YPCニュース

 183

2003.6.14 横浜物理サークル発行


目次

巻頭言:15年目の準備室                                  miya 237-238
5月例会の報告             まとめby山本明利 編集by鈴木・市江 238-246
(1) ビデオによる授業研究の続き
(2) ビルの窓ふき
(3) 空中浮遊物体
(4) 多面体組み木
(5) 100円老眼鏡
(6) ドルフィンパワー
(7) 200円でおつりのくる発電機
(8) 森の合唱団
(9) RADIUM
(10) オールメタルIH開発秘話
(11) 福沢諭吉の「サイアンス」
(12) 音の実験器具

第1回授業研究会報告                        小沢啓+ 宮崎幸一 247-250
続・ビデオによる授業研究の試み-物理TA・仕事率の授業--
            (科教協関ブロ東京大会物理分科会レポート)         鈴木健夫 251-259

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巻頭言  15年目の準備室

4年ぶりに学校に戻りました。久しぶりの物理の授業は3年生の物理U2時間連続で,声を出しすぎてのどがいたくなってしまいました。授業が終わると,数人が質問にくるという今までにない経験をしました。「授業の説明がへただったかな」と一瞬思いましたが,そうではないようで(自分で言うかな?)これくらいの学校では,授業後の質問は当たり前とのこと。いままで,このような熱心な生徒がいる学校に勤務したことがないので,驚きました。また,うれしかったのも事実です。本当に毎回のように質問があります。物理を教えているな,と感じる日々です。
学校を取り巻く環境はだいぶ変わっていると感じますが,それは機会があれば書くとして,それよりも私にとってとても感慨深いのは,この182号の巻頭言を書いているのが港北高校の物理準備室だということです。ここで,横浜物理サークルは88年3月9日に産声を上げたのです。
新設の大規模校に新任として勤務していた私は,授業中に机の上に立ち踊り出してしまう女子やひたすら机に突っ伏している無気力な生徒,マンガを読み続ける者や話をやめない生徒,注意をすると異様に興奮する生徒らを前に,「私の教えたかった物理という科目はこんなモノではなかったはず」と考えていました。「もっとわくわくするのが物理なんだ」と思っている私は,官も民も関係なく教育センターなどで行われる研修会に参加し仮説実験授業やHPPの本を読み,上智大で行われた国際物理教育学会にも顔を出してみました。そんな,何かが違うと思い,何かを探し求めていた自分のもとに,「物理の先生,連帯しよう」という呼びかけが届いたのです。慶応義塾高校の喜多さん(当時港北高校)や新城高校の鈴木さん(当時市ヶ尾高校)らが発起人となり,『日頃,何とかしたいと思う授業・実験などについて,ざっくばらんに話し合える場を作り,自分で納得のいくよりよい授業を作る』という趣旨のサークルへのお誘いでした。
会の基本原則は,1.自由に話し合える場にする 2.集まって良かったという場にする  そのために1年に1度くらいは実験とか紹介とか,何か報告する。義務と言えば,これだけ。会場は,会員の学校を順に回るというものでした。
15年前のあの日,見知らぬ高校へ,準備室へきょろきょろしながら入っていった日を思い出します。今からは考えられませんが,準備室の長机1つのまわりに4人ほどの人が座っているだけでした。港北の先生は忙しかったようで,出たり入ったりしていましたが,私を含めて第1回例会の参加者の総数は7名でした。喜多さんが大気圧の実験,鈴木さんが水ロケットの実験,大西さんがボール紙コンデンサーを報告していました。何も準備していなかった私は,「物理の授業で何を生徒に伝えたいのか」「このサークルで何をしたいのか」を話しました。その日から,学校でいろいろなことがあっても何とかして,例会には参加して元気になって帰ってくる,そう心がけてやってきました。喜多さんが港北を去って12年,生徒はだいぶ変わったようですが,準備室には当時のものがまだあります。あの長机も健在です。
学校復帰の場所がサークルの母体となった学校なのも何かの縁だと思います。あの日の準備室で話したことを思い出しながら,物理の授業にこだわっていきたいと思います。無理せず,マイペースで『物理っておもしろいんだよ,ほんとに』と言いつつ。

miya


   


月例会報告(まとめby山本明利 編集by鈴木健夫、市江寛)

日時:2003年5月17日(土)15時〜20時

会場:慶応義塾高校

参加:23

内容:

 

(1)ビデオによる授業研究の続き 鈴木健夫の発表

  今月の授業研究は、3月例会でビデオを見て検討した鈴木さんの授業について、再度検討しました。4月末に行われた科教協関ブロ(東京)大会の物理分科会で鈴木さんはビデオを見せながらレポートしましたが、そのときの議論を逐語録にして例会に持ってきました(後掲)。以下、鈴木さんの談話です。

 科教協関ブロで、仕事の導入をどうするのかという点について指摘がありました。私(鈴木)は、仕事の導入は単に式を与えて、「力と距離に比例する何かの量が必要。それが仕事だ。」という感じで上から押しつけ的に与えてしまいます。東京の吉埜さんはこれとは異なり、仕事の導入段階から、仕事の原理を教えて、仕事という量を導入する必然性を説明するそうです。YPCでこの話題に関して議論したところ、やはりほとんど導入は定義だけで終わらせているという人が多いようです。後になって「ああ、そうだったのか」と思えばいいのではないか、と私(鈴木)は思います。

 

(2) ビルの窓ふき 喜多さんのリバイバル実演

 この話題の発展として、仕事の原理を見せるのに、「ペンキ屋のゴンドラ」がいい、と喜多さんが助言してくれました。それを知らない方がほとんどだったので、さっそく実演しました。慶応高校にある喜多さん自作の「ペンキ屋のゴンドラ」の登場です。天井のフックにゴンドラをつるして自分で自分を持ち上げるという演示実験です。

 喜多さんが乗っているのは、生徒用の机の天板の四隅に穴を開けてロープをつなげて、ゴンドラにしたものです。天井に吊るされている定滑車が二輪のものなので、簡単に片手で引き上げることができるが60cm引いても、その四分の一の15cmしか上がりません。

 なお、実験上の注意としては、ロープは必ず乗っている人自身が引くことです。この場合上のフックには一人の体重分の力しかかからないが、他人に引かせるとそれ以上の力が加わることになり、フックがはずれるおそれがあるからです。意外だが、落ち着いて力のつり合いを考えてみると納得できます。ねじ込み式のフックは頼りないので、鈴木さんは教室入り口の「梁(はり)」を利用しているそうです。また、仕事の単元ではなく、作用反作用の演示として利用することもできます。一輪の定滑車なら、他の人が引いても、引く人の体重が載っている人の体重とほぼ同じか小さければ、絶対に持ち上がりません。それは、どんなに引く人の腕力が強くても、結局反作用が自分に働いて、自分で自分を持ち上げてしまうからです。

  この授業研究をめぐって、例会では更に、YPCの中で授業公開ができないかという話になりました。校内の同僚で授業を見せ合うというのはなかなかハードルが高いものです。共通の話題になりにくいし、未だに授業を見せるということへの抵抗感はかなりあるのが教育現場の実態です。しかし、YPCの仲間同士なら見せあいやすいのです。ただその場合、部外者が見に来るということのハードルをどう越えるかが問題になります。行く側は、主催団体をどこか公的なものにしない限り、年休で行かざるを得ないでしょう。しかし、年に1回か2回なら、年休を取ってでも見に行きたいです。長期的な目標として、ぜひ実現しよう、ということになりました。

(3) 空中浮遊物体 加藤俊さんの発表

  加藤さんがうやうやしく取り出したのは、派手なデコレーションのついた時計付きの円輪です。円の中心付近にアルミホイルを丸めたものを持っていくと空中に浮遊します。もちろん糸でつっているわけでも、空気で吹き上げているわけでもありません。まわりのリングが妖しく点滅します。マイクロ波か超音波かと憶測が飛び交います。

 本来は、右の写真のように地球儀が浮遊します。手で触ることも、回転させることもできます。手ごたえから見るとどうやら磁石が仕込まれているようです。

 この装置の秘密はリングから内側に突きだした二本の角にあります。これが一対のフォトインタラプタになっているらしいのです。つまり、浮遊物体が上の電磁石に引かれて上昇し光をさえぎると電流が切れ、落ちそうになると再び通電して引き上げるのです。このフィードバックを小刻みにやっているらしいです。

 加藤さんが最初に見せてくれたアルミホイルの中には小さなネオジム磁石が隠されていました。

 

(4)多面体組み木 加藤俊さんの発表

  加藤さんが手にしているのは、組み木の切頂八面体です。すばらしい細工で、このままでも立派なオブジェです。

 ところで、この立体はある方向からじっと(特に片目で)見つめていると、どこが出っぱっていて、どこがへっこんでいるのかわからないような錯視におそわれます。エッシャーの絵にあるような不可能図形に見えてくるから不思議です。写真でその雰囲気が伝わるでしょうか。

 

 

(5) 100円老眼鏡 山本の製品紹介

 悔しいが寄る年波には勝てず、近年はんだ付けなど細かい作業がつらくなってきました。遠近調節がきかなくなってくる・・・それが「老眼」です。そろそろバリラックスのお世話にならなければならないかと考えていたところ、100円ショップダイソーの店頭でふと目に止まったのが、「めがねの上からの老眼鏡」でした。

 使い慣れためがねの上にクリップでとりつけるだけで、遠近両用老眼鏡に早変わりです。遠くを見るときは右の写真のように跳ね上げればよいのです。プラスチックレンズなので重さも気になりません。工作好きの諸兄には必須のアイテムです。例会で紹介したところ、帰りの日吉駅前のダイソーは早速YPCでにぎわっていました。

 

 

(6) ドルフィンパワー 山本の紹介&即売会

 秋葉原のジャンク屋で見つけた「手動式携帯電話充電器」です。おなじみの手回し発電機「ゼネコン」と同様、モーターを逆回転させて発電機としています。ゼネコンと異なるのは、片手のグリップ動作でよいことと、レギュレーター内蔵で5.5Vの安定化出力が得られることです。1分間90回程度のグリップで、50mAまでは5Vの電圧をキープします。

 おまけパーツとして着脱式の白色LEDライト(大容量コンデンサー内蔵)も付属していて教材的価値は高いです。自作ワニグチコードもセットにしたらその場で飛ぶように売れました。

 

 (7)200円でおつりのくる発電機 山本の発表

 100円ショップダイソーの店頭に並ぶハンディ扇風機です。単3電池1本で駆動します。たわいもない商品に見えますが、内蔵のモーターはしっかりしたものです。備長炭電池や太陽電池でもブンブン回転します。

 問題はケースがばらせないので、いかにリード線を引き出すかです。なるべく加工の手間が少ないのが望ましいのです。そこで電池と同じ長さの丸棒にリード線をとりつける方法を考えました。電池の正極、負極にあたるところに電極をつけてリード線を引き出せばよいのです。加工はフタにリード線引き出し用の穴を2箇所あけるだけです。写真ではこれまたダイソーの「銅箔テープ」を使用していますが、丸棒の両端に画鋲をさしこむだけで十分です。この丸棒を電池の代わりに入れればよいのです。

  この扇風機は単なるモーターとしてだけでなく、発電機としても使えます。新課程の物理Iは電気単元から始まり、「モーター転じて発電機」をさっそく教えなければなりません。そのための恰好の教材になります。適当な棒に水糸をゆるく張り、扇風機のモーターシャフトに一回巻き付けます。弓錐を回すように糸を張った棒を前後するとモーターが回転して発電します。これまたダイソーの替えニップル球(1.2V0.22A)につなぐと、実用的な明るさで点灯します。グリップのホールディングがちょうどよく、力を加えやすいのがよいです。

 

 (8) 森の合唱団 鈴木亮太郎さんの発表

 

鈴木亮太郎さんが持ち出したのは、民芸お土産品として入手した「森の合唱団」という商品。木の工芸品として作られている木琴です。たたくと非常にきれいな音がします。ポイントは、すべて鍵盤が同じ長さになっているということ。秘訣は、木の材質が違うことです。それぞれ何の木なのか表示してあります。ただ、単純に密度の違う木をならべただけでは正確な音階は作れません。さらなる秘訣は裏にありました。1本1本の板の削り込み方が微妙に違います。つまり、正確な音階になるように手作りで一枚一枚削っているのです。お値段はかなりのもの。それもうなずける商品です。でも、音の教材としてぜひ見せたいものですね。

 (9)RADIUM 戸田先生提供のビデオ・喜多さんの代理発表

  富山の戸田先生からYPC宛に送られてきた「RADIUM」のビデオを皆で見ました。主にラジウムの精錬工程について説明してありますが、最後の方にキュリー夫人が動く映像として映っています。1925年にチェコを訪問したときのもので、1867年生まれの夫人は当時59才です。

 写真で喜多さんが指しているのがキュリー夫人です。

 

 

(10)          オールメタルIH開発秘話 喜多さんの発表

 前回の例会で、時間切れのためお話しだけに終わったオールメタルIHの話題の続編です。

 右は従来型のIHクッカーの中味です。中央の巨大なコイルが目を引きます。かなり太いエネメル線がよりあわせて使われています。これで交流磁界を発生させ、上にのせた金属の鍋に電磁誘導を起こして鍋自身に発熱させるというのがIHの原理です。したがって抵抗率がある程度大きい鉄やステンレスの鍋でないと使えないというのが従来型の泣き所でした。それを銅やアルミの鍋でも使えるようにしたのが当節話題の「オールメタルIH」なのです。松下のホームページにアクセスすると、プロジェクトXなみの開発秘話が載っています。17年間の涙の世界が・・・

 アルミニウムや銅を発熱させるためには、高い周波数が必要です。表皮効果で電流を集中させるのだが、高い周波数になると、コイル自身も表皮効果のため電流が流れにくくなります。それを打ち破るためには細線でコイルを作るしかありません・・

 下左の写真は左側が直径0.3mm、右側が直径0.05mmのウレタンエナメル銅線です(秋葉原オヤイデ電気で購入:それぞれ300g900円、2400円)。松下の「オールメタルIH」に使用されている加熱用のコイルの銅線は直径0.05mm、髪の毛と同じくらいです。手で引っ張ると切れてしまいます。

 右写真がHP上に載っている従来のものと、オールメタル用の銅線の比較図です。0.05mmの銅線を何本もまとめて撚っていきます・・・途中で切れたらまた始めからやり直しです・・・開発に伴う試行錯誤の連続には思わず目に涙せずにはいられません。

 

 

 

 

オールメタル加熱方式のしくみについては、

http://national.jp/sumai/ihcook/321ms/index7.html

また、開発エピソードは、下記に載っています。

http://www.matsushita.co.jp/ism/main.html#8

 

(11)          福沢諭吉の「サイアンス」 平松さんの書籍紹介

  (著:永田守男、慶應義塾大学出版、20033月)

 著者の永田氏は慶應義塾大学理工学部管理工学科教授でソフトウエア工学が専門とのことです。本書では、福澤が「訓蒙窮理図解」(以前喜多先生が紹介済み)を著し、あわせて教育の初期段階において自然科学を学ぶことの重要性を説き、慶應義塾の初期のカリキュラムでこれを実践していた、などを紹介してます。

 

 

(12)          昔の実験器具 右近さんの発表

 右近さんは、昨年島津創業記念資料館で見学してきました,慣性実験機,転上体,ライデン瓶セット,電気振り子,円筒鏡,円錐鏡など,昔の実験器具を写真で紹介してくれました。

 左の写真の転上体は重心の移動により2つ合わせた垂体が斜面を転がり登るようにみえるものですが,ルーツは古く,同じものがガリレオの時代から知られています。下の写真の電気振り子はまさにフランクリンが実験していたものとほとんど同じです。彼の肖像画にも登場します。

 右近さんが古本屋で手に入れた島津の昭和11年発行の実験器具のカタログ(下左)からもいくつか紹介がありました。

 浮沈子を入れた円筒容器を二つ並べ,その間を細い管で連結したものは,現在まったく見かけませんが,今でも使えるそうです。一方の円筒のゴムのふたを押すと,両方の浮沈子が沈んでいくものです。また,回転鏡を使って,音声の波動を壁に描かせる工夫も紹介されています。今でも行われている優れた演示実験です。さらに,科学史の本から見つけた,18世紀フランスのノレによる力の合成を示す実験器具の挿絵なども紹介がありました。

 現在われわれが行っているポピュラーな演示実験や実験工作も、そのルーツは非常に古いものが多いです。プライオリティを主張する前に、文献検索をきちんと行い、先人に学ぶべきだと思います。

 ニュートン後,18世紀前半,デザグリエ,ミッシェンブロック,ノレ,グラベサンデ,など優れた演示実験講師が排出し,ニュートン力学の普及に尽力します。彼らはニュートニアンと呼ばれています。多くの人々はニュートンの書いた「プリンキピア」を読むことによってではなく,ニュートニアンの工夫した効果的な実験器具による演示実験を通じて新しい自然哲学を受け入れていったのです。その結果,彼らの工夫した実験装置は時を超えるほど息の長いものとなり,良くも悪くも物理教育の伝統のルーツになっています。

 例の浮力の米ーピンポン玉モデルはフックの工夫ですが,これが演示実験講師によって取り上げられ,その後延々と初等教育における浮力の説明として命脈を保ってきたのも同じ理由からだそうです。20世紀に入ってさえも,W.ブラッグ(ブラッグ反射のブラッグです)は堂々とクリスマスレクチャーでこの実験を披露し,浮力を説明しているといいます。この演示には問題があることが指摘されてもなお、伝統的な演示実験は受け継がれているということです。


     


1回授業研究会報告

 小沢 啓

special thanks 宮崎幸一さん

  去る321日、江ノ島のかながわ女性センターにて、YPCの仲間による授業研究会を宿泊で行なった。ふだんのサークルは、めずらしいおもちゃや実験の発表が中心になりがちで、授業についてもっと話がしたいという私の思いとちょっとずれていた。そういう発表も大事ではあるのだが、それが授業でどう生かされているかを報告しあう場が必要だと思った。授業実践をサークルにもっていっても十分な討議の時間がとれないことも多く、こりゃ宿泊でやるしかないな、と思っていたのだった。

 昨年末、湘南台高校のお楽しみ広場+神奈川のサークル交流会のときに、授業研究会合宿をできないものかと市江さんと加藤さん@山梨に声をかけたら賛同して頂いて、実現にこぎつけた。最初のうちは「若手のための授業合宿」という位置づけで、我々若手が積極的に授業実践を出し、先輩方からご意見をもらおうという形を考えていたが、ふたを開けてみると若手でない方(失礼)にも多数発表して頂き、けっきょく若手ベテランの区別無く、対等に授業の悩みを出し合い、助言し合うという、実に健全な形で行なうことができた。さすがYPCと思った次第である。

 この会で感じたことは

授業を報告し、助言し合う場のニーズは間違いなくある

ことである。今年に入り、YPCの例会では必ず授業報告の時間を確保するようになったことにも現れている。

 計画段階では2日とも研究会にあてるという案も考えたのだが、予定の調整が難しかったことや、どうせ飲み会で睡眠不足になるから等々の理由で、1日目午後から深夜に及ぶ「集中討議」にした。ちょうどよい分量だったと思う。(お酒も討議も)

 「またやりたいね。」「この時期がちょうどいいね。」と言ってくださった方が多く、運営者としてとてもうれしい。しかし、安く泊れるこの会場、神奈川の財政難の影響だかなんだかで閉鎖され、来年は使えないようである。どなたか、手頃な研修施設を紹介してくださると助かります。

 

 さて、せっかくよい会が実施できても、報告がすっかり遅れてしまった。幸い宮崎さんが記録をとってくださっていたので、それを転載することでご勘弁願いたい。(以下、明朝体の文章は宮崎さん。丸ゴシック体は小沢の感想メモです。)

日時:32113002400以降(途中、食事・入浴中断あり)

会場:かながわ女性センター(江ノ島)(ここなかなかよい)

参加者(敬称略):益田、加藤@山梨、鈴木健夫、山本、宮崎、右近、徳永恵理子、宮田、井上信夫、水野、神谷、市江、小沢

 

・ISM教材構造化法(13:30〜14:00) 宮田

東京の研修会で学んだ教材構造化法の紹介。

このよい点は授業計画を立てる際に内容の見通しがつく、概念の漏れがなくなる、生徒に構造化したマップを見せることで生徒も授業内容に見通しがもてる。webで検索したら、鈴木亮太郎さんの報告が出てきた。

 最初の発表だったのでまだ質疑が盛んでなく(ちょっと「よそいき」な雰囲気で始まった)、司会の私も淡々と次に進もうかと思ったとき、市江さんから「もっと質疑があった方が」というご意見。そのあとがおもしろかった。ふだんの例会のようにわからないことは何でも聞いてみる。「カロリック と フロギストンの違いは?」 とか、横道にそれて「ランフォードはラボアジエの奥さんと結婚したけど最後は別れた」などの週刊誌のような情報も。

 

・文系物理3単位の授業計画(14:00-15:05) 徳永

来年度の慶応高校での授業案を検討。流れが悪いと指摘を受けたというが、この学習会での評価はよかった。自分の教えたい、重点をもっと中心に据えてもいいのではないかなどの意見が出た。液体窒素の実験は夏休み直前でいいのではないか。

事前に講義ノートをしっかり作っていて、今後それにも注目です。

(授業プランを職場のK先生に見せたら厳しい指摘を受けたそうですが、後日別の場でK先生は「徳永さんの授業プランはとてもいい!」と言っていましたよ。)

 

・授業プリント仕事とエネルギー、レンズの公式(15:20-17:40) 市江

力学的エネルギーの保存の説明で「保存力と非保存力」について、もっと十分教える方がよい、保存力を「力の大きさと向きが位置によってきまるものを保存力」と説明してはどうかという主張。

これらの主張には「厳密に言うと誤りではないか」などだいぶ異論がでた。実際の授業での生徒の理解がいかがか、実践での検証待ち。

発表者のテーマではなかったが、「熱」と「内部エネルギー」の区別が曖昧のまま「熱と仕事」の単元での学習が進むことがないように注意をしなければいけないという意見がでた。「熱」=フロー、「内部エネルギー」=ストックの区別を明確に。

レンズの公式の学習で、「実像・虚像」の区別のために、単レンズでの光学現象をあげ、その像が「実像」か「虚像」かを先に覚えてもらうという工夫にも疑問の声がでた。

ただ、1年間の授業プリントは圧巻、このシリーズをほしいという声が挙がった。CD-R化に期待したい。

市江さんはふだん忙しくてYPCにもなかなか来られなくなってしまったので、ぜひ引っぱり出す機会をつくりたいと思ったことも、この会を行なう動機の一つでした。

かつて私がYPCで授業報告したときに、市江さんの何気ない一言(保存力とは何かを定着させたい)がきっかけで議論がおもしろくなり、他の方から「自分の授業ではこうやっているよ」という手の内を引き出したことがあります。そういう議論をしたいと思います。

今回の議論も盛りだくさんで、仕事・エネルギー・保存力の話題で85分。それに関連して熱・内部エネルギーに15分、最後に光とレンズについて40分間、あっという間にたっていきました。

市江さんは宿の手配など実務面でも活躍してくださいました。ありがとうございました。

 

食事をはさんで後半戦です。

・物理IB年間授業計画(19:00〜20:45) 山本

プリントでの授業、特徴は作業プリントが多い。等加速度運動の説明は、等速部分に速度増加部分が足しあわされたと説明し、その説明で自由落下などの運動も行う。

力は高校で出てくる力の種類をすべて先に挙げてしまう。力の見つけ方を教える。(このあたりは、「前田の物理」の“なでこつ重”と同じ?ようでした。)

 山本さんの授業は、他の分野をみても思うことですが、いつも生徒にとって目標がハッキリしていると思います。達成感を大事にしているのだと思います。

 

・デジタルカメラを使った運動の解析(20:50〜21:25) 益田

1秒間に30コマ連続にとれるデジカメを用いて、落下運動の解析をさせた報告。デジカメの癖なのか、測定点の4,5個目がおかしなデータとなる。画像自体は鮮明なので、プロジェクターなどで模造紙に大きく投影し、模造紙に物体の位置を書いていく方法もあるなどの意見が出た。

新しい機材を使った実験開発で、まだ原因のよくわからない誤差が生じたり、提示方法が難しかったりすることもありますが、発展させていける方法だと思います。今後サークルでも報告して頂き、皆の力でよりよいものにしていきたいですね。

 

ここで風呂休憩。

 

・マンガを用いた科学的思考の課題(22:15-23:40) 加藤

ドラえもんなどのマンガを使って、科学的におかしな部分を説明してもらったり、意見を書いてもらう実践。取り上げた内容もおもしろく、それへの生徒たちの回答も非常におもしろい。加藤さんと生徒たちの関係のよさ(学習をする態度、自分の考えを素直に書いていくという関係ができあがっている)が現れている発表であった。今回の報告の資料は非常に楽しいものでした。是非、皆さんも、加藤さんに資料請求してみてはいかがでしょう。おすすめ度☆☆☆

柔軟な発想に驚き。毎回山梨から遠征してくるので、ただ者ではないなと思っていたら、やっぱりそうだった。生徒が欠席連絡で「体の中のランダムな分子運動が激しくなったから休みます」と言っていたというエピソードも微笑ましかった。

 

この先は深夜につき、お酒も回って、記録が不十分です。

私も、記憶がとんでいる。

 

・試験問題 鈴木

2年の物理の試験問題、計算問題なし、選択肢問題・穴埋め問題・正誤選択の問題

授業報告がわりに試験をもってくるということは私もサークルでやりましたが、とても有効です。「授業報告がわり」ではなく、まさに「授業報告」と言ってもよいと思います。何を大事にして授業をしているかがわかります。

 

・電気の授業記録 小沢

静電気の授業報告。授業ノートをコピーしたものやプリントを発表。

準備が間に合わなかったので、自分が使っている汚い字のノートをただコピーしただけという手抜きをしました。しかし、これもまた気軽に授業報告をするための有効な方法のひとつだという提案も込められています。なかなか恥ずかしくて見せ合うことはできないかもしれませんが、欄外のちょっとしたメモ(本の名前とか、余談のネタ、授業展開上注意することのメモ)などに学ぶこともあるのではないでしょうか。

 

 

翌朝の午前中は江ノ島の散策(山本さんの解説つき)に参加される人、そのまま

次のお仕事にいかれる人とさまざまでした。

 ちょっとした地学巡検でした。私が見るとただの穴や草むらに見えるところも(観光客も当然通り過ぎます)、山本さんの説明を聞くと「なるほど」と思います。江ノ島ができるまでの歴史を教わりました。