本田美奈子
本田美奈子の美意識

 324日のNHKの番組で何気なく見ていたら、だんだんと引きずり込まれるように美しい心と死の直前まで歌心を持っていた歌手であることを知った。今時久しぶりに心が洗われた感動を覚えた。彼女は有名歌手として、突然敗血症という癌に犯されて、岩谷時子さんも同じ病院へ入っていた。岩谷時子さんは、名歌手越路吹雪とのコンビで余りにも有名な人だ

 ミュージカル「ミス・サイゴン」の訳詩を手がけたことがきっかけで、同作品に主演した本田美奈子と親交を深める。本田の才能を「越路の再来」と高く評価し、数多く詞を提供した。偶然にも、本田が死去する直前、足を怪我して本田と同じ病院に入院。ボイスレコーダーを通じて、当時無菌室に入っていた本田美奈子を激励した。

  同じ敗血症でも回復した例もある中で、本田美奈子は 不幸にも病気は進むばかりだったしかし不思議なもので、彼女の歌声はちゃんと最後まで出る状態だった。彼女はボイスレコーダーを通じて、優しい声でメッセージとともに、必ず歌を吹き込んでいた。主な歌は、アメージング・グレースだった。

 1125日アルバム『時』をリリース。121日武道館での『Act Against AIDS』に出演38度を超える発熱をおして「ジュピター」と「1986年のマリリン」を歌った。この頃からすでに病気の兆候が表れていた。風邪に似た症状がなかなか治まらないため、20051月に病院の検査を受けたところ急性骨髄性白血病と診断され緊急入院。

 3回の化学療法による治療の後、5月に臍帯血移植を受け、7月末には一時退院できるまでに回復した。しかしわずか1ヵ月後に染色体異常が見つかり再入院した。113日肺に合併症を発し容態が急変、2005116日午前438分家族らの見守る中永眠した。

本田の最も愛したアメージング・グレースの歌詞を書いてみたい。Amazing grace

How sweet the sound
何と美しい響きよ
That saved a wretch like me
私のような者までも救ってくれる
I once was lost but now am found
かって私は道を失ったが
Was blind but now am I see
今はもう正しい道を見出すことが出来たThrough many dangers 
盲目の目も見えるようになり
Toils and snares I have already come

やっとあなたの傍に
Tis grace have brought me 
多くの危機や苦しみ誘惑から
Safe thus for
この愛が私を救い導きここまでつれて来てくれた
And grace will lead me home
そしてその大いなる愛は
Safe this for
私を懐かしい家路へと・・・・・・
And grace will lead me home

 時には英語で唄ったときもあったらしい・・・・・・・
この美しい曲[アメージング。グレース]は賛美歌でもあり、アメリカ(元はイギリス)の古い伝承曲だ。

 本田美奈子は、死ぬ最後の最後まで岩谷時子を仮の母親として歌い続け、実の母親も若いときは歌手を希望していた。実の母親にも、もちろん、同じ歌とメッセージを送り続けてきた優雅な声のメッセージと優しい歌声を、最後の亡くなる前まで歌い続けた感動的な物語だった。

 このような心優しい歌手を失ったことは、実に大きな人だったのだとの印象を深くしたのである。とかく、現実の世の中は、殺伐で、やさしい言葉もなく、実のない生活を過ごしている。余計に歌手本田美奈子の美しさが目の前に浮かんでくるのだ。

  平成20年4月17日               石 井 立 夫