同行二人の旅

 空海の史跡を尋ねて・・四国遍路ひとり歩き同行二人・・・へんろみち保存協力会編を参考書として読んだ。事前の準備は大変なもので、それを丹念に読み、準備を整えて、退職後実行した知人の体験談を拝聴した。

 人口、三万人になんなんとする町役場の部長職を経て、最後は教育長の職で退職した知人は、三十九年の間、無事勤め上げ、健康保持できた感謝の念と、趣味として歩くことで、自分の健康を維持してきたこと、次の人生をいかに有効に且つ健康を維持しながら過ごすことが出来るか、これらの条件を自然にクリヤーして、四国遍路ひとり歩きを実行した。
年齢は六十三歳、大変な決断だと改めて認識をした。

 何事も計画するには、まず慎重な準備と経過が必要であることは十分に理解しているが、この知人は事前に前述の参考書を購入し、同時に心構えを十分に練り、一人旅をするためには、まず健脚を鍛えなおし、町の山に登ったりして、まず足を鍛える準備を十分にした。
その準備の模様を聞いて、当然の認識であるが、私の人生の過去の失敗は,準備不足だったと今更後悔した。

 人生は失敗と後悔との過去をもちながら、何とか生きてゆくものだと思っているが、幸い私も現在は何とか健康を維持出来ており(人並みに薬で多少は補っておるが)この調子を何とか維持したいと、それなりの健康方法をやっている。

 さて、私も七十歳で多少の体力が残っていた当時、軍隊時代の友人と、四国の遍路めぐりをやってみようではないかと、話し合ったことがあった。ところが、このような慎重な計画を研究したかと言うと、恥ずかしながら,全くの計画を立てることもなく、四国に渡り、そこから、巡りを始めようという、まことに計画性を持たないものだった。

 今思えば軍隊が崩壊した原因と同様に、無茶苦茶なものだった。現在友人はアルツハイマーになり、老人病院に入っているが、人生の縮図を描いた過去の話になってしまった。
空海と同行二人が本当の意味だが、まず、この精神があればこそ、実現する話なのだ。
1000`、53日間、心の旅を始める精神が最低求められるのだ。

(証) 結 願 納 札 入 箱 弟一番(霊山寺)

 知人の計画は三月と六月の二回を選び、三月には、28日を要し、六月には残りのコースを11日間で巡り、計39日間で巡ったそうだ。その健脚ぶりは見事なものだ。その経験談が大変興味があり、その内容が大変面白かったので、この題名を付けた。

 準備の内容から紹介してみたい。まず遍路道保存協会(解説編)、四国八十八ケ所を歩く(山と渓谷社)四国遍路ひとり歩き同行二人(地図編)の三冊を事前に十分に研究することが必要だと思う。特に解説編から読み始め、携帯品目、宿泊のための予約、予算の組み立て、服装、札所案内、内容は実に詳しく書かれている。

 地図編は出発からコースの案内まで、実に丁寧に書かれており、例えば徳島県の一番、霊山寺から二番の極楽寺までの距離、合計二十三番,薬王寺までの距離約220。5`が書いてある。二番目の高知県の16ケ所の距離、三番の愛媛県26札所、距離、最後の香川県{涅槃の道場}23札所の距離などなど実に丁寧に記載されている。
基本コース(最短コース)の距離が示されている。

 解説編には前書きとして、物質文明繁栄のかげに、先人たちが踏みかためてきた貴重な文化資産である「遍路道」が、荒廃し、消滅しかかっている事情の説明から、遍路は四国の地全体を霊場としてとらえ、八十八札所を通過開門として参拝しながら「道中修行」することに意義があると書かれている。

  巡拝したい人は、徒歩道路や行動情報をほしがっているために、途中の道程、体験者等の情報も盛り込んで、歩く道路にとって何が必要であるか、自問自答しながら作成されている寝ること、食べること、排せつの三つで、この三要素が、歩く遍路の立場から現地調査をし必要情報が収集されている。

案 内 標 識 四十三番(明石寺)

 番外霊場や弘法大師ゆかりの地に多くの遍路先人達が足を運んでいることが判った。
番外霊場自体も衰退、風化、埋没の危殆に瀕していることもわかった。このまま看過しては貴重な民族文化資産が喪失して恐れもあり、後世へ伝承できると考え、実行、全霊場網羅の「へんろ地図」が作成された。

 弟一、遍路実行の時機、遍路所要日数、遍路の仕方、費用・予算、巡拝プランの立て方、宿泊先の選別、へんろ用品と取り扱い上の留意点。金剛杖、百衣、白装束、菅笠、経本、輪架姿、数珠、納経帳、札挟、頭陀袋、手甲、脚絆、線香、ローソク、持鈴、納経掛軸、靴、靴下、靴の中敷、雨具、肌着、ザック、ウエストバック、懐中電気、ドライアー、水筒とコップ、コンパス、Lテープ、非常バッグ、携帯蚊鳥取線香、鎌、防寒用具、

 第二、現金の携帯、宿泊先の予約、霊場での作法、読経の順序、合掌の仕方、遍路の心得十善戒、遍路のマナー戒め、遍路道の歩き方ノウハウ、野宿について、野宿に必要な装備、托鉢の心構え、托鉢口上、托鉢のいましめ・・・・・実に多くの準備が必要であるか、改めて知ったのである。

 その他自動車で巡る人、観光車で巡る人、オートバイで単独でテントを張りながら巡る人実に多くのスタイルがあるらしい。残念ながら、ゴミを残して巡る人、それらのゴミを片付ける人、現在の都会姿が見られることがある。

 遍路めぐりの際は、各お寺に着いてから、二百六十二字の般若心経を読経し、線香、ローソクを立て、納教書300円を納め、次のコースへ移る。巡り終わって、金剛杖は約10a減っていたという。

 この難行苦行に耐え、多くの遍路道をひたすら歩き、自己の過ぎし日を振り返る人々の姿を見えることは、現在の日本の悩める姿から見ると、まだまだ救いを感じることが出来る。
何事も準備が必要であることは、四国遍路八十八カ所を実行した私の知人の心の準備と実際の双方の心構えを知って、尊敬の念を持ったのである。
これは個人としての大偉業と思いたい。

平成19年12月13日            石 井 立 夫