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2002.11.16 横浜物理サークル発行


目次

巻頭言                      すた 67-68
10月例会の報告                     まとめby山本明利 68-75
(1) コズミックボヤージュ(オリジナル字幕スーパー版?)
(2) 磁力線の演示
(3) 究極のクリップモーター
(4) 固定コイル型モーター
(5) 2mの逆さコップ
(6) タンバリンの摩擦奏法
(7) プラネタエアードーム
(8) ジェラート回転台
(9) ラップフィルムの剥離帯電性能調査
(10) 帯電を変える魔法のペン
(11) 1mスズランテープ電話・1mエナメル線電話
(12) たためる立体紙
(13) グラフソフト「Function Veiw」の紹介
(14) 3Dカード
(15) 溶ける紙
(16) 電子レンジるつぼ
(17) フックのミクログラフィアのCD-ROM
(18) 高等学校教育研究会のご案内

剥離帯電実験には「サランラップ」?!
―――食品包装用ラップフィルム性能調査―――       徳永恵里子 76-79
すばる輝く―――プラネタリウム今月の解説話題―――   宮崎幸一 80-81
究極のクリップモーターを作ろう!                 淺井武二 82-85
ビデオによる授業研究の試み――全国大会にレポートして得たこと――
『理科教室』2002年11月号「理科教師日記」より転載      鈴木健夫 86-87
「グレゴール・メンデル」 石原純著『偉い科学者』より             88-91

※ハイパーリンクで飛べない記事は、Web上にアップされていないものです。技術上の問題等で、すべて対応することは不可能です。また、ニュースは投稿原稿で構成されていて、その主要部分はWeb上で読めないので、お読みになりたい場合は、紙メディア版ニュースか、年1回発行されるニュース合本をご購読下さい。紙メディア版ニュースご購読は、1年間2000円です。ニュース合本は、1冊1500円です。申し込み方法等は、鈴木健夫までメールにてお問い合わせください。メール問合せ先は、トップページからリンクしています。



巻頭言

久々の巻頭言です。書く話題がないと困るなあ、と思っていましたが、巻頭言に書きたくなるようなニュースがいつも飛び込んできますね。
11月始めのニュースです。文部科学省が高3の生徒を対象に、全国で一斉に学力調査をするというものです。もしかしたら、このニュースの読者の学校で実施されたところもあるかもしれません。(実施は12日。)「学力低下」論が高まる中で、生徒がどれくらい学習指導要領の内容を身につけているかを見るのがねらいだ、と記事には書かれていました。
目的はとにかくとして、継続的に抽出で調査をしていくことには、意味があるとは思います。そこではかる学力が何なのかという大きな問題が残されますが、感情的・観念的に「学力低下」と言っているだけでは説得力がないのも事実です。現場で感じている感覚を、ある程度定量的な資料として実証していくことは必要だと思います。ただし、それを文部科学省自体がやるべきなのかどうかは別問題ですが。また、これが学校ごとのデータの公表などにつながるのなら、断じてやるべきではありません。学校の選別・序列化につながるからです。今回は、その点は配慮される、と記事には書かれています。
ただ、私は次の点が非常に腹立たしく感じました。私の誤解があるかもしれませんが。国語、数学、英語、理科で実施なのですが、理科の選択科目は、「物理TB、化学TB、生物TB、地学TB」なのです。本校は、全員にやらせる理科としては、TA科目しか置いていません。もしも本校がこの調査に抽出されたら、理科は何を選ばせればよいのでしょうか。
指導要領で複線化、多様化を推し進めてきたのは、文部省です。その結果として、(理科に関しては)共通の「学力」を早々と放棄してきたのです。それを、ここに来て「学力をはかる」とは、どういうことでしょうか。TB科目を置いていないということは、理科に関して学力をはかる土俵にも乗れないということになってしまいますが、それはこれまでの文部省の姿勢からは、当然の結果のはずです。それなのに、理科に関しても学力調査をするとして、さらにはその科目として、TB科目4つをメニューとする。それなら、TA科目は、何だったのでしょうか。TA科目しか置いていない学校(全国でもごく少数かもしれませんが)にいる生徒は、そのことだけで理科の学力がないという判定にならざるを得ません。そういう点で、文部省・文部科学省にとって自己矛盾に満ちた調査ではないでしょうか。
繰り返しになりますが、そもそも理科に関して学力を云々することを放棄するという背景があるためにこういうカリキュラムになってきたのだと私は思っています。その元で見ようとする「学力」とはいったい何なのか、本当に疑問に思います。国語や数学や英語では、こういう議論はすぐには成り立たないと思いますので、それらの科目で「本当に必要な学力は何か」という議論も含めて、学力調査をするのは、ありえるとは思います。しかし、理科に関して、学力とは何かという理念を持たない文部省・文部科学省がこのような調査をすることは、自己矛盾も甚だしい!
すみません。同じことの繰り返しの文章になっています。しかしそれだけ私が腹を立てているということをご理解下さい。特に今の現場にいると、今回の調査はカヤの外に置かれたような気がして、よけいに腹が立ちます。

すた


   


10月例会報告(まとめby山本明利)

日時:2002年10月19日(水)15時〜18時

会場:筑波大附属高

参加:25

内容:

 

(1)  コズミックボヤージュ(オリジナル字幕スーパー版?) 小沢さんの発表

 Cosmic VoyageIMAX版のPowers of Tenで、プラネタリウムドームで上映するために作られた映画です。2年前に湘南台文化センターでも上映されました。授業で生徒にも見せたいものですが、残念ながら日本語版は販売されていません。英語版ならば最近になってDVDも発売され、しかもhttp://www.amazon.co.jp\2486で簡単に購入できます。しかし、リージョンコードのハードルがあり、日本のふつうのプレイヤーでは再生できません。でもパソコンのDVDならば再生できるものも多い。

 そこで小沢さんは、同じ画面の別ウィンドウに日本語字幕を同時に表示させながら再生させるというワザで、自作「日本語版」を完成させました。

 Ecriture(http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se078657.html)というフリーソフトを使います。ウィンドウの枠を隠すとまるで本物のようです。もちろん、日本語字幕のテキストファイルは自分で作成しなければなりません。小沢さんの作品は売り物になるできばえ。みんなで感心しながら鑑賞しました。

 

(2)  磁力線の演示 淺井さんの紹介

初参加の淺井さんが、興味深い実験の数々を紹介しました。

最初のがこれです。科学の祭典全国大会で仕入れた実験法。奈良県の松山吉秀さんのアイデア。ビニタイ(袋の口を縛るのに使う鉄線入りビニルひも)を短く切って、磁石の上から落とすと、ビニタイが磁力線に沿って立ち上がります。磁極付近の磁力線のようすを美しくわかりやすく示すことができます。

 

 

 

 

 

(3)  究極のクリップモーター 淺井さんの発表

 淺井さん自身が科学の祭典に出展したクリップモーターの作り方を実演してくれました。回転子のコイルは、左の写真のように割り箸を二膳合わせて巻き付けて作ります。まん中の溝がコイルを束ねるときに都合がいい。ちょっとした工夫ですが、子供達に達成感を味わわせるにはこうしたノウハウの積み上げで成功率を高めることがポイントです。電池ホルダを兼ねたシャーシは厚紙で作ります。配線はアルミテープです。

   回転子を取り付けたところ。電池の両極をはさむようにつかむと、コイルが勢いよく回り出します。上記の方法で回転子がバランスよく作られていれば、小さな磁石でもよく回ります。

  

 後ろに、淺井さんによる製作プリントと、台紙のコピーを掲載しましたので、ご覧下さい。

 

(4)  固定コイル型モーター 淺井さんの発表

 こちらはコイルを固定し、磁石が回転する簡単モーター。磁石を支える軸が半分被覆をはがしたエナメル線で、半回転ごとに電流が断続します。芯出しを慎重に行う必要がありますが、回転子に質量があるので、非常に力強く回ります。

   

 ここまで来れば、コイルとコイルの組み合わせでモーターを作ることもできます。難易度はぐっとアップしますが面白い。

 

 

(5)  2mの逆さコップ 越さんの発表

 越さんは遠路はるばる2mもある塩ビ管を担いで登場。これでダイナミックに「逆さコップ」を演じるのだといいます。

   授業では、まず、普通のコップでやって見せ、次に「大気圧って、けっこうすごいんだよ!」ということを示すために「長ーいコップでやったらどうかな?」と、2メートルでやって見せます。

 ウリは、教室内で、1人でやって見せられること(重さも3[kg]くらい)と、紙を取り除いたあと、水が「ドボ ドボ ドボ ッ」と出てきて、こんなに「たくさんの水を、空気の圧力が支えていたんだよ」ということが実感しやすいこと。

   末端処理は右の写真の通り。塩ビ管用のキャップをはめこんであります。気密性はこれで十分だといいます。

 

(6)  タンバリンの摩擦奏法 越さんの発表

 友人の小学校の先生に教わったというタンバリンの演奏法。

 親指を少し濡らし、タンバリンの太鼓面()の円周に沿って、指先を立てて押し付けながら(親指の爪側に向かって)ずらしていきます。すると、タンバリンのまわりの鈴()の部分が細かく振るえ、「シャカシャカシャカ」っと鳴ります。ワイングラスのふちを指でこするとによって、グラスに振動を与える「グラスハープ」の原理と同じです。

 参加者もそれぞれチャレンジしましたが、なかなか上手には鳴りません。演奏技術はやはり練習のたまもの? 原理は理解できてもすぐにできるというのもではなさそうです。

 

(7)  プラネタエアードーム 越さんの発表

 県立柏高校の天文部の発表を参考に、野田高校の文化祭で天文科学部の発表のために作った直径4メートル、高さ3メートル、定員15名ほどのプラネタリウムのドームです。

 白い生地を縫い合わせ、半球形を作り、扇風機3〜4台で中に風を送り込み、内圧を高めてドーム全体を自立させています。部員の女の子が一生懸命縫って完成させたそうです。

投影機は備品としてあった五島光学の投影機を使いましたが、来年は自作を目指したいとのこと。

 

(8)  ジェラート回転台 徳永さんの発表

 エスキモーのアイスクリーム「イタリアンジェラート」のカップを利用して、静電気実験用の回転台を作りました。

     

 用意するものは、イタリアンジェラートのカップ(6個入り500円) 1個、お裁縫用の針 1本、割り箸 1本、紙袋入りのストロー 2本、セロテープ。

 箸の先に針をとりつけ、カップを逆さにのせます。このときジェラードカップの底面に刻印してあるリサイクル表示の「プラ」の文字の「フ」と「°」の間に針を固定するのがコツ。フィルムケースで行うときのように、針先を受ける穴をあける加工がいりません。

 フィルムケースよりも軽くて、カップの入口の方が大きいため、回転しても安定がよい。底面積が大きいので、ストローも載せやすくなります。

 

(9)  ラップフィルムの剥離帯電性能調査 徳永さんの発表

 徳永さんは、電界の観察実験を計画中に、「最近剥離帯電がうまく行かない」という話を聞いて、ラップによる違いがあるかどうかを徹底検証しました。ラップを11種類も買い集め、ポカリスェットの空き缶(大塚製薬、アルミ缶、340ml)をそれぞれのラップで包んでははがし、缶の帯電量をクーロンメーターで測定しました。

 

実験1(ラップの種類による帯電量の違い)

「サランラップ」(旭化成、原材料・・・ポリ塩化ビニリデン)が+7nCで最も帯電しました。次は、「NEW クレラップ」(呉羽化学、成分は「サランラップ」と同じ)と「ザ・ラップ」(ダイソー、原材料・・・ポリエチレン)で、+4nC。他のラップは

+1〜3nCでした。

 

実験2(缶の塗装による帯電量の違い)

「サランラップ」と他の空き缶との組合せで実験しました。「あがり」(Asahi、スチール缶、270g) +2nC、「スプライト」(日本コカコーラ社、アルミ缶、275ml) +5nC

 

 缶の塗装や表面積も関係してくるので、缶とフィルムラップの組合せで、帯電量にかなりの差が出るようです。実験用のラップは「サランラップ」に限る・・・と言う声もありました。徳永さんはさらに調査・実験をすすめ、結果をまとめてあります。後ろに掲載されていますので、ご覧下さい。また、さらなる発展もありそう。続報に期待しましょう。

(10)            帯電を変える魔法のペン 鈴木亨さんの発表

 紙袋でこすって帯電したストローの電荷を回転台を使って判定してみます。同種の電荷は当然反発しますが、一方のストローをフェルトペン「マッキー」で着色すると、同じく紙でこすったときの電荷が反転し、回転台のストローを引きつけるようになります。塗料の成分が関係しているのでしょう。鈴木さんの続報に期待しましょう。

 

(11)            1mスズランテープ電話・1mエナメル線電話 大谷さんの発表

 紙コップ糸電話の糸部分を、1mのスズランテープにしたのが「1mスズランテープ電話」、1mのエナメル線にしたのが「1mエナメル線電話」です。糸電話の糸部を短くして、生徒が隣同士で、立ち歩かずに実験できるようにしたもの。すぐたくさん作れて、全員に体験させられます。できるだけ、わかりやすく簡単にし、中学生が自宅でも実験できるようにすることがポイントだといいます。

  糸の部分をわざと音がひずむ材質にしたのが工夫です。音にひずみがないと、近くで実験した場合、直接空気中を伝わった音と区別できません。エナメル線はエコーがかかるのが面白い。実験時、話す側も聞く側も、コップの底に指をあてさせ、音の振動を体感させるとよい。すずらんテープは、ピンと張らない聞こえませんが、エナメル線はピンと張らなくても聞こえるので1人でも遊べます。

 

 

(12)            たためる立体紙 益田さんの紹介

 昨年の科学の祭典で仕入れてきたネタ。12枚の板を組み合わせてできている立方体が、たたむと正方形や十字などきれいな平面図形になります。

 立方体は四角形が3つ、層を組む様に組まれています。こう組むことで立体を平面にできるということは、古代文明の時代からから分かっていたらしい。

 材料は100円ショップのファイルから板を切りだし、はと目で止めました。 詳しいことは、http://www.oeco.co.jp/を参照のこと。

 30枚組み合わせれば12面体ができますが、これを平面にたたむのは至難の業。当の益田さんもまだ会得していないとか。

 

(13)            グラフソフト「Function Veiw」 益田さんの紹介

 文字式を書きこむことで、簡単なものから複雑なものまでグラフ化できるフリーソフト。データをグラフにするのではないので、実験の解析には不向きですが、グラフモデルを作成するには非常に簡単で良いソフトです。Mathematicaなどよりお手軽でおすすめ。

 数学で主に用いられていたため、パラメータの割り振りに制限がありますが、グラフを動かすことも簡単にできます。式も微分形、積分形で書くことができ、さらに、マクロも組めるため、フラクタルのような複雑な作図も可能です。デモ用のサンプルが豊富でそれだけでも十分楽しめるソフトです。

 益田さんは、このソフトで「定常波」のモデルを作成し授業に用いています。この他にも、スリットの干渉、回折格子の干渉、うなり等も検討中。

 詳しい解説とダウンロード先のURLは下記の通り。

http://hp.vector.co.jp/authors/VA017172/

 

(14)            3Dカード 渡辺さんの発表

 3D模様が現れるシートが市販されていますが、これは名刺などを印刷して3D効果が出せる自作用キット。製品名は「3Dカード」、東急ハンズ渋谷店で葉書サイズ4セット組780円。

 なかには、レンズシートと色紙が入っています。これを重ねるとレンズシートが、色紙の小さな色の点を拡大した模様が出てきます。シートを動かしてみるとレンズのはたらきとモアレ効果で模様が変化します。

 

 

 レンズシート同士を重ねても面白い。ずらしていくとご覧のようにモアレパターンが連続的に変化し、スケールを変えます。

 

 

 

 

(15)            溶ける紙 渡辺さんの発表

 これも渡辺さんがハンズで入手してきた不思議な素材。一見ただの紙で字を書いたり印刷したりできますが、水につけるとご覧の通りたちまち溶けてしまいます。繊維にほぐれるという感じではなく、どろりと糊のように溶けてしまう感じです。何でできているのでしょう。

  

 

 

(16)            電子レンジるつぼ 渡辺さんの発表

 電子レンジに入れて、6分程度加熱すると内部の温度を800℃まで上げることができる電磁レンジ専用の炉です。SiCという発熱体(右の写真の黒い部分)が電子レンジのマイクロ波をうけて発熱します。数分で高温が得られるので、食塩の融解などの実験に使用できそうです。ただし、電子レンジ内が高温になる点や発熱したるつぼを扱う際に注意が必要。

 製品名:電子レンジるつぼ  価格7,100円 東急ハンズなどで入手できます。

 

(17)            フックのミクログラフィアのCD-ROM 右近さんの発表

 Micrographia1664年にロバート・フックによって出版された彼自身の発明による顕微鏡による観察画集です。有名なノミの絵をはじめとする細密画が多数収録されています。本の実物は非常に貴重なものですが、そのコピー版CD−ROMは、http://www.octavo.com で入手することができます。オリジナルな形で同書が一般に公開されるのはこれがはじめてだといいます。

 

(18)            高等学校教育研究大会ご案内 小沢さんの紹介

 127日に小沢さんが筑波大学附属高校で公開授業を行うことになりました。次々回例会の当日で会場も東京なので、みんなで見に行こうということになりました。

 詳細はhttp://www.geocities.jp/ozawander/kenkyu.htmをご覧いただきたい。