脳脊髄液減少症という病
第1章 病名と出会う
1. 病名との出会い
麻子は数年前に交通事故に遭った。
それ以来なかなか症状が治らず、難治療のむち打ち症と言われ、苦しんできた。
いっこうに治らないむち打ち症を、
他人からはなかなか理解されないことも苦しみだった。
麻子はあちこちの病院にかかったが、
難治療のむち打ちがあるとだけ説明され、理由は分からなかった。
(なぜ治らないむち打ちがあるのか)
どの医者も説明できず、ただそういう患者がいると麻子に説明した。
加害者側からは心因的原因だと言われた。
しかし、麻子の症状は気の持ちようで軽減するようなものではなかった。
もしかして気のせいと自分に対して千回唱えても、激痛が自分にやって来た。
(心因性であれば、それに対してどんな薬でも治療でもしようではないか。
それでこの苦しみから救われるならば)
しかし、どんな薬も効果がない。
心因性ではない、何かがある。
自分に何がいったい起こっているのだろう、と麻子は悩み続けた。
(なぜだ?なぜ良くならない?何が原因なの?)
しかし症状は治ることはなかった。
そのとき一つの病名に巡り会った。
脳脊髄液減少症という病。
この病名との出会いは、偶然のものだった。
ある時、麻子は久しぶりにテレビを付けた。
事故以来、画面がまぶしくて、音がうるさくて、TVを見ることが辛くなった。
ほとんどTVも見ない生活が続いた。
その日の麻子は、ふと気が向いてTVのリモコンに手を伸ばしてボタンを押した。
TNはなにか分からない病気の患者を映していた。
(頭が痛い)
麻子は、ぼうっとしたままTVを眺めていた。
(脳の病気の話か、私には関係ない・・・)
TVを消そうとした瞬間、リモコンを持った麻子の手が止まった。
(え?!むち打ち症患者?)
なにかの病気の症状を説明していた。
音量をあげ、TVにかじりついた。
「自分の症状にそっくりだ!」
麻子はTVに向かって思わず叫んでいた。
天候の悪化で体調が悪化する、
横になると楽になる、
水分を多く取ると楽になる・・・、
交通事故以来症状に苦しむ患者の姿が映っていた。
まるで自分のようだ。
TVは引き続き解説していた。
治療法は、ブラッドパッチを行う。
それは、脊髄液が漏れている場所のあたりに、
脊髄の硬膜外腔へ、患者から採取した血を入れるという治療である。
TVを見終わった麻子は呆然としていた。、
そういえばネットで、生理食塩水を注入するとむち打ちの症状が軽減する、
という医師のサイトを、以前に見たことがある。
生食とむち打ち?・・ネット上のデマか?と、読み流してしまっていた。
一時でも生理食塩水を注入させると、漏れて減っている脊髄液を増加させ、
脳の下垂を軽減させる効果がある。
(こうやって理論を聞くと、あまりに自分と一致する・・・)
麻子はもう一度調べ直した。
生理食塩水の注入は、それで回復する人もいるというが、
一時軽減の場合が多いらしい。
「漏れている箇所を止めなければ脊髄液は漏れ続ける・・・」
キーボードから手を離し、麻子はそう呟いた。
脳脊髄液減少症という病