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2003.10.18 横浜物理サークル発行


目次

巻頭言                          	S.U. 	43-44
9月例会の報告         まとめby山本明利 編集by鈴木・市江 	44-50
(1)	マグネシウムの燃焼
(2)	落下運動の演示実験
(3)	起電ブランコ
(4)	格安の大型ガリレオ温度計
(5)	Ring Catcher
(6)	皿回し
(7)	ガリガリプロペラ
(8)	UVチェックビーズ
(9)	炭酸ロケット
(10)	アルコールロケット
(11)	簡単モーター
(12)	人体の不思議展
(13)	地震と防災
新聞記事から                    紹介文:	鈴木健夫	51
大きな水中シャボン玉の作り方	車田浩道	52
「湘南台・科学お楽しみ広場」への出展依頼		53-54
「関 孝和」            石原純著『偉い科学者』より

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巻頭言

それ以前と以後で,世の中がまるで違って見えるくらい,ビックリするような書物に出会うことができるのは,学生の特権だろう.こうした特権を行使できる幸運な機会に誰もがめぐり合うことができるとは思えないが,少なくても私は,だいぶ昔ではあるが,そうした果実を味わった経験がある.「学生」と限定したのは,年齢を重ねるたびに,その種の感覚がどうもにぶってくるように思われるからだ.しかし,もし昔に出会っていたら,まさにそうした部類に入るだろう,などと想像できる出会いは今でもある.
世界中のすべての人類の言語は同じ構造を持ち,言語能力はすべての人類が本能として持っている,というノーム・チョムスキーの主張はそうした部類に入るものだった.カラスが生まれつきカーカーと鳴くことができるように,人も生まれつき言語能力を持っている,言語は文化的人工物ではなく,社会科や理科を学ぶようには学ぶことができない,言語を使うという特殊な技能は誰からも教えられなくても,子供の中で自然発生的に発達する,いずれ言語を操る遺伝子が発見されるかもしれない,・・・等々,言語学と認知科学に大変革を起こした張本人がノーム・チョムスキーである.言語学者チョムスキーという名前だけは以前から知ってはいたが,彼の言語理論の一端を知ったのは,ほんの3年ほど前のことである.スティーブン・ピンカーの「言語を生み出す本能」(NHKブックス)に出会ってからだ.
2001年の9.11以降しばらくして,そのチョムスキーの名前としばしば出会うようになった.しかし言語学者としてではない.アメリカを「テロ国家の親玉」と呼んではばからない,厳しいアメリカの批判者としてである.
最近,そのチョムスキーのインタビューと平和活動を記録したDVD「チョムスキー 9.11 Power andTerror」が販売されていることを知り,さっそく視聴してみた.チョムスキーは1928年生まれの現職のMIT教授である.まず,年齢を感じさせない確かな記憶力と冷静な分析に驚かされる.語りはアジ演説の対極にある.かつてアメリカが他国にしてきた歴史的事実を淡々と積み重ねていくだけなのであるが,目から鱗とはこのことだろう.第二次世界大戦後,アメリカは実に20カ国と戦争を行い爆撃を繰り返してきたのである.チョムスキーは言う.「誰だってテロをやめさせたいと思っている.簡単なことです.参加するのをやめればいい.」
実はチョムスキーがこうした活動をしていると知ったとき,有名人にありがちな,「その後の文化活動」だろうなどと勝手に思い込み,いまひとつ触手が動かなかった.しかし彼は,根っからの平和主義者であり民主主義者であった.チョムスキーは述懐している.「私は広島に原爆が落とされた日のことを今も覚えている.あの日,私は文字通り誰とも話ができなかった.誰もいなかったのだ.・・・ニュースを聞いて,私は林の中へひとりで入っていき,二,三時間たったひとりで過ごした.広島の原爆投下について誰とも話ができなかった.他人の反応がまったく理解できなかった.私は自分が孤立していることを感じた.」ノーム・チョムスキー15歳,この日,ほとんどのアメリカ人は敵国日本の野蛮人が大量殺戮されたニュースを聞いて喜んでいたと思われる.(「9.11アメリカに報復する資格はない!」(文藝春秋)あとがきより)
現在の活動が言語学とどう関係があるのか,という質問にチョムスキーは「ありません」とあっさり答えている.むしろ時間を取られてしまう,やりたいことはたくさんあったが,片手間にこんなことはできない,と.でもアメリカはよくなっています,20年前はこうした会合さえ持つことは出来なかった.民主主義は確実に前進しています.そう語りかける彼の笑顔を見ると暗くなったこちらの気持ちもほぐれてくる.よくできたDVDだ.
                                                    (S.U.)


   


月例会報告(まとめby山本明利 編集by鈴木健夫・市江寛)

日時:2003年9月21日(土)15時半〜18時半

会場:県立横浜桜陽高校

参加:計23人

内容:

(1)授業研究:マグネシウムの燃焼 市江の発表

 市江が中学理科の授業で行っている実践例です。マグネシウムの燃焼前後の質量を測定して定比例の法則を示す実験で、班ごとに異なる量を与え、結果を記録させます。次の時間にその結果を報告させながらエクセルに打ち込むと、その場でグラフが完成し、プロジェクターで投影してただちに生徒に示すことができます。短時間に結論を出して成果を共有でき、全員が寄与を自覚できます。数値だけ見るとデタラメに見える自分達のデータが、グラフにすると思いのほか理論値と合致するのに生徒は驚きます。傾向から大きくはずれるデータが出た場合は、何か心当たりがないか必ず確かめさせます。グラフにする前に確かめさせるので、逆算は困難な状況にもかかわらず、必ずリーズナブルな原因が生徒達から返ってきます。そのために大切なのは、最後に必要な計算値ではなく、直接測った測定値を必ず記録させておくことです。ズレには許せるズレと、許せないズレがあること、それらの原因を突き止め、ぬぐい去ることができてはじめて、規則性や普遍性が見出せるということを気付かせたいと思っています。

 

 

(2) 授業研究:落下運動の演示実験 岩下さんの発表

 岩下さんの事例発表は、一学期の授業の集大成として運動関係の演示実験を集めて実験室で一気に見せるというものでした。「ころころリング」をツカミにして、単振動や波動まで盛り込みつつ、落下運動・放物運動・斜面の運動など、あらゆる力学実験を一時間で見せてしまうというてんこ盛りの授業です。「えー、これだけを一時間でやっちゃうの〜。もったいないよー。」という声しきりでした。ポイントを絞って小出しにした方が教育効果が上がるのではないかという意見もありました。

 なかでも興味を引いたのは、右の写真の「斜面を滑走する台車上の斜面を滑走する小台車」の実験です。結果を予想させる討論活動と組み合わせると面白いと思います。

 

 

 

 

(3) 起電ブランコ 右近さんの発表

このところ起電器に凝っている右近さん。今回は2003年6月例会で発表の「起電ポンプ」の前身として製作した「起電ブランコ」のお披露目です。絶縁してつなげた2つの空き缶がブランコのように左右に振れる度に、左右にある覆いの金属板にそれぞれ反対符号の電荷が蓄積されて、二つの箔検電器の箔が見る見る開いていきます。

 A.D.Mooreの”Electrostatics 2nd edition”(1968Laplacian Press)に掲載されている”The Swing Generator”を参考にしたそうです。2002年の科学の祭典・全国大会(科学技術館)にブースを出展されていた、吉村利明さん、板倉聡さんから紹介してもらったとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

(4)格安の大型ガリレオ温度計 平松さんの紹介と即売会

 高さ約30cmのガラス製インテリアグッズ「Galileo Thermometer」です。温度による液体(鎖状炭化水素)の密度のわずかな変化により、中のガラス球が浮き沈みします。温度が低くなると浮かぶ球の数が増えます。台座に単3×3本を入れ、スイッチオンにすると、下からライトアップされてとてもきれいです。写真のカラフルタイプの他、青や緑の単色のものもあり、同色の高輝度LEDでライティングされています。

 平松さんが「ドン・キホーテ」で発見、買い占めて来て分けてくれました。店頭価格はなんと税別¥3000弱。底には小さく「Made in china」とありました。

 

 

 

(5) Ring Catcher 加藤俊さんの発表

 加藤さんが二本の指でつまんでいるのは何の仕掛けもない金属のリングです。輪になった細いチェーンをこのリングの中に垂らし、写真のようにリングを持った手にかけます。この状態から指を開いてリングを落下させると、次の瞬間リングはチェーンに絡んでみごとにキャッチされます。

 このマジックのヒントはチェーンとリングの絡み方にあります。左下の写真がその拡大図です。リングとチェーンには本当に何の仕掛けもありません。どちらにも切れ目はないのです。さて、タネはわかるでしょうか?タネを知れば誰にでもできるマジックです。

 

 

 

 

(6)皿回し 益田さんの発表

 初心者用「皿回しセット」東急ハンズでたったの(?)1,000円。初めての人でもちょっと練習すれば回せます。授業の導入や、余った時間にいかがでしょうか?簡単なようで、意外とコツがいることを生徒に実感させてみるとよいでしょう。そのコツこそが物理なのです。

 

 

(7) ガリガリプロペラ 加藤さんの発表

 科学の祭典などでもよく見かける玩具。これは塗りもしっかりしていて、民芸品のようです。プロペラのついた棒のギザギザを別の棒でガリガリとこすると、プロペラが勢いよく回転します。往復運動→振動現象→回転運動という運動の変換のしくみは、追求すると面白そうです。任意の向きに回転させるコツもあるらしい。

 

 

 

(8)UVチェックビーズ 益田さんの発表

 以前にも中村理科の渡辺さんが紹介して下さったことがある「UVチェックビーズ」。益田さんは2学期最初の「化学」の授業で「見えないものを見る」をテーマに紫外線を確認するために使用しました。小さいので各自に配布して観察させたそうです。

 暗いところでは光って見えないので、蛍光ではなく、紫外線により色が変わる色素のようです。赤、黄、橙、青、紫などいろいろな色に変色するビーズがまぜこぜに入っています。中村理科で入手できます(S75−3615、50g入り¥2300)。面白い使い方募集!

 

 

(9) 炭酸ロケット 小沢さんの発表

 小沢さんは、運動量の単元でロケットの原理を説明するときに演示する実験のアイデアを紹介してくれました。一つは小さな炭酸ガスボンベ(家庭でカクテルをつくるときに使うらしい、東急ハンズで購入。)のロケット。ストローとボンベをガムテープでグルグル巻きにしてくっつけ、ストローに糸を通しガイドとし、ロープウェイのように糸を張ってボンベを吊ります。ボンベに画鋲で穴をあけると、炭酸ガスを吹き出す反動で糸に沿って滑走します。危険防止のため、必ずガイドワイヤ方式(下右写真)で滑走させ、観察者を後方に下げて実験することが不可欠です。

 

 

 

 

 

(10)          アルコールロケット(危険!まねをしてはいけません) 小沢さんの発表

 もう一つ小沢さんが披露したのはペットボトルのアルコールロケットです。炭酸飲料用PETボトルの中に燃料用アルコールを45滴たらし、直径5mm程度の穴をあけたキャップをして、気化するのを待ちます。ボトルを台の上に置き、キャップの穴から火のついたマッチを入れると、燃焼ガスを噴射して飛んでいくというものです。参加者はおそるおそる遠巻きにして実験を見守りました。

 しかし、この実験については例会参加者から、以下のような理由で危険であるとの意見が相次ぎました。

(1)PETボトルが純粋アルコールにたえる保証がないこと。

(2)炭酸飲料用PETボトルには耐熱性がないこと。(燃焼後、ボトルはかなり高温になっていた)

(3)炭酸飲料用でないPETボトルは耐圧性がなく、底が破損して破片が飛んだ事故事例があること。

(4)アルコールの量が多すぎて発射時に火炎を浴びた事故事例があること。

 防護眼鏡やガイドワイヤなどの対策をとったとしても、非常にリスクの大きい実験です。単元の学習効果を考えても、あえてそのリスクをおかす理由が見あたらないというのがその場の結論でした。

 

(11)          簡単モーター 佐藤さんの発表

 どこまで簡単なつくりで回転するものを作れるか。佐藤さんの究極の挑戦の成果です。

左はアルミホイルで包んだ乾電池の上に、別のアルミホイルで包んだネオジム磁石を載せたものです。磁石を包んだアルミの先を上に向かってちょっととがらせておき、回転軸とします。ここにやはりアルミホイルで作ったかさをかぶせます。かさは回転軸の先で保持されて水平に回転できます。かさの下端が、電池を包むアルミホイルに触れると、一瞬大電流が流れ、電流が磁界から受ける力で勢いよく回転します。そのはずみで別の箇所が触れてまた電流が流れる・・・といった不規則かつ偶然の導通を繰り返して、かさは勢いよく回転を続けます。

 こちらはもっと簡略化した「横着バージョン」です。アルミホイルで包んだネオジム磁石が乾電池の下にあります。写真のようにアルミ箔を曲げた回転子を電池の正極の上にやじろべえのようにのせ、その一端が下のネオジム磁石に軽く触れるようにすると、接触して導通があるたびに回転子が不規則な回転をします。

 加藤俊さんが偶然にも同じネタを持ち込んでいました。こちらは単一電池をネオジム磁石の上に、正極側を下にして立てたものです。金属の回転子はやはりやじろべえのように、負極の上の支点を中心に回転します。ネオジム磁石に触れている部分がブラシの役割をしているわけです。

 

 

 

 

(12)          人体の不思議展 山本の紹介

 東京国際フォーラムで開催中の「人体の不思議展」を見学してきた報告です。展示物は本物の人体を「プラストミック」という技術で標本化したもので、弾力性に富み、においもなく、半永久的に常温保存可能です。数年前に同名の展覧会で展示されたものとは標本が異なり、今回は南京大学の製作によるものです。実際に触れて感触を確かめられる標本も2点展示されています。

 販売コーナーではいろいろな資料が販売されていますが、図録¥2500とDVD¥2500が特におすすめです。これらはインターネット通販で入手することもできます。

 同展は20031228日まで有楽町駅前の東京国際フォーラムで開催されています。詳しい情報はhttp://www.jintai.jp/top.htmlへ。

 

(13)          地震と防災 山本の紹介

 財団法人・電力中央研究所が最近制作したDVDです。電力会社では発電所の建設にあたり、極めて入念に立地条件を選びますが、地震防災に関してもそのための独自の研究を行っています。そのような背景から、地震についての一般的な知識から、最前線の防災研究までをわかりやすくまとめた8つの番組が収録されています。中学・高校の教材として活用できそうな内容です。

 問い合わせは、電力中央研究所広報グループ(千代田区大手町1-6-1Tel.03-3201-6601)まで。

 


     


新聞記事から                              紹介文:鈴木健夫

2003年10月13日 朝日新聞

※このWebに掲載したものは、朝日新聞の記事そのものではありません。著作権上の問題もあるので、様々な記事を要約して書き直しています。必要な場合は、題・日付等から検索してください。


<殺人>ため池に夫の遺体捨てた妻を逮捕 千葉・袖ヶ浦

 夫に睡眠薬を飲ませて殺害、ため池に捨てたとして、千葉県警捜査1課と木更津署は12日、木更津市△△1、A田B子容疑者(43)を殺人と死体遺棄の疑いで逮捕した。殺されたのは夫で袖ケ浦市職員、Cさん(29)で、B子容疑者は殺害を認め、遺体は同日朝、供述通り袖ケ浦市神納の池で手足をひもで縛られた状態で発見された。
 調べでは、B子容疑者は8日午前2時ごろ、自宅居間で、眠っていたCさんの胸など数カ所を包丁と見られる刃物で刺して殺害。同日午後3時ごろ、遺体を車で約7キロ離れた袖ケ浦市神納の農業用ため池まで運び、捨てた疑い。遺体の手足はひもで縛られ、約20リットルの水が入ったポリタンク数個がおもりとして付けられていた。
 B子容疑者は「一人でやった。夫を恨んでいた」と話し、Cさんに睡眠薬を飲ませて眠らせたと供述している。同署は計画的犯行とみて動機などを調べている。

この記事を、私自身は斜め読みして、「おかしい」ところを見過ごしてしまいました。それを数日後のメーリングリストで鈴木亨さんに指摘されて、あわてて新聞を引っぱり出して見直した次第です。お恥ずかしい。正直なところ、犯人と被害者の年齢差だとか動機などに、目が行ってしまいました。普段から頭を「物理」にしておかなければいけませんね。今後も使えそうな話題なので、ここに転載しました。(まだどこが「おかしい」のか知らない方は、下の文章を読む前に記事を読み直してみて下さい。)
鈴木亨さんに教えていただいた後、数クラスの授業で話題にしました。どのクラスでも、数人の生徒が気がつきました。概略を読み上げた後、すぐに「え、沈まないんじゃないの」と反応した子もいました。生徒はけっこう健全ですね。
この記事をあらためて深読みすると、、、「プラスチックタンクが多数」とありますが、普通の家庭にはポリタンクは3,4個もないでしょう。犯人は計画的にこれを購入したのはないでしょうか。睡眠薬を使っていることなどから、衝動的ではなく計画的な殺人なのでしょう。つまり、おもりについては殺害後にパニックになって慌てて間違えたのではなく、周到な計画のもとに水タンクを用意したということになります。その間に気がつかなかったのでしょうか。わざわざ家から水タンクに水を入れていくことはふつうないと思いますが、例えば現地で池の水を入れたとすると、そこで気がつきそうなものですが、、、、。