YPCニュース

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2002.9.21 横浜物理サークル発行


目次

巻頭言                      市江 寛 21
8月例会の報告            まとめby山本明利 編集by市江 寛  22-28
(1) 元素誕生の謎にせまる (10) 光の実験
(2) 地球大紀行DVD (11) スピンウエーブ
(3) 検証!ペットボトル破裂 (12) レントゲンとアインシュタイン
(4) 北大の低温科学研究所見学記 (13) 学研のネオジム磁石
(5) 原爆平和資料館の新展示から (14) 恐竜公園と古生物博物館
(6) 11日間世界一周 (15) 小型高圧電源と空気GM管
(7) 光通信実験キット (16) ビデオでの授業研究
(8) 楕円ビリヤード (17) ストーンブリッジ
(9) 放物線パット

UFOと宇宙人の話  JAPAN SKEPTICS NEWSLETTER 47より転載  鈴木健夫 29-31
ビデオによる授業研究の試み 「科教協山口大会報告集」投稿原稿 鈴木健夫 32-33
赤い光から音楽が聞こえるよ 服部陽一 34-35
光通信 光で音楽を聞こう 服部陽一 36-37
LED光受信機の製作-2  ガリレオ工房175号より転載 服部陽一 38-39
イヤホーン端子から光通信 服部陽一 40-41

※ハイパーリンクで飛べない記事は、Web上にアップされていないものです。技術上の問題等で、すべて対応することは不可能です。また、ニュースは投稿原稿で構成されていて、その主要部分はWeb上で読めないので、お読みになりたい場合は、紙メディア版ニュースか、年1回発行されるニュース合本をご購読下さい。紙メディア版ニュースご購読は、1年間2000円です。ニュース合本は、1冊1500円です。申し込み方法等は、鈴木健夫までメールにてお問い合わせください。メール問合せ先は、トップページからリンクしています。



巻頭言

市江です。私事で恐縮ですが、前回に引き続きまして、ドイツでのもう一つの収穫である、長女悠(はるか)の出産について、お伝えします。妻にとっては初産でしたので、日本での出産事情は詳しくわかりませんが、ドイツの出産は日本と大きく異なっているようです。基本的には「合理的」で「自然愛好主義」が浸透しています。出産には夫や家族だけでなく、親戚までもが分娩室に入って立ち会うのが普通であると聞いていました。しかし、ドイツでは出産予定日以後は出産日を決めて薬を使って出産するのが一般的で、「明日陣痛促進剤をうって出産する」という妻からの電話を渡独する前日に受け取った時、出産には立ち会ってあげられないかとあきらめたのですが、ドイツに着いて大急ぎで病院に駆けつけると、まだ陣痛さえ始まっていませんでした。出産日を決めるというのは、ある意味で自然でないような気がしますが、それはあせらず、心の余裕をもって出産できるようにするという合理的な考えからきています。
本を見ると日本での陣痛促進剤は打ったら直に陣痛が始まるようですが、ドイツでの陣痛促進剤は陣痛を始めるきっかけをつくるだけの弱いもので、実際、陣痛がくるのは、1日後、2日後と、なるべく自然に近い形で出産ができるよう配慮されています。また、妊婦に与える疲労を和らげるということで麻酔は奨励されていて、特に強い意志で拒否しない限り行われているようです。うちの妻も喜んで打ってもらっていました。そして分娩室に入って8時間後、私と母と助産婦さんが見守る中、感動的な出産が始まりました。まだお腹の中に入っている娘の黒い頭を産道越しに助産婦さんに見せてもらいました。出産が終わると、家内も楽になるのかなと思っていましたが、それからが非常に大変でした。ドイツでは「完全母乳」が徹底していて、始めの2、3日は母乳がでずお腹をすかして泣いている赤ちゃんに、とにかく何回も何回も乳をすわせろというのです。妻が可愛そうになって、ミルクをあげたいと申し出ても、母乳はでないはずはない、病院にあなたがたにあげるミルクはないといわれ、一切ミルクは渡してもらえませんでした。お陰で、現在も完全母乳ですが、あのつらい経験は一生忘れないそうです。しかし、異国で仕事をしながら初産を成し遂げるという妻の勇気には驚かされます。母は強し!今は寂しくない分、「お父さん」の大変さを味わっている今日このごろです。 

市江


   


月例会報告(まとめby山本明利 編集by市江寛)

日時:2002年8月31日(土)13時半〜18時

会場:鎌倉学園中学高校

参加:27

内容:  

(1)元素誕生の謎にせまる 山本の紹介

写真のようなビデオを理化学研究所が制作し、希望の教育機関(高校、大学)に無料配布しています。内容は大変充実していますが、高校生にはちょっと難しいという印象です。

  

(2) 地球大紀行DVD 山本の紹介

あのNHK特集の名番組「地球大紀行」のDVD版が発売されました。発売元はNHKソフトウエア。DVD6枚組で¥28200とお値段は少々割高感がありますが、各巻にその後の15年の学術的発展などを収録した特別編集の付録「特典映像」20分がついていて、すぐれた番組内容にさらに付加価値をつけています。LDが絶版になって久しく、理科総合や地学の教材として復刻が待望されていたものです。

 

(3) 検証!ペットボトル破裂 山本の紹介

2002年8月26日にテレビ朝日の報道番組「スーパーJチャンネル」の「まさかの社会学」のコーナーで、PETボトルの破裂が取り上げられました。

8月13日に神戸市西区で起きたドライアイス入りPETボトルによる傷害事件を受けた検証番組です。左はカメラがとらえた内圧で変形しふくらんだPETボトル。この一瞬後にボトルは破裂し、破片は10m以上飛散しました。机に穴があいた例もありました。PETボトル加圧実験の危険性をあらためて考えさせる番組でした。

 

(4)北大の低温科学研究所見学記 喜多さんの発表

喜多さんたちは、APEJの大会で北海道を訪れた際、北大の低温科学研究所を見学しました。−50℃の部屋に南極の氷が50cm単位で保存されています。この氷から過去の大気の様子を知ることができます。氷を薄くスライスしたものを偏向板の間に入れて見ると、非常にきれいな色が観察できます。

右図はつららの一例です。

 

 

 

 

(5)原爆平和資料館の新展示から 喜多さんの発表

広島の原爆平和資料館の新しい展示の一つ、「全身に受ける放射線の量と急性障害の症状」の説明に、JCO東海事業所で起きた事故でなくなられたお二人が受けた放射線量の記述がなされていました。数値は上から20,00015,00010,0009,000…と続きます。単位はmSv

 

なお、この数値については、鈴木亨氏が物理教育通信100号で疑念を呈しています。

 

 

(6) 11日間世界一周 鈴木亮太郎さんの発表

 この夏休み中、鈴木さんはご覧のようなコースとスケジュールで駆け足の世界一周旅行をしてきました。地球の自転をまる一周追い抜いたことになります。

 以下、各訪問先のトピックを物理的な話題に限ってかいつまんでご紹介しましょう。

 

 アメリカ ニューメキシコ州 ロスアラモス BRADBURY SCIENCE MUSEUM

 

広島型原爆 "Little Boy" と長崎型原爆 "Fat Man"が並べて展示してありました。ここでは困難な戦争を終結させた新兵器として肯定・評価するスタンスで解説されているそうです。被爆国のわれわれとは感覚が根本から違うようです。

 アメリカ マサチューセッツ州 ハーバード大学

 

 理工学部校舎内には、日本の高校生でも理解できそうな展示が各所にありました。大きな凸レンズや、薄膜の干渉(写真左)、1943年IBM製コンピュータ "Mark I"など。廊下などにさりげなく展示してあるといいます。

 

 アメリカ マサチューセッツ州 マサチューセッツ工科大学(MIT)博物館

 

 2001年の化学科の学生の持ち物の展示。どういう意図なのか不明ですが、長期にわたって比較すればタイムカプセル的な面白さはあります。

 

 

アメリカ ワシントンDC スミソニアン航空宇宙博物館

 

 世界初のトランジスタ

 

 

(7) 光通信実験キット 服部先生の発表

創造理科工房の服部陽一先生が、光通信のオリジナル実験器具の数々を披露してくださいました。発光ダイオードを送信機側に使い、受信器側はフォトトランジスタまたは同じ発光ダイオードを用いています。トランジスタ2段増幅やオペアンプ増幅を用いたものは、SN比もよく、写真のようにレンズを使うとかなりの距離離れても通信ができます。

送信機、受信器共に性能を維持しながらいかに部品点数を減らすかが工夫されています。コストダウンと製作の手軽さを追求しつつ、完成度の高いキットに仕上がっていると思いました。

 川崎市青少年科学館の「ワクワクドキドキ玉手箱」プロジェクトでは、これをベースに実験キットとコースウエアを制作しようとしています。YPCからも有志がこのプロジェクトに協力することになりました。

(8)楕円ビリヤード 金子さんの発表

楕円はその二焦点と周上の任意の点を結ぶ二つの線分が、その点の接線に同じ角度で交わります。楕円形の鏡を作ると、一焦点から出た光は、必ず他方の焦点に集まります。この幾何学的性質をビリヤードで示すのが、楕円ビリヤードです。焦点上に2球を置くと、どの方向に突いても他の球にあたります。8月のKASTサイエンスフェスティバルのサイエンスライブのために突貫工事で作ったということです。

 

(9)放物線パット 金子さんの発表

放物線の性質を示すデモ教材。対称軸に平行なレールに沿って球をころがすと、放物線の壁にあたってはね返った球は必ず焦点を通ります。焦点に穴をあけておけば、パットを必ず沈めることができるのです。これもKASTで展示されました。

(10)          光の実験 車田さんの発表

8月17・18日日本科学未来館で行った実験舞台「光は未来を拓く」の中の演示実験のひとつ。

蛍光塗料の赤・緑・青(ハンズで各800円)を三角フラスコに入れ、水が白くなるくらい各色を溶かします。両サイドから内側に向かってブラックライトを当てると真っ暗なステージにきれいな3色の三角フラスコが浮かび上がります。赤と緑を同量混ぜて黄色(イエロー)、緑と青で水色(シアン)、赤と青で紫(マゼンタ)を作り、最後に全部混ぜると白になるという実験です。

夏休みに未来館を訪れた小学生以下の子どもたち対象の物語劇の中で、原始人類が火を手に入れてから現在の青色発光ダイオードに至るまでの過程を追いながら行われる、演示実験の一つだそうです。

 

(11)          スピンウエーブ 谷口さんの発表

谷口さんが見せてくれたのは「スピンウェーブ」(販売元 株式会社 早川玩具、埼玉県越谷市南荻島2141−1 TEL 048-978-5611)というコマのおもちゃ。日暮里の駄菓子屋問屋街にて400円もしくは300円で購入。

 コマの軸が磁石になっていて、鉄のレールに沿って回転しながら進みます。かつてアメリカで流行ったおもちゃだが、これはボタン電池とLEDが仕込まれていて、レールとコマの両輪が接触するとレールを通して導通し、回転しながら光るという改良版。ヨーヨーのようにエネルギー保存則の例として教材になるかも。なにより安いのが魅力。

 

(12)          レントゲンとアインシュタイン 鈴木亮太郎さんのお土産

すずりょうさんが11日間世界一周の道すがら集めてきてくれたお土産が配布されました。アインシュタインのキーホルダー、ロスアラモスのペン、制限速度30万km/sのステッカー、レントゲン博物館のパンフ。

 

 

 

(14)          恐竜公園と古生物博物館 山本のお土産

夏休みに訪れたカナダ・アルバータ州のロイヤル・ティレル古生物学博物館と州立恐竜公園のお土産。博物館の公式ガイドブック、アルバータ州やドラムヘラーの観光案内、恐竜の骨化石片、恐竜化石のクリーニング屑。

 

 

 

 

(15)          小型高圧電源と空気GM管 山本の紹介

千葉の三門正吾先生が開発された放射線検出器「空気GM管」の追試を行いました。円筒は印刷機のマスターロール芯、中心電極はリード線の銅芯線、検出窓はサランラップです。中心電極と紙筒の間の放電を、そばに置いたラジオで検出します。

電源にYPC特製「小型高圧電源」を用いると、高耐圧コンデンサー(これが意外と入手しにくい)を使わなくても実験が可能です。厚紙を可変抵抗器として用いて陽極電圧を調整します。いずれも三門先生から教わったノウハウですが、例会の席ではなぜかうまくいきませんでした。予備実験でも、事後の追試でも同じ装置でちゃんとうまくいったのですが、失敗の原因はよくわかりません。

 

 

 

(16)          ビデオでの授業研究 鈴木健夫さんの発表

鈴木さんは校内で「授業を模索する会」を組織し、お互いの授業を公開しあい、ビデオにまで撮って詳細に研究・討論しています。4月例会で一度報告しましたが、今回それを夏の科教協山口大会にレポートしました。そのときの討論のようすが例会で報告されました。

 ビデオで自分の授業を振り返ってみると、生徒がせっかく興味を示していたのに、授業者がそれをつかみそこねて、結局生徒が興味をふくらませることができなかったケースなどが発見できるといいます。科教協の分科会の討論では、発問後2分間は待つべきだとの意見も出たそうです。授業者にとって2分間の空白はつらいでしょうが、考えている生徒にとってはあっという間の時間なのです。

聞いていて、いろいろ考えさせられる発表でした。

 科教協山口大会の報告集用にまとめた原稿が後ろに掲載されていますので、あわせて御覧下さい。

 

(17)          ストーンブリッジ 岩波さんの写真販売

喜多さんや車田さんの取り組みですっかりYPCネタとして定着したアーチ型ブリッジの原点とも言えるオブジェがこれです。長野県の観光地、寝覚ノ床の近くにある木曽路公園に展示されています。

 

 岩波さんは10年前の記事に収録した写真を、あらためてスキャナで取り込み、デジタルデータにしてわけてくれました。

 

 

 


     


テキスト ボックス: 物理分科会 第3分散会 
ビデオによる授業研究の試み
――物理TA・波動の授業――
鈴木健夫(神奈川・県立柿生西高校)

 

 

 

昨年度から、校内の自主的な研究組織として「授業を模索する会」という委員会を作り、学期に数回ほどのペースで授業研究を進めている。その中の試みの報告である。私の授業をビデオ撮りし、後日それを見ながら別の先生が授業者である私にインタビューをする。そのインタビューの逐語録を内容の項目別に分類したものをプリントした上でさらに別の日に研究会を行うという試みをした。また、科教協で発表することを機会に、授業の中での授業者と生徒とのやりとり全てを逐語録にして、表にした。授業は、波動分野で共鳴・共振を扱っている部分である。

 

授業の逐語録の一部(時間は、授業開始後何分経っているかを示す。)

時間

教師の発言・動き

生徒の反応

備考

 

俺の見て、今度この一番短いのやってますけど、、、これだけ激しく揺れるね、他のはあんまり揺れないけど。どう、交代でやってよ

「まんなか揺れてるのにさ俺が見てるの揺れないんだけど」(A井)「俺もそう」

 

じっと見つめる、じっと、、、、できた人どれくらいいるかな?

やってよ。

「これってさあ、ほうきのあれっぽいよね、長ぼうき」

 

そう、長ぼうきの壊れたやつを使った

「元から動いているからどれが動いているかわかんないんだけど」

 

どう、実際できた人いる? できた?

「できた」

 

 

 

Y、手を挙げて「はい、先生できたよ、聞けー」

 

できた?  どうしてできるのかわかる? そう、問題はさ、どうしてできるかだよね

 

 

28:30

いいかあ、、、、どうしてできるかなんですが、あのー、これがほんとに目の力かなんかで、ね、目の念力かなんかで動くなら、ここにやってもらっているように、机に置いただけでもできるはずですね。もしも目からなんか超能力のような念力が出ているなら、それでできた人がいたらすごいですが、いないよね。持ってやるからできるんだね、これね。持ってやるからできます。

 

 

 

 

 

(笑)

 

 

できない人は、コツが、、、コツが分かればできるんですけど。できない人は、無意識のうちにやるコツを分かってない人です。どういうコツでできるんだろう、できた人わかる? どうしてこれ、一つだけ揺れたの?

 

 

29:23

誰か分かる人いない? どうすれば3つの振り子のうち一つだけ激しく動かすことができるのでしょうか、、わかんない?

 

 

 

1個だけ揺らすことができるわけでしょ。まあ、他のもいっしょに揺れちゃうんだけど、ゆれ方の激しさの違いね

 

 

29:45

いい、じゃちょっと極端にやってみますね。僕のこれ見て、極端にやりますよ。たとえば、えー、真ん中のを揺らそうとしましょう。

 

「手が揺れてる」(ずっとマンガを読んでいたTも見ている)

 

議論は特に実験を立て続けにやることの是非について意見が交わされた。この授業では、2つの演示実験と1つの生徒実験を行っている。第1の演示実験は、オシロスコープで人の声の波形を見るものである。オシロスコープの画面は小さいので、オシロとマイクをかついで生徒の机の間を回って見せている。2つ目に、生徒実験として生徒個々に3つのおもりをつるした棒を配り、そのうちのどれか一つを見つめることで、それだけを揺らせるという現象を試みさせた。その上で、「どうすれば一つだけをゆらすことができるのか」と発問して、共振と固有振動に気付かせるという展開である。ただし、私は「どうすれば」と言うべきところを、「どうして」と言っていた。自分自身は方法を聞いているつもりであった。しかもそれをこの分散会の討論で指摘されるまで気がついていなかった。そしてもう一つは、図の「逆さ振り子」である。これらの実験の一つだけにでもしぼり、じっくりと周期などをはかって深めて、きちんと解決をしてから次に進むべきだという意見が強かった。しかし一方、生徒が授業の方を向いていない現実がある中では、このように少しでも多くの実験を見せていくのがよいという意見を出された方もいた。私自身は、後者の立場を取るが、完全に割り切っているわけではない。指摘されたとおり、もっときちんと発問を組み立て、討論を組織して深めていく授業を実現したい。しかしそれがまだまだ遠いという現実がある。前者の意見は現実に甘えずに挑戦して行くべきだという励ましの言葉だと受け止める反面、現場の実状と苦労を知ってもらえないもどかしさも感じる。私にとっては、この授業が「予想以上にすごく成立していると感じた」という感想が、理解してもらえたという安心感につながる。しかし、その現状に甘えてはいけないと肝に銘じて、今後の取り組みを考えていきたい。

 

レポート入手希望の方は、鈴木健夫suzuki_takeo@nifty.ne.jp(迷惑メール防止のため@を全角にしています。打ち直してメールしてください)まで、ご連絡下さい。

Web上でも図以外の部分を公開する予定 http://homepage2.nifty.com/suzukitakeo/