脳脊髄液減少症という病
第6章 回復への試み
1. 減薬と断薬
帰宅した麻子の荷物には薬袋があった。
麻子は薬を服用しながら、寝て過ごした。
というより、薬を飲むとくーくーと寝てしまう。
眠ることができる事は、幸せである。
今まで病で苦しんできて、熟睡出来ない苦しみがあった。
今は気絶するように寝て、ふと目が覚めかけても、うつらうつらと眠りに入っていく。
まるで、事故後何年も苦しんできて、
満足に寝ることもできなかった睡眠不足の日々を取り戻すかのように、
麻子は寝て過ごした。
麻子は、退院後ぐっすりと眠れるようになった自分に気づいていた。
自分の眠りが深くなったことを感じていた。
(ああ身体が確実に変わっていく)
寝て起きて少し用事、そして食事を作って寝る。
時々起きて水分を飲む。
天候が悪いと自律神経が狂うのか余計に眠気が来る。ひたすらひたすら眠る。
治療後安静期間をとるためというより、時間があるときは眠っていた。
毎日眠り続けて過ごした。
寝てばかりの生活で気が付けば、退院から2週間経っていた。
鎮痛剤が切れると痛い。一気に痛みが襲ってくる。
まだ鎮痛剤は外せない。
この頃から通院日は間が空いた。
通院を繰り返すたびに、麻子は減薬と断薬をどうするのか、考えていた。
主治医と相談して減薬を始めた。
減薬をして辛いときは薬の量を元に戻した。
やがて、薬の量は減っていった。
しかし問題は断薬である。
麻子は、薬を止めた時にでる痛みを最初病状の痛みだと思った。
そのため痛みが現れたときは、断薬を中止した。
しかしある時期から、この痛みは体の痛みと違うかもしれないと麻子は思い始める。
理由は分からない。
が、現れてくるこの痛みの先には何があるんだろう、と麻子は思った。
再度断薬を行う。
やはり痛みが立ち上がってくる。
(再度ナプメトンを服用するか?)
麻子は考えながら、薬箱を開けた。
取り出したのはナプメトンではなくエチゾラ ムだった。
麻子は過去にデパスを頓服使用したことがある。
わざと睡眠を取るためと首や肩が楽になる感じがあったからだ。
抗うつ剤や抗不安薬には鎮痛作用があったりする。
エチゾラ ムにも副作用はある。
エチゾラ ムは、筋緊張溶解作用があり肩こりによく効く。
調べたところによると、頸椎症・腰椎症・筋収縮性頭痛には神経症の処方の半分、
1日3回合計1.5mg。
半減期は長くない。
麻子は鎮痛補助剤としてエチゾラ ムを使う事にした。
ナプメトンが切れると痛みが辛い。
エチゾラ ムを飲むと麻子は眠気に襲われた。
(わざと寝てしまう)
痛みがあるので、うつらうつら。
(2〜3日経っても痛い場合は、そのとき考えよう)
麻子はできるだけ眠るようにした。
丸1日以上経ったころ、痛みが引いていく。
薬が完全に抜ける頃、痛みは消えてしまった。
(まるだ反動のようだ)
腰の痛みがなくなった頃、麻子はエチゾラ ムの服用も止めた。
エチゾラ ムも断薬したときに反動が出た。
ナプメトンを断薬するときの現れた痛みは、ナイフで切れられるような痛みが走った。
エチゾラ ムは断薬すると身体が過緊張でかちかちになった。
それらの症状が過ぎると、体が楽になった。
麻子の体の痛みがなくなっていた。
ついに日常生活のなかで、鎮痛剤も鎮痛治療も常用しなくて済む日がきた。
麻子は自分の体に変化を感じた。
薬は助け手となり、また時には毒にもなる。
ブラッドパッチを受けてから、自分の体が確実に変わっていく。
やったと、麻子は喜んだが、そこで気がついた。
(あ、また、相談しないで、今度は勝手に断薬してしまった)
ま、いいか。鎮痛剤だし。
勝手に薬の服用するのはまずいけれど、
勝手にこの薬止めても患者の自分が痛みに苦しむだけだもの。
今、ここに寝ている自分は痛くない。
断薬が無事終わった。
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