父の愛した三陸を行く
春の東北・ソロツーリング

2007.5
昨年6月に父が逝ってもう一年近くが経とうとしている。
81歳と言う高齢でも有ったし世間一般には長寿とは言えないまでも天寿を全うしたと言えるだろう。

しかしながら私の中では未だ消化し切れない部分があるようだ。
私も今年は49歳。
父が転職をした年なのだ。
今からもう30年以上前になるが、父は転職をして三陸の地に旅立ったのだ。
単身赴任などしたことも無い父が選んだのは
今とは交通事情や環境も全く違う三陸。
岩手県気仙郡三陸町越喜来というところだった。

そのときの父の気持ちはどうだったのだろうか。
今の私にはその決断は出来ないし、その選択すらないだろう。

父は満足して死んでいったのだろうか。
もっと言えば父への治療はあれがベストだったのだろうか。
部屋に飾ってある父の微笑んだ写真を見るたびにそんな思いがよぎるのだ。

父から無償の愛をえながら、何も返すことが出来なかった自分には
父を懐かしみ、父のそのとき、そのときを想像するしか出来ることはないのだ。

「恩返し、したいときには親は無し。」よく言ったものだ。その通りなのである。

そんな感傷に浸りたいわけではないが東北に来て初めてのツーリングには三陸を含めることにした。


5月3日、晴天の中仙台を出発。
今日は十和田湖から奥入瀬を抜けて八戸まで走るのだ。
途中、盛岡を過ぎると天候は暗転。
雲は低くたれ気温もぐっと寒くなってきた。
表示温度は12度。
予想外の寒さに震えながら下着を着込む。
昼食は五戸で馬刺しと桜鍋。
冷えた体には本当に美味しい。

食した店はミートプラザ尾形
五戸本店だ。
牧場との一貫生産で味には定評がある。
「ミートプラザ尾形」は五戸の町の中心部、農協の隣にある。

一人では食べきれないほどの食事を終え外に出ると空は晴れ気温もぐんぐん上がってきた。汗ばむほどだ。

食事を終えて元気になったところで十和田湖を目指す。
一時間少しで十和田湖到着。
ウス曇の十和田湖には未だ春が来ていなかった。
湖畔近くによって湖面を見る。
昔、教科書で十和田のヒメマスという話を読んだことを思い出した。
「和井内貞行」という鉱山技師が30年近くかけて十和田湖でヒメマスの養殖を成功させると言う物語です。
この話しの最後に湖にさざ波が立ちそれが「ヒメマス」の群れだったという行があるのですがそこで涙が出たこともふと思い出した。


そして奥入瀬を走り十和田市に向かう。
奥入瀬は20数年ぶりだが変わらぬ美しさに感動。
十和田市はきれいな街だった。
東北で一番ではないだろうか。
ちょっとした通りにも街路樹が並ぶ。

桜の季節は最高だと聞いてきたがうわさは本当だった。
街並みはきれいな上にごみが殆ど落ちていない。
市民の方々の良識が街に出る。

写真には撮らなかったが商店街も実にキレイであった。


官庁街の桜並木。延々と1キロは続く素晴らしい通りなのだ。
十和田市を後に八戸に行く。
八戸に着いたら宿に入る前に根城を訪ねた。
ここも桜の名所なのだ。

城址にはしだれ桜がたくさん植わっている。

しだれ桜と本丸。
掃除はボランティアの方々の手によるものだそうだ。
園内には薬草園などもあり往時を偲ばせる。
根城見物の後、バイクを宿に置き街に出る。
やはり桜で有名な八戸城址を訪ねる。
園内には桜の高木が満開だった。
根方には多数の花見客が宴席を張っていた。

今日の気候は最高。
ビールも美味い温かさであった。
園内の桜。
夕食は市内居酒屋「七味家」
会社の同僚のお勧めの店だが中々良い材料を使っているようだ。
ビールと日本酒を少しだけいただく。
翌日は八戸を出て遠野を目指す。
途中岩手山を望む。
今年から岩手に就職した娘も毎日この山を見ているのだろう。

岩手山は素晴らしい山だ。

有名な河童が淵。

説明するまでも無い。民話のふるさとだ。
遠野に着く。遠野は長い冬を終え春の装い。
長い冬があるから春が美しいのだろうか。

遠野の風景はどこまでものどかで美しい。
遠野伝承園にて南部曲がり家。
伝承園の中に再現されたオシラ様。
オシラ様は養蚕の神様だ。
昔のトイレ。
この紐を持って踏ん張るのだ。
冬は本当に寒かっただろう。
そして三陸へ。
父が昔住んだ研修所から越喜来湾を臨む。

私も何度も来た所だ。

父もこの風景を毎日眺めたのであろう。
ここの左端の一階に父は15年以上住んでいたのだ。

野良猫にえさをやり飼いならしたり、
学生さんたちを家に呼んでコンパをしたり、
それはそれで楽しくやっていたのだろう。

遠く離れた家族を心配しながら。
三陸町越喜来。ここは崎浜の部落だ。
数十年前の三陸大津波で壊滅的な被害を受けたこの街は何事も無かったかのように復興している。
研修所の庭にも桜が咲いていた。

父への思いは尽きない。
追いつけなかった自分が情けなくもあり、
追いつけなかったことが幸せであった気もする。

明るい日差しの中で弁当を広げながら
今は亡き父の心に思いを馳せる。

スッカリ整備された崎浜港。
この20年で風景が変わったのはここだけだ。

天気が良くて、明るいときで、暖かいときで良かった。
父もこの明るい三陸で暖かい毎日を過したのであろう。

往時の明かるいことばかりが想像できた。
父の人生に幸せを見られた感じがして心が安らいだ。

2007年春。
素晴らしいツーリングになった。

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