韓国小売業について
Kimuchiの感想


今、韓国流通業が注目を集めています。
流通業界が激変を続ける日本においては百貨店売上が前年を割りつづけ、また、マイカルは経営破綻、ダイエーが資本注入を受けるという未曾有の流通危機にあって韓国流通業界にあっては百貨店は増床、新規出店。量販店(ハイパーマート)の大幅出店と話題には事欠かない。
私用、公用を含めここ2-3年で何度か訪韓する機会を得ているので私観では有りますが韓国流通事情についての感想をまとめてみました。
 
1.韓国経済
昔のことは良くわからないが日本経済が東京オリンピックを境に急成長してきたことと同様に韓国経済は1988年のソウルオリンピックを契機に急成長を続けた。我が国と違い外圧による財閥解体が緩やかだったことから、数年に渡り10%以上の高成長を遂げた。また日本のバブルと同様の時期、90年台前半には「過消費」と呼ばれる消費ブームが到来し、内需が拡大した。そのためにインフレが発生し(今も続いているようだが)経済は低成長時代に突入した。しかしながら日本でバブルが続いたように93年以降も円高ドル安に伴う日本経済の代替市場としての韓国が見直され、輸出が拡大、韓国経済はなおも成長を続けた。
しかしながら95年以降円ドル相場がに円安方向変化し始め、韓国の輸出品価格が低迷。。また、円安によって輸出しやすくなった日本製品と韓国製品との競争は激化し厳しい経済環境へと突入してきた。
90年代の起亜グループなど財閥倒産以降、金融機関の資金回収の動きが加速化して中堅財閥(三美、双竜、真露等)の倒産が相次いだ。=真露はあの焼酎メーカーです= 
財閥の倒産は金融機関の不良債権によるさらなる資金回収という図式の中で内需産業の基盤の弱さを露呈し、結局輸出急減・経常赤字拡大というかたちを招いた。
今、韓国財閥は三星、SK、LG、大宇、現代に集約され復権を目指している。国家としてアジアの貿易基地としての機能を備えるべく空路におけるハブ空港化を目指し、仁川空港の整備を行い、また神戸の震災を機に釜山のコンテナヤードの整備を行い巨大なストックヤードとしての機能拡充を図るなど常に一番を目指している。
     いちばん=一番という言葉がある。日本では奥ゆかしさを尊ぶ国民性から一番であろうとすることを嫌う基調があるが、逆に韓国では「いちばん」であることをものすごく好む。
独自性、独創性よりも規模でも速さでも、大きさでも一番が良いのだ。言い換えればオンリーワンであるよりもナンバーワンで在ることを好むのだ。
 
2.流通業界
周知のことであるが韓国流通といえば真っ先に浮かぶのはソウルの南大門、東大門にある巨大市場でしょう。観光コースのもなっているこの市場は現在でも各地に多数有り大いに賑わっている。韓国の市場は基本的には卸し、小売の区別無く誰でも商品を購入できる。観光客であろうと商店主や料飲店であろうと対等に買い物ができるのである。
大きな変化は1996年に外資資本の参入が自由化され、各国から流通企業が参入してきてからである。
在来の市場が圧倒的なシェアを持つ流通業界にオランダ・マクロ、フランス・カルフール、ドイツ・メトロ、アメリカ・プライスクラブ等が一気に入ってきた。
しかしながら、1997年のIMF通過危機以来、韓国流通企業は全体的に再編が進んできた。前記外資もマクロはアメリカ・ウオルマートに吸収、メトロはイギリス・テスコに買収され、プライスクラブもアメリカ・コストコに吸収された。
また、地元資本はといえばそれまで各地に乱立していた百貨店は30店舗以上が倒産、閉店に追い込まれ、また地域に根付き始めたSMも閉店の憂き目を味わった。
キムズクラブ(百貨店) 20店舗 、ヘデ(スーパー)70店舗等である。
※キムズクラブもウォルマートに吸収された。
外資に翻弄されたように見える激動の韓国流通業界では有ったが、現在の韓国経済を引っ張っているのは間違いなく流通業といえる。
1)百貨店
百貨店第一位のロッテ百貨店はソウル本店の大幅増床、釜山港タワーへのキーテナントとしての出店の他、ホテルやアミューズメント施設とのミックス戦略で今後も出店を加速して行く。また後述のEマートの母体である新世界百貨店も現在の規模の5倍に増床を図るなど大きな成長を予定している。
2)量販店
現在日本ではヨーカドーグループとイオングループに再編されつつあり淘汰が進む量販店業界だが、韓国では最も元気が良い。
前述の外資ではウォルマートが苦戦しているもののカルフール、テスコ、コストコなど順調に出店し、業績を拡大している。
 
3.GMS=ハイパーマートという業態
日本ではダイエーのその名もハイパーマート戦略が失敗するなどその事業形態は疑問視されているが、韓国ではGMSはハイパーマートスタイルにより近づき、ハイパーマートはGMSに近付いている。というのが実感です。
それは前記のウォルマート、テスコ、カルフールなど外資はもちろんのこと、Eマート、ハナロクラブなど地元資本も同様に見える。
私自身統計データなど確実なものを持たないので店舗に行った実体験や人づての話になってしまうが、以下に企業別のコメントを加えていく。
1)Eマート
地元資本、新世界百貨店のGMS部門で、1993年に開店した。EマートのEはエコノミーとイージーを象徴するとされ、EDLPとセルフサービスを追求している。百貨店が運営する店舗らしく売り場はすこぶるきれいだ。日本でいうGMSのスタイルでヨーカドーと似ている。
※実はヨーカドー出身者がアドバイザーになっているらしい。
因みに新世界百貨店は三越、現代百貨店は東急、ロッテ百貨店は高島屋を見本にそれぞれアドバイスを受けていたとのことだ。
生鮮食品の充実は韓国小売業にとっては必須事項に思えるが其の通り、Eマートも生鮮には注力している。
 
2)テスコ…Tesco Homeplus
三星テスコは地元資本の三星グループとイギリス・テスコが1999年に設立したジョイントベンチャーで、資本はテスコ80%、三星20%になっている。
店舗は高級感のあるハイパーマートといった感じでホームセンターとGMSを併設したような店舗です。私が見たのはソウルの南側、ビジネス街に程近く地下鉄、国鉄の駅が隣接するヨンドンポ(永登浦)店です。他の店もそうですが皆、規模の大きい店ばかりです。
グリーターの設置、生鮮品の対面販売は百貨店風、大陳の見事さは大変参考になります。ディスカウントのサークルは有るもののEDLPで統一しています。
 
3)カルフール
カルフールはハイパーよりもGMSの風情を持っています。1996年に単独で韓国市場に参入した。比較的順調で現在韓国スーパーでは第3位の売上と思われる。20数店を展開しており、地元では「カルプ」と呼ばれ親しまれている。店外に百貨店の屋上のような遊戯スペースを設けたり、露天風のショップを出すなど市場主体の韓国市場に馴染もうとする工夫が垣間見える。
私が行ったのはソウルでも西部のマンション街の近所にあるワールドカップスタジアム店ですが平日の昼間では有ったが入店客数も多く賑わっていた。
ワールドカップスタジアムの中に店舗を作る。
日本じゃ思いつかない発想だ。
混雑した店内。グリーターの目が光る。
粉売り場。
油売り場。思ったより品揃えが少ない。
 
4)ウォルマート
世界に冠たるウォルマートだがこと韓国に関しては苦戦を強いられている。1998年に経営に苦しむオランダ・マクロ4店舗を吸収して韓国に参入し、現在14店舗を展開しているそうだ。年間売上高は600億円余り。地元資本との厳しい競争状況から売上高の低迷が続いている。私が訪問したのは釜山の区庁舎近くの釜山鎮にあるスーパーセンターだが土曜日の昼間にも関わらずお客さんの数は少なかった。グリーターの感じも良く、品揃えも豊富、店舗もキレイにも関わらずのこの状態は何に起因するのだろう。もしかしたら生鮮品の品揃え不足であろうか。
一説には参入の際不買運動も起きていたという。地元資本と何らかの軋轢があったのかもしれない。
 
5)ハナロマート
韓国でいちばん驚いたのがこの店です。韓国農協(農協流通)が直営するこの小売業は驚きの連続であった。韓国農協は金融業も営んでいる。
銀行の店舗の中に八百屋が併設されている。そういった店舗が各地に散らばっている。銀行窓口の後ろに野菜や穀物が陳列されその脇にレジがあるなど日本人には想像もつかない。
また、大型店は桁外れの規模だった。ソウル江南地区にあるヤンセー店はハナロクラブという巨大店舗であった。
スタイルはハイパーマートでコストコ等と似ているが驚くのは農協経営の強みを活かした生鮮、農産物の驚くべき陳列量である。
1998年にオープンしたという。扱っている農産物は全て国産ということでトレーサビリティ−、使用農薬の管理なども徹底している。韓国では10年前のガット・ウルグアイラウンドによって農産物の流通、金融、資本等の自由化が為された。それまでの国内産業保護主義的な規制、農産物流通に対する規制があったが、現在でも、農産物は集荷業務が農協及び専門商社に限定されており、流通業は市場を経由して仕入れるか、農協流通のような農産物専門商社を経由してしか農産物を仕入れることができない。外資を含む大手量販店も農協系の商社からの仕入を行っている。しかしながら、農産物の取引に関しても、自由化が予想されており、自ら流通業を営むことで今後に対処して行こうというわけだ。
 
4.今後の展開
韓国流通業の成否は一言で言えばローカライズの上手下手で決まっているように思う。
カルフール、テスコ、ウォルマート、などが石の何処をとっても自国以外で成功を収めてきた強者ばかりであるが、こと韓国においては当初は苦戦を強いられている。
ローカライズとは大前研一氏がその問題解決手法の中で表現している落としこみ手法のことで、ここでは全体の(自国の)成功理論を進出国の事情に調和させることと思って欲しい。
話は逸れるが韓国で食事をすると専門店の多さと、各店のメニューの少なさに驚く。
日本で韓国料理屋といえば「焼肉」から「冷麺」「ビビンバ」に至るまで何でも揃えているが、韓国では焼肉屋など有り得ない。焼肉を扱う店でも豚肉、牛肉、若しくは牛肉のスープだけとか鳥だけとか専門性が高いのである。
サラリーマンのアフター5も違います。日本では居酒屋という名の何でも屋に飲みにいくのに対して韓国では「サンキョプサル」を食べに行こうとか、「チョッパル」を食べに行こうかという言葉で其の行為がスタートするといいます。
一方、小売業といえば小さな専門店を除いては、韓国の主たる業態は、市場、百貨店、GMS(韓国ではハイパーマート)、SM、一般小売店が、CVS、通信販売などがあり日本で言うところのカテゴリーキラーなどの専門店が少ないのです。
これが前述の食堂(敢て専門店をこう呼びますが)と違うところでこのあたりが韓国人の価値観や感性の判らないところです。
ファッション業界においてもミリオレに代表されるようなファッション専門店の集合体はあるものの、ユニクロのような専門店チェーンはあまり見ない。食品販売業についても同じくで米屋、酒屋などの専門大型ディスカウンターもなく皆、GMSや百貨店の中に包含されているのが現状のように思える。
 
さて、私は食品業界に身をおく者なので流通についてはこういった感想だけになるが、韓国流通業の変遷とパワーバランスを見るに付け、自分のおかれた環境においてもこの前述のローカライズの大切さを痛感している。
逆に大型肉食獣が勝つとは限らないこの世界に携われることで自らの挑戦意欲や可能性を感じ夢は拡がるばかりである。
Kimuchiが綴るオートバイライフへ
キムチとハングルの部屋へ