山 岳 風 景
薬石效あり

 多くの友人・学友を失ったが、薬石效なしで人生の終わりを告げられたケースは多い。
戦争に参加して失った友人もかなり多いが、老境に達すると、薬石效なくの方の知らせが多い。寂しい話だ。

 さて、何故このようなエッセーを書く気になったかと言うと、日本の医療制度について色々な不満を言う人がいる。例えば介護の不足を訴える人、費用の点が問題とか、介護の現状を見ていると、人手不足、設備の不足、確かに目に付く難点はあるが、かなり真剣に介護に努力している多くの人の姿は誠に真摯な姿で働いている。損得の問題ではない。

 現在の私事を申し上げると、薬石に頼るケースはまさに人並み以上なのだ。しかも夫婦揃って世話になっている現状では、薬石に依存している量が他人と比べてかなり多いと思っている。別に他人と比べる必要もないのだが・・・・・

 私が文句を言ったのではなく、一回の飲み薬を減らすのに苦労しているのだと医者から言われたことがある。薬石效ありの実情はこのような状態なのだ。タバコは20年前に止めたが、その結果喘息の症状は残っている。血圧を抑える薬も人様なりに貰っている。尿の検査の結果、人様以上のPSAが多いのが、最近やっと下がってきたので、通院する期間がいささか延びただけのことで、薬石の効は十分ある。

 尿の検査で本人は余り気にしなかったが、三回の手術を受けた。どうやら後で聞いたら、前立腺癌の疑いだったようだ。担当の先生が何気なく言われたが、三回の手術の後で本人はケロっとしているのだから、私は、これらは自分に与えられた運命だと最近は思うようになった。最も親しい友人の例を挙げると、老人ホームに4年に入っている友人がいる。

 意識がハッキリあれば、話し相手にもなるが、脳挫傷でただ寝ているだけだ。しかし身体は健康なのだろう、食欲は普通人並みにあるようだ。しかし本能で食べているだけの様だ。奥さんに時々、その後の模様を聞くが、状態には変化はないが、病状は変わらずだと言われる。つい昔を思い出し、しっかりせい?と言いたくもなるが、それも現在は無理なようだ。

 話し相手が少ないと言うことは、現実にはつらいことは十分承知しながら、寂しい話だ。
しかし、これも贅沢な選択かもしれない。電話時代だから、自分の外出行動は制限されるが十分お互いの事情は確かめられる。

 中には焼酎を飲みながら生きている豪のものもいる。嘆かわしい心境だが、自分に耐えてゆく訓練は過去の人生で、経験しているから、これで残りの人生を過ごしてゆくしかないのだろう。己ぬる哉・・・・・・。

紫  陽  花 薔    薇

  雑誌「諸君」の最終版に残されたメッセージがあった。故山本夏彦氏のことだ。元産経新聞論説委員、現在はコラムニスト石井英夫氏からの引用)「私はもういつ死んでもいいのである。それは覚悟なんてものではない。その日まで私のすることといえば、死ぬまでのひまつぶしである。(ダメの人)」

  平成21年6月18日               石 井 立 夫