バイオエタノール

 先に「幸運な文明」という題名のエッセーを書いた。この論文は日本農業の将来を語ったもので、世界中で日本ほど恵まれた国はないと言うものだった。
資源には限度があり、知恵を働かしたら、日本ほど恵まれた国はないとの論文だった。

 しかし現実の問題として、地球温暖化という現象が、この地球上に被害をもたらしているアメリカと中国の両大国が、温暖化に関して京都議定書の協力のメンバーとして、批准していない、この二ケ国が事実上、温暖化の悪影響力を与えているのは世界で認めている事実だ

 中国の場合は、平成19年5月22日の新聞報道の、評論家の松本健一氏の論文によれば、「中国の砂漠化と環境汚染の深刻さ」の中で国土資源省の発表で、3067平方キロの減少になった。

 しかし内モンゴル自治区などの草原などを遊牧禁止にし、農耕地に転換したものである。この草原は表土が10センチ程度しかない。その下は砂漠である。それゆえ、表土を耕すと、2〜3年で砂漠化する。この砂漠が近年、日本や韓国への黄砂の大量飛来の原因になっている7年前からはるか南方の上海でも確認されるようになった。

健康被害起こす重度汚染
 冬は乾燥が厳しいはずなのに、一週間連続で霧が続いた。これは霧というよりも、工場や自動車排出ガスがスモッグになり、その霧はやや灰色の色をおびており、冬の間地上に積もった40〜50センチの雪は真っ黒になっている。

 また固体産業廃棄物の累積量は80億トン、これによる有害物質の侵食土地は、14万ヘクタールに達しているらしい。片や、飲料水に苦しむ3億人民もおり、水質も問題になっているらしい。

 オリンピックが開かれる北京でも、綺麗な飲み水が間に合うかどうか、心配されている。「南水北調」という国家プロジェクトがあるが、近年の工業化、人口都市集中により汚染問題がある。西・北部の砂漠化と、東・南部の水質悪化や環境汚染など、中国政府のプロジェクトも大変な様子である。其の被害の影響が、日本にも流れてくると言う問題になっている

カーギル社 カーギル社

 アメリカは自動車で二酸化炭素をまき散らしており、地球の温暖化に影響を及ぼしていると非難の声が上がり、ブッシュ大統領が真剣に世界に与えている現実問題を認め、バイオエタノール問題を提起しはじめ、例えば現在は玉蜀黍、大豆、小麦などの穀物から、エタノールの製造が始っているが、これにも限界があり、雑草に近いスイッチグラスなどの使用も検討するよう一般農家などに奨めている。

 アメリカが本格的に検討を始めたのは、環境問題には結構なことだが、日本にとっては別の大きな問題に影響をもたらすことが新たな問題として、浮かびあがってきたのである。
平成19年5月9日の新聞報道によれば、キューピーがマヨネーズの値上げを発表し、植物油の日清製油も値上げを発表した。当然其の他の肉類、鶏卵、肉類加工品も値上げが予想されている。テイシュペーパーも値上げが発表された。

 これは現在アメリカの玉蜀黍、大豆、菜種油などが、急速にバイオエタノールの製造に回され始め、特に玉蜀黍は遺伝子組み換え種子を利用し増産を目指し、一般の生産者は家畜飼料用ではなく、バイオエタノール製造工場への出荷に切り替えたのが原因である。

 エタノールはセルローズに含まれる糖を発酵させて生成されている。従来のガソリンが排出した混合物が、有害なガスを減らす効果があり、ブッシュ大統領も認めたため、連邦政府の助成金のお蔭で、(通称コーンベルト地帯)の農家は一斉に実入りの良いビジネスになり始めたからだ。

 エネルギー-問題のシンクタンクであるロッキー・マウンテン研究所によると、原油1バーレル当たり25ドル(現在の輸入価格の約半分)に相当するコストで、商業的に利用可能な量のエタノールをバイオマスから製造できるという。

 コンサルタントのダッタ氏には「石油の終焉に打ち勝つ」(Winning the Oil Endgame)
という著書がある。栽培する作物を玉蜀黍からスイッチグラス(ロッキー山脈東部のいたるところに生えている多年性植物)に移行すれば、農場経営者は、1エーカー当たりの利益現在の約350ドルから400〜600ドルに増やせると指摘している。

 バイオマスからエタノールを製造する技術が更に商業化すれば、国際政治にお影響を及ぼすとダッタ氏は話している。一日に240万バレルのエタノールを製造すれば、「年に400億ドルの富が中東から米国の農場経営者に移るという」

農場の風景 農場の風景

温暖化+食糧危機解決へ
「人類は穀物を燃料に使うか、食糧に使うかを争う時代に入った」世界の食糧問題の第一人者である米環境シンクタンク「アースポリシー研究所」所長、レスターブラウン氏は、「地球温暖化対策としても世界の穀物市場を牽引する米国のバイオ燃料導入は、玉蜀黍の価格高騰だけではなく他の食糧にも波及し、貧困層の食糧を奪ってしまう。

 燃料対食糧の争いの最大の問題点は国連のような仲介者がいないことだ。猶予期間が必要だ」と指摘した。バイオエターノールを製造する商用プラントは約200ケ所に及ぶが、茎や雑草などを使う植物繊維系の商用プラントは、6ケ所が計画中に過ぎないという。

 植物繊維系のバイオ燃料の生産コストは今のところ高くつくが、遺伝子組変え技術で低く抑える試みについて言及。「地球温暖化と食糧危機を解決するため、環境負荷を考慮にいれた“革命“が必要だと訴えている。

 植物繊維系のバイオ燃料の生産コストは今のところ高くつくが、遺伝子組変え技術で低く抑える試みについて言及。「地球温暖化と食糧危機を解決するため、環境負荷を考慮にいれた“革命“が必要だと訴えている。

カーギル社の動きは?
 カーギル社(Cargill)とは、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス市に本社を置く穀物メジャーの一つである。カーギル社の企業形態は、株式の全てをカーギル家とマクミラン家の関係者が所有する個人企業であり、非上場企業としては、世界最大の売り上げを誇る。

 20世紀に資産が6000倍になる大成長をしている。アメリカ穀物政策と政策を担う国策企業とも言える。日本のテレビにも、戦後、日本が魚から肉に食事を変化させて穀物消費(飼料用食物需要)を大きくさせようとしたことが取り上げられた。また世界各地の情報を得るために独自の衛星を持つことで知られている。

 さて、この大企業が、現状のエタノール使用のため、玉蜀黍などの穀物の動きに、どう対処して行くのか、現状を知ることは出来ないが、今後の穀物だけをとっても、世界を相手に輸出の問題がどうなって行くのか、おそらくエタノール製造にだけに集中して、取引を絞ることは考え難いし、ブローカーのような取引はしないだろうと思えるのだが、如何なものか、この社の動きは注目されるであろう。

玉蜀黍農場 玉蜀黍農場

日本農業の需給率は40%
 アメリカは自国のエタノール製造に力を注ぎ、石油からエタノールへの切り替えにした場合、自国の二酸化炭素の悪影響は減少することになるだろうが、他国への配慮までしてくれる保証はない。

今後の日本の畜産界、製油業界に与える影響は大きいのは憂慮すべき状態であることは間違いないが、極端な考えは、カーギル社の出方に注目し、依存するしかないのか、誠に情けない状態になるかも知れないのだ。日本の農業の実態から、この方法が案外正当な依存症スタイルになるかも知れないのだ。今後の状態を注目する以外にないだろう。

                          石 井 立 夫