森光子という名の女優

 先日この人のインタービューを拝見した。芸暦の長い人で、戦前から活躍していた人だ。
年齢は別として、林芙美子の「放浪記」で[でんぐり返しの芸]は有名だ。1928年から、1930年単行本として発売され大ヒット、菊田一夫の脚本で、初演から主演を勤めた彼女は当時41歳だった。

 上演回数は2006年までで1858回、芸術座は2005年に閉鎖したため、2008年公演よりシアタークリエへの初進出となり、2月23日の公演で上演回数1900回を達成する。国内の単独主演では断トツの一位の記録となる。

 話題の[でんぐり返し]は42場のシーンで、3時間半を超える上演から、幕が開いてから3時間程度終わった辺り、林芙美子が、自分の小説の広告が新聞に掲載されているのを見つけ、大喜びのあまりでんぐり返しをするという状況で、初めのころは3回、1981年からは必ずでんぐり返しを行ってきて、その数は合計2852回転になるそうだ。

 ちなみに同作の演出家は、初代の菊田一夫が1972年に他界。
2代目の三木のり平も1996年まで勤めた後、1999年に他界しているが、三木のり平の名前が残っていたらしい
2008年の放浪記は3月末までシアタークリエで3ヶ月間公演を行い後は地方公演に上演する予定がある。

 また31日は菊田一夫の生誕100年という節目も迎える。この女優さんの健康状態は、どうなっているのか、私と同年齢に近いはずだが、インタービュウをー聞いて、感心したのは毎日決まったスクワットという体操を70回繰りかへし、健康維持に努めているそうだ。

 戦時中から活躍していた記憶があるが、残念ながら私は、この公演を見ていない。テレビでは何度か拝見したが、食事は勿論気を使っているが、若い人とのお付き合いも欠かさないで、話題をいつも若い人たちから吸収しているようだ。

 面白い話題の一つでは、木賃宿を知らないで、読み方を、キッチン宿と思っている人がいたらしい。なるほど、現在の住宅事情は、キッチンがあるのは当然だから、そのように解釈するのはわかるが、林芙美子が、子供の頃から、生きぬ仲の親に連れられて、行商までして歩き、夜の宿は必ず木賃宿だった。

 貧しい時代を長い間経て、その苦しい生活を小説に書いていた。その人の小説から、脚本家の菊田一夫が制作した題名なのだ。菊田一夫は戦後の有名な「君の名は」という脚本を書き、当時は戦後間もない頃だったが、この放送が始まる時間には、銭湯が空になると言う話題の持ち主だった。この人の脚本に出演すると言うことは、大変光栄なことだった。

 銭湯がまだ普通だった頃の時代だった。森光子さんは、身体付きはまだまだ充分に芝居に耐えられると思えるが、日頃の健康を維持する努力には感心させられるものがある。私は大いに、この人の日ごろの心身ともに若さを保つ秘訣を学び、若さを何時までも保つことを学びたいと思っている。

 林芙美子の苦労話は戦前には十分に有り得た話だが、放浪記を再読して、現在の日本の在り方を見直すことにした次第だ。歴史に残る小説であることは間違いない。

  平成20年5月6日               石 井 立 夫