ハリケーンのおもいで



 2002年9月6日 グラッド・ホースパーク 【2歳】
   「ただ一度きりの対面」
 「グラッド・ホースパーク」の看板の矢印に沿って門をくぐると、目の前に「八木牧場」と書かれた大きな建物がありました。本当にここかどうかわかりませんでしたが、恐る恐る進んでみると、突き当たりに駐車場がありました。ここに車を止めて雨の中を事務所に駆け込み尋ねてみると、ここが目指すグラッド・ホースパークでした。ご挨拶をすると、早速ハリケーンを連れてきてくださるとのこと。よかったぁ。

 ハリケーンは体質が弱いのか、春からずっとウォーキングマシンの調整を続けていて、ここ最近になってようやくダクやキャンターを再開したばかり。以前の会報の写真ではガレているようにも見えたこともありました。少し心配な状態だったハリケーンでしたが、実際に目の前にしてみると、ガレているという印象はありません。馬体のそれぞれのパーツはむしろ太く見えるんです。
 ただ、全体的にこじんまりといった感じで、ずんぐりしている体型なのかな。そのことを聞いてみると、「思ったほど大きくならない。体高がない」とのこと。イラヒー産駒の他の兄弟と比べてどうかと尋ねたところ、「この兄弟は胴は詰まっているという感じでは似ているが、この馬が一番小さい」そうです。
 会報の写真でガレているように見えたことについては、「一時、馬体重が減ったのはササ針の反動が出てしまったから。今は440kgはある。ただ、体重が増えてもお腹がポコッとしてきてしまう」。う〜ん、ガレてはいないけど、確かに筋肉で締まっているというようにも見えないなぁ。まぁ、今までウォーキングマシンの調整だけだったから、馬体が締まるという所にまでは至らないのかもしれませんが。

 このお腹がポコッとしていることについては、一昨日門別競馬場でホッカイドウ競馬のテレビ中継を見ていたとき、ちょうど出走していたブラッシングジョン産駒の馬について、解説者が「ブラッシングジョンの仔はお腹がポコッとしている」と話していたことを思い出しました。それが特徴ということなら、あまり心配はいらないのでしょうが。

 いずれにしても、ハリケーンはまず身体を強くすることが第一ですね。長い目で見てあげたいと思いました。

 2003年8月16日 小倉競馬場 【3歳】
 第1戦/第3回小倉競馬 第1日 7Rサラ系3歳(混)[指] 未勝利 芝1200m・右 馬齢 18頭 発走 13:25
      7枠14番 53kg 南井大志騎手 11着
 ハリケーンがデビューの日を迎えました。
入厩まで育成を行っていたグラッドホースパークの情報によれば、当歳の頃はヤンチャ坊主だったハリケーンですが、
1歳時はすでに「体高があまりなく成長途上」とのコメントが出されていました。
2歳になって本格的な調教が始まると、4月には疲れが溜まって熱発。6月の産地馬体検査を受けるものの、
体調は戻らずに夏までは主にウォーキングマシンでの調整しかできない状態が続きました。
それでも秋には比較的順調に調教をこなすことができ、年が明けた1月17日に栗東の小原厩舎に入厩。
昨夏までの状態を考えると、スムーズに入厩できたことで、これでようやく体質が改善されたかと思いました。
しかし、栗東ではゲートから1回時計を出しただけですぐに疲れと骨膜炎の症状が発生してしまいます。
「もう放牧には出したくない」という調教師でしたが、結局は暖かくて体が絞れやすい宮崎に放牧することになりました。
そこでも「良化が遅い」「動きがもっさりしている」といった感じでなかなか調子が上がってきません。
時間がない中で焦りもあったでしょうが、それでも休まずにじっくり乗り込みを続け、体調もかなり戻った6月下旬に帰厩。
その後は、これまで8本程の追い切りをこなし、体も絞れてきて、デビューにGOサインが出たのです。
このようにハリケーンのこれまでを振り返ると、まさに体質の弱さの克服との戦いでした。
所属厩舎も当初の予定と変更となったハリケーン。
デビューできるかさえ心配したハリケーンが、今日、ついにデビューの日を迎えました。

 期待の中で迎えるはずのデビュー戦でしたが、直前の状況はむしろ不安を思わせるものとなってしまいました。
前週の坂路での追い切りでは、終いバテてしまい、一杯に追って上がり15秒台。
陣営のコメントもかなり消極的で、追い切りに騎乗した南井騎手にも、
ハリケーンの追い切りの動きが悪いことを告げていたかのようなコメントまで出させてしまいました。
このような状況で、デビュー戦に選ばれた芝短距離のスピードに、ハリケーンがついていけるかどうか。
いや、そのことよりむしろ、ハリケーンがどんな姿でパドックに出てくるかがさらに心配でした。
ガレていないだろうか、馬体重はどのくらいだろうか、毛艶は悪くないだろうか...。
そんな不安の中で画面の中に映ったハリケーンは...、悪くありません。
ガレていません。いや、むしろ逞しく、大きく映ります。
馬体重は450kgですから、そんなに大きいわけではありません。
このレースに出てきた他の馬たちも小さな馬が多かったせいもあるのでしょう。
しかし、見た目には体質が弱そうには全く見えず、むしろ堂々と見えるのです。
ハリケーンの体を覆っている栗毛の艶もなかなか良い。体調的にも良いようです。
グリーンチャンネルのパドック解説では、おなかがポテッとしてしていると指摘がありました。
確かに、少々太いかもしれません。
しかし、このハリケーンの姿を見て、心配で不安な気持ちはかなり解消し、「この体ならば」といった期待感が広がっていきました。

 ゲート入りは一度躊躇した様子でしたが、それでも促されてからはすんなり入りました。
ただ、ゲート内では隣の馬をしきりに気にしていたような様子ではありましたが。
スタートは良かったように感じます。経験馬相手に芝短距離のスピードについていけるかどうかでしたが、
先行争いには加われなかったものの、馬群の中団よりやや後ろを遅れることなく追走していきます。
コーナーに入ってペースが上がってからも、きちんと対応して遅れることはありません。
直線でも前との差は詰められないものの、しっかりとした伸び脚を見せて、11着でデビュー戦のゴールを迎えました。

 着順は二桁でも、これはとても価値のある11着だと思います。
無事にデビューできたこと。そして、無事に帰ってきてくれたこと。さらに、レースにきっちり対応できたこと。
いや、それだけでなく、初出走だったこと、太め残りだったことを考えると、むしろ今後に期待を残してくれる内容だったのではないでしょうか。
もうすぐ未勝利戦がなくなってしまいますので、のんびりはしていられません。次走は結果を求められることになるのかもしれません。
しかし、これからを期待させてくれそうなハリケーンの勇姿が、今日はとても嬉しいのです。



 ハリケーンは左前脚に屈腱炎を発症し、たった1戦のみで引退となりました。
2歳時から身体が弱く、思ったような調教を積むことができなかったハリケーン。
デビューできるかさえ心配したものの、宮崎での休養を経て、なんとかレースに出ることのできる身体となってくれました。
そんな中で迎えたデビュー戦では、着順以上に見所のあるレースを見せてくれて、さぁこれからというところましたが、第2戦を目前に屈腱炎発症という残念な事態となってしまい、引退を余儀なくされました。
この仔には、競走馬の難しさ、厳しさを改めて教えられた気がします。



ハリケーンの戦績