短歌あれこれ
ヤモリ
岩波書店の「図書」に哲学者の上田閑照氏が
「五つの風景」と題して興味深いお話を書いて
おられ、これがどれも大変おもしろかった。
その中に「太郎守りと次郎守り」という
ヤモリのお話があった。
上田氏が宇治の木幡に住んでおられた時に、
書斎のガラスの外側にヤモリがあらわれて、
腹の側からみるうちに
「奇にしてまこと妙」と感心するようになり、
そのうちに南側の窓にあらわれたかと思うと、
北側の窓にも現れる。そのヤモリに「太郎守り」と
「次郎守り」と名付けた。
ある時、ドイツ人が訪ねてくることがあって、その話を
すると、「その二つは別々のヤモリか」と尋ねられ、
虚をつかれた感じがした、 という話である。
ある会合でその話をしたところ、ヤモリのことを
日常生活の中でよく観察している方がいて、
「決してそれは同じヤモリではない。 ヤモリは
長年気をつけてみていると、それぞれ自身のテリトリー
をもっているようで、別々のところでいつも同じヤモリが
観察される。」という。こうして律儀に来てくれるヤモリ
について、「本当にかわいいものですよ。」と目を細める。
そういえば、私の家にもヤモリが住んでいる。
玄関の横の白壁にへばりついて、かわいい目を
クリクリさせている。
仕事から帰って、彼らに出会うとほっと心が和むのである。
いつも留守にしている家を、守ってくれる大切な私の家族
である。
何を待つ瞳ならむか陽に温き壁にぴたりと我が家のヤモリ
くっきりと彼のテリトリー譲らぬとその潔き まろき瞳よ
ニホンヤモリ