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2004.1.10 横浜物理サークル発行


目次

巻頭言                      すた 99
12月例会の報告       まとめby山本明利 編集by鈴木・市江  100-106
(1) 授業報告:中三の理科シラバス
(2) EP-ROMの観察
(3) デジゴマ
(4) p.a.(パーソナルアデステーション)
(5) エコログのニューモデル
(6) スライム電池とポカリス電池
(7) 飛びたかった人たち
(8) 輪ゴムのバックスピン
(9) 光を吸い取るLED(?)
(10) 分子模型
(11) 2001年のDVD
(12) 紅いも粉でpH
(13) 波動説明器の販売
(14) カーバイドランプ
神奈川県内の研究用原子炉一覧         107
エネルギーの視点からとらえさせたい実験の工夫
(『理科教室』2003年12月号より転載) 小沢啓 108-113
Xマスツリーの飾り球を使った、分子模型 大谷京子 114
「杉田玄白」            石原純著『偉い科学者』より 115-117

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巻頭言

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
1月4日の朝日新聞天声人語に、次のような話が載っていました。「年賀状で猿の図柄が多い中に、ゆったりとしたオランウータンの親子の写真の脇に一言『人間は本当に進化したのでしょうか』」本当に同じ疑問を私も思います。類人猿からヒトに進化して、生物として知能を発達させて地球を席巻するまでになっているはず。その人類が、なぜ今戦争をしているのでしょうか。
日教組は、終戦後すぐの頃から、戦前の教育の反省として「教え子を再び戦場に送るな」というスローガンを掲げてきました。それがいまやもうスローガンとしては意味をなさなくなりつつあります。現に教え子が戦場に行こうという事実。その是非をこの巻頭言で声高に言うつもりではありません。ただ、事実としてそういう時代になってきているのです。10年ほど前には、「教え子を戦場に送るな」という言葉が危機を迎えるなど、想像もしていませんでした。これからさらに想像していないような情勢になっていってしまうのかもしれません。2004年はそういう分岐点の始まりになってしまうのかもしれません。
猿と人間の決定的な違いである知能の成果として、科学があるはずです。そして科学は、人類(ひいては地球)をよりよく、より幸福にするために使われるべきもののはずです。しかし、はたして本当にそうなっているのでしょうか。こう考えると、まだまだ人類と科学は発展途上だと私は思います。科学と教育を、本当に人々の幸福のために使うには、どうすればいいのか。とりあえずは、地道に自分の授業をよくしていくしかないようです。

すた


   


12月例会報告(まとめby山本明利 編集by市江寛)

日時:2003年12月13日(土)15時〜

会場:中村理科工業・自由実験室

参加:計25人

内容:

(1)授業報告:中三の理科シラバス 水野さんの発表

 水野さんから、中学三年の理科の授業計画について実践報告がありました。以下、水野さん自身によるコメントを掲載します。

 本校の中3は、化学の分野を前期におこない、後期の前半は電気、後半は天文になっています。例会で報告したのは、前期の電気の分野の生徒実験のプリント(実験の結果と考察と感想を書いて実験した日に提出)でした。

 授業は静電気から入って、電気回路、電流と電流計の扱い方、電圧と電圧計の扱い方、電流と電圧の関係(オームの法則)、合成抵抗、金属線の長さ・太さと抵抗との関係、電流の発熱作用、磁石の磁界と電流の磁気作用、磁界中を流れる電流が受ける力、モーターの原理までの範囲でした。

 例会では電圧の概念をどう生徒にイメージとしてつかませるか、ということが議論になりました。私は家庭用の水流ポンプを使って電圧(ポンプ)と電流(水流)をイメージとしてつかませようとしています。また、金属線の抵抗のところで、パチンコ玉を使った演示実験(板の長さ、広さを色々変えたものに釘を打ち付けて、その間をパチンコ玉が転がっていくもの。釘が金属原子でパチンコ玉が電子のつもり。)を行い、電流=パチンコ玉の坂下り、このパチンコ玉の移動が実際の回路では電子の移動になっているということ、坂の高さが電圧(この場合は電圧降下になる)で、この高さを作るのがポンプであり、電気回路では電池の電圧(起電力)になっていると説明しています。

 例会では、上のような説明で生徒は納得しているか、ということが質問され、「生徒はそんなものか」程度には分かっているのではないか、とお答えしましたが、はっきり言って自信はありません。いい実践があれば御紹介下さい。

 なお、授業進度としては遅れており、電磁誘導は1月にずれ込んでしまっています。

 

(2) EP-ROMの観察 山本の発表

 たまたま、会場でゴミとして処分されそうになっていたものの中に、古いEP-ROM128256KB)があったので急遽観察会を行いました。書き込み・消去可能なメモリー素子で電源がなくても内容が保持されるので、プログラムを格納する素子として、マイコンとセットでかつて大いに活用されましたが、今はほとんど使われなくなりました。消去時は紫外線を照射するため、丸窓が開いており、メモリーチップが直接観察できるのが教材として好都合です。顕微鏡下で観察すると、よく教科書に載っているような大規模集積回路のプリントパターンが観察できます。写真右は20倍の双眼実体顕微鏡で撮影したものです。できれば100倍ぐらいの倍率が見やすいでしょう。上から照明して反射光で観察します。

 かくして、ゴミはたちまち人気のお土産になりました。

 

 

(3) デジゴマ 渡辺さんの発表

 最近パルボックスから発売された新しいタイプのデジタルゴマです。市価¥800程度。回転させると遠心力でスイッチが入り、デジタルで回転数が表示されます。表示のタイミングをはかったり回転数を数えるために地磁気を利用しています。磁石を近づけると数字の表示位置が変化します。かなり弱い磁気にも感応するらしく、ACコードに近づけてもカウントしていました。

  デジゴマを分解してみたところ。中心部の黒いものがフェライトコアに巻いたコイルで、ここで磁場を感じ、電磁誘導で生じるパルスをカウントしているようです。右側が処理部のLSI、左が増幅用のオペアンプのようです。上方の赤い部分がLEDのアレイで、回転の動きが加わることで文字として読めます。

 

 

 

 

(4)p.a.(パーソナルアデステーション) 渡辺さんの発表

 非常に簡単なパソコン計測キット。写真のセットは、スターターキットで光センサーを用いて様々な実験やゲームができます。計測は、本体をマイク端子につなぎ、ソフトを立ち上げるだけ。標準のサウンドボードがインターフェースなので、どんなパソコンにでも接続できるのが強みです。製造元のアデスト・テクノベーションはシンガポールの会社で、日本向けに製品開発をしています。今回の例会には同社の佐藤さんも特別参加されました。

 付属ソフトの画面をご覧下さい。簡単な操作でオシロスコープのようにリアルタイムで波形を見ることができます。左は蛍光灯の点滅による毎秒100回の明るさの変化。マイクをつなげば、音声波形もきれいにとれます。(写真右)。ゲーム感覚で楽しく利用できる計測キットです。販売は中村理科工業で扱っています。

 


(5)エコログのニューモデル 渡辺さんの発表

 データロガーの草分けとなったエコログが新しくなって新登場。写真は右から初代、二代目のエコログで左端が新発売のエコログXL。

 エコログXLは従来の不満足な部分を改良し、本体に2列の液晶がつき、待望のUSB接続となり、3タイプのモードが追加されました。もちろんパソコンにデータを送ることができますが、液晶表示が搭載されたので、本体だけでも十分使える計測器となりました。

 また、ソフトも新バージョンとなり、使いやすさが向上したことはもちろん、カメラを利用すれば、実験の様子を撮影しながら、データを計測して、保存しておくなどの応用が可能になりました。

 中村理科の取り扱いで、発売は来春からの予定だそうです。

 

(6) スライム電池とポカリス電池 高橋さんの発表

 フィルムケースの内側に銅の電極を入れ、PVAのりで作ったスライムをつめこんで、マグネシウムリボンをさしこんだふたをとりつけると立派な電池のできあがりです。起電力は1.6Vぐらい、電子メロディが何とか鳴ります。スライムはゲル状なので、横倒しにしても液漏れしません。

 電池の起電力は正極と負極の金属の組み合わせで決まるから、実は電解質は何でもいいのだ。イオンたっぷりのポカリスエットなども、良質の電池液になる。

 

 

(7) 飛びたかった人たち 越さんの発表

 たくさんのふしぎ傑作集・「飛びたかった人たち」佐々木マキ著(福音館書店 1990年)。体裁は子供向けの絵本ですが、登場人物がいきいきと描かれていて、内容が詳しく、図や写真も多いので一見の価値があります。残念ながら絶版のようです。

 今も昔も人は、「鳥のように空を飛びたい」と願っていた...鳥の格好を真似して高い塔から飛び降りたタワージャンパーズ、モンゴルフィエ兄弟の熱気球、シャルルのガス気球、飛行船、リリエンタールのグライダー、そしてライト兄弟の動力飛行機...シャルルが登場するので、授業でも「気体の法則」のところで紹介しているそうです。

 

(8) 輪ゴムのバックスピン 越さんの発表

 越さんは井の頭公園の大道芸でやっていた小さな芸を会得してきて紹介してくれました。

 小指に輪ゴムをかけ、親指のところで内側から外回りに1回巻き、人差し指に引っかけます。このとき人差し指の下側のゴムが強く伸び、上側は余り伸びないようにします。床や地面(土か砂地がいいらしい)に沿って発射させると、数メートル進んだところで戻りはじめ、輪ゴムが回転しながら手前に転がってきます。うまくいけば、元の位置よりも手前まで戻ってきます。

 なお、普通の輪ゴムでもできるが、少し幅の広いものの方がよりうまくいくそうです。ビリヤードの引き玉などと一緒に、力学の小ネタに使えそうです。

 

(9) 光を吸い取るLED(?) 小沢さんの発表

 7月の例会で山本が発表し、11月の例会でセット販売した、紫外・青緑橙赤のLEDライト。それぞれ光を蓄光シート(ダイソーで購入)にあてて、シートの発光の明るさを比べる実験(11月例会)を追試しました。波長の短い(光子のエネルギーの大きい)紫外や青の方が、橙や赤で照らしたときに比べて明るくなることが確かめられます。ここまでは常識通り。

 この実験を繰り返していくうちに、小沢さんは意外な現象に出くわしました。ほんのり光っている程度の蓄光シートに、赤や橙のLEDを照らしたところ、むしろ黒くなるのです(写真左の右側の黒い部分)。まるで蓄光シートの光を吸い取っているようです。ふしぎでたまらなくて、何度も実験していくうちに、LEDの光に含まれる赤外域のスペクトルによるものではないかと考えるようになりました。テレビのリモコンで試すと、やはり黒くなります(右)。誘導放出の一種なのだろうか、というのが今のところの推測です。

 

(10)          分子模型 大谷さんの発表

 おりしもクリスマスシーズン。大谷さんはツリーのオーナメントとして出回っている金銀の球に目をつけました。これを原子に見立てて分子模型を作ります。とりつけ金具があるので「結合の手」として使えます。複数の「手」が必要なら、金具の部分だけ付け替えて簡単な工作で増設できます。キラキラしているので発泡スチロール球よりウケがいいとか。

 

(11)          2001年のDVD 大谷さんの発表

 スタンリー・キューブリックの不朽の名作SF映画「2001年宇宙の旅」のDVDリプリント版が、¥1500で限定販売中。タイトルは、STANLEY KUBRICK'S 2001a space odysseyとなっていますが、英語音声で、英語・日本語字幕(選択)です。理科教員としては必ず手元に置いておきたい一本です。

 

(12)          紅いも粉でpH 山本による徳永さんの代理発表

 【理科の部屋】10周年オフの時に徳永さんから教わった実験を授業にかけてみたところ好評でしたので山本が代理で紹介しました。

 沖縄産の「紅いも粉」はpHにより呈色の変化する色素アントシアニンを含み、ムラサキキャベツなどと同様pH関係の実験に使えます。乾燥粉末として長期保存ができる点でムラサキキャベツより便利です。今回使用した写真のものは、稲垣具郎商店の製品でフレーク状になっています。これを乳鉢ですりつぶし、ダイソーの「使い捨てパレット」の各穴に耳かき一杯ぐらいずつ入れておき、pHの異なる試薬を一滴ずつ垂らします。つまようじなどで軽く混ぜるといいです。すりつぶして微粒にすることで反応が早まり、呈色も鮮やかになります。

 右の写真はpH=1(右端)からpH=13(左端)までの身近な薬品による色の変化を並べて比較したものです。指示薬は上段から、万能試験紙、紅いも粉、フェノールフタレイン、メチルオレンジです。中央付近の数個が試薬の順番をまちがえたため入れ替わっていますがあしからず。

 関連文献:瀧口公夫「紅いも粉を利用した身近な実験」,化学と教育,48264-265 (2000)

 

(13)          波動説明器の販売 原田さんの即売会

 原田さんが前回の慶應例会で好評だった自作の波動説明器をキットとして販売してくれることになりました。気になるお値段はケース込み¥4,000(ケース無し 3,000)。とりあえず数セットが持ち込まれましたが、希望者多数で瞬く間に完売。当分受注生産状態が続きそうです。波動説明器の詳細は2003年11月例会の報告を参照して下さい。

 

 

 

(14)          カーバイドランプ 平松さんの発表

 平松さんが昔懐かしい「アセチレンランプ」を購入してきて披露してくれました。以下、平松さんによる解説文です。

 化学の授業で、有機を扱う際、炭化水素はあまり面白い実験もないので、何か変化のあるものは、ということで、「アセチレンランプ」を探しました。教科書などでは「アセチレンはランプの燃料としても使われている」というのは書かれているのは知っていても、実際にアセチレンのランプなる物体は見たことがなかったので興味を持っていたのです。

 近所のホームセンターや釣具屋、金物屋を当たったのは数年前、しかしありませんでした。あきらめていたところ、今年の夏休みにふと思い出し、楽天市場の検索をかけたところ発見!「カーバイドランプ」というそうです。

 ある年齢層から上の先生方からは「懐かしい?」という声が聞かれましたが、初めて目にする、という方が多数派だったようです。私も購入したとき見たのが初めて。購入した翌日、同年齢の同僚(化学)と、互いに「聞いてはいたけど、初めてみたー」といいながら「点灯式」をしました(取扱説明書を見ながら(^^ゞ)。ちなみに別の化学教員(年齢は私より少し上・女性)は、「何それ?聞いたこともない」とのことなので、生育環境や高校時代の授業などで知っているかどうかなんでしょう。。。。

炎は明るい黄色で、蛍光灯のような白色ではないので、やわらかい感じです。暖房にも使えるので釣りマニアやケイバーには一定の需要があるらしい。

 下の器にカーバイド、上の器に水を入れ、調節ねじをゆるめて水を滴下すると、発生したアセチレンガスがノズルから吹き出してきます。しばらく放置して内部の空気が完全に追い出された頃に点火します。



   


Xマスツリーの飾り球を使った、分子模型

                                                                                大谷 京子

 

中学2年で、原子と分子、化学式と化学反応式について、本格的に勉強するが、なかなか、理解しにくい。

また、価電子を勉強しない。そこで、なぜ、酸化銅(CuO)と、 酸化銀(Ag)では、1個の酸素原子に、銅原子は1個、銀原子は2個結びつくのか、わからない。教科書通りだと、丸暗記するしかない。

そこで、原子ごとに、結合手の個数がちがうことを、イメージさせるのに、Xマスツリーに飾る球を利用して、原子、分子模型をつくってみた。

・購入場所:\100ショップ(小さい球はキャンドゥー社。大きい金銀球はダイソー社)

・作り方 :結合手は、飾り球についている、ぶらさげヒモを通す金具を利用。

               結合手が2本以上の時は、球に穴をあけ、他の飾り球の金具を入れる。

²                 (キャンドゥ社のものがよい。小球だと\100で6球入っている)

²                 穴あけは、千枚通しであけ、角形ヤスリで穴を広げた。

穴あけ場所は、球の張り合わせ場所だと堅く、穴があけずらい。そこを避ければ、柔らかい。

・球どうしの結合:キャンドゥ社の飾り球に、同封されていた、つり下げるための金色の飾り針金。

・利点: ・球(3次元)なので、よりイメージしやすい(高橋和光さんからのアドバイス)

・きれいなので、親しみやすい。 工作が簡単。 結合手数がわかりやすい。

・欠点: ・キャンドゥー社の球では、小さすぎ、後ろの席の生徒には、見にくい。

     ・演示には向かないのが最大の悩み。(班で分子を作ったりするのにはよいが)

・クリスマスの次の日には、店先から消えたので注意。(お正月商品になっていた)

・他 :きれいな光沢と色なので、手芸をやっているみたいで、楽しめました。