脳脊髄液減少症という病


1章 5.初診

 

「宮元さん」

麻子の名前が呼ばれた。

麻子はゆっくりと起き上がり、診察室に少し緊張しながら入った。

外科系らしい感じの医師だなと、麻子は思った。

 

診察室に入って、麻子は椅子に座った。

事故後の自分の症状や経過、そしてこの病名を知ったこと、

そして、MRIで脳の縦断面を撮ってもらいたいことを話した。

医師は問診を始めた。

「まぶしいですか?こういう症状はありますか?」

麻子は一瞬驚いた。

(まぶしさが病のせいなんて・・考えたこともなかった・・・)

麻子は,自分の体調が悪いからTVがまぶしく感じるのだろうと思っていた。

症状を病と結びつけて考えたことがなかったのだ。

痛い、痛い、痛い・・・こればかりしか、麻子の頭の中に今までなかった。

いろいろな症状が出ていたにも関わらず、

あまりに痛みがひどいため、痛み以外のことを考えていなかったのだ。

「実は、痛み以外にこんな症状もあるのですが・・・」

麻子は事故後不快に感じていた症状を話し始めた。

患者は一番辛い症状から訴える。

(この辛い痛みに比べれば、まぶしさや気分の悪さなどまだまし・・・)

麻子は、ひどい痛みが辛くて、

その痛みを何とかして欲しいといろんな病院で訴えてきた。

痛み以外のその他の症状は?と病院で尋ねられた事が今までなかったことに、麻子は気がついた。

「先生、今まで痛み以外の症状を聞かれたことがありませんでした・・・」

その医師はカルテから目を離して、こちらを向いた。

「もしかして・・・まぶしさなどのいろいろな症状も病のせいなのでしょうか?」

医師は麻子に向かって説明を始めた。

「この病気はいろいろな症状を引き起こします」

医師の説明を聞きながら、麻子は自分の症状が当てはまると思った。

(痛みだけでなく、今までのいろんな苦しさは

病のせいだったのかもしれない・・・)

自分の体の力が抜けていくのを感じながら、麻子は両手で顔を押さえた。

(そういえば・・・)

麻子は顔を上げ、もう一度医師の方を向いた。

「原因不明のひどいじんましんが、事故後しばらく経ってから出ていて、

もしかしてそれも、病のせい・・・ですか?」

「可能性はありますね。症状から見ても一度検査をした方が良いと思いますね」医師は言った。

「はい、まず脳のMRIも撮って頂けたら・・・」麻子は答えた。

「今日空いているか調べてみましょう」そう言って医師は連絡を入れた。

運良く午後からのMRIが空いていたので、検査を入れてもらえることになった。

「午後まで待てますか?」医師は聞いた。

(待つことも普通以上にかなり苦しいということを、この先生は分かっているんだ)

座り続けることもできない麻子にとって、待つことはかなり苦しい。

しかし、日を改めて乗り継いで、

もう一度出直してここまでやって来ることの方がもっと苦痛だった。

「その辺で寝ていても待ちます!」麻子は即答した。

 

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