YPCニュース
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2.8.31 横浜物理サークル発行巻頭言
市江 寛 275-276
7月例会の報告
まとめby山本明利 編集by市江 寛 277-282
(1) スタートレックジェネレーション
(2) カシミール3D入門
(3) モーメント演示シーソー
(4) テニアン島での金環日食
(5) 日食網膜炎
(6) 逆さメガネ
(7) 電どんモーター
(8) 電気アニメ
(9) The Moon Clock
北海道大学低温科学研究所・総合博物館を訪ねました
徳永恵里子 283-285
ホーキング博士がスタートレックに
喜多 誠 286
モーメント演示用シーソー
喜多 誠 287
逆さメガネ・ラブラブメガネ・れいんぼーメガネ
越市太郎 288-289
電どんモーター
越市太郎 290-291
電気アニメ
越市太郎 292-293
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市江です。私事で恐縮ですが、2年前からドイツのベルリンに単身赴任していた妻が、8月20日に帰国しました。夫の私としましては、大変苦労した2年間ではありましたが、日本−ドイツ間を行き来している間に、思いもよらない大きな収穫も2つありました。そのうちの1つが、回る浮沈子との出会いです。残りの1つについては、またの機会にゆずることにしまして、YPCでも一世を風靡した回る浮沈子について、出会いから魚釣り浮沈子になるまでをあらためて述べたいと思います。
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一昨年の二千年夏にベルリンで開かれた道化祭りの出店で、大変面白いガラス細工を目にした。
水で満たした大きな瓶の中に、色ガラスできれいに作られた小さなガラス細工が入れてあった。ガラス瓶の口はゴム膜でふさがれ、小さくドイツ語で「押してください。」と書いてあった。周囲の客が押しているのを見ると、指先でゴム膜を押す度に愛嬌のあるガラス細工が浮いたり、沈んだり、おまけにクルクル回ったりしていた。あたかもガラス細工自身が踊っているかのように見えて、実に不思議だった。
このガラス細工は言うまでもなく「浮沈子」であるが、私が日本で目にした浮沈子はどれも上下に浮き沈みするだけのもので、自ら回る踊る浮沈子はこれまで見たことがなかった。クラブの生徒達にぴったりの土産が見つかったと私もそのガラス細工に飛びついた。
さっそく持ち帰って生徒達に手渡すと、出店の客と同様、不思議な現象を食い入るように見つめていた。いくつかの質疑応答の後、ひと通り仕組みが分かってくると、メンバーのひとりが、自分達も同じ物を作ってみたいと言い出した。それはとても巧妙なので、同じように見事に回る浮沈子を細工することは、私にはとても無理だと思えたが、彼の熱意に押され、実験室のガラス管を使って、クラブでシンプルなものを試しに作ってみることにした。
シンプルと言っても、ガラスを溶かして思い通りに曲げたり、伸ばしたりするのは、多少の熟練を要する。おたまじゃくしのような形に膨らませ、シッポを伸ばしながら、ガラスが冷えない内に素早くらせん状にひねり、シッポの先端の小さな穴をふさぐことなく途中で切る。ちょっとした職人芸である。
何個も何個もガラスの塊ができた末に、偶然ではあるが、ようやく満足のいく浮沈子ができた。同じ物をもう一つ作ろうとするが、相手は溶けたガラス、全く同じ形の物など作れるわけがない。全体の大きさや形、シッポの長さや向き、穴の大きさなど、よく回る浮沈子には何が一番大切かを自然と考えるようになった。よく回る浮沈子とそうでない浮沈子を並べ、生徒と一緒に悩む日が続いた。
試行錯誤の末、だんだんとコツがつかめ、かなりの割合で成功するようになった。コツがわかると、生徒達は競争でガラスの浮沈子を作るようになった。下校の時間になっても誰も止めようとせず、困ったこともあった。今では生徒の方が私よりもずっとうまく作ることができる。
生徒の作ったガラスの浮沈子をYPCで紹介すると大変感心され、浅見さんや奥野さんによって、思いもよらない発展につながった。それはガラスではなく、これまで通り醤油入れを利用して、穴のあけ方を工夫するだけで回る浮沈子を作るというものだった。素材の扱いやすさが功を奏し、そこからさらに生徒自らが色々な工夫を凝らすようになり、その中から生まれたのが、魚釣り浮沈子である。
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新しく、かつ面白い実験や教材を開発するには、多くの試行錯誤といくつかのひらめきが必要であり、それらを一人でこなすのは、かなりの蓄積と労力を要します。私のような非力な教員でも、クラブの生徒とのやりとりやYPCでの情報交換を通して、生徒のアイデアを引き出すことができ、思いがけない教具の開発へと結びつけることができました。魚釣り浮沈子は、まさにYPCの真骨頂、いくつもの「たまたま」と幾人ものアイデアとが折り重なって生まれた賜物であるといえるでしょう。
市江
日時:2002年7月10日(水)17時〜20時
会場:慶応義塾高校
参加:計19人
内容:
(1)スタートレックジェネレーション 喜多さんの紹介
おなじみのSF映画スタートレックシリーズの一作。
この映画の中で、アインシュタインやニュートンのそっくりさんに混じって、スティーブン・ホーキング博士本人が、自分自身の役で出演しています。科学史上の人物をモデルにしたゲームの3Dキャラクターという設定で登場するのです。ホーキング博士はアインシュタインやニュートンと並ぶ歴史上の人物になっているというわけです。

(2)カシミール3D入門 山本の紹介
知る人ぞ知るDAN杉本こと杉本智彦氏のフリーソフト「カシミール3D」の使い方を詳しく解説したCDつき入門書が出版されました。杉本智彦著「カシミール3D入門」実業之日本社¥1900
「カシミール3D」は基本的には地図ブラウザですが、風景CG作成機能、GPSデータビューワ・編集機能、ムービー作成機能、山岳展望機能などの多彩な機能を搭載しています。国土地理院の数値地図をはじめ世界中の地形データを使用できます。上記の本には、ソフト本体のほか、プラグインや、フリー数値地図データなどを満載したCD-ROMがついてきます。オンラインでは入手不可能な、国土地理院の5万分の1(関東甲信越)、20万分の1(全国)地形図のデータも収録されており、お買い得です。カシミール3Dのホームページは、http://www.kashmir3d.com/ です。
このソフトで描いた風景CGを収録した本格的な山岳解説本も出版されています。杉本智彦著「超展望の山々」実業之日本社¥1900、日帰り山歩き隊編「極楽山歩ガイド」情報センター出版局¥1700。
カシミール3Dの鳥瞰図作成機能「カシバード」の威力をご紹介します。山本が藤沢市科学少年団の夏季活動用の資料として作成したものです。
富士・箱根・丹沢の広域鳥瞰図。それぞれの地形の特徴がよくわかります。
丹沢湖から大室山方面を望む。ルート図や、ルートに沿った標高図も描けます。少年団の登山コースが上部中央に記入してあります。段彩図などもお手のもの、季節・時刻を選んで太陽の方向を変化させることもできます。
矢倉岳上空から箱根金時山を望む。夕日の滝の見学コースが記入してあります。付近に点在する「金太郎の遊び石」は金時山から土石流に乗って流れ下ってきた岩であることが納得できます。
これらの鳥瞰図は、上記の本のCDだけで作ることができます。
(3)モーメント演示シーソー 喜多さんの発表
シーソーと共に登場したピカチュウ、ミッフィー、シロクマ(?)。力のモーメントのつりあいの演示教具です。まずはやじろべえにしてピカチュウの綱渡り。

ピカチュウとミッフィーでは、体重が違うので乗る場所を変えないとつり合いません。その昔は解説不要だったこんなことも、原体験が少ない今の高校生には、こうして見せないと実感がわかないのです。
さて、このシーソーの支点を中央からずらしたらどうでしょう。今度は板自身の質量がきいてきます。ミッフィーとシロクマ君でつり合わせることも可能。位置を選べばシロクマ君の一人シーソーも。
演示はそれぞれ計算通りであることを確認しながら行います。

これは重心の位置を求める課題での生徒作品。こめかみのあたりが重心になっていますので、ここを支えるとどんな向きでも静止します。デザインに慶應生の非凡な才能を見ることができます。
(4)テニアン島での金環日食 宮崎さんの紹介
6/11に太平洋上で起きた金環日食(日本では部分食)を青少年センターの広瀬さん(極超新星の発見で有名)が撮影しました。多重撮影で前景の木まで写しこんだ芸術的作品です。この写真(A4版)を¥500で分けていただけます。欲しい方は宮崎さんを通じて申し込んで下さい。原則YPC(横浜物理サークル)例会で清算・手渡しとなります。例会に来られない人は送料実費負担となります。
宮崎さんのメールアドレスは→ koichi.miyazaki@nifty.com です。
(5)日食網膜炎 宮崎さんの発表
太陽を裸眼で見つめることにより、網膜を損傷し、視覚に障害が出る症例が日食の時に多発します。これを「日食網膜炎」といい、眼科医学会誌に報告が寄せられています。宮崎さんは、邦文の論文のいくつかを入手し、その内容を検討しました。損傷した網膜の眼底写真なども載っていて、かなり生々しい。太陽定数をもとに、眼底に集中するエネルギー密度を求めた計算例もありました。計算過程はちょっと怪しげでしたが、症例報告にとどまらない考察は興味深いです。太陽を観察するときは、適切な減光をしなければなりませんが、障害を起こす光は紫外線や赤外線などの見えない光であるため、「見た目に暗い」だけのフィルターでは危険が伴うことがあります。素人判断は禁物です。
(6)逆さメガネ 越さんの発表
台風の中、千葉からわざわざ参加していただいた越さんの発表。プリズム仕掛けで前を向いたまま足もとの方向を見ることができる「ごろねスコープ」という商品に、ポリカミラーを組み合わせて作った「逆さメガネ」。世界の上下が逆転して見えます。
逆さメガネをかけて積み木遊びをしてみると、手でものをつかむという動作が、いかに視覚をたよりにしているかがよくわかります。しかし、長期間このようなメガネをかけて行う心理学実験によると、視覚と筋肉運動制御の対応関係は学習により矯正可能だそうです。
(7)
電どんモーター 越さんの発表
テレビのブラウン管表面に発生する静電気を電源に、どんぶりの中を黒い導体球が転がる「ムーアのモーター」のお手軽版です。電極を正負交互に配置してその間に静電高圧を加えます。スパ王のどんぶりがよいとの事。電気で動くどんぶりのモーターなので「電どんモーター」とよんでいるそうです。
ガリレオ工房の「身近な道具で大実験」(大月書店)を参考にしています。
(8)電気アニメ 越さんの発表
ゾートロープとフランクリンモーターを組み合わせた作品。回転する円筒の外側にアルミ箔の電極がはりつけてあります。これをテレビのブラウン管の表面から導いた静電気などで帯電させ、離れたところに放電用電極をおくと、円筒が回転します。電極の裏側にゾートロープの絵を描いておけば、すきまから見える絵が次々と交替するのでアニメションになって見えます。
手で回さなくても回転し続けるのがウリです。
(9)The Moon Clock 車田さんの紹介
科学未来館の開館1周年を記念して配布されている絵はがき。中央の円形がくりぬけるようになっています。

現在見えている月の方向に、この円盤上に描かれた月の同じ形を向け、中心の数字から現在時刻を選べばその方向が北をさします。逆に、北の方角がわかっていれば、時刻を知ることができるというもの。日時計ならぬ月時計なのです。原理的なことを生徒に考えさせれば教材にもなりそうです。
喜多 誠
今年6月慶大理工学部の黒佐君が教育実習生としてきた。実習にきた証に何か作っていかないかと持ちかけて・・というよりほぼ強制になっているが・・喜多が前から作りたいと考えていたシーソーを共同で作成した。近くの金物店で購入した材料は幅9cm、厚さ13mmのラワン材を購入し、ちょうど1kgの重さになるようにした。その結果、長さは約153cmになった。
そして、支える位置が変えられるように、重心から20cm毎に支えの金棒をつけた。シーソーに乗るのはミッフィー、ピカチュウ、そして熊のぬいぐるみである(図1)。それぞれ、50g,100g(3gの調整をした),500g(中に重りをつめて調整した)である。
先ずはシーソーの台の重心の位置が支えの鉛直線上にくるようにして、簡単な比の場合について確認する。図2は支点からの距離の比が1:2の場合。
ぬいぐるみ対ミッフィー、ピカチュウ組でつりあいをとってみたりした後、「ミッフィーとぬいぐるみではシーソーができない(図3)・・・何とかならないか」という問題提起をする。いろいろ意見を聞いた後、一つの解決策として台の支えの位置を変える方法を演示した。
シーソーの重さが1kgであることを示した後、支点と対称の位置に1kgの重りを置いて、釣り合うことを確認(図4)。その後、シーソーの重さも考えてモーメントの計算を事前に計算させてから、その結果が実際に合っているか実験をした。図5はうまくバランスが取れたところである。
実際にやってみるとバランスが取るのはかなり難しい。すぐどちらかに傾いてしまう。そのときのぬいぐるみとミッフィーの位置を変えずに、反対に傾けても元に戻らない。この理由を考えさせることは、重心を考えなくてはいけない良い題材になると思っている。 (2002/8/30 記)