YPCニュース

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2003.9.21 横浜物理サークル発行


目次

巻頭言:地震予知と疑似科学                              すた 23-24
8月例会の報告          まとめby山本明利 編集by市江寛 24-33
(1) ガラスの浮沈子製作会
(2) 無重力フライトと宇宙メダカ
(3) 大きい水中シャボン玉の作り方
(4) プルフリッヒ効果
(5) 大気球のポリエチレンシート
(6) 学研かがくのガチャガチャ
(7) 運動解析ソフト
(8) 「実験でたどる原子・原子核の世界」
(9) 実用的なCDの処分法
(10) 紫外線LED
(11) 殺菌ライト
(12) 殺菌灯を安全に使う
(13) 相対速度の効果的演示
(14) スターリングエンジン製作会から
(15) 宇宙研・NASDAグッズ
(16) コミケ・科学工作の本
(17) 液体信号
宣伝:YPCニュース合本Vol.15ができました。                 33
宇宙研でもらった大気球の材料                     大谷京子 34-36
液体信号                      市江寛・益田克行・鎌倉学園科学部 37
「ジェームズ・ワット」                石原純著『偉い科学者』より 38-41

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巻頭言:地震予知と疑似科学

 異常気象のような天候が続いていましたが、いかがお過ごしでしょうか。この原稿を書いている20日は、台風と秋雨前線の影響で、前日より突然気温が5度近く下がり、肌寒さすら感じたくらいですが、実はそれが平年並みなのですね。19日までの暑さは、「残暑」という言葉を超えていました。
 さて、今回ここで話題にしたいのは、気象ではなく地震についてです。一部の方はご存知かと思いますが、9月16,17日前後にM7.2前後の地震が南関東に起こる可能性がある、という予知が発表されました。どこかのいかさま予言者や占い師があてずっぽうに言ったのではなく、科学的に研究している人の予知でした。流星観測の第一人者の串田嘉男氏が、FM電波観測による地震予知に取り組んでいて、この8年間の実績から考えて無視できない前兆現象を捉えた、というものでした。ただ、串田氏ご本人は控えめで、これまでの経験則と照らし合わせると大型地震活動の可能性も否定できない、という言い方でした。(http://epio.jpinfo.ne.jp/)ちなみに、ガリレオ工房は16日に予定していた例会を、この情報のために1週間ずらしたそうです。結果は、、、?。
 昨日の時点でこの巻頭言を書くなら、「外れた」と書こうと思っていたのですが、今日(9月20日)の12時55分ころ千葉県沖でM5.5の地震が起こりました。南関東では震度は3から4ですが、近年の地震としては久しぶりに大きく揺れたという印象を持つ程度の地震です。さて、これが串田氏が予知していた地震の範囲なのか、それともまったく無関係なのか。原稿執筆時点では串田氏のコメントが(少なくともネットなどでは)出されていないので、わかりません。今後の情報に注目したいと思います。
 実は私自身は、この話を聞いたときに、こういう実害のない地震を期待していました。大地震が来てもらっては困ります。しかし、何らかの形で前兆と実際の地震との関連が検証されていくのは、地震の科学にとって大きな意義のあることです。しかも、今回のようにマスコミにある程度冷静に流れ、社会の注目を浴びたと言うことも重要なことだと思います。そして何より、こういう予知方法が確立することを期待する気持ちも当然あります。
 ただ、そうは言っても、はたしてこの串田氏の予知方法が本当に科学的なものなのかどうかは、まだ確定していないと思います。串田氏の研究が「疑似科学」でありヘタをすると「トンデモ」科学の部類だという批判もあると聞きます。私は「まだわからない」と考えるのが一番冷静な対応ではないかと思います。
 何かの研究が、科学か疑似科学(ニセ科学)かどうかを判断するには、それが反証可能かどうかが大きな分岐点です。そして立証責任は理論を提唱している側にあるというのも大きなポイントです。串田氏の予知方法の場合、今はまだデータが少ないので立証も反証もできませんが、データを蓄積すれば白黒の決着がつく問題です。そして、串田氏は自分の専門の流星観測を投げ打ってその検証自体に取り組んでいるわけです。そういう意味では疑似科学と決め付けるのも早計です。要するに、鵜呑みにせずに冷静に対応するという基本線を保つことが大事ではないでしょうか。
 最後に一言。こういう話題になるといつも思うのは、地震に関する学問がまだまだ未成熟だと言うこと。もちろん、データの蓄積に膨大な時間のかかる分野なので、簡単にはいかないでしょう。しかし客観的事実として言えるのは、研究者があまりにも少ないということです。そしてその要因の一翼として、我々科学教育の現場で地学教育が脇に追いやられているという事実があります。(我々のせいではありませんが。)私の学校も地学は存在せず、地学教室は理科以外の部屋になってしまっています! もっと地学教育を重視した上で、地学の専門家の研究場所を確保し、科学としての地球科学を国が支えていくべきではないでしょうか。何より他の分野よりももっともその必要性が高い学問だと思うのですが。

すた


   


月例会報告(まとめby山本明利 編集by鈴木健夫、市江寛)

日時:2003年8月31日(日)15時〜19時

会場:鎌倉学園中高

参加:19

内容:

(1)ガラスの浮沈子製作会 市江の製作実習

例会に先立って、YPCで大ブレイクしたガラスの浮沈子を市江の案内で参加者のみなさんに製作して頂きました。材料は軟質ガラスの直径10mmのガラス管1本(1m250程度)、使う道具はガスバーナー、るつぼバサミ、乳鉢(受け皿として)。ガラスを溶かして思い通りに曲げたり、伸ばしたりするのは、ちょっとした職人芸です。2時間程度練習すれば、コツがつかめます。先を吹いておたまじゃくしのような形に膨らませ、シッポを伸ばしながら、ガラスが冷えない内に素早くらせん状にひねり、途中をヤスリで傷つけて折ります。失敗しないためのポイントはかなり強めの炎でガラスを十分溶かしてから、炎から出して冷めないうちに素早く変形させるところです。炎の中で変形させるのは、シッポがちぎれて先端がふさがってしまうので禁物です。ガラス細工に不慣れな方には、まっすぐ伸ばしたシッポを切らずに、ひとまず冷やしてから、温度の低い外炎で少しずつ温めながら2か所を直角に曲げる方法がお勧めです。

ふだんガラス細工をやっていないメンバーはなかなか苦戦していたようですが、化学専門の高杉さんは、見事なガラス細工を見せてくれました。

 

 

 

(2) 無重力フライトと宇宙メダカ 車田さんの紹介

 日本科学未来館のスタッフが名古屋にあるダイヤモンド・エア・サービス社の無重量実験航空機にモニターとして搭乗した時のビデオです。素人集団ながら無重量体験の模様をしっかりビデオに記録しています。右は同乗した宇宙メダカ入りのPETボトルですが、残念ながら手持ちでビデオを撮っていたため飛行の状態がわからず、インパクトがいまひとつでした。わかりやすい画面構成がいかに難しいかがうかがえます。メダカが逆さに泳いだり様子がおかしい場面が無重量状態なのでしょう。普通メダカと差が出るのでしょうか?

 

(3)大きい水中シャボン玉の作り方 車田さんの発表

 水中シャボン玉の大きさは、使用するストローの径でだいたい決まるので径の大きいストローを使ってみたところ、ストローの径が大きいとシャボン液を取込めず流れてしまいました。そこでストローの口に網を付けると、太いストローでもうまくシャボン液を取込め、ひと回り大きな水中シャボン玉を作ることができました。また、径の小さいストローでもシャボン液をゆっくりとたらすことで大きな水中シャボン玉を作ることができます。水中シャボン玉ができるメカニズムを説き明かすヒントになるかもしれません。

 

 

(4)プルフリッヒ効果 水野さんの発表

  一定方向に動いていくテレビ等の画像を、片目だけ黒っぽいフィルターをして両目で見ると、見ているものが立体的に見えます。これをプルフリッヒ効果といいます。その原理は、フィルターを通した目の方の反応時間が遅れる結果、時間的に遅れた像を見ることで、左右の目で見る像の位置がずれ、その視差によって像の動きが立体的に見えるというものです。

 以前に、200011月の例会で小沢さんが紹介した、単振り子が円錐振り子に見える現象とおなじものですが、平面の動画に奥行きをつけるところが面白く、いろいろな応用が考えられそうです。夏の全国私学研修大会で入手した話題だそうです。

 

(5) 大気球のポリエチレンシート 大谷さんの発表

大谷さんは、宇宙科学研究所の一般公開(7/26())を見学した時、観測用の大気球グループのブースで「科学観測用プラスチック気球」用のポリエチレンシートを入手し、YPC用にとたくさんもらってきてくれました。

 この気球用フィルムは、厚みが3.3μmという薄さ。ポリエチレン製で、感触はふにゃふにゃという柔らかい感じ。こんな薄いもので、重い観測機器をぶらさげて浮くというのは不思議な気がします。気球を高く上げるために、薄い材料の開発を行っていて、現在、厚さ3.0μmまで製作されていると いうことです。気球にはヘリウムをつめて打ち上げます。気球の大きさは、1000m3位〜東京ドーム位までいろいろ、打ち上げ高度も観測目的により、300m〜53km位までさまざま。打上げは主に岩手県大船渡の三陸大気球観測所で行いますが、超新星爆発の観測のためブラジルに出かけたり、オーロラ観測のため南極に遠征したこともあるそうです。用途は太陽フレアのX線観測など「天体・宇宙線観測」、再突入用カプセルの耐熱試験などの「工学実験」、「地球の高層大気などの調査」など多岐にわたります。

 今回分けていただいた気球用フィルムは、幅1m、長さは数10m以上。布地のように巻いてありましたが、実は筒状になっています。実際に、気球をつくる時は、筒を切り開き、地球儀の経線に沿って切ったような形にして、大型熱接着機を使ってはり付けるのだそうです。例会では筒の片側を結んで袋状にし、反対側から熱風をいれて実験してみました。ガスバーナーの炎で軽く温めるだけでみごとに浮きます。右はポリエチレンシートの「山分け風景」。

 大気球観測などについての質問には、今回お世話くださった宇宙科学研究所三陸大気球観測所助手の斎藤芳隆さんが応じてくださるそうです。詳細は、大谷さんの記事をご覧ください。そこにメール等での問合せ先も載せてあります。

 

 

(6) 学研かがくのガチャガチャ 益田さんの発表

おもちゃのカプセル販売機(通称:ガチャガチャ)に「学研かがくの付録シリーズ」が登場しました。写真は顕微鏡と宝石セット。カプセルに入るサイズだから、科学の付録そのものではなく、ミニチュア化したものですが、ちょっとコレクションしてみたくなります。

 

 

 

(7) 運動解析ソフト 宮崎さんの発表

科教協東京大会で新潟大学の小林昭三先生が「ITを活用した力学授業法」についてレポートされていました。そこで紹介していただいた動画解析ソフト「運動くん」(新潟大学グループが開発したフリーソフト)を、宮崎さんはさっそく追試。例会の席でその使い方の実際を披露しました。
 デジカメのムービーモードやデジタルビデオカメラで撮影(写真左上)した物体の運動の動画をパソコンに取り込み(写真右)、決まったフレーム数ずつ送りながら着目物体の位置を画面上でマウスクリックします。これだけの簡単な操作で、物体の位置や速さの時間変化を瞬時にグラフ表示できます(写真左下)。画像のファイル形式は現在、AVImotionJPEG(AVI形式)MPEGに対応しています。機能アップをめざしてさらに改良が続いているといいます。

 フリーソフト「運動くん」は新潟大学のサイトのほか、ベクターのサイトからもダウンロードできます。

 

 

 

 

 

(8)「実験でたどる原子・原子核の世界」 喜多さんの紹介

  製作・著作:科学技術振興事業団、 監修:戸田一郎、竹下徹(信州大学物理学科高エネルギー物理学研究室)のデジタルコンテンツです。原子・原子核の分野は教科書の最後に収録されているため、時間切れなどで簡単に扱う傾向があり、残念ながら学校での実験はあまり行われていません。学生時代にその実験を見た人も少ないのではないでしょうか。物理の教員でもこの単元の実践事例はきわめて少ないのが実情です。これは原子・原子核分野を扱う教師にとっては垂涎のコンテンツと言えます。

写真はミリカンの実験の一コマです。ミリカンの実験装置を持っていても、取り扱いが難しいためなかなか生徒に見せる機会がありません。その実験が見事に映像化されています。おそらく世界中探してもなかなか手に入らない映像でしょう。ぜひ授業で活用したいものです。この他にも教師が教材研究を行う上で、非常に参考になる映像が沢山収録されています。「理科ねっとわーく」http://www.rikanet.jst.go.jp/に登録すれば、このコンテンツは無料でダウンロードできます。使用または閲覧して戸田先生にコメントを送りましょう。

 

(9)実用的なCDの処分法 山本の発表

 古いCD、ことに機密性の高いデータを記録したCD-Rを、安全に処分したいと考える人は多いのではないでしょうか。学校は特に廃棄に慎重を期すべきデータが多くあります。CDCD-Rは物理的に破壊するのが最も安全なのですが、ポリカーボネートの優れた弾性のため、機械的に割るのはかなり骨が折れます。ノコギリで切断したり、加熱変形させたりと、けっこう大げさな処理になります。

 ところが、エタノールやジエチルエーテルをたっぷりしみこませたティッシュペーパーなどを中心の穴の付近にあてがって、両親指でこれを押すようにして曲げると、あれほど変形に強かったCDがいとも簡単に真っ二つに割れます。圧縮成型時の細かなクラックに有機溶媒がしみこんで、結合を切るためではないかと考えられますが、驚くほど小さな力で破壊できます。

 CD-Rにマジックで書いた文字を消そうとして、偶然発見した現象です。

 

(10)          紫外線LED 山本の発表

 紫外線を発する発光ダイオード、UV−LEDが手にはいるようになりました。可視領域の紫から、UV−Aの近紫外あたりに分布した光を発します。肉眼で見るとそれほど明るくない紫色に見えますが、紫外にピークがあるので、決して正面から肉眼で見つめてはいけません。動作電圧は約4V。マンガン電池3本直列ぐらいが電源としては適当です。

下左は蛍光マーカーで描いた線が光る様子で、右は蓄光ゴムシートにこのLEDの光をあてて描いた文字の写真です。郵便物のバーコードや、紙幣の蛍光インクの観察もできます。可視部の光だけをうまく遮断できれば、小型のブラックライトとして活用できそうです。

 まだ一個¥290円と高めですが、秋葉原の千石通商で入手できます。

 

 

(11)          殺菌ライト 山本の発表

 タニタのキッチン用「殺菌ライト」。科教協東京大会でも一部で話題になっていたものです。コンパクトなデザインでU字形のミニ水銀灯を内蔵し、単4電池を電源として、ボタンを押すと紫外線を発して食器や調理器具などを殺菌できます。定価は¥3800ですが、売れなかったのかもはや製造中止とのことで、ネット上でバッタ販売されています。

 紫外線が放射されているのは事実で、箔検電器に亜鉛板を乗せて負に帯電させ、殺菌ライトの光を当てると光電効果で箔が閉じていきます。オゾン臭もするし、UVチェックカードにあてると、右の写真のように確かに感光するので、UV−B、Cがかなりの強度で出ているのは間違いありません。説明書にも書いてあるとおり、発光部を肉眼で見つめることはきわめて危険です。上の紫外線LEDよりさらに短波長で強力なお手軽紫外線源として、物理教材としては有効です。紫外線を遮断すれば水銀のスペクトル光源としても利用できます。

 

(12)          殺菌灯を安全に使う 山本の発表

 紫外線ついでに、もう一つ。こちらは以前にも紹介したことのある4Wの殺菌灯です。253.7nmの強力紫外線を発します。見つめることはもとより、至近距離で皮膚に照射することも危険です。筆者もこれで「日焼け」した経験があります。

 

 ところでこの有害UV−Cはガラスや化学樹脂で効率よく吸収されます。そこで、ポリカーボネート(PC)の管を切断して作ったシェードをかぶせると、かなり安全な光源とすることができます。下はUVチェックカードで紫外線量チェックをしているところです。PCをかぶせない方(左)は感光しますが、シェードをつけた方では長時間当てても感光しません(右)。光源効果も左だと起こりますが、右だと起りません。

 

(13)          相対速度の効果的演示法 右近さんの発表

 静岡の電磁気学討論会の帰りに滝川さんから教えてもらった相対速度の演示法です。2台のおもちゃの自動車を模造紙の上で走らせ、一方が机に対して静止するように模造紙を引きます。すると、その自動車に対する他の自動車の相対速度がよくわかる、というものです。非常に単純な原理で、視覚的にもわかりやすい方法です。

 ただ、例会での演示は自動車のおもちゃがはずみ車動力だったため、うまく速度の調節ができなかったのが残念でした。モーター等で、ゆっくりと走る模型が適しているようです。

 

(14)          スターリングエンジン製作会から 越さんの発表

越さんは7月30日にに行われた土浦工業高校理科研究部「夏休みスターリング講座」に参加しました。写真はそこで製作した「リングボム式フリーピストンエンジン・クランク式」。アルミ板やアングル材の加工も意外と簡単で(カッターや金鋸で切れました)、3時間ほどで完成したそうです。うまく調整すれば10m位は走るといいます。

詳しくは土浦工業高校理科研究部のHPhttp://members.jcom.home.ne.jp/rikaken/を見てください。

 

 

 

 

 

 

(15)          宇宙研・NASDAグッズ 大谷さんのお土産配布

大谷さんが夏休み中に宇宙研やNASDAからもらってきたリーフレット、ペーパークラフト、ポスター類を分けてくれました。実験室のアクセサリーにどうぞ。

 

 

 

 

 

(16)          コミケ・科学工作の本 車田さんの紹介

 車田さんは今年のコミケで「科学工作の本」2冊を見つけてきました。内容は紙工作を中心としたもので「科学工作の本1」にはブーメラン、不思議な壁、紙笛、ベンハムのこま、運動残像、簡易分光器、「科学工作の本2」にはカメラオブスキュラ、フェナキスティスコープ、アナモルフォーシスなどがあります。いずれも紙工作キットの本でレンズや偏光板など材料もついています。また、本の内容のすべてのPDFが収められたCDがついています。筆者は元物理教師の原田智也さんです。

 

 


(17)          液体信号 市江の発表

 鎌倉学園の科学同好会が、今夏科学の祭典に出展した実験をみんなで追試しました。ペットボトルに入ったうすい水酸化ナトリウム水溶液(水125mlに対してNaOH2.5g)にブドウ糖1.5gとイジゴカルミンをごく少量(0.025g)を加えると、インジゴカルミンの酸化還元によって緑→赤→黄と三色に変化します。この場合、ブドウ糖は還元剤としてはたらき、緑色のインジゴカルミンを赤→黄色に変化させます。ペットボトルをシェイクすると、再び黄→赤→緑に変化し、この反応は数回くり返すことができます。化学ではお馴染みの実験ですが、イベント等で手軽にできるように、あらかじめ混合したブドウ糖とインジゴカルミンをフィルムケースで配布するといった工夫をしています。

 

 

 

 

 

 

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すでに科教協東京大会や物理教育研究会全国大会などで頒布をはじめていますが、直接入手できない方は鈴木健夫suzuki_takeo@nifty.ne.jp(迷惑メール防止のため@を全角にしています。打ち直してメールしてください)までご一報を。11500円+送料340円です。

勤務先電話:044-766-7456新城高校

 



     


宇宙研でもらった大気球の材料

                                  大谷 京子

毎年、夏休みの1日、宇宙科学研究所が一般公開される。ロケット、人工衛星、宇宙、惑星、地球等の研究や実験を行うグループが、それぞれ、写真、模型等の展示をし、教授、学生達から、ていねいな説明が聞ける。また、子供向けに宇宙関係の魅力的なお土産ももらえるので、たくさんの親子連れもやってきて、私も、気球材料や人工衛星のクラフト等、もらってきました。

 

1.三陸大気球観測所の研究室

 この中に、科学観測用の気球の開発、打上げ観測を行うグループがあり、実際に使う気球材料に空気を入れ、子供達に配布していた。YPC用に、特別にたくさんもらってきたものが、例会で配布したもの。この時、「影の薄い気球の宣伝をぜひしてほしい」とお世話くださったのが、ここで助手をなさっている斎藤さんで、その後、メールで、実際の気球についての話をうかがった。

予想以上に、いろいろな観測をしていて、おもしろかったので、まとめて次に書きました。

 

2.もらった気球用フィルムは、厚さ3.3ミクロン

触ると、ふにゃふにゃの感触。幅1m、長さは数10m以上を、布地のように巻いてあったもの。これが、1枚のように見えるが、筒状になっているので、片側を結び袋状にし、反対側から、熱風をいれて、例会で実験してみた。
 実際に、気球をつくる時は、筒を切り開いて、地球儀の経線に沿って切ったような形にして、大型熱接着機を使ってはり付けるようです。

3.気球の概要
・気球の名称:科学観測用プラスチック気球

・気球材料の厚さ: 3.0ミクロン
・気球材料の材質: ポリエチレン。(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE))
    ポリエチレンには、分岐の量・長さで、いろいろあり、その中の1つ。
    通常、エチレンを重合して作るが、その際、「メタロセン」という触媒を使うように

なったのがポイント。これにより、薄いフィルムを作りやすい樹脂ができた。
・気球体積:1,000 m^3(単純には10mx10mx10m)1,000,000 m^3くらい。
・到達高度:約300 m53 km   (科学観測の目的によって違う)
      ・ちなみに、高度53 kmでの気圧は、0.6 hPa程度。(場所、季節により変化)

(気圧と高度の関係は、あとは、理科年表を参考に)

 

4.打上げ基地

主に、三陸大気球観測所(岩手県大船渡市三陸町)で、大船渡の北、釜石の南。ここは、ちょうど、三陸海岸が、太平洋に向かってせり出し、航空機飛行の邪魔にならないことから、選ばれたそうだ。ここで、30年の間に500機以上の気球があげられている。

この他、海外でも打上げ、15年前の南天での超新星爆発時には、ブラジルで実験し、昨年(2003)には、オーロラ観測のために、南極でも打上げたそうだ。

 

5.気球の飛行ルート(日本)

三陸で打上げた気球は、地上を離れると、偏西風に乗り、太平洋の方へと流されてゆく。

高度10 kmを少し越えた所が、この風が一番強い。ちょうど飛行機が飛んでいるあたりだ。飛行速度は、時に、時速100kmにもなる。

さらに、高度20 kmを越えると、風向きは、夏場は東風、冬は西風となる。
 観測には、気球が遠くに飛んでいかない方が都合がいいので、弱い東風が吹いている5月と9月に気球の打ち上げをしている。

こうすると、はじめ偏西風により、太平洋の方に流されていった気球は、上空で東風(東から西に吹く風)に乗り、再び日本に戻ってくる。このようにすると、一日程度の観測を日本でも行ってきた。

6.高く上げるための気球の開発
 気球開発上の重要なテーマの1つは、「高い高度まで飛翔する気球を開発」することがある。

気球が到達できる高度は、「ヘリウムガスによる浮力(気球体積に比例)」と、「気球重量(気球の表面積に比例)」+「搭載気球重量」のバランスで決まる。高度をかせぐには、大きな気球の製作が常識となっていて、昨年までの世界最大の気球は、1972年、アメリカで打ち上げられた気球で、体積1,350,000 m^3のもので、到達高度も、一番高く、51.2 kmだった。
 このような巨大な気球は、製作も大変で、打上げ時、地面に広げたときの長さが150 mにもなるため、実際の観測に使うのも大変なのだ。

そこで、気球のフィルム自体を軽くすることで、高くあげようと考え、から、開発を行ってきた。
  1990年頃から、開発開始

  1996年、6 um厚のフィルムを用いて、高度50.2 kmに到達することに成功!

1997年、さらに薄いフィルムの製作を始める。

2002年、体積60,000 m^3の気球を用いて、30年ぶりに世界記録を更新!

現在(2003)3.0マイクロm厚まで、製作可。

科学の要求には、きりがなく、さらに薄いフィルムの開発をすすめている。

7.観測テーマ
 イ.天体観測、宇宙線の観測     ロ.高層大気成分、環境の調査
 ・太陽フレアのX線観測     ・成層圏のクライオジェニック・サンプリング(1)
 ・高エネルギー電子線の観測、  ・オゾンの観測
 ・かに星雲の硬X線偏光観測など ・微生物の観測など
 ハ.広い空間を利用した工学実験      
 ・ソーラーセールの展開試験、
 ・再突入用カプセルの耐熱試験
 ・パラシュートの開傘実験など

8.データの記録方法
 電波で地上に転送するものが多い。中にはデータレコーダーを積み込んでいるものもある。
     (ハードディスク、コンパクトフラッシュカード、ビデオテープなど)

9.打上げ期間:
日本で実験する場合、1日程度、飛んでいる。(回収の都合による)
南極では、3週間にわたって飛ばした。
三陸で実験する場合、キャンペーン(1度に何個かの気球をあげるそのセット)は、一回、一カ月程度、行っている。今年も、お盆が終った頃からでかけます。


(注1)「成層圏大気のクライオジェニック・サンプリング」
上空の大気をとってきて、フロンガスなどの高度分布を調べる。
気圧の低い上空では、ただの袋に空気をつめてくると、量が減ってしまうため、低温で液化させることによって量をかせいでいる。

10.その他

・宇宙科学研究所の一般公開:7月25()、神奈川県相模原市JR横浜線淵野辺駅徒歩15分。

ホームページ:http://www.isas.ac.jp/    http://balloon.isas.ac.jp/

・斎藤芳隆:宇宙科学研究所 三陸大気球観測所助手  Eメール:Saito@balloon.isas.ac.jp

なお、現在(9/15)、斎藤さんは、三陸の基地にいて、このまえの観測はオゾンの観測、次の実験は、画像転送の新しい方式の試験をするそうです。