脳脊髄液減少症という病


1章 6. 脳MRI検査

 

この病院に着いてから診察以外、麻子はほとんど寝ていた。

病院の端っこでひたすら横になって、午後の検査を待った。

とにかく起きていられない。

(昼に何か食べた方がいいのかな)

疲労も限界で食欲もなかった。

「そうだ。もし脊髄液減少症ならば水を取らなければいけないんだっけ」

麻子は重い体を起こし、コンビニへ歩いていった。

お茶と巻き寿司を買って、座れそうな場所を探した。

携帯を開けると、成美からの着信があった。

成美は学生時代からの友達で、

麻子の体調が悪くなったことを心配して時々連絡をくれていた。

まだ成美には、この病院に来ていることを知らせていなかった

(なんて言おう)成美に電話をかけながら考えていた。

「あ、成美?うん、麻子。」

麻子が病院のことを話そうと思っていた瞬間、

「あのさ、麻子。前にテレビで見てたら、脳脊髄液減少症ってのがあるんだって。

見てたら、麻子の様子によく似ててね。・・・麻子?聞いてる?」

成美が一生懸命話しているのを聞きながら、麻子は涙が出てきそうになった。

「成美に言ってなかったけれど、実はね・・・私今病院にいるの。

私もあのテレビ見てね。・・・そう。

今日朝から脳脊髄液減少症かどうか診てもらって、午後からMRIの検査もするの」

「テレビ見ていて、もしかしてこの病気かもと、

思って教えようと思っていたのに。すっごい偶然!」

電話の向こうで、成美が驚いて叫んでいた。

成美が心配して連絡をしてくれたことが、麻子にはうれしかった。

「ありがとう。また結果分かったら成美に連絡する」

携帯を閉じながら、麻子は疲れた自分を励ました。

(これからが始まりかもしれないのに。頑張らなきゃ)

 

 そして、これは本当に長い治療の始まりだったのだ。

 

麻子は病院へ戻り、指示された時間に検査室へ行った。

「宮元さん」

名前が呼ばれた。

検査室に入ると最新のMRIがあった。

金属物は外し、着替えてから横になった。

「岡林先生」技師が医師の名前を呼んでいた。

先ほどの医師が検査室に入ってきた。

岡林医師は、造影剤を腕から注射すると麻子に向かって話し、

画像をより鮮明に撮るためだと説明した。

麻子は頷き、同意書を書いた。

 

身体がMRIの中に入っていった。

「音がうるさいかもしれませんが」技師が気を配って声をかけてくれた。

「大丈夫です」麻子は答えた。

事故後、病院へ通い続ける中に麻子はMRIには慣れてしまっていた。

こんなものに慣れるというのも悲しいことかもしれない。

検査が始まった。

(今まで何回MRIに入ったっけ)

病院巡りをしたかったわけではない。

しかし、救急で運ばれたり、転院させられたり、

そのたびにMRIに入れられた。

病院側にとっては判断するためであるが、いつも何も異常が出ないのだ。

ずっと同じ姿勢で寝ているのが痛くて、検査は辛く嫌いだった。

 

どっどっどっという音に切るような音が混じる。

麻子はぼんやりとその音を聞いていた。

(ん?この病院のMRIは、今までのなかで一番操作音が小さいぞ。

それにすごく楽)

そう思っているうちに身体が外に出始めた。

(おや、もう終了した・・?)

ベルトを取り外しに来た技師に向かって麻子は尋ねた。

「今まで他の病院で受けた検査よりも、ここのMRIって静かに思えるんですけれど?」

「そうでしょう。良いのが入っていますからね」

技師は少しうれしそうに答えた。

機械は最新に限る。特に病人にとっては。

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