国会において、定期借家制度の創設が盛り込まれた下記法律案が可決されました。
定期借家制度の創設は、これまでの正当事由制度による借家制度のゆがみをなくして、広くて、安い良質な借家住宅の供給に欠かせない制度として期待されていました。


 良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案
(全文)   

(定期借家法)


 (目的)
第一条  この法律は、良質な賃貸住宅等(賃貸住宅その他賃貸の用に供する建物を言う。以下同じ。)の供給を促進するため、国及び地方公共団体が必要な措置を講ずるよ う努めることとするとともに、定期建物賃貸借制度を設け、もって国民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的とする。

 (良質な賃貸住宅等の供給の促進)
第二条  国及び地方公共団体は、適切な規模、性能、居住環境等を有する良質 な賃貸住宅等の供給の促進のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2.国及び地方公共団体は、賃貸住宅について安全性、耐久性、快適性等の確保に資するため、住宅の性能を表示する制度の普及に努めるものとする。

 (住宅困窮者のための良質な公共賃貸住宅の供給の促進)
第三条  国及び地方公共団体は、住宅に困窮する者に対する適切な規模、性能、居住環境を有する良質な公共賃貸住宅(地方公共団体、都市基礎整備公団又は地方住宅供給公社が整備する賃貸住宅をいう。以下こま条において同じ。)の供給を促進する ため、公共賃貸住宅の整備及び改良等に関し必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2.住宅建設計画法(昭和41年法律第100号)第4条第1項に規定する住宅建設五箇年計画は、前項の趣旨を参酌して策定されなければならない。
3.公共賃貸住宅の管理者は、公共賃貸住宅の入居者の選考に当たり、住宅に困窮する者の居住の安定が図られるよう努めるものとする。

 (賃貸住宅等に関する情報の提供、相談等の体制の整備)
第四条  国及び地方公共団体は、良質な賃貸住宅等に対する国民の需要に的確に対応できるよう、賃貸住宅等に関する情報の提供、相談その他の援助を行うために必要な体制の整備に努めるものとする。

 (借地借家法の一部改正)
第五条  借地借家法(平成三年法律第90号)の一部を次のように改正する。
   
    目次中「期限付建物賃貸借」を「定期建物賃貸借等」に改める。
  
     第二十三条に次の一項を加える。
3.第一項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第三十八条第一項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。

     第二十九条に次の一項を加える。
2.民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。

    「第三節 期限付建物賃貸借」を「第三節 定期建物賃貸借等」に改める。
 
     第三十八条を次のように改める。
 (定期建物賃貸借)
第三十八条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書 による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2.前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、 建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して 説明しなければならない。
3.建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは無効とする。
4.第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物 の賃貸人は期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間 という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知を しなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸 人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後はこの限りでない。
5.第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸 借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建  物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情 により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申し入れの日から一月を経過することによって終了する。
6.前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7.第三十二条の規定は第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改訂に係る特約がある場合には適用しない。

    附 則

 (施行期日)
第一条  この法律は、公布の日から施行する。ただし、第五条、次条及び附則第 三条の規定は、平成12年3月1日から施行する。

 *附則第二条の規定は、平成11年10月1日を経過したことにより不要となった。

 (借地借家法の一部改正に伴う経過処置)
第二条  第5条の規定の施行前にされた建物の賃貸借契約の更新に関しては、なお従前の例による。
2.第五条の規定の施行前にされた建物の賃貸借契約であって同条の規定による改正前の借地借家法(以下「旧法」という。)第三十八条第一項の定めがあるものについての賃借権の設定又は貸借物の転貸の登記に関しては、なお従前の例による。

第三条  第五条の規定の施行前にされた居住の用に供する建物の賃貸借(旧法第三十八条第一項の規定による賃貸借を除く。)の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、第五条の規定による改正後の借地借家法第三十八条の規定は、適用しない。

 (検討)
第四条  国は、この法律の施行後四年を目途として、居住の用に供する建物の賃貸借の在り方について見直しを行うとともに、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて、必要な措置を講ずるものとする。
  
  理 由
  社会経済情勢の変化にかんがみ、良質な賃貸住宅等の供給を促進するため、国及び地方公共団体が必要な措置を講ずるよう努めることとするとともに、定期建物賃貸借制度を設ける必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
 

〔参考資料〕 


良質な賃貸住宅等の供給促進に関する特別措置法案に対する付帯決議       

 政府は、本法の施行に当たっては、次の点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。
1.住宅は国民生活を支える基本的な基盤であり、ゆとりある住宅に安心して住むことが生活の真の豊かさを確保する上で重要であることに鑑み、国民の価値観や家族形態の多様化等に対応した良好で多様な居住を実現する住宅政策を通じて国民生活の安定と福祉の増進に寄与できるよう努めること。

2.高齢者その他の住宅に困窮する者をはじめ国民の居住の安定が図られるよう、公営住宅、公団住宅等公共賃貸住宅の計画的整備、高齢者向け賃貸住宅の供給の促進のための制度の整備等により、国民の住宅セイフティネットの構築に努めること。

3.良質な賃貸住宅の供給促進に必要な措置をとるとともに、住宅の居住性等に関する、指針となる水準と目標を定め、その達成に努めること。

4.住宅性能表示については、その普及を図るとともに、性能表示に関する業務の公正かつ的確な実施を確保するため、万全の施策を講じること。

5.賃貸住宅等に関する情報提供体制の充実及び相談体制を図るため、地方公共団体における公共賃貸住宅の事業主体間での連携が図られるよう努めるとともに民間賃貸住宅管理業界との連携を密にすること。 

6.賃借人の賃貸住宅に関する情報入手の円滑化を図るため、地方公共団体において、公共賃貸住宅の募集情報の総合的提供体制の整備を図るとともに、民間賃貸住宅情報提供機関等の紹介等が行われるよう努めること。

7.賃貸人及び賃借人双方に対する相談・調整体制及び紛争処理体制の一層の 充実を図るため、国民生活センター、地方公共団体の住宅相談窓口、消費者センター等における対応の強化について指導するとともに借家相談マニュアル等の参考資料を作成し、相談機能の充実及び紛争処理の円滑化を図ること。

8.借家制度が国民の多くの世帯と関連を持ち、かつ、生活基盤たる住宅や事業 所にかかわる重要な制度であることに鑑み、借地借家法の改正についての国民の理解を深めるため、借地借家法及び今回の改正内容の周知徹底を図ること。
  特に、今回の改正は既存の建物賃貸借契約の更新には適用されないこと、また、定期建物賃貸借制度は居住の用に供する建物に関し既になされた賃貸借に対しては、当該賃貸借を合意終了したとしても、当分の間、適用されないことを、あらゆる方法を通じて周知徹底させ、国民の住宅に対する不安の解消に努力すること。

9.賃借人の居住の安定化の観点から、当該賃貸住宅を取得しやすくするため、賃貸人による賃借人に対する当該住宅の売却情報の優先的提供に関する契約の在り方について検討すること。

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