YPCニュース

 181

2002.4.19 横浜物理サークル発行


目次

頭言                                                 すた 189-190
4月例会報告               まとめby山本明利、編集by市江寛・鈴木健夫 190-195
(1) マイクロレーサー
(2) 中学の授業実践報告
(3) 期末テストの問題から
(4) 氷酢酸
(5) ハブダイナモ
(6) 超常現象アンケート
(7) 熱力学の授業〜これからの科学教育
(8) 光るアンテナ大安売り
(9) ペーパークラフト波動モデル
(10) エッグ・タイマー(ゆで具合測定器)
(11) ブンブン
(12) 岩石の密度

お詫びと訂正 195
次ページの解説 195
超常現象に関する調査                 提供by 鈴木健夫 196
授業の紹介 〜「中学1年理科1分野」より〜         平松茂樹 197-199
新しい社会に適応し得る物理教育の方向性
 ――熱力学第二法則と環境問題の理解を例として――     井上徳也 200-201
ペーパークラフトで波動モデルを作る                         右近修治 202-209

※ハイパーリンクで飛べない記事は、Web上にアップされていないものです。技術上の問題等で、すべて対応することは不可能です。また、ニュースは投稿原稿で構成されていて、その主要部分はWeb上で読めないので、お読みになりたい場合は、紙メディア版ニュースか、年1回発行されるニュース合本をご購読下さい。紙メディア版ニュースご購読は、1年間2000円です。ニュース合本は、1冊1500円です。申し込み方法等は、鈴木健夫までメールにてお問い合わせください。メール問合せ先は、トップページからリンクしています。



巻頭言

年度始めのあわただしい時期ですが、いかがお過ごしでしょうか。今年は、YPCの関係者にもかなり異動がありました。異動された方はそれぞれ新天地でご奮闘されていることと思います。
私も、9年間勤めた前任校を後にして、転勤しました。まったく違うタイプの学校への異動なので、いまだに戸惑うばかりで、まだまだ慣れたといえません。
9年間いた前任校は、去ってみるとなおさらに愛着が湧いてきます。生徒の人なつこさ、素直さにはいろいろなことを学ばされました。
一つの例をとると、授業での反応です。毎年私の授業は、スプーン曲げで始まります。前任校では、初対面でもスプーン曲げをすると大騒ぎになり、スプーンを奪い取って自分で曲げてみる者が現われ、「力で曲がるじゃん」などという発言が飛び出します。千円札を浮かべたときには、近くまで見にきて「糸だーー!!」と叫んだ子もいました。そして、何も解説していないのに、廊下で「インチキマジシャン!」などと呼びかけられたりします。今の学校では、(まだ各クラス1,2時間しか授業をしていませんが、)もちろんみんな集中して見て驚くものの、あっけに取られてどう反応していいかわからない、という状態です。余分のスプーンも一番前の生徒に渡したりするのですが、授業後に丁寧にそのまま返却されます。
この反応の違いに、あらためて前任校の生徒たちの素直さ、たくましさを実感します。今の学校の生徒たちは、「先生が言うことは絶対に正しい」という先入観があるようで、その先生がスプーン曲げという、およそ教科書とはかけ離れたことをしてしまうことに戸惑っているように感じます。しかし、前任校の生徒たちは、「教員は正しい」という先入観を持っていませんでした。
離任式の日に、いっしょに離任した数学の先生が、こんな話をしていました。この学校に来た最初の授業で、中学の復習として、マイナスかけるマイナスがプラスになるということをやった。そうしたら生徒が「マイナスかけるマイナスがプラスになるわけないじゃん、先生は数学の先生なんでしょ、そんなこともわからないで数学の先生をしているの?」と言ったというのです。その先生はそのとき、声を失ったということでした。この生徒の言葉は、なんて正直なのでしょう。誰もが素朴に思っている本質的な疑問を、素直に言う。これは、他の学校なら「馬鹿にされるかもしれない」などと自己規制して、そのまま封じ込めてしまうものではないでしょうか。
前の学校のことばかり懐かしんでいても仕方がありません。後ろ髪を引かれる思いですが、気持ちを切り替えて今の学校でがんばるしかありません。それぞれの学校、それぞれの生徒に、固有の課題があります。わからないものをわからないまま封じ込めてしまう、という場面があるのではないか、などと感じ始めています。それらを早く見据えて、自分のやるべき位置を見定めて、頑張っていこうと思います。

すた


   


月例会報告(まとめby山本明利 編集by鈴木健夫、市江寛)

日時:2003年3月15日(土)15時〜19時

会場:県立湘南台高校

参加:21

内容:

 

(1)マイクロレーサー 加藤さんの発表

 長さ6〜7cmの小さなラジコンバイクです。コントローラーがチャージャーを兼ねており、下の写真のようにとりつけて充電します。左右のボタンでハンドルを切ることができ、本物のバイクにはできない後退というワザも可能です。電波の到達距離は5m程度ですが、操縦性能は思ったよりよくなっています。充電時間がずいぶん短いので、大容量コンデンサーを電源にしているのかもという声もありました。

 

  

(2)中学の授業実践報告 平松さんの発表

 毎回恒例の授業報告です。平松さんは「中学理科」の1分野の授業目次・実験一覧と、「光とそのはたらき」の授業プリントを題材として紹介し、中学理科の内容がいかに削減されているのか、という問題を提起しました。

 平松さんは実験を軸に授業を組み立てていますが、「新課程の中学理科では、新しい知識や法則性を導き出す内容がほぼ皆無ではないか」という疑問を禁じ得ません。平松さんの勤務校では中学受験で理科が課されており、「帰国子女2科目受験」と「内部進学者」をのぞいた大多数の生徒は、それなりの知識量を持っている(しかも中1だから未だ風化していない)こともあり、特にその思いが強くなっています。

 例会の席でも、「何を教えるべきか」「どういった組み立てにすべきか」という点を中心に、有意義な意見交換が行われました。

 後ろに平松さんによるまとめがありますので、ご覧下さい。

 

(3)期末テストの問題から 小沢さんの発表

 授業実践の報告は定期テストを持ってくるだけでもよい討論材料になります。何を教えるかというコンセプトや、生徒がまちがえやすいポイントが明らかになるからです。

 電気量の異なる二つの電荷がおよぼし合うクーロン力を問う問題で、それぞれの電荷にはたらく力を図示させたところ、長さの違う矢印を描いた生徒がかなりいた、という報告は示唆的でした。「大きな電荷は大きな力を受ける」、「大きな電荷からは大きな力を受ける」、はいずれも正しいのですが、そのどちらかの理解が欠落している場合が少なからずあるということでした。

 

(4)氷酢酸 山本の発表

 純粋な酢酸の融点は17℃です。純度の高い酢酸は冬場は凍ってしまうので氷酢酸と呼ばれています。実際には静置すると過冷却状態となり融点以下でも凍らないことが多いのです。花岡さんは冬場に氷酢酸のビンに駒込ピペットをつっこんだところ、瞬時に凍って抜けなくなった経験があるそうです。

 さて、酢酸の氷はご覧のように底に沈みます。ほとんどの物質は固体の方が密度が高いということを知っている人には当たり前の現象ですが、水の氷を見慣れている生徒には素朴な感動があります。水の方が特殊なのだということを示す教材として見せたいのですが、実は室温で固液共存する手頃な透明物質はそれほど多くありません。

 演示の時には、冷凍室などで全氷結させたあと、ビンごと湯煎して半分ぐらい融かし、中の氷が自由に動く状態にして教室に持っていきます。

 

(5)ハブダイナモ 喜多さんの発表

 喜多さんが自転車の車軸に内蔵する発電機「ハブダイナモ」を初めて紹介してくれたのは、99年3月の例会でした。今回は車田さん提供の新型ハブダイナモの分解です。前のはハウジングがはめ込みで大きな金槌の一撃で分解できましたが、これは同じ方法では分解できず、結局金鋸で切るという荒療治に出ました。基本的な構造は同じなので、なんとネジ込み型でした。製品名はSHIMANO NEXUS HB-NX20で、出力は6V 2.4Wです。

 ケースの壁面が多極着磁されています。中村理科の磁界観察シートで見るとその様子がよくわかります。上の回転子のヨークが磁束線をコイル内に導くのです。喜多さんの解説を聞くみんなの目は真剣そのものでした。

 

 

(6) 超常現象アンケート 鈴木健夫の発表

 鈴木は反科学と戦うジャパンスケプティックスの会員です。同会がこのほど「超常現象に関する意識調査」を行うことになりました。(鈴木を中心に、「教育分科委員会」という組織で作成しました。)生徒用と、教員用があります。質問項目には意識編と行動編があり、前者では「血液型で性格を判断することが可能である・人は死んでも霊魂が残る・未来のことを予知できる人がいる・・・」などの質問項目があり、後者では「神社やお寺でお守りを買う・テレビの超能力特集番組を見る・相性などの占いをする・・・」などが問われます。これを、年齢、性別、校種別に統計しようという試みです。結果が楽しみです。協力できる人は鈴木さんまで連絡をとりましょう。

 

(7)熱力学の授業〜これからの科学教育 井上さんの発表

 井上さん自身が科学教育学会で発表し、学会誌にも掲載された「新しい社会に適応しうる物理教育の方向性」という授業研究の紹介です。以下はその要旨です。

 高校生と大学生が持っている環境問題に関する認識を明らかにした上で、既存の教科書に記述されている不可逆変化を中心とした熱力学第二法則について、環境問題との関連を強く意識した熱力学の授業を高等学校三年生に対して実施することを試み、彼らの環境問題に対する幅広い興味関心を大いに喚起することに成功しました。

 科学技術の進歩的変化は、多くの市民がそれを認知しているか否かとは別に、食品や医療、環境やエネルギーなど、われわれの極めて身近な日常生活の中に、すでに深く浸透してきています。科学技術にまつわるすべての事柄に対して、科学的根拠に基づく適切な判断力を養成することは、新しい科学教育カリキュラムの重大な責務であるといえます。同様に物理教育についても、この重大な責務を果たさなければならないことは自明です。したがって、これからの新しい社会においては、科学技術に頼ることに対する自己責任の原則を確立すべく、生きていくために必要かつ十分な scientific literacy を自ら獲得していくことに力点を置いた、日常生活の思考的基盤を与え得る物理教育が必要であると考えられるでしょう。

後ろに科学教育学会会誌に掲載された論文を転載してありますので、ご覧下さい。

 

(8)光るアンテナ大安売り 喜多さんの即売会

 喜多さんはある日、秋葉原に買出しに行きました。お決まりのコースで、秋月によって、千石電商によって・・千石から出たとき、隣の店〔これも千石だが〕の店先に「光るアンテナ」が無造作に投げ込まれていました。値段のシールには¥50,80となっています。少なくとも一年前にはどんなに安くても¥1500はしていたものです。これは買いだと簡単に手に出来るものをゲットしました。新規に掘り出し物で出たとして、¥500の値札がついていても必要ならば買ってしまうものであります。

 YPCでは格安の掘り出し物を見つけたときは、迷わず大量購入して例会で分け合うことになっています。このジャンクが電波実験用として飛ぶように売れたことは言うまでもありません。

 

(9)ペーパークラフト波動モデル 右近さんの発表

 2002年12月例会でパーパークラフトメカニズムを総合的な学習に取り入れた実践を発表した右近さんは、波動モデル実験器の詳しい設計図を公開してくれました。かむが水平板を持ち上げて単振動をさせるためにはカムはどんな形状でなければならないのでしょう。接点が水平にずれるので複雑な形になるかと思いきや、計算してみると偏心した円形のカムでよいことがわかりました。この単純な結論は意外です。

後ろに、右近さんによる解説(まるで雑誌の原稿のようですが、右近さん自身の編集です)と設計図を掲載しました。設計図は、B5のものですので、それをA4ケント紙に拡大して使用して下さい。

 

(10)          エッグ・タイマー(ゆで具合測定器) 大谷さんの発表

 ゆでタマゴをつくる時、ゆで具合を、色の変化で知らせる料理器具です。水の中にタマゴと一緒に入れてゆでると、半熟、中間、かたゆでの順にまわりの黒い部分が多くなっていき、ゆで具合が視覚的にわかります。

 タマゴとほぼ同じ大きさ、形のプラスチックでできていて、温度により色が変化する液晶が入っているようです。外側から温度が上がり、液晶が、赤から黒に変わります。プラスチックの熱伝導率が小さいことをうまく利用しています。

 お値段は、日本、英国ともに約¥1000。アメリカ製なので、米国では、もっと安いはずです。メーカー名: Burton Plastics

 

(11)          ブンブン イルカさんの代理発表(山本)

 山口県のイルカさんこと手嶋さんから送っていただいた実験器具or遊具です。太い針金の輪にゴムバンドを写真のようにかけ、グリップを持って頭の上で水平に振り回します。すると凧のうなりのようにブンブンという大きな音が聞こえてきます。輪ゴムのかけ方をわずかに変えるだけで、音が大きく変化して面白いです。たくさん用意してうまく調節すると楽器として使えるかもしれません。

 音の原因は、風の向きに直角に張られた平たいゴムが、フラッタリングを起こすためらしいです。二本の振動数が近ければうなりを生じ、うまく整数比になると和音として聞こえます。グリップには100円ショップの縄跳びが使えそうです。

 

(12)          岩石の密度 山本の発表

 花崗岩、グラニュライト、玄武岩の一辺10cmの立方体標本です。武蔵工大講師の萩谷宏さんから分けていただいた特注品です。地学で火成岩の組成と密度について授業するときの実験教材です。同じ大きさにそろえてあるので、手で持った感触で密度の違いがわかります。体積がちょうど1000cm3なので、はかりに載せてkg単位で数値を読めば、そのままg/cm3単位の密度の数値が得られます。花崗岩で2.6、玄武岩で2.9ぐらいになります。10cm四角の升を用意して水と比べるとさらに効果的でしょう。

 

 

 

 

 

 


     


次ページ(「超常現象に関する調査」)の解説

JAPAN SKEPTICS(超自然現象を批判的・科学的に究明する会)の教育分科委員会が作成した「超常現象に関する調査」です。教員向けと生徒向けとがありますが、196ページに掲載したものは教員向けです。生徒向けには、一番下の「教員の場合は」の欄を削除して利用して下さい。

利用して実施した際には、そのまま鈴木までお送りいただくか、集計フォーム(エクセルファイル)に入力して鈴木に送付して下さい。集計フォームは、鈴木健夫にメールsuzuki_takeo@nifty.ne.jp(迷惑メール防止のため@を全角にしています。打ち直してメールしてください)していただければ、添付ファイルとして送付します。