第5章 5. 再ブラッドパッチ
翌日、麻子は午後からブラッドパッチに呼ばれた。
「今回は歩けますけれど」と麻子は言ったが、
「どうせ帰りは寝て戻ってくるので、そのままベッドに乗っていてください」
と麻子はベッドに座ったまま、治療室まで運ばれた。
医師が来るのが遅れていた。
全員が揃うまでしばらく待機する。
今回は周りを見る時間と余裕が麻子にはあった。
側にいる看護婦の身体は、まるでアンドロイドだ。
「重くないですか?」と麻子がたずねると、
「重い以上に、これ暑いのよ、けっこう」と看護師は笑った。
「とりあえず寝て待っていましょうね」看護師は麻子に布をかけた。
今回は待機時間があるためか、顔までは布をかけられていない。
周りが見える。
大きな画面があった。
そちらを見れば麻子自身も治療状況を見ることができる。
自分の身体に針が刺さって血が入っていくのを見たくはない、と麻子は思った。
アンドロイド2号の先生がやって来た。
今回は漏れている場所が限られているため、そこへ自己血を入れる。
うつぶせになるように指示された。
布がかけ直される。
もう一人の医師が到着した。
消毒され始める。
うつぶせになり腹の下には枕。
透視するために造影剤を混入する。
懐かしいあの痛みと感触。
やはり入った瞬間に独特のうっとする圧迫感がある。
気持ちが悪い。
腕にイソジンが塗られる。
自己血採取。
今回も、問題なく採取された。
一度に注入されず、何度かに分けられた。
今回は入れられると痛い。
「先生、痛いぃ」
「もうちょっとで血が届くから」
放散痛がある。痛い。
漏れている箇所にようやく自己血が届いたようだ。
今回は顔に布がかかっていなかった。
しかし、麻子は自己血が入っているところは見たくない、と思っていた。
顔を上げないで、麻子はひたすら下を向いていた。
「ほら血が入った」
医師の言葉につられて、麻子は思わず顔を上げ、その画面を見てしまった。
(前よりも体調が良くなっているので、人の声にすぐに反応できてしまう)
麻子はおもわず条件反射してしまった。
(うわ、見てしまった)
麻子は画面から目を背けることができなかった。
岡林医師はそんな麻子の様子に気がついたようだった。
画面を指指し、麻子に説明を始めた。
(見たくないと思っていたのに、見入ってる・・・)
映っているのは自分の身体の一部。
そんなに気持ちが悪い画像ではなかった。
麻子は、妙なものを思い出していた。
子持ちシャコの腹のところである。
別に似ているわけではない。
一瞬思い出しただけである。
うつぶせ安静の後、今回確実に血液が届いたかどうか確認するためにCT室へ移動した。
麻子にとって、今回がおそらく最後のブラッドパッチになるだろう。
CT室で麻子はベッドの移動を指示された。
が、身体が動かない。
「痛い!」麻子は叫んだ。
医療スタッフ総掛かりで、麻子は台まで移動した。
「動かないで下さいね」と技師が話す。
(動けと言っても動けないー)
「終わりました。楽にして良いですよ。ベッドに移動しますか?」
技師が戻ってきて、麻子に声をかけた。
「う・・・動けない」
検査は終了したが、麻子はそのままCT台で固まっていた。
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脳脊髄液減少症という病