい。

 

(7)  波の独立性を示す実験と赤外線通信 塚本さんの発表

 赤い光束と青い光束を交叉させると、お互いに通り抜けあうことから、「波の独立性」を示す実験。超高輝度の赤色LEDと青色LEDの光に別々の音楽の信号をのせ、その2つの光束を交叉させてお互いに通り抜けあった後、2個の太陽電池でそれぞれの光を受けてラジカセで増幅すると別々の音楽が同時に聞こえます。この状態で2つの光束が交叉している位置に赤色のフィルターを置くと赤い光にのせた音楽だけが聞こえ、青色のフィルターを置くと青い光にのせた音楽だけが聞こえます。

 塚本さんは最初、岐阜物理サークルの「懐中電灯を用いた光通信」の方法を取り入れて、色セロハンで赤い光と青い光をつくり実験しようとしたのですが、太陽電池の受光感度が懐中電灯の光の中に含まれる赤外線の領域でかなり高いためうまくいきませんでした。試行錯誤の末、超高輝度の赤色LED(EL363UR−22800mcd  GaAlAs ピーク波長は660nm)および青色LED(SLP−0B36A−81  SANYO  2500mcd  GaN ピーク波長は468nm)を使用することで実験に成功したといいます。

 塚本さんはこのほか「赤外線発光LEDを使った光通信の実験」も披露してくれました。赤青フィルターを重ねたり、2枚の偏光板を直交させて重ねた「可視光カットフィルター」では赤外線が通るが、アルミ蒸着のハーフミラーでは赤外線が通らないことが示されます。

(8)  吸盤と下敷き(伊東家ネタ) 喜多さんの発表  

 吸盤と下敷きで机を持ち上げる! 先日「伊東家の食卓」で放映された「大発見」ですが、原理はゴムピタ君といっしょだし、かつて鈴木健夫さんがNHKの「やってみようなんでも実験」で披露したそのままのネタです。なんでそれが大発見になるの?ということで一同苦笑。

 ネタ切れで苦しい台所事情は推察できますが、「伊東家」の制作スタンスにはだれもが不信感をあらわにしています。

 

(9)  光るアンテナ 喜多さんの発表

 携帯電話を電波発信器に、光るアンテナアクセサリーを受信器にして、マイクロ波の性質を示す電波実験ができます。左の2つの写真はガラス板に自転車のスポークをはりつけたスリットで、アンテナの向きと同じ方向にスポークを向けると電波が通らない。下左はアンテナを横倒しにしたところ。やはりLEDは光りません。いずれも電波が偏波していて横波であることを示す実験です。

 下右の写真は電波の干渉を示す実験。1.5Gの携帯ならば、波長が20cmなので、ちょうど10cm毎に干渉して節ができることがLEDの明るさで示せます。

 

 

 

(10)            戸田先生の実験室 右近さんのビデオ紹介

 先日、喜多さんらは富山の戸田先生をの実験室を見学し報告してくれました。例会では先生自身の制作による主な実験のデモビデオが上映されました。右は回折格子によるレーザーの干渉光の途中経路をモグサの煙で示している様子、右はバンデグラーフを使ったコンデンサーの一様電界を示す実験です。

 次の写真は有名な「戸田式大型拡散型霧箱」です。構造やセットのしかた、ラドン線源の捕集のしかたな どを解説する戸田先生(左)と、霧箱内の見事な飛跡(右)。例会出席者からはため息が漏れました。これは貴重な記録ビデオです。

 

 

(11)            パワーズオブテンのフリップブック 鈴木亮太郎さんの発表

 すずりょうさんのアメリカ土産。イームズ夫妻の有名な短編映画「Powers of Ten」のパラパラ動画です。「これはいい」「ぜひ欲しい」と大評判。さっそく、いつものように共同購入することで話がまとまりました。

   

 

(12)            慶應ニューヨーク学院の見学報告 鈴木亮太郎さんの発表

 すずりょうさんがアメリカに行ったのはニューヨーク学院で教鞭を執る小河原さんに会うため。デジカメ画像で現地のようすを報告してくれました。元気そうな小河原さんの姿もあります。縦波用ウエーブマシンは新鮮な印象です。日本人学校なのに英語で板書しているのには驚きました。教材は現地のものを使っているといいます。地学の陳列ケースにはかなりアメリカらしいこだわりが感じられます。

   

 

(13)            シンガポールサイエンスセンター 鈴木亮太郎さんの発表  

 すずりょうさんは春休み中にシンガポールにも行った。サイエンスセンターにはちょっと珍しい展示物がありました。写真はボウリングの球で作った巨大な衝突球。

 1/r型ポテンシャルの展示もあり、コインをころがすようになっていますが、中心の穴に吸い込まれたコインは返ってきません。そのままドネーションになる(^^)。

   

 

(14)            EASY SENSEによる中和滴定曲線 徳永眞由美さんの発表

 DATAHARVEST社の教育用データロガーEASY SENSE(国内販売は中村理科工業)を中和滴定で使ってみたレポートです。pHセンサーと、器具、薬品を準備しておけば数分で演示が可能ですので、時間数が少なくても見せる事ができます。スターラを回しながらビュレットから一定量ずつ滴下していくだけで、2分足らずの間にご覧のような滴定曲線がみるみる描けます。教科書のグラフそのものです。

 徳永さんは、まず塩酸と水酸化ナトリウムで演示し、生徒にグラフを描かせたあとパソコンのグラフを見せ、その後、弱酸や2価の酸を用いた演示をするといいます。

   

 

 

 

(15)            東日本たのしい授業フェスティバル 徳永眞由美さんの発表  

 関東仮説授業研究会主催のイベントに参加した報告。購入したり、作らせてもらった数々の実験道具の紹介がありました。入場料1万2千円/2日はちょっと高いかな。

 写真で徳永さんが示しているのは、鉄の針金にドーナツ型の磁石を通したもの。上で磁石を話すとまとわりつくように回りながら落ちてきますが、途中で反転して登りはじめます。どういう原理だろうと話題になりましたが、その場では解決がつきませんでした。

 

(16)            簡易真空ポンプ 渡辺さんの発表

 渡辺さんは注射器真空ポンプの改良版を開発しました。ご覧のように注射器の先端に穴をあけ、裏と表からビニルテープを貼っただけの簡単なつくりです。粘着がゆるいのが幸いして、うまく吸排弁のはたらきをします。ノズルに適当な太さのシリコンゴム管をはめてアダプターとし、穴あき吸盤を使ってジャムびんに押しつけます。途中の配管を省略したのも工夫です。子供でも確実に工作でき、かなりの真空度が得られます。