米国メディア 靖国神社問題の本質を世界に報道

       
      立川市・秦 恒彦(元立高英語科教員)

 
 最近、靖国神社問題を報道した米国の代表的な有力2紙のニューヨーク・タイムズ紙とUSAトゥデー(TODAY)紙の英文記事を読みました。きっかけはしんぶん赤旗(日曜版)7月3日付のその紹介記事で、すぐ米国の友人に両紙のコピーを送ってもらった次第。

赤旗の記事と両紙の英文記事では、後者の方がはるかにその厳しさを感じます。「これでは米国内のみならず、両紙の世界中の読者が『日本は何時からそんな国になったの?小泉首相の靖国神社参拝を国民はみんな支持しているのか?』と思うー誤解するー可能性がある」と思えました。

 ニューヨーク・タイムズは先ずその見出しに「A War Shrine」(戦争神社)とあり、私も思わず「ウーン」とうなってしまう、衝撃的に靖国神社の本質を示していると思えます。“遊就館”として知られている建物は文中で「war museum」(戦争博物館)とあり、これも適切な表現と思えます。

英文を読むと、先ず、ある雨の降る朝、靖国神社の境内で、愛国青年団体や右翼グループが「天皇陛下万歳」、「祖国を愛し、守れ」、「一人必殺」(右翼テロの合言葉)などと叫んでいる光景を描き、やがて靖国神社の本質を「軍国主義の過去を再評価しようという動きの象徴的中心」と断じ、最後に「米国は決して無関係な傍観者などではない。なぜなら靖国は真珠湾を攻撃せよ」と命令した日本人を神としてまつっているのである」と結んでいます。

USAトゥデーは、小泉首相の訪韓に反対するソウルの日本大使館前のデモ隊の写真をのせ、その見出しは「Tokyo Shrine a focus of fury around Asia」(東京の神社 アジア中の怒りの的)となっています。

それに続く英文では、先ず、「靖国神社は、若い男女が桜の木の下をそぞろ歩き、高齢の退役軍人が戦死した友人を偲んでいるなど、多くの日本人にとっては、米国のアーリングトン国立墓地と全く同じである」と述べ、「小泉首相の毎年の同神社参拝をアジア諸国が激怒していることを日本人は理解できないでいる」と述べています。

続いて靖国神社の戦争観を「真珠湾攻撃や、中国および東南アジアへの侵略を『国の独立と平和を維持し、全アジアを繁栄させるために避けえなかった戦争』と説明し、悪びれることなく、14人の戦犯を『連合軍のでっち上げ裁判で戦犯の汚名を着せられ』た殉教者だと描いている」と報じ、「小泉首相の挑戦的な靖国参拝が血塗られた過去へ反省を示すことを日本が拒否している象徴であると、中国、韓国、その他のアジア諸国はみている」と言い、「同神社をめぐる議論が、アジア中の神経を逆なでしている」と結んでいます。

両紙の読者は米国内のみならず、南北アメリカ大陸、ヨーロッパ、アジアの国々など世界中にいて、その国の世論形成に影響力があると思われています。

そういう人々に「日本はいよいよネオ・ナチの国になったのか?」と思われる可能性がある、と思わず私は背筋が寒くなり、小泉首相とA級戦犯の代表の東条首相の顔が重なり、1945(昭和20)年8月15日のことを思い出しました。

 その日は、第2次大戦で、世界の50ヶ国―世界中―の連合国の国々と戦い、日本が完敗、無条件降伏をした日です。300万人以上の日本人が戦場や本来は非戦闘地域である場所で死亡しました。

政府やマスコミは戦死した人を「悠久の大義のため命を捧げた」などと死を美化していましたが、「神風は吹かなかった」、「神も仏もない」と、日本的な神の存在を完全否定して、戦火に倒れた日本人も少なくなかったようです。

当時、私は19歳で日本陸軍の一兵士、米軍機の爆撃や機銃掃射で危うく死にかけましたが生き残り、近づく米軍の本土上陸後の戦闘で「もう生きてはいられない」と思い始めていました。

戦争が終って「生き残れた」と思いながら、悲惨な戦争の実態を具体的に知り始め、敗北必至もわからずに愚かな戦争を始めた国際情勢に全く疎い偏狭な軍国主義者たち、その代表の東条首相―何れもA級戦犯―の責任は許せないと思うようになりました。

 それと同時に靖国神社とは何だったのか、とも考え始めました。私は戦闘で死んでも、靖国神社に神として祀られたい、など全く思いませんでした。多くの戦死者の本音もそうではなかったか、と思い始めました。

結局、同神社は敗北必至の戦争に国民を総動員する政治的、社会的装置だと思うようになりました。日本の神社が政治目的にいろいろ利用されていることも知り、靖国神社の同じ目的も理解できました。

立川市のある女性と話したことがあります。彼女の兄2人は戦死し、1人は靖国神社に祀られていましたが、母親は「息子たちのお墓は立川にある。靖国神社には行かない」と言い、最後まで「息子を返せ!息子を返せ!」と言い続けて亡くなった、とのことでした。

 現在、私は立川の「9条の会」の一員として自民党などの改憲の動きに対し、憲法9条を守る運動に微力を尽くしています。改憲は9条を否定し、戦争ができる国にするのを目的としています。

「戦争神社」と指摘された靖国神社の政治的装置としての本質を守り抜くことが改憲の動きと密接不可分です。小泉首相の靖国神社参拝はその象徴です。

 小泉首相の靖国神社参拝には、自民党の中にも批判、反対が少なからずあり、批判、反対が現在の世論になっている、と言ってもよいのではないでしょうか。

ただ戦後生まれの人たちの中には、USAトゥデーも指摘しているように、「何故靖国神社問題が国の内外で大騒ぎになるのか、よくわからない」という人たちがいるのも事実です。私も40歳台の人に同じ質問をされたことがあります。

9条の会」が国民の過半数の支持を目指して運動をしていますが、靖国神社問題も運動の一環として取りあげると、その幅が広がるのではないでしょうか。

米国両紙は、ある意味では、私たちの平和への願い、長い伝統のある平和運動への大きな励ましになっている、と思えます。米国そして世界の各国にも確かな平和運動があります。

そうした運動への連帯の意味をこめて、国内的にも国際的にも

1、小泉首相の靖国神社参拝反対、
2、戦争神社である靖国神社の本質としての政治的装置を機能させるな、
3、憲法9条を守れ、などの運動を幅ひろく進め、その広報活動をさらに強めたい、私も微力を尽くしたい、との思いが強くなっています。


※なお、米国両紙のコピーをご希望の方は、私宛にご一報下さい。英文コピーを 差し上げます。(電話:042-522-2607)


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