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曽 野 綾 子 |
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「書く」教育の復旧 |
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平成20年9月22日の産経新聞に、曽野綾子さんがエッセーを書いておられた。要点は「書き言葉」の復旧が必要であるとの内容だった。過日来、輸入米の汚染問題が報じられての不正な流れは大問題点だったが、連日報道されていた。テレビで大騒ぎに報道され続き、観戦しているものは、最後ごろは嫌になり、思わず消してしまったものだ。 |
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農林省の責任問題として、国会では、野党が盛んに問い続けていたが、農林省の役人は過去に四日間も、この会社に出張し、報告書に「調査しながら指導している」と言う意味の同じ言葉しか書いていないことをテレビの局の調査が突き止めたと言う「特種」が出ていた。国交省のタクシーの使い放題と同じように、役所の出張が本当に効果を上げているかどうかの基本的な問題に触れたものだ。 |
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つまり通り一遍のレポートを出していたらしい。テレビの画面に映った限り、問題の報告事項の欄に書かれている文章は一日分、たったの四行だった。それが四日間とも全く同文と言うことは、普通なら許されない。こうした報告を受けた上司もその現実を放置していたという怠慢の責を負わねばならない。日本語の表現がないので、同じ文章でお茶を濁していると見るのである。 |
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饒舌な報告書は、瑣末な部分が多いように思われがちだが、決してそうではない。小説家も、おそらく警察も枝葉末節な部分から裏を読み取る、上司はその中からあらたに、「ここはどうなっているんだ」と突っ込むべきところを見つけるのである。 |
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戦後の教育は、漫画とテレビばかりを許し、読者を軽視した作文教育を怠り、手紙の代わりに、ケータイの絵文字で意思の疎通を図る社会を許した。しかも公務員は、うっかり証拠を残して賄賂を受け取ったと思われないために、最近では人間的な礼状さえ書かない。公務員のみならず、日本人が日本語の『読み書き』のうち「読み」だけでなく「書き」も出来る教育を一刻も早く復旧することだ・・・・・と書いていた。 |
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片や、米ミューズ・アソシエイツ社長梅田望夫氏が「言語から見る世界」というエッセーを書いていた。其の一部を引用をさせて頂くと、・・・・ある刺激的な論考を読み、その意味を考える日々を過ごしていた。その論考とは、木村美苗氏の『日本語が亡びるとき・・・英語の世紀の中で』だった。 |
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木村氏がこの論考で考え続けるのは、英語が「普遍語」つまり(Universal language)となってしまった現代から未来についてである。彼女は「普遍語」とは「書き言葉」のことだと喝破している。 |
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そして「話し言葉」は日本語として残っても、「叡智(エイチ)を求める人々」による |
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どんな言葉で話していようと、地球に住むすべての人が一つの<書き言葉>で読み書きすれば、人類の叡智は、もっとも効率よく蓄積されるはずだからである』彼女の「<書き言葉>による人類の叡智の蓄積」は、英語圏ネット空間において、恐ろしいスピードで進行している。 |
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(だからネットはけしからん}と言いたくもなる「知的に幼い日本語圏ネット空間」)と比べ、知の圧倒的充実が進む英語圏ネット空間の在りようは、私たち日本人にとっての厳しい現実である。木村論考は、特にこれからの日本の若い世代が、母語である日本語と(普遍語)たる英語といかにつきあっていくべきかを考えるうえで必読であると思う。 |
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(国という単位)で世界を眺めるオリンピック観戦の興奮が冷めやらぬうちに、(言語という単位)で世界を眺める思考を試みるといいのではでよいのでないだろうか。 |
| 平成20年11月20日 石 井 立 夫 |