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最終更新 2011/07/03



新婚別 杜  甫




01  兔絲附蓬麻   兔絲は蓬麻に附けば、
02  引蔓故不長   蔓を引きしも故より長からず。
03  嫁女與征夫   女(むすめ)を嫁して征夫に與うは、
04  不如棄路旁   路旁に棄つるに如かず。
 
05  結髮為妻子   髮を結びて妻子と為るも、
06  席不煖君床   席して君の床を煖められず。
07  暮婚晨告別   暮れに婚するも、晨には別れを告ぐ。
08  無乃太匆忙   乃ち太だ匆忙すること無からんや。
 
09  君行雖不遠   君行の遠からずと雖も、
10  守邊赴河陽   守邊として河陽に赴く。
11  妾身未分明   妾の身、未だ分明ならざるに、
12  何以拜姑   何を以って姑を拜さん。
 
13  父母養我時   父母の我を養いし時、
14  日夜令我藏   日夜、我をして藏せしむ。
15  生女有所歸   女を生んで歸(とつ)がしむる所有らば、
16  狗亦得將   狗なるも亦た將(したが)うを得る。
 
17  君今往死地   君、今、死地に往けば、
18  沈痛迫中腸   痛みは沈みて中腸に迫まる。
19  誓欲隨君去   誓いは、君の去(ゆ)くに隨うを欲するも、
20  形勢反蒼   形勢は蒼にに反す。
 
21  勿為新婚念   為す勿かれ、新婚の念。
22  努力事戎行   努力せよ、戎行に事うるを。
23  婦人在軍中   婦人の軍中に在らば、
24  兵氣恐不揚   兵氣、恐らく揚らず。
 
25  自嗟貧家女   自ら嗟す、貧家の女なれば、
26  久致羅襦裳   久しく羅襦裳を致さんとするも、
27  羅襦不復施   羅襦の復び施せず。
28  對君洗紅妝   君に對すに紅妝を洗わん。
 
29  仰視百鳥飛   仰ぎ視れば百鳥の飛び、
30  大小必雙翔   大なるも小なるも必ず雙(なら)びて翔す。
31  人事多錯   人事、錯を多くすれども、
32  與君永相望   君とは永(とこ)しえに相い望まん。
 
  『全唐詩』 2284頁 217卷 7冊




解説語句(数字は句番号)


 兔絲 (01)
 蓬麻 (01)
 征夫 (03)
 結髮 (05)
 妻子 (05)
 席不煖 (06)
 匆忙 (08)
 河陽 (10)
  (12)
  (16)
 中腸 (18)
  (18)
  (20)
 羅襦 (26)
  (31)
 解釈と変更  




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01  兔絲は蓬や麻にまとわり付くため、
02  蔓を引いても、根っこは長くありません。
03  娘を出征する男に嫁がせるのであれば、
04  路旁に棄てた方がましです。

05  結髮して妻となりましたが、
06  座ってあなたの床を暖める暇もありません。
07  前夜に式をしたのに、翌朝には別れを告げなければならないなんて、
08  なんと慌しいことでしょうか。

09  あなたが向かうのは、そんなに遠くない所ですが、
10  守辺のため、河陽へと行ってしまうのです。
11  私の身は、まだどう言うものか分かりません。
12  どのようにして、舅姑と対したらよいか分かりません。

13  私の父母が、私を養育した時、
14  日夜、私を大事にしてくれました。
15  産んだ娘を、嫁がせるのですから、
16  鶏や犬であっても付き従え、と。

17  あなたは今、いつ死ぬか分からないような場所へと向かおうとしています。
18  私の心の痛みは、そのまま沈んで腸にも至ろうとしています。
19  思いとしては、あなたが行く所に従いたいのですが、
20  情勢は目まぐるしく変わって、とても私は付いていけそうにありません。

21  考えてはいけません、新婚であることを。
22  力を尽してください、戎行に。
23  婦人のことを、軍中の兵士が思い抱けば、
24  兵の士気は、恐らく上がらないでしょう。

25  ああ、貧家の娘の私は、
26  長く羅襦の裳を着ていたいのですが、
27  羅襦はもう着ることを止めます。
28  あなたのいる方を向く時は、紅や妝を洗い落としましょう。

29  空を仰ぎ見れば、いろんな鳥が飛んでいますが、
30  その大なるも小なるも、必ず二羽つがいで飛んでいます。
31  人生は思い通りに行かないことが多いですが、
32  あなたと永しえに一緒に向き合っていたいと思います。




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語の説明


□句の説明■語句●地名○人名◇特記










 
■兔絲 − 植物名。即絲子。

以下がその史料

『淮南子』「説山訓」:「千年之松,下有茯苓,上有兔絲。」高誘注:「一名女蘿也。」
『文選』「江淹「古離別」:「兔絲及水萍,所寄終不移。」李善注引『爾雅』:「女蘿,兔絲也。」



『抱朴子』「篇/對俗」注

兔絲,即兔絲子,一名女蘿,為中草藥,神農本草載之.梁陶弘景云:田野墟落甚多,皆浮生藍紵麻蒿之上,舊言下有茯苓,上生菟絲,今不必爾.



『藝文類聚』「藥香草部上/兔絲」

『爾雅』曰.唐蒙女蘿.女蘿兔絲.
『呂氏春秋』曰.或謂兔絲無根也.其根不屬地.茯苓是也.
『史記』「龜策傳」曰.下有茯苓.上有兔絲.
『淮南子』曰.兔絲無根而生.茯苓抽.兔絲死.



■女蘿

以下がその史料

『藝文類聚』「藥香草部上/女蘿」

『廣雅』曰.女蘿.松蘿也.免絲也.
『毛詩』曰.蔦與女蘿.施于松上.



■兔絲燕麥 − 喩有名無實。

以下がその史料

『魏書』李崇傳:「今國子雖有學官之名,而無教授之實,何異兔絲燕麥,南箕北斗哉!」

『資治通鑑』梁武帝天監十五年:引此文,胡三省注云:「言兔絲有絲之名而不可以織,燕麥有麥之名而不可以食。古歌曰:『田中兔絲,如何可絡!道邊燕麥,何嘗可獲!』『詩』云:『維南有箕,不可以簸揚。維北有斗,不可以酒漿。』皆謂有名無實也。」

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■蓬麻 − 蓬與麻。

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■征夫 − 從役之人;出征的士兵。

以下がその史料

『詩』「小雅・何草不黄」:「哀我征夫,獨為匪民。」鄭玄箋:「征夫,從役者也。」

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■結髮 − 成婚。古禮。成婚之夕,男左女右共髻束髮,故稱。

以下がその史料

漢・蘇武『詩』之三:「結髮為夫婦,恩愛兩不疑。」

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■妻子 − 妻。

以下がその史料

『詩』「小雅・常棣」:「妻子好合,如鼓瑟琴。」

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■席不暇煖(原文は「席不煖」)

亦作「席不暇煖」。謂席子未及坐暖即離去。形容忙于奔走,無時間久留。

■席不暇暖 − 語出『淮南子』「修務訓」:「孔子無黔突,墨子無煖席。」

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■匆忙 − 急急忙忙。

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●河陽 − 古地名、在現在河南省孟縣西。
     黄河北岸。

以下がその史料

『資治通鑑』注

河陽縣,自漢以來屬河郡,唐屬懷州。

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■姑 − 丈夫的母親與父親。



■丈夫 −妻稱夫為丈夫。

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■將 − 送也。

以下がその史料

『詩』「召南」:百兩將之。
『詩』「風」:之子于歸,遠于將之。


以下に変更する  2011/07/03更新

■將 − 跟隨。
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■中腸 − 猶内心。

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■誓 − 男女私約亦曰誓。

以下がその史料

『詩』「國風」:信誓旦旦。

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■蒼

以下がその史料

『墨子』「所染」:「見染絲者而歎曰:染於蒼則蒼,染於黄則黄,所入者變,其色亦變。」以「蒼黄」比喩事物變化不定,反復無常。

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■羅襦 − 綢制短衣。細密的網。

以下がその史料

『周禮』「夏官・羅氏」:「羅氏:掌羅烏鳥。?則作羅襦。」鄭玄注引鄭司農曰:「襦,細密之羅。襦讀為繻。」

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■錯 − 違逆;不如意。

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杜甫「新婚別」の解釈


変更点

第16句の書き下しの変更

狗も亦た將(おく)るを得る。
  ↓
狗なるも亦た將(したが)うを得る。


第16句の訳の変更

家で飼っている鶏や犬も、見送りに出てきました。
  ↓
鶏や犬であっても付き従え、と。

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