杉   林
花粉症患者を見て思う

 花粉症患者を見ているとまことに気の毒なシーズンが来たと言う印象だ。幸い私は被害者ではないが、病院の内科で、若い人がいかにも苦しそうな顔をして、順番を待っていた。
NHKの天気予報は毎日のように朝、昼、晩と御丁寧にスギ花粉情報を流している。患者のとってはたまらない情報だろうと想像する。尚今年の花粉の飛び散る量は毎年の平均の三倍にも及ぶと情報を流している。それだけ杉林が育ったと言うことだろう。

 私はふと戦争時代の杉の植え付けの歌を思い出した。その歌は戦争中のメロデイーとしては珍しく可愛いもので、軍歌には飽々していた国民は喜んで唄ったことを思い出した。
この歌をどこで覚えたのか思い出してみた。当時私は軍隊生活を送っていたが、幸い営外居住という資格を持っていたので、友人の紹介で連隊の近くの立派な建物の家を紹介してもらって、そこの一部屋を借用していた。

 そこには空襲の激しい時代に、まだ家族の人たちが住んでいて、そこの家に可憐なお嬢さんが住んでいて、中学一年生くらいの人だった記憶がある。その人がピアノを弾きながら、この歌を教わったのを思い出した。あまりにも可愛いらしい歌だったので、全部を教えてもらったが、やはり最後の方は、やはり軍歌だった。さて、その歌を調べたので、一部を照会してみよう。吉田テフ子作詞・サトーハチロウ補作・佐々木すぐる作曲・安西愛子歌・

 昔々の その昔
椎の木林の 直ぐそばに
小さな杉山が あったとさ あったとさ
丸々坊主の禿山は いつでもみんなの 
笑いもの

「これこれ 杉の子 起きなさい」
お日様 にこにこ 声掛けた 声掛けた

 こんなチビ助 何になる
ビックリ仰天 杉の子は
思わずお首を ひっこめた ひこめた
ひっこめながらも 考えた
「何の負けるか いまにみろ」
大きくなって 国のため
お役に立ってみせまする みせまする 

歌のおばさん安西愛子さん

 大きな杉は 何になる
兵隊さんを 運ぶ船
傷痍の勇士の寝るおうち 寝るおうち
木箱 お机 下駄 足駄
おいしいお弁当 食べる箸
鉛筆 筆入れ そのほかに
嬉しやまだまだ 役に立つ 役に立つ

 さあさ 負けるな 杉の木に
勇士の遺児なら なお強い
体を鍛えてがんばって がんばって
今に 立派な 兵隊さん
忠義孝行 一筋に
お日様出る国 神の国
この日本を譲りましょう 譲りましょう

 以上のように、最後は可愛い歌が やはり戦時色になっていたのだ。私は最後の方は殆ど覚えていない。その当時これほど可愛い歌が、最後には神の国になってしまっていたのだ。絶対に負けるはずのない国が、結局負けてしまい、昭和二十年八月十五日を迎えることになったのだ。

 ご丁寧なことに現在は差別用語になっている箇所がある。例えば、丸々坊主の禿山はいつでもみんなの笑いもの・・・・禿山とか、笑いものとかが、差別用語になるのではないかと思ってしまう。最近の情報によると、どうやらスギ花粉だけではないらしい。

 中国から飛んでくる黄砂が、肺炎とかその他喘息に関する病原に関係しているようだ。
全面的に中国政府の責任ではないが、徹底的な分析の結果、最近わかってきたらしい。
恐ろしいことだ。また、偶然なことに、このエッセイを書いた日が三月十日のアメリカの
超低空爆撃のあった日だった。これも何かの因縁があったのだろう。

  平成20年3月10日               石 井 立 夫