3.所得と労働効率
所得とは欲しいものを自分のものにできることですね。ですから所得
が高いと云えば欲しいものをたくさん持っていると云うことになります
。現在は所得をお金で表しますがその昔は物品でした。物品(売買できれ
ば)もお金も商品であることに変りはありません。つまり今も昔も所得が
高ければ商品をたくさん自分のものに出来ることとなります。では高い
所得と労働効率の関係はどのようにして決まるのでしょうか。それをこ
れから考えていきましょう。
私たちは会社勤めや商売をしていると意外に単純な所得と労働効率の関
係が解からなくなってしまいがちです。会社勤めの場合は毎日同じよう
な仕事をしていても、年毎昇給や待遇改善により、所得は向上していき
ます。ですから所得と労働効率の直接的な関係について感じ難くなって
います。また商売をしている方では仕入れ値と売り値または販売数で所
得の向上が決まってしまうので、やはり所得と労働効率の直接的な関係
について感じとることが難くなっています。これは市場性(労働効率の波
及とその追求をする)という要素が入ってきたことによります。
しかし所得と労働効率の関係について市場性という要素を排除して単純
化して考えてみれば簡単な理屈なのです。例えばあなたが使う椅子を作
ることで考えて見ましょう。単純化のため材料費は考えません。今あな
たが使っている椅子は1人で1日1脚作れるとします。そして値段は1
万円です。すると椅子作りの所得は1日1万円となります。これを加工
機械や運搬機械などの導入により1人で1日10脚作れるようになった
とすると、所得は10倍の1日10万円となります。つまり労働効率が
10倍になれば所得も10倍になる理屈です。単純な理屈ですから今も
昔も変化はない筈です。当たり前のことですがこれが現実にはそうなら
ないのはなぜなのでしょうか。
それは現代社会には市場原理が働いているからです。続けて椅子の例で
考えていきますと、椅子を10倍の労働効率で作ったとしても、実際に
は自分だけが作っているわけではなく、販売競争となっています。その
ためたくさん椅子を作って売れば販売価格が下がってしまうことにより
、所得も下がってしまうのです。ですから労働効率が10倍になったと
しても所得は10倍にならなくなってしまいます。ではなくなった所得
は何処に消えたのでしょうか。それは購入者の所得となったのです。つ
まり労働効率の向上によって生じた所得は売買によって購入者に分配さ
れたのです。作る側から見れば努力して労働効率の向上を図っても、そ
の全てが手に入らず、所得の向上分を実感できないのはそのためです。
しかし市場全体からみれば労働効率の向上分だけ、所得は向上している
のです。購入者は所得が向上した分(安くなった分)余計に他のものを買
うことができるようになったのです。椅子を作っている人も他の商品を
買うときにその商品の労働効率の分配を受け、所得が向上しています。
余計に買えるようになるからこそ市場全体も拡大していけるのです。新
たな市場が生まれるから市場が成長するのではなく、所得が向上するか
ら新たな市場が生まれるのです。市場が拡大していけるのは有効需要を
生み出すからではなく、労働効率が向上するからなのです。つまり労働
効率の向上こそが市場を成長させる力を持っているのです。
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