人間性心理学                             アブラハム・マズロー  (1908〜1970)

「人間性心理学      A・マズロー(1908〜1970)」


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 <History>


 マズローの人生は、アメリカンドリームを絵に書いたようなサクセスストーリーです。そして、その彼の人生は、彼の考え、そして彼が創った「人間性心理学」に強く反映されていると言えるでしょう。
 1908年 マズローは、ロシア系ユダヤ人移民の両親の7人の子どもの長男として、ニューヨークブルックリン郊外のスラムに生まれました。幼少時代、彼以外のユダヤ人家庭が他に一軒もなく、反ユダヤ感情の強い地域であったため、ほとんど友達できず、「ひじょうに孤独で不幸」な境遇でした。
 普通なら、そこでぐれて非行に走ったりするのですが、彼は違いました。友達がいないことを悲しむより、図書館などで多くの優れた偉人の本を読みあさり、なお貧しい家系を助けるために、新聞配達をしたり、夏休みは家族の経営する樽造りの会社で働いたりする勤勉な少年だったのです。
 このポジティブな性格は、彼本来のものなのかもしれません。
 やがて、彼は、ウィスコンシン大学でワトソン心理学に出会い、ある考えにとても衝撃を受けました。それは、「科学主義的方法ではなく、人間は科学的に改善しうる」という発想でした。こうして、マズローは、心理学を自分のライフワークとすることに決めて、最初は行動心理学者としてスタートしました。



 <行動主義心理学>


 フロイトらの精神分析心理学が、アメリカ心理学界の第一勢力とすると、第二勢力にあたるのが、 行動主義心理学になります。
 行動主義心理学は、1910年代にJ・B・ワトソンが提唱した心理学です。その後、B・F・スキナーによってさらなる発展を見、アメリカ心理学の主流となっています。
 行動主義心理学は、科学としての心理学は対象を客観的な行動に限定すべきだとし、人間を生物機械的にとらえ、おもに「刺激−反応」のパターンで理解しようとするものです。この考え方によれば、人間の行動は基本的に、すべて無意識の行動となります。フロイトが意識と無意識を分けたのに対して、行動主義では意識の存在すら認めないことになります。
 最初、マズローは行動心理学者としてスタートしましたが、もともと「人間の改善」に関心があったマズローは、自分の赤ちゃんが成長していく姿をながめていくうちに、「刺激−反応」や「連合学習」などの概念では、その生命の姿を捉えきれない、と実感するようになりました。マズロー自身、次のように言っています。「私は、この可愛らしくて不思議な生きものをよくみると、(行動主義的なアプローチが)とてもバカらしく思えてきました。・・・・・誰でも赤ん坊をもったら行動主義者にはなりようがありません」
 こうして、マズローは行動主義心理学から離れていくことになりました。



 <至高体験(peak experience)と積極的心理学>


 マズローは、人間のある体験に着目しました。それは、日常生活していて、とてもいい気持ちになる経験、とても言葉ではいえなハッピーな経験やとても不思議で神秘的な経験などです。
 この経験をマズローは「至高体験」と呼びました。
 そして、その意味を考察しはじめたのです。彼は、今までの精神分析や行動主義が病理的な面ばかり注目することに疑問を持ち、人間のこの「至高体験」を起こした時の心の様子を探求することにも意義があるのではないかと考え、もっと人間の可能性、創造性、成長、価値、自己実現など、人間の全体性、好ましく、高次な側面に焦点を当てた明るい心理学をめざしました。この心理学をマズローは自ら「積極的心理学」と呼びました。マズローは、心理学で人間性の希望に満ちた可能性を問いました。マズローは、心理的に健康な人間に注目したのです。
 こうして、この明るい考え方は、「人間性心理学」として、60〜70年代のアメリカの若者を捉えました。



 <マズローの欲求の階層論>


 フロイトなどの精神分析が、人間の(性的な)欲求をネガティブに捉えていたのに対して、マズローは、人間の衝動・動機・欲求それ自体は、決して悪いものではなく、中性的あるいは良いものである。
 そして、それら基本的な諸欲求は並列的ではなく、階層的に存在していると考えました。最下層にあるのが、「生理的欲求」であり、その欲求が満たされれば、次の欲求が起こってくるというものです。
 そして、その基本的な諸欲求を適度に満たすことが出来れば、人間はますます成長し、心理的に健康になっていくと考えました。以下が6つの基本的欲求です。
  1. 「生理的欲求」・・・・・空気・水・食物・庇護・睡眠・性
  2. 「安全への欲求」・・・・安全・安定・依存・保護・秩序への欲求
  3. 「所属と愛の欲求」・・・愛されること、家族の中に居場所があり自分が愛されること
  4. 「承認欲求」・・・・・・自尊心・尊敬されることへの欲求
  5. 「自己実現」・・・・・・自分がなりたいのもへの欲求
  6. 「自己超越」・・・・・・今までの、あるいは現状の自分自身を超えたいという欲求
 このように、マズローは「自己実現欲求」でさえも人間最高の欲求ではなく、さらに<自己超越> 欲求を最終目標としました。この<自己超越>を求めるところと人間自らが、自己の欲求を満たしてより完成されたものになろうと現実的にアプローチしている明るい積極性が、トランスパーソナル心理学の流れに結びついているように思います。私自身、マズローの人間性心理学にはとても共感を覚えました(^_^。



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