医療の躍進は民間療法から


 一般に民間療法と云われるものは、医学者からは卑下されることが多い。それは科学的根拠が明らかではなく、多くは石の類ですが、中には玉もあるのです。
 医学を飛躍させた抗菌剤のルーツをたどれば、民間療法にたどりつくのです。チャーチルの肺炎の治療に使われて一躍有名になったペニシリン。第2次大戦中にビルマの戦線で風の便りに聞いた話。それは英国の首相の肺炎が1本の注射で治った話です。それほどよく効いたと云うことでしょうが、戦地にあって世間と没交渉の我々の耳を驚かせたのです。そのペニシリンなるものは青かびの一種であり、それが肺炎などを起こす菌の発育を抑制するということがフレーミングにより、発見されました。(1929)

さらに1944年にはワックスマンによって放射状菌の産物であるストレプトマイシンが発見され、それまで難病であった結核の治療に光を与えたのです。

ところで「ペニシリン」と関係のある「カビ」は大正5年(1916年)ごろ筆者の記憶している時代に、すでに民間では、冬の正月の餅、つまり青カビは熱病の薬として保存して、風邪をひいた時などに親に服まされていたのでした。理由はまったくわかりません。ただ効くというだけでした。
 また、戦争が終わって帰還したころ、結核患者の枕元にはよく乾燥した「ミミズ」が置いてあり「これは何ですか」とたずねると患者がいうには、先生これは「ミミズ」の乾したもので結核の熱さましですといっていたのが記憶に残っています。それもドブ泥の中にいるミミズがよく効くと云っていました。あとで判ったことですがそのドブ泥のなかには放射状菌がいてその産生物を「ミミズ」が吸収していたもので、後に発見されたストレプトマイシンを飲んでいたのです。

このように医学の発展にともない、平均寿命の延長に貢献した抗菌剤は、発見されるはるか前から民間薬として使われていたことは、驚くべき人類の知恵であったのです。
 これ等の「青カビ」と「ミミズ」の薬効と同時に我々が子ども心に脳裏に残っていたのが尿の効果につてい聞かされていた事実です。尿はどんな病気にも効くと大人達から云われたことをおぼえているが、実際に飲んだことはなかった。前の2つの治療法は抗菌剤としてノーベル賞の対象になりました。 

最後になりましたが「尿療法」も当時からの記憶にある最も古くて最も新しいものです。青カビを飲まなくても「ミミズ」を刻んだり煎じたりして飲むことを民間療法と考え、根拠のないものとして飲まずに他界した人たちも数多いと考えられるが、今尿療法も同じように考えることの間違いを指摘したいのです。民間療法が医学をリードした話です。

『いのちの泉』より 中尾良一・小宮山かよ子著   株式会社 大曜

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