舞 踏 会 の 手 帖

戦前の映画の思い出

 戦前の映画で思い出すのは多々あるが、特に思い出深いのは(舞踏会の手帖)と言う映画だった。この映画の粗筋は次の通りであった。36歳にして未亡人になってしまったクリスチーネ(マリー・ベル)は、身辺を整理していた際、20年前の日記を発見する。

 亡き夫からは他の男性との交流をまったく許されていなかった彼女は、もう一度人生をやり直す糸口として、18歳で初めて舞踏会に出たときに出会い、彼女に愛をささやいた男たちを訪ねる旅に出る…。名匠ジュリアン・デュヴィヴィエ監督が、遠き過去へと思いを馳せる女性のノスタルジックな思いをモノクロならではのめくるめく映像美で描いた秀作。

 過去のロマンティシズムと現実のリアリズムの対比も素晴らしい。『外人部隊』で知られるマリー・ベルの美しさ。
彼女が遭遇する大小さまざまなエピソードにはピエール・ブランシャール、フランソワ・ロゼー、ルイ・ジューヴェなど名優がずらりそろえられている。
ヴェネチア国際映画祭最優秀外国映画賞受賞。
(的田也寸志
)自分の過ぎし日の思い出を書
きたいと思ったのだ。
91歳になるものが過ぎし日の思い出を語ろうと言うのであるから、全部を語れるものではない。
戦前は中学生は映画を見ることは許されず、学校の先生が引率する場合のみ許可されていたのだ。
しかしどうしても見たい映画がある場合は当然隠れるようにして観たものである。

 当時の制服は半ズボン姿であり、無理をして長ズボンをわざわざ購入して観に行ったものである。当時は上海日本商業学校の生徒で、半ズボンが制服であった。先生に見つかれば大変な事になったのだが、まさか上海市全部の映画館を見て回ることは出来ないので、この隙間を見て映画観賞をしたものである。

クリスチーネ(マリー・ベル)

 当時はこの様なしぐさをするものは不良少年と言われたものだが、隠れて観に行くのがスリルがあってよかったのである。
現在の環境から観ると信じられない姿だったのである。

 しかし残念ながら映画の画面の下に何らのタイトルが書いてないので、他の観る人は英語が理解出来る人だからその点ではかなりのハンデイーがあった。
しかしそれでも隠れて観に行くスリルは十分あったのである。

 さて(舞踏会の手帖)と言う名の映画は当時としての評判はかなりのものであったので、余計に隠れて観たいと思うのは当然のことだった。
これが若い時代のせいぜいの思い出の手帖だったのである。

      平成23年6月16日             石井 立夫