脳脊髄液減少症という病
第4章 2.体が楽になった食べ物
このころは、麻子はただ自分が欲するものを摂取しようしていた。
食べ物によっては、楽になるような感じがあったからである。
麻子は、自分が楽と思えるならなんでも食べてみた。
寝起きの脱水時に水分も、頭痛にはやはり良い。みそ汁も良い。
(そういえば、2日酔いでみそ汁ってのが美味しかったりするっていうよね)
酒を飲み過ぎたときに脱水気味になることと関係するのだろうか。
適当に作っていると、味が濃かったり薄かったりする。
どうやらみそ汁は薄目の方が良いようだ。
薄味の方が頭にじーんと来る感覚がよく分かった。
なぜか薄味がいい。
病院食のみそ汁もそういえば薄かった。
レトルト一袋では濃すぎるようだ。
わざと半袋で作るようにした。
その方が良く効く。一袋で2回分。
みみっちいがお得でもある。
おまけに、その方が体も楽である。
みそが効くなら味噌ラーメンはどうだろう、と麻子は試してみた。
やはり味噌ラーメンもいい。
他のたれよりも味噌味の方がなんだか頭痛に良い。
以前は醤油派だったが、治療後薄めの味噌派に転向してしまった。
とんこつ味やしょうゆ味より味噌、薄目の味噌、それが頭にじーんとくる。
買い置きできる物で、麻子はやり過ごしていた。
麻子は入院前と比べて、身体が欲する食品が少し違う気がした。
入院前は疲れがひどく、甘いものを欲しがり、
そして、臭いのない乾物っぽいものを食べていた。
しかし、今はなぜか塩気が愛おしい。
入院前より退院後の方が処置の箇所が痛く、
麻子は自宅内でもあまり歩けなくなった。
治療後の痛みのために、以前より外出もできなくなっていた。
治療前は気力で無理して数十分は動けたのだが、
治療前より治療後の方が身体を動かせない。
(炎症反応が過ぎるのを待つしかないのか)
ブラッドパッチを初めて経験し、どのように経過を辿るのか予想できなかった。
(仕方ない)
麻子はそうわざと自分に言い聞かせた。
しばらくはこの体調と付き合うしかなかった。
それで漏れが止まるならば。
第4章 3. 自宅静養
初めてのブラッドパッチの後、かちかち山の背中を抱え、
麻子は自分の体がどうなっていくのか不安だった。
ブラッドパッチ後の麻子の体調は、V字型の経過を辿った。
最初、体調はどんどん下降していく。
退院後、入院前よりもっと不自由な生活が始まった。
麻子は歩くことすら痛かった。
麻子は、入院中治療後、
一時体調がむしろ悪化することもあるとは主治医から何度も聞いていた。
しかし、「一時」とはどれくらいだろう?と麻子は思った。
治療したのだから、痛みやいろんな症状がでてもだんだんましになってくる、
と麻子は治療前には思っていた。
ところが実際はそうでなかった。
むしろだんだん悪くなっていくのだ。
いろんな症状が治療前にもともとあった。
治療後は、その上に他の症状が加わり、体調が日に日に悪くなっていく。
めまい、貧血、動悸。
少しずつ軽減していくというよりも、少しずつだが症状が強くなっていく。
いったいこの症状の進行の底は何処にあるのだろう。
反転して軽減していく日はいつ来るだろう。
麻子はそんな不安を感じていた。
初めての経験で、先が読めない。
麻子の体調は、ある時点で底を打った。
3ヶ月目に入る頃、どんどん悪化していく体調が底をうち、
悪化が止まったのを麻子は感じた。
それから痛みが少しずつ引いていく。
しかし、そこから一気に回復していくわけでもなかった。
数ヶ月単位で、体調は、ゆっくりと階段式に変化し、
時には下降し、時には改善した。
振り返れば、様々な症状がいくらか改善されていた。
退院後の生活は、そんな感じだった。
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脳脊髄液減少症という病