脳脊髄液減少症という病
第5章 10.最終検査
翌日麻子はMRミエロを撮ることになった。
今回は動いているときに漏れていたので、検査室まで動いてから撮らなければ行けない。
薬が効いていると楽になる。
しかし、検査時間が鎮痛剤の服用直後だった。
(まだ薬が充分に走っていない・・・。動くとかなり痛い)
麻子は起き上がって、薬がまだ効き始めであることを感じた。
病院内は広すぎる。
わざと自力歩行で検査室へ歩いていく。
健康なら何でもない距離がなんと長いのだろう。
途中ですれ違う看護師が見かけてくれるたびに車椅子を勧めてくれたが、
歩かなければいけないので辞退した。
検査室のフロアで限界が来て、廊下に倒れ込みそうになった。
(この床に倒れてしまったら検査にならない。動かなければ)
もしあのまま薬も決まらずにいたら、
自分は「下界」に出たとたん絶対地面に倒れている、と麻子は思った。
検査室にようやくたどり着いた。
一人の技師が車いすを用意しようとした。
しかし、もう一人の技師がそれを止めた。
連絡を受けて事情を知っている検査技師が、
「帰りは車いすで楽に帰れますから台まで歩いて下さい」
と麻子に声をかける。
分かっているけど、なかなか前に進まない。
検査室は目の前なのに、なかなか辿り着けない。
検査室に到着した。
「検査をしますからじっとしてくださいね」
と技師が麻子を固定し始めた。
「最新のMRIが入っているんですね。A社のMRIって評判読んだことがあります」
と麻子がそう言うと、
「最近、A社のも性能いいんですよ。かなりきれいに撮れるし。
MRIの音がうるさいという患者さんもいるんですけれど、
うちのは結構音が静かなんですよ」
と技師が説明した。
「そう、この病院のが一番静かだと思いました。MRIっていろんな音を出すし」
と麻子が呟くと、
「どっどという音は調整している音です。その後撮影音がするでしょう?」
と技師は麻子に話した。
(あ、なるほど。それでいろんな音がするのか)
麻子は質問した。
「ということは、どっどという音がしている間は、
技師のかたが調整してくださっているんですね」
患者一人一人の脊髄のカーブが違うと技師が麻子に話すので、
「整体でそう教えてもらったことがあります」と麻子は言った。
いろいろやってきたんですね、と技師は呟きながら、麻子をMRIの中に入れた。
検査が始まる。
今調整しているんだなと思いながら麻子は、MRIの音を聞いていた。
撮る機会が今後あるかどうか分からない。
もしまだ漏れていて、加療が必要だったらどうなるのだろう。
いや、これ以上加療が出来るのだろうか。
検査が終わった。
看護師が車いすを持って迎えに来ていた。
「ありがとうございました」
麻子は検査室を後にした。
検査の結果は問題がなく、麻子の退院が決まった。
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脳脊髄液減少症という病