(てきちゅう)100映画  2011年版

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☆5.0

☆4.5

☆4.0

4

奇跡*

2

エリックを探して

1

いつか晴れた日に*

7

若者のすべて*

8

ジェネラル・R・・・・ *

43

東京物語*

5

道*

9

地球交響曲第7番

10

クリスタル・・・*

11

踊子*

63

裸の島*

14

いのち・ぼうにふろう*

13

禅 zen *

18

愛する人

19

飛べない沈黙*

83

泥の河*

16

闇の列車、光の旅

20

パーマネント野・・*

21

告白*

28

セックス・アンド・・*

99

にあんちゃん*

35

英国王のスピーチ

29

愛と追憶の日々*

31

心のともしび*

32

重力ピエロ*

 

 

36

セントラル・ステ・・・*

33

地獄門*

40

スリーピー・ホロウ*

44

ピンポン*

 

 

42

ペールライダー*

45

秋刀魚の味*

49

ブラック・スワン

 50

逢びき*

 

 

52

八日目の蝉

51

名もなく貧しく美しく*

53

若者たち* 

54

旅するジーンズと・・*

 

 

62

イージーライダー*

57

夜明け前*

58

やわらかい生活*

59

木漏れ日の家で

 

 

75

原爆の子*

64

旅するジ−ンズ19歳*

65

127時間

66

トッツィー*

 

 

78

フォー ザ ボ・・・ *

67

天空の草原の・・・・*

68

バビロンの陽光

69

乳母車*

 

 

81

未来を生きる君・・・

70

胡同のひまわり*

71

理由*

73

塔の上のラプンツ・・*

 

 

91

トゥルー・グリット*

74

戦場でワルツを*

76

シャーロットの・・・*

79

イングリッシュ・・・・*

 

 

95

妻の心*

80

アバウト シュミット*

82

利休*

84

再会の食卓*

 

 

 

 

86

彼女が消えた浜辺*

87

一枚のはがき

89

トンマッコルへ・・・・*

 

 

 

 

94

あらくれ*

97

トゥームストーン*

98

海の牙*

 

 

 

 

100

人情紙風船*

102

NINE*

103

ベリッシマ*

 

 

 

 

104

ダントン*

107

ブーリン家の姉妹*

108

ゲッタウエイ*

 

 

 

 

109

安城家の舞踏会*

110

おさんの恋*

111

シン・レッド・ライン*

 

 

 

 

112

妻として女として*

 

 

 

 

 

☆3.5

☆3.0〜

3

病院で死ぬということ*

6

雪国*

12

人間失格*

15

宇宙戦争*

17

ペルシャ猫を誰も知らない

22

エグザイル/絆*

23

第9地区*

 

 

24

食堂かたつむり*

25

余命*

26

銀座化粧*

 

 

27

白い恐怖*

30

ソーシャル・ネットワーク

34

純喫茶磯辺*

 

 

37

わさお

38

福沢諭吉*

39

エリン・ブロコビッチ*

 

 

41

野獣死すべし*

46

ツーリスト

47

ザ・ビーチ*

 

 

48

それでも恋するバルセロナ*

55

ナチュラル*

56

ジュリエットからの手紙

 

 

60

カジノ*

61

悪人*

72

誰も守ってくれない*

 

 

77

Queen Victoria 至上の恋*

85

十三人の刺客*

88

最後の初恋*

 

 

90

阪急電車片道15分の奇跡*

92

パリ20区 僕たちのクラス*

93

終着駅トルストイ・・・・・*

 

 

96

プール*

101

飛鳥へ そしてまだ見ぬ子へ*

105

サイドウエイズ*

 

 

106

半落ち*

113

キリング・ミー・ソフトリー*

 

 

 

 

 

No.113

キリング・ミー・ソフトリー 2001/101分 米 dvd 官能サスペンス 2011.12.26

チェン・カイコー 監督(米国初監督)

ヘザー・グレアム、ジョセフ・ファインズ、ナターシャ・マケルホーン

中国人・台湾人のハリウッド進出

米国映画を監督した日本人は居ない。国際化が一歩進んでいる中国に遅れをとっている。

言葉の壁の他に、世界配信を前提にした観客動向が把握出来てなかったり、大作を撮る為の金集め能力、国際的プロデューサー能力など、監督業以外の面でまるで基盤がないので、たとえ実現しても監督の孤立無援状態が予想される。

だから、国内の名監督と言えどもハリウッドには近寄らないのだろう。

チェン・カイコーは初めてだが、「ミッションインポッシブル2」のジョン・ウー、「ブロークバック・マウンテン」のアン・リー などは既に大御所。

観客が求めるもの

エロス、暴力、サスペンス 、スペクタクル は興行的ヒットの可能性が高い。

本作は題材としては間違ってないだろう。

官能を過ぎてポルノ映画になった

信号待ちで目を合わせただけの他人と、その晩からセックス、セックス・・・・・連日・・・。体位変化だけでなく、紐を使ったたり、首を絞めたり、本物のポルノ顔負け。

この過激な描写が後半のサスペンスへ続く説明になってない為、まるで違う二つの映画をつなぎ合わせたような印象を与えてしまった。

本作の監督は「覇王別姫」で高い評価を得た人。「北京バイオリン」も素晴らしい。

本作は姉、弟の近親相姦。

過激描写や異常愛は観客を呼び込むための単なる方便だとすれば、彼の名声を汚すものと思わざるを得ない作品。

そういえば、シャーリー・バッシーのヒットソングに「killing me softly with his song」というのがあるが、題名のつけた方も偽ブランドぽい。

あえて弁護すれば

監督が芸術的な作品を作ることをハリウッドが認めず、興行的成功路線に変更せざるを得なかったのかもしれない(推測)。

 

No.112

妻として女として 1961/106分 cs ホームドラマ 2011.12.21

成瀬 巳喜男 監督、 井出俊郎・松山善三 脚本、        高峰秀子、淡島千景、森雅之、仲代達也、星由里子、飯田蝶子

お妾さん 昭和36年頃は普通に居たと思うが、女性の地位向上とともに最近は寡聞。

昨今の不倫と違い、夫がお妾さんの暮らしの責任を持つ。

年嵩がいっても最後まで面倒を見るのが当時の倫理観だが、夫が先立つことも考えて水商売をやらせたり、アパートなどの不動産の名義をお妾さんにしておいて、自立の道を開いておく事もよく行われた。

正妻公認が普通で、女性同士仲の良いケースもあったようだ。

現在は、一夫一婦制が厳格に運用されているので、男の勝手の代名詞になったが、夫の不倫行為の責任を果たさせるという点から見れば、女性擁護の面もあった。

変形パターン 森雅之はお妾さん(高峰秀子と)との間に二人の子供を作った。

本妻は子供が出来ない体だったので、本妻が夫々生後すぐ引き取り、自分の子供として育てる。

この本妻(淡島千景)はやり手で、自分名義で銀座にバーを開きお妾さんをマダムに据えた。見張り役として分身のホステスを送り込むことも忘れなかったが。

十数年が経ち、夫がお妾さんとの仲を未だに清算できないこと腹をたて、ついに本妻は追い出し作戦に出る。

銀座の店を売却して、分身のホステスに新宿の新しい店をやらせようとする算段だ。

お妾さんは一般的に夫に甲斐性があり、夫の独断で進められるので問題解決も簡単だが、このケースは夫は優柔不断な大学教授で、何も決められず、経済問題も含め本妻がすべて取り仕切っているから、お妾さん不利。この場合放り出されると何も残らない。

逆襲 高峰秀子は役柄と同じ38歳。女として峠を越して魅力に乏しくなり、森雅之は本妻のコントロールもあり、逃げ回っている有様。

この駄目男ぶりは成瀬映画のパターンなので省くが、この作品の見所は追い詰められた時に女がどのような態度に出るかと言う、女の性の凄さを問い詰めたところだろう。

前半やや並の映画で成瀬と言えども「ハズレ」かな?と流していると、後半の逆襲撃あたりから急に緊迫感ある面白い展開になる。

そこまでやるか 淡島千景と高峰秀子、本妻とお妾さんが火花を散らし言い合う場面が2度ほどある。

理路整然とした本妻ぶりが演技的にもデコちゃんを上回ったように私には見えたが、それは負け戦を後日、一発逆転させる伏線かとも思え、これは一応納得。

でも、禁断の「子供」という隠し玉を使うことに、私は子供の気持ちから反対だ。

親の名乗りは、ある程度子供が成長してからすべきと、実の親なら思うはずだ。

財産分与の争いに使うのは、主人公の人格を汚す脚本と言わざるを得ないのではないか。

それが女なのだと言えばそれまでだが、普通は親が犠牲になるのではないだろうか。

マダム役 デコちゃんは汚れ役から清純役までいろんな役をこなす女優さんだ。

マダム役も「女が階段を上るとき」の見事な和服姿が印象に残る。でも彼女のマダム役は貞操が固く、金銭に執着しない、孤高の人のイメージを捨てられない。

その意味でマダム役が適任か否かは疑問が残ると思う。

本作も、お金に執着するタイプの女優さんだった方が、エンディングに相応しいと思うのだが。

でも、旦那さんが脚本を書いているので、これがデコちゃんのイメージなのかなあ。

女って多面体てことは確かみたいだけど。

 

No.111

シン・レッド・ライン 1998/171分 米 dvd 戦争映画 2011.12.20

テレンス・マリック 監督 脚本

ショーン・ペン、ジム・カヴィーゼル(写真)、エイドリアン・ブロディ、ジョン・キューザック、ニック・ノルティー

哲学的、厭世的戦争映画である 

自然も実は残酷ではないか。動植物も皆戦って己の生命を維持し、子孫を残そうとしている。ガダルカナルの戦いも、見方を変えればアメリカの生存本能かもしれない。

でも必要以上に残酷になってしまうのも人間の特質なのだろう。同じ人間同士の残忍な殺し合いが続くと、個々の人間性が徐々に壊され、心が感じなくなってしまう。

神の言葉が流れ、真逆な残酷シーンが続き、本国での幸せな結婚生活が、戦場シーンに度々挿入され、愛ある時間と無い時間の落差の大きさを淡々と描き出す。

 

指揮官の告発 戦争は組織戦だから、命令に絶対服従。勝利のために部下を捨て石にする。戦果を挙げて昇進もしたい下心もある。元々、個々の部下の心など上官は考えてはいけないのだ。こんな上官の非人間性と兵士の葛藤も多く語られている。

 

心ある者の最期

人間と獣の中間にとどまっている人間(軍曹/ショーン・ペン)も居るが、疑問を感じてどうしても同化できない人間も居る(2等兵/カヴィーゼル)彼は人間同士の戦いに絶望し、戦友を助ける為に敵軍(日本軍ガタルカナル守備隊)に身を晒し死ぬ。せめて仲間を助けることで、神に懺悔しているような死に方だ。

 

日本軍が情けなく描かれている

米軍に捕らえられた日本兵は泣いたり喚いたりだらしなく描かれている。まだ侍魂も残っていてこんなことは無かったたと思う。

観るのがつらい場面であった。

 

No.110

おさんの恋 1985.10.12/ NHK TV ドラマスペシャル cs再放送 2011.12.16

和田 勉 演出     作/秋元 松代    原案/近松門左衛門     武満 徹 音楽

太地喜和子、滝田 栄、金田龍之介、荒木道子、佐藤 慶、小沢栄太郎、千秋 実、山田吾一、三津田 健

 

左の絵は喜多川歌麿の芝居絵

太地喜和子が魅力のTVドラマ

1992年、伊東の岸壁から車が落下、同乗者二人は助かったが太地は死んだ。

享年48歳。

このドラマは42歳の時。

大店の女将を演じている。時代劇だから鬘をかぶり、少し厚化粧だが、それが年を隠して美しい。

小さな顔の割りに、黒目がちで大きな瞳に涙が溢れ、アイキャッチがキラリと光るアップのカットは、まるで一幅の絵のようではないか。

俳優座、文学座など舞台が中心だったから、遠くからでも表情や動きが分かるように、演技が少しだけオーバーだった。

だから、カメラでアップされる映画、TVは不向きだった点も否定できないが、根っからの演技派だから助演女優賞も貰っている。

私生活でも話題が多く、男遍歴、酒豪ぶりが並でなかったし、性格も破滅的で「魔性の女」と呼ばれていたらしいが、舞台に上がるとイキイキとしていた職人でもあった。

壮絶な人生を締めくくるにふさわしい、最期だったと思う。

近松門左衛門

原案は浄瑠璃「大経師昔暦」。

このたび読み返してみたが、本作とかなり違う。

尤も、おさん茂平物語は他でも色々脚色されているので、珍しい事ではないのだが。

原案戯曲の最大の魅力は、亭主以春が毎夜口説きに通う女中 玉の部屋に、玉になりすました女将おさんが夫を寝て待つところへ、監禁されている茂平がお玉への恩返しと忍び込んで寝所を共にするという、ダブル勘違い姦通。

「フィガロの結婚」にも似たような設定があるが、フィガロは未遂でハッピーエンドに対して、近松は道行となり悲劇へ進む。

さすが近松は国際的レベルの戯作者、アイデア抜群である。

だが、残念ながら本ドラマにはこの話は無い。

男の嫉妬

秋元松代の原作は、純愛を貫く茂平の誠を縦軸に、無実のおさんと茂平を罪人に仕立てる亭主以春の男の嫉妬の悪性を描いている。

これはシェークスピアーの「リア王」の匂いがする。

金田龍之介がこの憎たらしい亭主を見事に演じているので、目論みは成功と言っても良いだろう。

少し気になるのは、茂平流罪の隠岐の島(近松には無い)に東岸和尚が慰霊訪問団を結成し、その一員におさんを入れて、再会させるというエンディングである。

隠岐の島は当時簡単に行ける所ではなかったので、一人の女のために年取った和尚がそんなことをするということは考えられず、かなり無理のある結末だと思う。

 

No.109

安城家の舞踏会 1947/87分 モノクロ dvd ホーム ドラマ 2011.12.14

吉村 公三郎 監督 原作、  新藤兼人 脚本

原 節子、滝沢修、森 雅之、津島 恵子、清水将夫

映画は雑草のように逞しい

昭和21年というと、全国焼け野原で極端な食料不足という、最悪の状態であった。

そんな状況でも映画は作られた。

敗戦後のイタリアもそうだった。

しかも、共に秀作が作られている。

映画は単なる贅沢品ではなく、生活の一部だと言うことだろう。

驚きだが、これは事実。

こんな女性は日本にはもういない

華族制度は廃止となり、侯爵一家は零落していく。

殿様は生きる気力を失い酒に溺れ、長男は捨てばち、長女は昔の幻影を捨てられない。

次女だけが、新時代に適応しようと、果敢に動く。

でもその動き方が奥ゆかしい。

殿に悲しい思いをさせまいと、細やかな配慮を忘れないのだ。

現代娘なら、親にストレートに意見具申し、衝突も辞さないところだが。

古い因習よさらば

最期の舞踏会に集まった貴族達は、古い価値観に捉われ、運転手や妾を人間とはみていない。

でも次女だけは新しい価値観に基づき、父と妾を結婚させ、運転手に家の処分を頼む。

見上げる舞踏会客人に対し、その非難の目と対峙するように、階段の上から宣言する次女は新時代を象徴して希望に溢れている。

この作品はある意味、国民に新しい時代に生き抜く決意を促しているのかもしれない。

人はみな階級は別にしても、昔の価値観に捉われて日々を過ごすものだからだ。

原節子

日本のグレタ・ガルボと言われた大女優だが演技力は晩生だったらしい。

前年黒澤の「わが青春に悔いなし」では、太い足と腕を出し、アイドル路線卒業かと思っていたが、本作では又も清純路線へ。

吉村は女優の能力を引き出す名人といわれていたので、この辺が持ち味なのだろうか。

恥ずかしげな上目使いで、誠に素人ぽい演技だが、得がたい雰囲気が時代に受け入れられたのだろう。

 

No.108

ゲッタウェイ 1972/123分 米 クライム・サスペンス dvd 2011.12.10

サム・ペキンパー 監督(「ワイルド・バンチ」)   ウオルター・ヒル 脚本(「ブロークン・トレイル」監督)   クインシー・ジョーンズ 音楽

スティーブ・マックイーン、アリ・マッグロー

ラブストーリーか?

ペキンパーと言えばバイオレンス・アクション。

スティーブ・マックイーンもアクション・スター。

そのような先入観で見ると肩すかしにあうこと必至。

この40年間、サスペンス映画は過激度を増しているので、本作を観ても最早ハラハラドキドキしないからだ。

逆にしっとりした場面が印象に残る。

出所して、妻と思い出の公園に寄る場面があるが、ここでのフラッシュ・バックがいい。

服のまま、昔と同じように二人が池に飛び込むことで、4年間の別離を経た再会の喜びがセリフ無しで一気に描かれている。

アイデアでも楽しめる

冒頭の刑務所内のシーンでは、セリフと場面を一致させないで、スピード感を上げているし、

後半に登場する「ごみ収集車」に隠れて危機を逃れる有名なシーンや、

車をマンホールの上でエンコさせ、マンホールを降りて銀行の電源を切断するシーンなど、

その後真似されたりもしている。

マックイーンの魅力

プロレーサー並みのスピード好きでスタントマン無しでカーチェイスなど撮影しているし、空手など格闘技なども習得、何しろ天性の運動神経の持ち主である。

不良少年で少年院にも入り、用心棒をしたり、兵役中何度も脱走するなど、俳優になる前はゴロツキ同然だったが、俳優学校に入り立ち直っているからたいしたものだ。

いつも眉間に皺を寄せ決して笑わず、灰色の目つきは何処か異彩を放っている。

冷徹なワルかというとそうではなく、人情味溢れる正義感かと言うとそうでもない。

冷たい感じもし、感情も表に出さないので、性格が分かり難く、謎に包まれた人物に私には見えた。

でも、アクションが素晴らしく、彼の映画のヒット率は高かった。

アスベストによる中皮腫で50歳で亡くなったが、年齢が分からないほど顔の皺が深かったので、あるいは健康を長期に害していたのだろうか。

得がたいキャラクターであった。俳優は演技の巧拙以前に、他人には真似できない個性が求められると言うことだろう。

(余談:妻役アリ・マッグローと本作の後、結婚している)

screen play & music

台本はその後監督として活躍を続けているウォルター・ヒル。

銀行強盗犯の逃亡劇は最期悲劇で終わることが多いが、まんまと成功させると言うのも随分思い切ったものだ。

その是否は置いといて、セリフを少なく影像で説明させるというペキンパーの態度に沿った簡潔明快なシナリオと言えよう。

音楽はジャズ界の大物を起用した。意気込みを感じるが効果はどうだったのだろう。

 

No.107

ブーリン家の姉妹 2008/115分 英・米 dvd 歴史ドラマ 2011.12.07

ジャスティン・チャドウイック 監督

ナタリー・ポートマン(アン女王・・長女)、スカーレット・ヨハンセン(メアリー・・次女)、エリック・バナ(ヘンリー8世)

正妻キャサリンと離婚し、アン・ブーリンと結婚する為に、カソリックを捨て英国教会を作ったヘンリー8世は、しばしば映画の題材にされる。

チューダー朝といわれる英国のこの時代は語り草的人材が多く、作品になり易いのだろう。

ヘンリー[の他、血好きのメアリーT、名君エリザベスT、悲劇のスコットランド女王メアリ・スチュアートなど。

ヘンリー[は大体、傍若無人な残忍国王として描かれるが、この作品は女性の立場から王を描いているので、少し趣を異とする。

アンは王に当時はご法度だった離婚を迫るほど、野心家で押しの強い女性だったことは確実だろう。

そうするまで、体を許さなかったのだから凄い。

妹メアリーは先に王の男児を産んだが、姉アンの野望の前に、親子ともども城を追われる。

ついにアンは正妻となり、待望の子供が出来たが女児だった。これで運命の歯車が狂い始めた。

どんなに魅力的な女性でも、后妃は男を産まなければ捨てられる。

当時は女しか産めないのは女性に責があるとみられていたからだ。

妊娠すると容貌も変わり、魅力が落ちることもあり、王は次の女性へ鞍替えする。

結局クロンウエルらの策略にかかり、アンは近親相姦の濡れ衣で断頭台の露と消える。(ギロチンはまだなく斧)

自らの策略に溺れた自業自得とも言えるが、それを押し付けたのは一族の叔父と父で罪深く、反対に母は終始政略結婚には反対だったらしい。

ブーリン一族は目論みが外れ失意の中で叔父も父も亡くなったが、これが物語の終わりではなかった。

処刑されたアンの産んだ女児があの名君エリザベスTになることなど、墓場からもアンは想像出来なかったであろう。

聡明な女王だったから、アンの血筋を引いていたのかもしれない。

***

当代人気二大女優と言ってもいいだろう。

この二人、性格反対の姉妹を、堂々と張り合って見ごたえ十分。

エリック・バナが食われている。

姉妹映画だから、これでいいのだが。

 

No.106

半落ち 2003/121分 dvd クライム・サスペンス 2011.12.06

佐々部 清 監督(「陽はまた昇る」)   原作 横山秀夫

寺尾聡、柴田恭平、原田美枝子、吉岡秀隆、鶴田真由、伊原剛志、国村隼、樹木希林

映画はファーストシーンが重要だから、いつも期待を込めて見る事にしている。

意味深いファーストシーンが名画の条件だから。

***

ベストセラーだった原作を読んでないので、どの程度脚本で変えたのか分からないが、アルツハイマー病の妻を殺害する夫の「嘱託殺人」の是否を問うのが大筋として、それを語るプロセスに余りにも無駄が多い為、又相互の関係が薄い為、ピントボケ作品になってしまったのではないか。

ファーストシーンに連続殺人魔が農薬を飲んで自殺を計り、病院に担ぎ込むなど警察が慌てまわるシーンが続く。

これと嘱託殺人とどう繋がるのか気を張って見ていると、その後警察と記者との取引材料に使われるだけでさしたる意味を持たない。完全な肩透かし。

同様に署内不祥事事件も思わせぶりだけで、何の意味も無い。

警察官僚組織の悪弊が夫々の刑事の生き方とどう矛盾するかという、刑事人生物語と「嘱託殺人」をハイブリッドさせるのは良いが、軽重をつけなければどちらも浮かび上がって来ないと思う。

だから、後半に本筋の吉岡秀隆演じる裁判官の登場が唐突に見え、水の中に油を落としたような違和感を与えてしまったと思う。

充実した俳優陣で大変な力作だと思うが、残念な一作になってしまったと言わざるを得ない。

 

No.105

サイドウエイズ 2009/123分 dvd 日・米 ラブストーリー 2011.12.04

チェリン・ブラック 監督

小日向文世、生瀬勝久、菊池凛子、鈴木京香

2004年の米国映画「サイドウエイ」のリメーク。

同作は意外にもアカデミー脚本賞、GG賞コメディー部門作品賞を貰った。

私は記録によれば翌年7月にvideoを見ているのだが、余り印象に残ってない。

中年駄目男二人のカルフォルニア・ナパバレー ワイン紀行で たそがれ男に敢えて光を当てた程度の認識だったが、このリメークを見てラブ・ストーリーだったのだと思いを新たにした。

***

前回そうだったかどうかは忘れたが、この作品を観てワインを飲みたくなり、在庫から1本取り出した。

カルフォルニアではなく、3年前のブルゴーニュ・マコン・ヴィレッジのボトルヌーボー。

小麦色の白との説明書が付いていたが、経年でさらに色が濃くなったのだろう黄金色で極めて美しい。

かなりドライで酸味もあるのは飲み頃を外したせいかもしれないが、十分楽しめた。3年間の己が暮らしぶりを振り返るのも、テイストのうちか。

ワインは時に素晴らしい作品。

***

外人監督が外人をふんだんに使って、現地で撮影している。

国際化の遅れている日本映画界にとって、大変良いことだと思う。

リメークは難しい宿命を負っているから評価しない人は多いけど、生瀬勝久の分かりやすい演技は良かったし、ジェイク・シマブクロの音楽も素晴らしい。

もっとコメディー タッチを強めても良かったかなとは思うが・・・。

 

No.104

ダントン 1982/136分 bs 仏 歴史ドラマ 2011.12.03

アンジェイ・ワイダ 監督、     ジェラール・ドパルデュー、ヴォイチェフ・ブシュニャック、バトリス・シュロー

ダントンというのはフランス革命の英雄で、今でもサンジェルマン大通りの交差点に銅像があるらしい。

本作はワイダがポーランドの連帯運動で当局ににらまれ、パリに亡命していた時に当地で作られた。

彼は権力に抵抗する人たちが、その運動の中で分裂し愛憎し合う様も描いてきたが、その意味ではフランス革命後の内部分裂をテーマに選んだことは国は違うとはいえポーランド題材と酷似していると言えよう。

ファーストシーンはダントンが田舎からパリに戻ってくるところから始まる。

冷たく濡れた舗道の上を轍の音が響き、広場に据え付けられた断頭台の横を馬車が通り過ぎる。

重厚で異様な始まりだが、これが伏線となって彼ら一味がロベスピエールによって処刑されるラストに繋がる。

ロベスピエールは恐怖独裁政治で有名だが、ここでは悩める気の弱い人間として描かれている。

実際は政治家というより学者で、生活ぶりも質素なまじめ人間だっただったらしいが、そのまじめさが仇となり些細なことでも、革命の後戻りを決して許さない潔癖さにつながり、ことごとく粛清の道を進んだ。

庶民の支持を握っていた穏健派、妥協派のダントンが怖かったのだろうが、二人は革命を成し遂げた盟友だっただけにつらい決断だったことだろう。

この作品には描かれてないがダントンの死後2ヶ月後にはピエールとその一味も断頭台の露と消えている。

今日もパレスチナ問題なども、原理主義と穏健派の対立関係が軸で展開している。

会社経営も同じだろう、どちらが正しいか歴史が後で検証するまで、勝負はその時は着かないものかも知れない。

 

No.103

ベリッシマ 1951/115分 伊 モノクロ dvd ファミリードラマ 2011.11.29

 

ルキーノ・ビスコンティー 監督

アンナ・マニャーニ、ワルテル.キアーリ、ディーナ・アビチェラ

イタリアのマンマは凄い。

朝から晩まで夫や子供に大声でどなりつけ、ご近所とも遠慮なく大げさに喧嘩して、感情をあらわに出さずにはおられない。

子供や旦那は機関銃に晒されているような毎日だろう。

一見ヒステリー患者に見えるマンマ達も、単純で裏がないのが特徴で、そのため信頼関係が築かれ、対人関係に問題はないらしい。

家庭内では絶対君主制を敷く代わりに、家族の為に献身的な奉仕をするから、夫も子供も従う他無い。

こんなマンマはイタリア映画に定番として何度も登場するので、この映画の主人公だけでなく一般的な家庭の主婦像なのだろう。

***

本作は終戦の6年後。既に大規模な撮影所シネチッタがあり、イタリアネオリアリズムの全盛期で優れた作品が輩出されていた。

こんな花形産業に憧れて、わが子をスターにしようと運動するステージママ予備軍を冷ややかに描いたのが本作で、意外とまともな常識路線でまとめている。

華麗な映像だとか、重厚なタッチだとか、奇抜さとか、その後の作品にみられる要素は少ないが、アンナ・マニャーニのマンマ振りが一見に値し、貴族で共産党員だったビスコンティーが貧しい労働者階級に目を向け、貧しいが故に夢をみざるを得ない人たちに、お金以外にもっと大切なものがあるんだよと諭しているのも微笑ましい。

貧乏長屋のマンマ達が皆太っちょで「鯨」呼ばわりされるセリフには笑った。

 

No.102

NINE 2009/118分 米 dvd ラブストーリー 2011.11.27

ロブ・マーシャル 監督

ダニエル・デイ・ルイス、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ニコール・キッドマン、ケイド・ハドソン、ソフィア・ローレン

監督の名前が間違い易い。「スタンド・バイ・ミー」はロブ・ライナーで「シカゴ」はロブ・マーシャル。

名画フェリーニの8・1/2のオマージュをこめたリメークといっても良い作品だが、脚本は同名のブロードウエイ・ミュージカルで、本作も豪華キャストのミュージカル風のテイスト。

フェリーニは「道」で有名だが、初期の具象画的作風が、後期は抽象絵画的作風に変化し、新しい影像美でも世界を驚かせた。

この映画の中にもセリフがあるが「映画は言葉で語ると死ぬ」に基づき、現実と非現実の境目みたいな半幻想や、語るべきものを象徴化してみたり、かなり実験的に直接感性に訴える傑作を残した。

フェリーニは巨像だから簡単には語れないが、本作の脚本は彼を「女性依存症」と片ずけている。

インスピレーションの原点が女性だから、女性の刺激を常に求め、結果愛人を多く持つ。

でも女性を愛しているのではないから、去ったり去られたりして、いつも不安定な精神状態、迷っても迷っても安住しないので、最期は「人生はお祭りだ、手をつないで楽しく踊ろう」の大団円がお決まりのラストとなる。

彼の女性遍歴の中でも特に妻(本作ではコティヤール、実生活ではジュリエッタ・マシーナ)は特別だったようで、彼女に去られると2年間創作できず、廃人同様の生活になる。妻が居ないと駄目なのに、居たら居たで浮気する。妻からすれば勝手な男に見えただろう。

***

女性依存症が本当だとすれば、それは何処から来たのだろうか。

私は、たまたまこの作品の後に、ヴィスコンティの「ベリッシマ」(No.103)を観た。

そこに登場するのはイタリアの強烈なマンマであった。

そこでフェリーニの母がどんな人だったかを想像してみたが、子供に難解もキスをして抱きかかえる溺愛型の人ながら、大声でゼスチャーをまじえ乍ら自己主張を止めない、肝っ玉かあさんだったような気がする。ついでに言えば「大きなお尻」をした太った人ではなかったか。

こんな強烈なイタリア・マンマが彼の幼少体験として残り、母が亡くなった後まで彼を支配し続けたというのはどうだろうか。

最近の言葉でマザコンというのがあるが、これが女性に支配されたいと言う願望に変わっていくことはないのだろうか・・・。

邪推かもしれないが、それでもフェリーニの魅力に何の陰りも無い偉大な才能だったとは思う。

 

No.101

飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ 1982/112分  cs 闘病ドラマ 2011.11.24

木下 亮 監督

竹下景子、名高達郎、大和田伸也

若い医師が癌に侵されるも、死ぬ直前まで仕事を続け、最期は残していく幼い子供達に父としての言葉を残す感動物語。

2005年にリメークされてもいる。

かなりドラマティックだが、癌は死因のトップ、だからごく普通の誰にでも起こりうる病である。

いや、癌だけではない死に至る病に苦しんでいるひとは多いし、人は死に行く存在である限り避けられない普通の事態なのに、他人事として観て感動するというのも考えてみればおかしな話である。人間の傲慢さの表れなのだろう。

如何に死を迎えるか、各自心して考えておかなければと思うが、いや考えない方が自然なのかもしれないし、「死」は依然、人類最大の謎であり続ける。

竹下景子は若い時より、現在の方が魅力的かな?

 

No.100

人情紙風船 1937/86分 モノクロ bs 時代劇 11.21

演出 山中貞雄  中村翫右衛門・三代目(新三)、河原崎長一郎・四代目(海野)、山岸しづえ(お滝)、霧立のぼる(お駒)、市川延司・のちの加東大介(さんぴん)・・・前進座総出演

本作の封切の日に山中に赤紙がきて、満州で28歳の若さで死んだ。遺作である。

制作した期間は少なかったが、映画人の間では「夭折の天才」と呼ばれている重要人物らしい。

残念なことに、軍によるフイルム破棄や戦災により、完全なものとして残っているのは26本中3本だけで、本作が代表作と言うことになっている。

制作は昭和12年だから、現在と比べ撮影資材や技術が格段に劣っていたのに、今この映画を見ても古い感じはするものの決して陳腐化していないので、時代の先を歩んでいた人だったと思われる。

まず役者はすべて前進座だから、歌舞伎仕込みの基礎があり、人気先行の映画俳優などより上手い。

宴会での踊り手やメクラ、欲張り大家など、脇役に至るまで完璧な演技。

その前提として、個々の人物設定がはっきりしているから、多くの登場人物の影がくっきりして分かりやすいのも特徴だろう。

****

これは長屋物語なのだが、長屋の住人は何をして口に糊するかまで良くわかるのが面白い。

雨のシーンが多いが、晴れた翌日の朝「さあ今日は仕事が出来るぞ」と言って、大工や金魚売りや魚売りなどがいっせいに出掛ける場面がある。

日雇い賃金だから、雨も3日も振れば首を括るとの言葉どおり、その日暮らしの長屋の雰囲気に嘘が無い。

ただ人情を描くばかりが長屋物語ではないのだから。

****

はっきり言って、何処が天才の所以なのか私には良くわからなかったが、脚本は只者ではないと思う。

冒頭とラストは貧乏武士の自殺と無理心中で、髪結い新三もヤクザに殺される。

夢も希望も無い真っ暗な悲しい脚本である。

これをどう解釈するか、はっきり説明せずに観客に考えさせているのだから、私も考えてみよう。

私は次のように考える。

出世目当ての武士と、出入り商人とヤクザが結託して悪事を働き、貧乏人など見捨てて、義理や武士道など廃れているご時勢。

それでも、長いものには巻かれろ式の徹底した長屋庶民は、諦めているから意外としぶとい。

でも志ある浪人士族や骨のある人間は、この社会に反抗しようとするも、結局は負けいくさの犠牲になる。

これは江戸時代の社会構造を描いているのだが、昭和12年という時代を考えると、暴走する軍部と武器を売り儲けようとする財界、民衆を押さえつけようとする官権力の三位一体の癒着の構図下で、多くの知識人が抑圧の犠牲になった世相によく似ていると思う。

反権力の匂いをかすかに感じる作品であることは確か。

又武士道から、お滝が武士の沽券を守ろうと夫を刺す行為をもって、底辺武士に武士道が残り上級武士には既に無い、と暗に国家の上層部の批判をしているのかもしれない。

何れにせよ、いろいろ考えさせられる処が、この作品の魅力なのだろう。

小津、溝口、黒澤、など大巨匠とほぼ同世代とのこと、これほど惜しまれる人も少ないかも。

 

No.99

にあんちゃん 1959/101分 dvd ホームドラマ 11.19

今村 昌平 監督

長門裕之、松尾嘉代、吉行和子、北林谷栄、小沢昭一、殿村泰司、芦田伸介、西村晃、二谷英明、

昭和28〜9年は景気の谷間にあり、特に炭鉱は閉山が相次ぎ、労働争議が日常化していた。

こんな状況の佐賀のある炭鉱の町を舞台にした、親を失くした4人兄弟の物語である。

原作は末っ子の末子が10歳の時、彼女の日記が出版されベストセラーになったものを、今村などが脚本化したもの。

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今の人がこの映画を見ると、貧乏の凄まじさに度肝を抜かれるかもしれない。

でもこれは50年ほど前の日本で実際おきていた現実だから、現在我々は豊かになったからといって、関係の無い話と思ってはいけない。

何かをきっかけとして、又あの頃のひもじさが戻ってくる可能性も否定できないので、豊か過ぎる現在を反省し、生活にも「つつましさ」が求められると言うことだろう。

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親なし兄弟はばらばらになり、それぞれ他人の世話になりながら働き、勉強し、成長していくのだが、兄弟の心の結びつきは強い。

何でも本音でぶっつけあい、甘え、励まし合っているこの家族があるからこそ、貧しさに負けない逞しさが培われるのだと思う。

その意味で、家族愛は武器なのだ。

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この作品は、ただ単調に貧しさと戦う「けなげさ」だけを描いているのではない。

ユーモアもふんだんに盛り込まれ、思わず笑ってしまう場面が随処にあったり、又朝鮮人問題や保健婦・先生の献身的な地域活動などにも目をむけたり、厚みのある映画に仕上げてある。

にあんちゃんとは2番目の高一あんちゃんの事である。

昼食の弁当を持っていけないので、昼休み時は鉄棒で逆上がりをしているほど貧乏だが、勉強も学校でトップ、性格も明るく、何より挫けない強気のファイター気質がいい。

何と、けなげで、素直で、かわいい男の子なのだろう。

この脚本は、4人兄弟をほぼ平等に扱っているのだが、題名が「にあんちゃん」のままなのは、暗くなりがちなテーマに一条の希望を高一に託し、未来を暗示する存在にしたかったのだと思う。

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しかし、何度も泣かされるのは私だけではないだろう。

遠足先で一人抜け出し、唐津の肉やに奉公に行っている長女・良子を訪ねる末子が、会えずにバスに戻っていると、追いかけてきた良子が正面からバスを止めて邂逅する場面など、お互いに不安定な境遇にあり心配しあう姉妹の心の機微が見事に描かれて素晴らしい。

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朝鮮人のやり手ばばあを演じる北林谷栄と、親戚の面倒見の良い親父を演じている殿山泰司の演技は、もうこれは絶品としか言いようが無いし、他バイプレーヤーも素晴らしい演技で、監督の演出が際立っている最高ランクの作品である。

映画はやっぱり素晴らしいし、こんな作品を残してくれた今村監督に心から感謝する。

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貧しいがゆえの隣人愛、豊かさゆえの寂しさ孤立、中間ぐらいのいい落しどころは無いものだろうか。

こんな映画を見ると、いつもそんな気にさせられてしまう。

 

No.98

海の牙 1946/101分 モノクロ 仏 dvd 戦争ドラマ 11.18

 

ルネ・クレマン 監督

アンリ・ヴィダル、ボール・ベルナール、マルセル・ダリオ

「禁じられた遊び」が1940年の時代設定で1952年に作られたのに対して、本作の時代設定は1945年4月で1946年に作られている。

ともに戦争映画だが、本作のほうが脚本がアップデートなので生生しいドイツ(ゲシュタポ)批判が表面に出ており、「遊び」の方は反戦を間接話法で訴えるという余裕があるが、これも時間の経過と関連があるのだろう。

名匠だけあって共にモノクロの美しい映像なれど、感動と言う面に絞れば圧倒的に「遊び」に軍配が上がる。

本作は珍しいネタで話としてはこちらの方が面白いはずなのだが、感動しない。

冷徹無比のゲシュタポ高官や、ドイツ高官の悪行を描いただけに終わっているからか、主人公が殺されるかもしれないというヒヤヒヤをもっと語れば良かったのか?

医師のポケットから人形がぽろっと落ちる場面があるが、これに「遊び」の伏線を感じた。

 

No.97

トゥームストーン  1993/130 西部劇 cs 2011.11.126

ジョルジ・バン・コスマトス 監督

カート・ラッセル(W・アープ)、ヴァル・キルマー(D・ホリデー)、サム・エリオット、ダナ・デラニー

OK牧場の決斗のリメーク。

ドク・ホリデーと言えば、カーク・ダグラスの印象が強いが、こちらもなかなかである。

かっこいいガンファイター場面より、ドクとワイアットの友情やシェリフの恋に重きがおかれているのが、前作と違うところ。

特に、男の友情が美しく描かれている。

クラントン一家を倒したあと、ベッドで死期を迎えたドクが死に際を見せたくないから、ワイアットに早く去れと促す。

友達の居ないドクにとって、ワイアットはたった一人の友だった。

心を病室に残し、去っていくアープの後姿に悲しみがあふれ、思わず涙を誘う。

****

西部劇には名作が多すぎるので目立たないが、決まりきった埃りっぽい西部のガンマンというより、背広を着たシティ派ガンマンが主人公という転調西部劇だが、これはこれで後世に残る作品であるような気がする。

大筋は日本の時代劇と同じ浪花節なのだが、西部劇には大西部の背景が広がる分だけ、自然の香りが強い。

夕暮れの大草原に馬を飛ばす光景など、、映画作りにもアメリカは恵まれている国だ。

西部劇はやっぱりいい!

 

No.96

プール 2009/96 dvd ホームドラマ 2011.11.11

大森 美香 監督    桜沢エリカ原作(マンガ家らしい)

小林聡美、加瀬亮、伽奈、もたいまさこ

「塔の上のラプンツェル」の中でも、空飛ぶランタンがきれいだった。

本作にも登場するので、どちらが先だったかなと思い調べてみたら、何とこちらの方が先だった。

お見事!

***

この映画はいわゆる「癒し系」と呼ばれるもの。

大きな事件も起きないし、人が死んだりもしない。悲劇でも喜劇でもない。

淡々と日常を写して、登場人物の背負った影をそれとなく想像させ、あまり世間と深く関わらない世界で、やや厭世的に、個性的な生活を送る人たちを、愛情を込めて描いている。

「食堂かたつむり」とか、荻上直子監督の一連の作品など、みな同じ。

いや、小林聡美さんとか、もたいまさこ さんなどキャスティングまで同じで、そっくりさんである。

でも、私はこの少しずれた感じが嫌いではないので、結構見ているが、最近少し気になりることがあるので、一応書いておこう。

それは、生活感が希薄だということだ。

本作でいうなら、チェンマイで民宿みたいなものを小林聡美(母)は経営しているのだが、それが広い敷地でプールまで付いた贅沢なコテージ。

かと言ってたくさんの客をとるかと思えばそうでも無く、3〜4人が限界みたいな小規模経営。

これで経営が成り立つわけも無く、それで貧乏かと言うとそうでもなく、かなり優雅な生活レベルをしている。

生活基盤が無いのに夢を実現しているのが私には不思議だ。

比較的若い女性監督連中は、多分貧しさを体験してないから、平気でこんな作品を作るのだろうか。

自立できない人間に、ユートピアなど作れるわけが無い。

この甘えが気になりだした今日この頃である。

人生観を変えれば可能のような誤った幻想を若い人が抱かないか心配する。

****

それはそれとして、本作にもおいしそうな料理とか市場の買出しとかのカット数が多く、料理好きな人は楽しいし、坊さんの朝の托鉢行列など風物描写もなかなか。

加瀬亮も独特の味をだしているし、タイの孤児も芸達者で、小粒ながらまとまった作品だとは思う。

 

No.95

妻の心 1959/100分 cs ホームドラマ 2011.11.07

成瀬 巳喜男 監督、 井出 俊郎 脚本  

高峰秀子、小林桂樹、三好栄子、千秋実、中北千枝子、根岸明美、杉葉子、三船敏郎

「あらくれ」もそうだったが、まともな男は登場しない。

意気地なしで、女にだらしなく、ばくち好きだったり、他人に騙されたり、善人だが生活力に乏しい馬鹿ばかり。

「浮雲」もそうだったので、そんな題材を選んで作品を作っているのだろう。

馬鹿に振り回される女の喜怒哀楽から人生を描いているが、もしかして成瀬監督は男に嫌悪感に近い感情を持っているのかもしれない。

それが何処から来ているのか解からないが、自己嫌悪からもそうなるし、マザコンからもそうなる(女性を神格化し過ぎて、相対的に男を貶める)。

又、実生活で悪い男にこっぴどく痛めつけられた体験から、坊主憎けりゃ・・・式 の展開も考えられる。

良くはわからないが、こんな気持ちは一般的には幼少時に形成され、本人の意識下に潜んでいるものらしい。

成瀬の幼少時がどうだったのか、資料が乏しく解からないのが残念でだが、この人の作品を真に理解するには必須なのだろう。

****

本作で「白馬の騎士」みたいな、まともな男が一人登場する。

それが三船敏郎。

地獄に仏みたいな存在なのだが、これが完全に浮き上がっており、キャスティング・ミスを犯している。

三船は肉体派だから、白い背広を着たヤクザっぽい役が似合うと思うが、ここでは銀行員を演じている。

地味で実直なイメージとは程遠く、ピカピカしている。

やっぱり、まともな男の演出は苦手だと感じた。

****

傾きかけた老舗の嫁は、往時の感覚を持ち続ける姑や夫の兄弟に金をせびられ、喫茶店計画も頓挫。

夫の浮気も発覚し、万事我慢我慢。

それでも、夫が頼りないから愚痴など言っておられず、屋台骨をしょって立っている。

怒りを爆発させたのが「あらくれ」なら、内にそっとしまっているのが「妻の心」。

それぞれの妻を高峰秀子が、余裕をもって演じ分けている。

和服姿が自然で、清楚さが匂う、たいした女優さんだった。

 

No.94

あらくれ 1957/121分 dvd 女性ドラマ 2011.10.06

成瀬 巳喜男 監督、 徳田 秋声 原作、 水木 洋子 脚本 

高峰秀子、森雅之、加東大介、上原謙、東野英治郎、宮口精二、志村喬, 左朴全

頭が良く、行動的で、気性が強く、美人という、デコちゃんそのものような女性が主人公。

当たり役だから、彼女の代表作と言ってもいい作品だと思う。

彼女だけではない、この作品には映画界の無形文化財みたいな名優がずらりと顔を揃え、キャスティングに関しては完璧。

***

昭和32年の作品だが、舞台は大正初期だから、100年ぐらい前の女性の置かれていた地位を理解しない事には、主人公のすごさが分からない。

当時、男を差配して洋服仕立て店を経営する若い女性なんて極めて珍しかったが、今日女性の地位が向上して、男勝りのワーキング・ウーマンなんて珍しくなくなったからだ。

その意味では、成瀬はあるいは題材の選択を誤ったかもしれない。

***

美人で有能な女性でも、男運に恵まれない人は今も多い。

駄目男が続くが、ついに運命の人とめぐり合い幸せを掴んだり、何処までもそんな男が現れないが決して運命に負けず努力を続けたり、いや男運の悪さに負け次第に堕落していったり、不幸な女の人生模様は色々である。

が、物語に一番なりにくいのは運の悪さに負けない根性の座った、強い女性ではないか。

逆境に陥っても、哀れさや惨めさが出ないので、感情移入しにくい。

その典型がこの脚本である。

不幸な生い立ちで、家族の犠牲になるなど、男運の他にも人生全般の運に恵まれてないのに、決して可哀そうに見えない。

蹴飛ばして再起することが半ば約束されているからだ。

森雅之演じる情夫が死に、墓参りに行くシーンだけが少しほろりとさせられるが、成瀬作品に見られるペーソスは少ないと思う。

****

らしいシーンは、色々な物売りが登場する商店街風景であろう。

まるで、歩き売り、チンドン屋の博物的見本市みたいである。

そこで使われる売り声の節回しとか鐘や太鼓のリズムがすでに世の中から消え去ったものばかりで、興味をそそられる。

かなり力が入った再現とみる。

チンドン屋は成瀬作品の定番だが、この作品が最高だと思う。

特に明治を感じさせるオモチャの兵隊さん風のラッパ宣伝マンはことのほか面白く、印象強い。

本筋と無関係の行過ぎる物売りやチンドン屋は、市井に生きる庶民の哀感の表現手段としてムードを演出しているのだろうが、サーカスのピエロが人生を写す鏡のように悲しいのに似て、寂しさを感じるのは私だけだけでは無いだろう。

***

成瀬の作品はどれも結局女を描いている。

私は女が解からないが、成瀬はこの主人公に女の魅力を感じたのだろうか。

一見ひ弱な女性でも、底知れぬ強さ、意地の強さなど、男より強いものを誰しも持っているような気もするので、個別の人物として描いたのではなく普遍的な一面を描いた作品ということにして、とりあえず納得しておこう。

 

No.93

終着駅トルストイ最後の旅  2009/112分 ドイツ・ロシア dvd 伝記映画 2011.11.03

マイケル・ホフマン 監督

クリストファー・ブラマー(トルストイ)、ヘレン・ミレン(その妻)、ジェームス・マカヴォイ(秘書)

トルストイのそっくりさんではないかと思うほどブラマーの風貌が似ているし、ミレンも喧伝されているヒステリー持ちの妻をごく自然に演じているので、そっくりさん夫婦大会でもあれば優勝しそうな雰囲気の作品である。

この映画は世界の三大悪妻と呼ばれているトルストイの妻が実は夫と深い愛で結ばれていたという仮説にたっているらしいが、私にはそうは見えなくて結局何を描いているのか理解できなかったので、あまり評価しない。

***

世間には夫の考えについていけない妻はたくさん居るが、トルストイのように夫が世界的な人物の場合、仕方無いと諦めるのが普通だろう。

ところがトルストイの妻はトルストイの著作権を人民に譲渡することに徹底的に反対して自分の意見を通すことを最後まで諦めなかった。

その挙句、夫は家出をして、その移動中に病死してしまうので、結局は妻が夫を殺したも同然ではないか。

夫は若い頃は無頼だったが、後半生は聖人のようだったので、こんな妻も神のような広い心で愛していたのであって、男と女の深い愛情で結ばれていた夫婦ではないように思う。

それを無理やり、逆説っぽく、二人は愛し合っていたのだよ、だから妻も本当の悪妻ではないのだよと、言いくるめようとしていることが作り話っぽい。

***

夫の死後5年経って著作権は遺書の執行がされず、妻に戻ったそうだ。

夫の遺志をも通さなかった女はやはり普通ではない。

悪妻ぶりを描きたいのだったら、夫をかわいそうな人物として扱うべきだが、そうはなって無いので、ますます意味不明な作品になっていると思う。

この作品は一般的には評価がすごく高いが、その理由は何だろう。

妻のエゴを礼賛するサド気味の女性か、妻に従うマゾ亭主は感激するかもしれないが・・・・?

 

No.92

パリ20区 僕たちのクラス dvd 2008/128分 仏 教師ドラマ 11.10.30 

 

ローラン・カンテ 監督、フランソワ・ベゴドー

カンヌのパルムドール受賞作。金八先生とか、ゴクセンとか、GTOとか生徒の側に立った真の教育者を美化した路線とは違う。

 ここはパリでも移民が多い地区で生徒の父兄の中にはフランス語が分からない人も居る。差別され、反抗的で教師の言うことなど聞かない問題児が多い。原題は「壁の中で」で、フランス社会のはみ出し者たちに常識を教え、善良な市民にする為に、学校という壁の中で奮闘する教師を冷静にしつこく描いている 日本よりはるかに難しい状況で頭が下がるが、当然だが解決策も無く、ドキュメンタリー(ほぼ)に終わっていることに、映画として未充足感が残り、正直言って面白くない。ただ移民について考えさせられる内容は深い。

 

No.91

トゥルー・グリット 2010/110分 米 dvd 西部劇 11.10.29

ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 監督

ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ジョシュ・フローリン、ベイリー・スタインフェイド

辞書には「grit」 とは、どんな苦難にも耐える根性のこと と書いてある。

字幕では「真の勇者」と約しているが。

真の勇者を誰と見るか、少女にも見えるが、やはりJ・ブリッジス演じるアウトロー保安官の方が自然か。

ファーストシーンが独特のゆったりしたテンポで始まり、並の映画でない予感を覚え期待が高まる。この兄弟の作品はいつも独特だからだ。

それにしても、仇討ちという決まりきった話を選んだのだから、どのようにして変わった味に仕上げるのか かなり難しかったのではないか。

***(以下ネタバレあり)

父を殺された14歳の少女の仇討ち物語。

銃もろくに撃てないが、頭と交渉力で大人どもを巻き込んで行く様を面白く描いていき、結局 保安官もテキサス・レンジャー(マット・デイモン)も守ってやるべきは未来を背負って立つ子供と言う観点から、自己犠牲に近い献身で少女の望みを叶え、身を守ってやる。

蛇が出てくる。野宿の荒野では睡眠中毒蛇にやられないよう、ロープを地面に丸く敷くらしい。長いロープなら寄ってこないのか、蛇が引っかかって引っ張るから目が覚めるのか定かではないが、不思議な光景と思っていると、ラスト近く死体の腹から大きな毒蛇が出てきて、少女が腕をかまれるシーンにつながる。

全身に毒が回らないように、保安官はムスタング(少女の愛馬)を死ぬまで走らせ、後は担いで夜道を走り、医者の家に飛び込む。

荒くれ男と少女の取り合わせもいいが、一命を取り留めたことを確認して、まだ麻酔から醒めない少女を残して、何処へか去るのもやはりかっこいい。

***

安っぽい脚本ならここで保安官を死なすかもしれないが、生かして25年後に時計を進める。

サーカスで働く元保安官を訪ねた「片腕を失くした中年のおばさん」は3日前に恩人が死んだことを知る。

絶体絶命の窮地でも、身を砂(粉)にして、少女との約束を守った男の中の男、西部劇は日本の時代劇とそっくりだ。

楽しいし、現代人が忘れかけた何か大切なものを思い起こさせてくれるではないか。

何事にも代償がいる。払わずに得られるのは神の慈悲だけ。・・・冒頭に逃げた犯人に対して述べられる言葉。

 

No.90

阪急電車 片道15分の奇跡 dvd 2011/119分 11.10.28

三宅 喜重 監督

宮本信子、中谷美紀、戸田恵梨香、南果歩、谷村美月、玉山鉄二

脚本は最初オムニバス形式で進め、最後はジョイントさせるという、定型。

ジョイントのさせ方がありえない偶然性によっているので、原作者も少し恥ずかしくて「奇跡」と副題をつけたのだろうか。

癒し系のそれなりの作品であることは認めるし、私自身逆瀬川駅で下車してゴルフ場に練習でよく行ったので、とても懐かしかった。

阪急宝塚線は関西では高級と言うことになっているので、電車の中で大声で喋りまくるおばはん達にも会わなかったが、昔の話なので今は居るのかも知れない。

***

いい映画なのだが気になった点は全体的に世の中を甘く見すぎているのではないかという目線。

暴力恋人との別れ方もあんなにうまくいかないのでは? ストーカーまがいの男なら末永く悩まされるだろうし、喧嘩に強い男に解決を依頼するのも危険ではないか。

電車の中でグループに説教する勇気を持つ人などまず見たことが無いし、いじめを受けている少女の深い心の傷がホームのベンチの会話で癒されるなど御伽噺もいいとこで、苦しみ続けている親御さん達がこれを見たら腹が立ってくると思う。

おばあちゃんも完璧すぎて現実感が無いし、世直し大明神もあそこまで行くと孫がどんな人間に育つのかその後が心配ですらある。

さらに言えば、人を善人側と悪人側に分けて懲らしめるがわに立っていること。

世の中そんなに簡単ではない。善人が悪人に変り、悪人でもたまにはいいこともする、境目がぼやけているからややこしいのだ。

南果歩の脱PTA路線も、相手に理由を伝えて納得させなければ、胃痛を繰り返すだけと思うが。

****

と、まあ欠点を挙げつらえばきりが無いのが映画だが、軍オタと山菜オタの純愛カップルと高三女学生と玉山鉄二カップルの変わった設定が、コーヒーのミルク役として、癒し系のアクセントになっていることは確か。

宮本信子は少し険がある役が向いていると思っていたが、このおばあちゃん役も素晴らしく、見識をあらためさせられた。

 

No.89

トンマッコルへようこそ 2005/132分 韓 dvd 戦争映画 10.15

パク・クァンヒョン 監督

シン・ハギュン、チョン・ジョエン、カン・ヘジョン

題名の意味は「子供のように純粋な村」。

朝鮮戦争時の物語で、山中にある架空のユートピアが舞台。

そこに不時着した米国兵、背走して来た北の3人の兵士、脱走中迷い込んだ南の兵士2名、合計6名が文明の穢れがない心優しい村人に感化され、敵味方、国籍を超えた人の絆を取り戻す物語である。

朝鮮半島では未だに国土が分断されたままで、南北の緊張が続いている。この作品は御伽噺ではあるが、人が憎みあわず何とか仲良くできないものか、と言う民族の悲願を語った現実的なテーマでもある。

韓国で大ヒットだったらしいが、それだけ国民の傷が深いということだろう。

***

一昔前、アフリカ未開地の最深部には文明(近代兵器を含む)とは無縁の孤立した「ユートピア」が各所にあった。

それが本作の発想の原点になっていると思われるが、最早未開地は世界の何処にも存在しない。

ではそんな世界を作ろうとヒッピー達が都会を捨てて共同生活をした時期もあった。

そう言えば、トンマッコルはどか「イージーライダー」に出てくるヒッピー村に似ている。

でもヒッピー達も挫折して、麻薬だけ尚続けている情けなさ。

こんな世界の状況下で敢えて「ユートピア」を持ち出し、しかも朝鮮半島の緊張にリンクさせた唐突さが短所でもあり、長所ににもなっているので、評価が二分したのではないか。

***

戦場と蝶は「西部戦線異状なし」へのオマージュだろうが、雪原まで舞うはずのない蝶が舞う寓意は何なのだろう。

死者の魂が蝶になって此岸に戻ってくるという話は「歩いても歩いても」に出てきたが、紋黄蝶は夏だったが・・・・・

捕らえた捕虜の口から、24時間以内に爆撃が開始されることを知りあわてて米兵を基地に戻すが間に合わず、兵士達は犠牲になる。

村を救う為に命を捨てる構図は「7人の侍」に似ているが、「7人の侍」が盗賊対武士という図式に対し、韓国軍兵士が味方の米国機に機銃を向けるシーンで戦争そのもを告発するという構図に変えている。

***

戦争映画は邦画でも作られるが、韓国映画とまったくニュアンスが違う。その中でもさらに違うのが本作である。

 

No.88

最後の初恋 2008/97分 dvd 米 ラブ・ストーリー 10.14

ジョージ・C・ウルフ 監督  ニコラス・スパークス 原作(君に読む物語)

リチャード・ギア、ダイアン・レイン、スコット・グレン

先が読める簡単な筋書きを、少しでも厚くする為、双方の家族問題から家族愛のあり方を提起したのが、返って純愛ストーリーを弱くしてしまった結果になっているのではないか。

ダイアン・レイン43歳、リチャード・ギア59歳、大人の恋は何処か醒めているのだろうが、ひたむきさが伝わって来ず、そのためクロージングの悲劇の盛り上がりがイマイチだった。

しかしこの映画の長所は、何といってもノースカロライナの海岸の景観だろう。

アウターバンクスと言って、日本で言えば天橋立のような、100km以上も象の鼻のように砂浜が海に突き出し、ところどころに島があるさまが異様。

ローダンテというその島の海岸のリゾート地に建つ、波で洗われるお化け屋敷風ホテルや、赤く光る海や野生馬など、本筋以外で感心させられる作品。

 

No.87

一枚のはがき 2010/114分 戦争悲話 テアトル新宿他上映中 11.09.25

新藤 兼人 監督 脚本 

豊川悦治、大竹しのぶ、六平直政、大杉漣、柄本明、賠償美津子

99歳になる監督が「遺作」として作った自伝的作品。

生涯現役が信条の監督が、その為だけの作品かと思って敬遠していたが、友人の感想を聞いて思い直し、観にいった次第。

いい映画だった。

日曜日の第1回目(10:00〜)の劇場は観客数人。若い人にこそ見てもらいたい内容だが(監督もそう思っているはずだが)、年配客ばかり。

戦争体験を若い人に語り継ぐには、アニメとかAKBや嵐を抜擢するとか、若い人がすぐ飛びつくような仕掛けでも考えなければ駄目な時代かもしれない。

***

この映画は作り方が古いかというと決してそうではないのだが。

例えば前半は短いカットをトントン重ね、まるで漫画のコマめぐりのようにテンポ早く進み、新しさを感じる。

後半に長回しもあるが、全体として深刻な題材を深刻ぶらずに客観的にさらりと描こうとしていて気持ちが良く、むしろ大杉漣が手拭頬かむりの夜這い姿で現れところなどを見ると、喜劇調の仕上げを意識した作りと思われる。

***

俳優では豊悦、六平、柄本、など皆 素晴らしいが、特に大杉の憎めない悪役が実にぴったりした。

ただ、大竹に関して言えば、もともと芸達者な人だけど、演技が少しオーバー過ぎる気がしたがどうだろう。

多分、監督の指導でそうなったと思うが、この作品は女の一生みたいな女性を描く作品だけに、それが成功しているかどうか意見が分かれるかも。

***

夫婦で水桶を担ぐ場面は「裸の島」を再現した。

監督の最高傑作(私観)を遺作に挿入し、大竹に乙羽の姿をダブらせたのだろう。但し、監督には失礼だが、桶の担ぎ方は大竹の方が上手いか。

ヨハネ伝の「もし一粒の麦死なずば・・・」で再生を表すラストシーンも何となく似ているが、「労働こそ人生」で、決して休もうとしない監督自身の生き方の真骨頂が表現されているのだろう。

気軽にもっと皆に見てもらいたい作品である。

 

No.86

彼女が消えた浜辺 2009/116分 dvd イラン ドラマ 11.09.22

アスカー・ファルハディー 監督

ゴルシクテ・ファラハニ、タラネ・アリシュスティ、シャハフ・ホセイニ

えらい美人が二人ばかり出てくる。

ペルシャ人はインド人と同じアーリア系だから、目が大きく彫りが深い、エリザベス・テーラー系の美人だ。

チャードルで体を隠しスカーフやヴェールで顔を隠す、紫外線から体を護るという効用もあろうが、明らかに男性の発情を抑えるという宗教的目的が強いと思う。

現代のイランでは写真のように顔を人前にさらすことは普通になっている。

将来的にはハリウッドにもイラン女性の進出があるかも知れない。

***

冒頭シーンはまるでイランのイメージではない。乗用車やUSVに三家族が分乗してトンネル内を進む。窓を開け体を外に乗り出しながら、大声で奇声を発しながら進み、反響遊びしをしているシーン。

海岸の別荘についても、でたらめ踊りを始めてふざけあったりたり、結構「たわいない」のだ。

厳格な宗教国家というイメージだけでイランを語ってはいけない。

***

この作品はある女性の失踪事件をミステリー仕上げにした、室内劇風の心理劇で、一見イスラム法と関係ないように見えるが、その「婚約」「結婚」に関する考えを理解しないと、本当は良くは分からないと思う。

「婚約」は役所に届け、人によっては公告までする。

だから婚約解消は大変で、婚約を済ませた女性が他の男性とグループと旅行することなど、たとえ、友に強要されたにしても、かなりの罪悪感が伴うのだろう(この映画のケース)。

「結婚」は親の都合が優先し、男性優先にも進行する。

但し、どこかの国であったように、婚約した大使が初めて女性のベールを取って顔を見たら、ひげが生えて目が斜視だったので、婚約解消をしたら多額の賠償金を支払うことになったと言う話もあるし、必ずしも女性だけが不利と言うわけでもない、良くは分からないが。

この映画のケースは、女性の本音は婚約解消なのだが、それ決行する勇気もなく、づるづると友人の誘いに乗った事が、事件を複雑にしてしまった。

婚約問題がなければ事件は発生せず、三家族の責任なすりあい、エゴ、欺瞞、喧嘩 などなかったのだから、婚約者女性の置かれた立場の弱さがベースになっている。

***

それにしても、この監督はグイグイと飽きさせずに最後まで引っ張り、地味な題材を見事な心理劇に仕上げた、大した手腕ではないか。

イラン映画はどれも一見の価値ある優作ぞろいである。何故だろう?

 

No.85

十三人の刺客 2010/141分 dvd 時代劇 11.09.20

三池 崇史 監督

役所広司、稲垣吾郎、市村正規、山田孝之、松方弘樹、伊原剛志、伊勢谷友介、沢村一樹、吹石一恵、松本幸四郎、平幹二郎

この映画では、江戸時代末期の最悪の暴君として、明石藩主 松平斎詔(なりつぐ)を挙げているが、事実とは関係がないらしい。

なぜか1963年の同名映画も同じ過ちを犯しているらしい。

その次の斎宣がどうもそのモデルらしく、徳川将軍の弟とか参勤交代中の事件とかは史実。

****

俳優やセットに金をかけた娯楽大作である。長い戦闘シーンがウリで確かに見ごたえはある。

怨恨の恨みを晴らすと言う意味では「忠臣蔵」に、多勢に無勢が勝つという点では「七人の侍」に似ているので、新鮮味がやや薄い感じは否めないが。

****

配役では、意外にも稲垣吾郎が良かったこと と 井原剛志の存在感が際立っていたこと が収穫だが、伊勢谷友介は野人にはなりきれず無理があったと思う。

 

No.84

再会の食卓 2010/96分 dvd 中国 11.09.19 

ワン・チュアンアン 監督 (トゥヤーの結婚)

リサ・ルー(ユイアー)、リン・ワォン(イェンション)、シュー・ツァイゲン(ルー)

 中国共産党と国民党が戦い、敗北した国民党の兵士は台湾に逃げたが、家族を本土に置いたままという人も多く、家族離別は数十万人にも及んでいたらしい。

この交流が認められたのは40年後で、この間故郷が恋しくて海峡を泳いで渡ろうとして命を落とした人も少なくなかった。

朝鮮、ドイツ の家族離別の悲劇は既に映画化もされているが、中国の場合は本作で初めてではないか??

 結婚して子供が生まれてすぐ、この夫婦は生き別れになり、夫々再婚して子供を持ち 40年が経った。

台湾のイェンションは妻が死んだので、上海に居る元妻のユイアーを連れ戻すべく帰国するが、ユイアーは現在の夫ルーと子供達を残して台湾に行くことに迷う。

この脚本はベルリンで賞を獲得したが、普通の展開なら若き頃の短い(1年程度の設定)恋より、長い時間が詰まった現在の夫を、躊躇なく選ぶところだろうが、このケースは迷った挙句、付いて行く決心をする処が変わっていて面白い。

決心の理由をユイアーが子供達に「お母さんは家族のために、これまで人生を犠牲にして尽くしてきた。もう年もとったから今度は自分のために生きたい」と説明する。

かなり現代的な思考である。中国もある意味 家庭像が変化しているのだろう。

***

ところが、ルーが中風で倒れ、イエンションは人の良い彼を一人残す訳にもいかず、結局ユイアーを諦めて帰る羽目になるのだが。

以上のようにこの映画は老人の三角関係を描くことにより、戦争を告発しているように見えるが私には、とことん人が良く 妻の幸せの為なら 自分が犠牲になってもいい と必死にご馳走を作ってもてなすルーの人柄に、イエンションがほだされ、彼も又得意の料理を作り応える という昔の敵味方の軍人同士の間柄を超えた 「男の友情物語」のように映った。

この二人の自然な演技がまことに良い。温かい心が画面ににじみ出てほほえましい。

自我丸出しの人が多い中、自分を捨てられる人が結局は強いと言うことを、再認識させられた作品であった。

中国はやはり懐が深い。

 

No.83

泥の河 1981/105分 モノクロ dvd  少年ドラマ 11.09.18

小栗康平 監督  宮本 輝 原作  重森 孝子 脚本

田村高廣、藤田弓子、加賀まり子、芦屋雁之助

作られたのは昭和56年だが、原作設定は31年なので古さを出す為に、わざわざモノクロ作品にしてある。

原作者の幼少期をモチーフにしているらしい。

彼は神戸出身だが、「泥の河」とは大阪港にそそぐ安治川の河口付近を指し、水面が貯木場になっているあたり。

岡には港湾労働者はじめ零細企業労働者が多く住んでおり、大阪でもかなりな貧困地区を舞台にしている。

昭和31年というと、朝鮮戦争特需の神武景気を経て「もはや戦後ではない」と白書に記され、映画にも出てくる栃錦・若乃花の大相撲名勝負も蕎麦屋のTVで観られるようになり、まだ高価ではあったが電化製品が普及しはじめた頃であった。

だが、こうした世の中の流れに取り残され、相変わらず終戦直後の貧しさに喘いでいた人たちもこの辺りには多くいた。

映画ではこのような人たちの生活を「スカ」と表現し、ファースト・シーンで登場する雁之助演じる博労(時代は自動車運搬になりつつあったが、まだ馬車で荷物を運搬するのを生業とする)が馬に轢かれ死ぬ様を、「スカ」のように生き、「スカ」のように死ぬと、満州帰りのうどん屋主人村高廣に言わしめている。

要するにこの作品は時代に取り残された未だ底辺に生きる人々を愛情をこめて描き切ることがベースになっていると思われる。

***

うどん屋は道路から階段で下った水際(河川敷)に建っており、今にも潰れそうなつぎはぎだらけのバラックだが、客もあり、一家の生活は慎ましいが成り立っている風情。

そこの一人息子 信雄は小学校3年生だが、ある日同年の少年と友達になった。

その少年の名が「きっちゃん」、姉が「ぎん子」。この子らは母と3人で舫(もや)い船に住んでいる(水上生活者)。

父を亡くし、母は船で客をとらざるを得ない悲しい定めを、心の傷として負っている。

学校にも行けない身だが、この子たちは他人に優しく、素直でけなげな良い子たちである。

信雄とうどん屋の夫婦はこの子達と仲良しになり、交流を深めるが・・・・・・。

*****

この作品が成功しているのは、貧しいが徹底的に善良な庶民という状況設定、戦争の暗い影、子供目線から見た社会の姿、など原作の素晴らしさの他に、カメラワークが見事で、撮影場所も製作当時は既に開発が進んでいたと思われるが、31年当時を再現できたことが大きいと思う。

それに、田村高廣と藤田弓子も実にうまい演技。脇役陣も申し分ない。

貧乏ゆえの見えない抗しがたい力が、無垢な子供の心を引き裂いていく、「ひと夏の出会いと別れ」を、3人の子供達の名演技が際立たせた事も、最後に書いておきたい。 

久々に感動した一作。

 

No.82

利休 1989/135分 dvd 伝記 11.09.12

勅使河原 宏 監督  野上彌生子 原作   三国連太郎、山崎務、三田佳子、岸田今日子、山口小夜子、松本幸四郎、中村吉右衛門、坂東八十助

利休と秀吉の関係は謎に満ちており、解釈が分かれている。

野上さんは朝鮮出兵をめぐる意見の衝突を主因に挙げている。

利休はお茶の宗匠、商人、にとどまらず、政治家であったので秀吉がその影響力を恐れ、切腹させたという見方。

肝胆合い照らす間柄だったののなら、意見の仕様もあっただろうに、本当だろうか。

大徳寺山門事件をはじめ、石田光成の讒言に乗ってしまったというのも、そんな軽率な人間とも思えないので、どうもしっくり来ない。

***

茶道というのは戦場に赴く武士がこの世の別れとして、心の整理をするものだったらしい。

物質的とは反対の精神的なもの、自我に執着しない澄んだ境地が求められ、茶室の会話にもある程度の品性が必要だったのだろう。

秀吉は無教養で野心丸出しの成金趣味だったとしたら、もともと利休とは異質の人間で、秀吉は相当な劣等感を持っていたのではないか。

利休は世渡り上手で、秀吉に取り入っていたが、それが本心ではないと秀吉に見破られ、疎ましくなった。

このコンプレックス説の方が理解しやすいが。どうだろうか。

***

それはさておき、この作品には色々な茶花や各種意匠が登場するが、これがことごとく見事で、はっと息をのむ美しさである。大したものである。

草月流は生花の流儀だが、生花の枠を超えた前衛的なものもあり、特に外国人が見ると事の外、芸術性の高い新鮮な映像に映ることだろう。

以上のように確かに質の高い映像ではあるが、これは言わば様式美で、観た後に感動するか否かは別である。

残念ながら私には物語として十分な内容が詰まっているようには思えなかった。

利休という人が十分には描ききれてなく、そのため感情移入しずらく、切腹が悲劇に見えてこなかったのがその理由だが。

少し、へそ曲がりかな?

 

No.81

未来を生きる君たちへ 2010/118分 デンマーク、スウェーデン 少年ドラマ 11.09.06 新宿武蔵野館他上映中

スザンネ・ビア 監督

ミカエル・ベルスブラント(医師アントン)、トリーヌ・ディルホム(妻マリアン)、ウルリク・トムセン(クラウス)

2011年オスカー外国語映画賞、2010年ゴールデングローブ外国語映画賞。

女性監督が「暴力」をテーマに取り上げた。

暴力を受けたとき、仕返しすべきか、無抵抗を貫くべか、難しい問題に真正面から取り組んでいる。

この映画では、学校でいじめられた時、ゴロツキに殴られた時、殺人鬼が命ごいにきた時(医師として)、どうすべきか、どうなってしまうのかを厳しい目で追求。

国家間の戦争も、市井の争いもすべてこの「仕返し」が発端となっていることを考えると、極めて重要なテーマ。

でもこの問題は難しすぎるのか、多くの監督が避けてきた。

我々自身も、感情のままにあるいは利害得失判断だけで毎日を過ごし、暴力に対するあるべき姿を考えてはいない。

まずは、こんな問題に取り組んだ監督の勇気に敬服する。

****

アントンは無抵抗主義で、憎しみの連鎖を断つことを子供に教えるが、子供には理解できないで ついに・・・。

そして彼も又、アフリカの難民キャンプでの医療行為中、ついに堪忍の緒が切れて・・・・。

結論的には限界付き「無抵抗主義」という常識的な線に終わっているのだが、「仕返し」がその後 生んでしまう悲劇にも触れ、困難を乗り越えていく生の強さも印象に残る作品。

***

この脚本の構成は重厚である。

過酷なアフリカの難民キャンプと、一見平和なデンマークへの頻繁な舞台転換。

夫々深い問題を抱えた二家族を並行的に追って、それらがすべて未来を生きる息子達の将来のテーマに集約されていく。

この作品は、子供を持つ親が子供に教えることを考えさせる、親教育の映画なのだろう。

それにしても、世の中は難しいとつくづく思わされる。暴力、戦争、どれも解決に正解が無いことに愕然とさせられる。

だから、起伏があって生きる意味があるのかもしれないが。

 

No.80

アバウト・シュミット 2002/125分 米 dvd 定年物語 11.08.22

アレクサンダー・ペイン 監督

ジャック・ニコルソン、キャシー・ベイツ

ウルトラ リアリズムとも言うべき凄い映画。人間の汚さ、愚かさ、冷たさ、自己中心を趣味悪いまでに暴いている。ラストに希望らしきものも見られるが、無垢な者にさえゲロを吐き続けた自己への後悔の涙か。

妻を良く思っていない夫は多いと思うが、死んでからもイビキや体臭のくささなどボロクソの思い出でばかりで愛のかけらも無いし、娘の婚約者やその家庭の描き方は無知蒙昧、俗悪、異常性ばかりで容赦が無い。     キャシー・ベイツが物凄いたれ乳まで披露して、この異様家庭を演じているので殊更である。

でもシュミットから見た他人ばかりがロクでもない訳でない、彼自身も会社での存在感を過大評価していて、退職後自分が居なくなってさぞ後任が困っているだろなどと、訪問して迷惑がられたり、地域社会でも他人の社交辞令を真に受けているが、それが口だけだと言うことも理解していない。そして突然他人の妻に突然キスして、たたき出されたりするエロ爺でもある。極め付きは、慈善的養父援助にも拘わらず、自身の他人への不満をたらたら無垢な7歳の孤児に書き送り続けるような、自分のことしか頭に無い愚か者爺なのだ。

この作品は世間知らずの会社人間、定年馬鹿親父に対する猛省をも促すしているのだろう。           見る価値はかなり高い。ジャック・ニコルソンはそのまんま演技と思われないぐらいハマって恐ろしい。

 

No.79

イングリッシュ ペイシェント 1996/162分 米 dvd ラブストーリー 11.08.21

 

アンソニー・ミンゲラ 監督

レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、クリスティン・スコット・トーマス、コリン・ファース

96年アカデミー賞で 作品賞、監督賞など11部門を制覇した長編力作。

監督自身が脚本を書いているが、何処か異常な展開が気になる。

私が気になる点の第一は、砂漠に置き去りにされたキャサリンを救うために、アルマシーは敵に重要な地図を渡して取引をする点。

恋人を救う為にはどんな事も辞さないほど深い愛だったと言いたいのだろうが、戦時下に敵に情報を売ることは友軍に多大な犠牲者が出ることを意味する。

ここは愛国を優先して、自己犠牲の道を選ぶ脚本が常道だろう。

売国奴に愛する資格を与えるセンスが気になる。

その第二は、ハナが一人で誠心誠意看病していたpatient(アルマシー)を、恋人が遠方に行くからといって、見捨てて(安楽死させて)ついて行ってしまうことである。

それまでの献身ぶりを描きすぎた為、かなり無理がある。

これも作者としては、愛に殉じる姿として、恋愛至上主義に徹しているのだろうが、一貫しないタッチは否めないと思う。

****

砂漠の風景、アラブの雑踏、衣装などラブ・シーンと対比させ彫りが深い映像になっており、ヘロドトスの本が縦糸となって、悲恋物語を導くのも斬新。

映画の魅力がたくさん詰まった力作だが、少し長いか。

 

No.78

フォー ザ ボーイズ 1991/145分 米 dvd あるエンターテナーの生涯 11008.19

マーク・ライデル 監督

ベッド・ミドラー、ジェームズ・カーン、ジョージ・シーガル

第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、を経て今日に至る、戦場を主舞台とした芸人ドラマ。

主人公はミドラー演じる、わがまま人気女性シンガー 「ディクシー」。

気性の激しい彼女を助け、共に前線の兵隊を慰問し続けるする芸人コンビの片割れがJ・カーン演じる「エディー」。

この二人が、若い頃、中年、90歳を越える老人まで、を夫々同一人物で演じ切るので、メークの力もあろうが役者というものの凄さを知ることになる。

(ミドラーは元々歌手で、美人ではないがゴールデングローブ賞の主演女優賞を2度もとっている演技派。だから歌って踊る本作のような役柄に不足のありようが無いが)

***

戦地慰問には危険が伴う、だから愛国心がなければ長くは続けられない。が彼らを支えたのは決して単純なそれだけではない。

二十歳にもならない若い兵士が朝鮮の戦場であっけなく命を落とす理不尽さをどうしても許せなかったり、ベトナムでは美しい自然をすべて焼き尽くす作戦に疑問を感じたり、本国での「赤狩り」の実態を暴いたり、国に対する不信が多く描かれている。

結局、彼らを支えたのは同胞愛、人類愛であり、その気にさせたのは彼ら自身が叔父やいろんな人やスタッフに温かく支えられているという愛や信頼だったのではないか。

***

エディーは常識人、ディクシーは直情的であるため、会えばケンカの日々。でも舞台では不思議と名コンビだった。

でもついに、エディーが無理に誘ったベトナムで、ディクシーは大尉で従軍中の息子と再会できるが、敵襲に会い目の前で息子が爆死するという悲劇に遭い、これを境に逆恨みして絶交してしまう。

それから25年が経って大統領が表彰してくれるという。

ディクシーは夫も大戦で失っているから、大統領なんてくそ食らえ!と無視しているが・・・・・。

***

考えてみれば日本は大戦後、戦争が無く平和だったが、米国は朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争と戦争続きだった。

これらの戦争が、米国の家庭に暗い影を落としていることを、日本人は過小評価している気がする。

***

スケールの大きい、出来の良い作品だと思うが、問題が無い訳でもない。

ひとつは、朝鮮戦争の場面が、いかにも安普請で臨場感が無いことと、コントがシモネタに過ぎたため人によっては嫌うかもと言う点だが、どうだろうか。

感動必至の名作といってもいいが、二人の愛の形をどう解釈するかが気になる映画でもある。

 

No.77

Queen Victoria 至上の恋 1997/106分 英 歴史秘話 bs 11.08.12

ジョン・マッデン 監督  ジュディー・デンチ、ビリーコノリー

 

近世英国の黄金期を築いたヴィクトリア女王(1819〜1901年)は当時としては82歳の長寿を全うした。(現エリザベス女王に長寿記録を抜かれたが)

在位も64年と最も長かった。(現エリザベス女王は59年なので、抜かれる可能性はある)

夫は従兄弟のアルバート公で、仲むつまじい間柄だったが1861年死別。42歳の女王は悲嘆にくれ、3年間引きこもっていた。

このあたりから、この物語は始まり、この引きこもり状態から救ったのはブラウンというハイランド地方の僕で、女王はこの男と恋仲だったらしいが、彼の日記が未発見なので確認されてない。

***

ジュディー・デンチはアカデミー助演女優賞(恋に落ちたシェークスピア)をもらうなどの名女優だが、本作でもゴールデン・グローブ賞の主演女優賞をもらっている。

本作品は彼女の演技力に尽きるのだが、私は本作に限って恐れ多くも、あまり評価しない。

その第一は42歳の女王を演じるにしては、63歳のデンチではあまりに無理があること。

これは彼女の責任というよりは、キャスティング・ミスなのだが、年の割りにも顔の皮が垂れ下がりすぎで、はっきり言って正視に堪えない。

さらに言えば、女王といえば威厳があり、どこか品が漂うものだろう。

ところが私には場末のばあさんにしか映らなくて、確かに歩き方とか姿勢とかはそれらしいが顔の表情にそれらしさが無いといわざるを得ない。

***

白いウエディング・ドレスを初めて着たり、分厚い礼服を脱ぎ捨ててファッショナブルな服装をした、革新的な女王だったのだから、女性としても魅力のある人だったと思う。

デンチの女王には女性的な魅力がまったく感じられないのは私だけではないと思う。

それが恋愛話を演じるのだから、不自然な話に思えるのも当然ではないか。

 

No.76

シャーロットのおくりもの 2006/97分 米 dvd 動物物語 11.08.09

ゲーリー・ウイニック 監督

ダコタ・ファニング、シャーロット(蜘蛛・吹き替え 鶴田真由)

E・B ホワイトの原作は全世界で4500万部売れたという超ベストセラーである。 

米国では豚が主人公の映画が時々作られる。わが国では皆無。何故・・・。

ストーリーの特徴は@嫌われ者の蜘蛛が実はやさしく、知恵者であるという偏見見直し A蜘蛛が蜘蛛の巣に人間の文字を書くというアイデア B自己犠牲の美しさ であろう。

@の真意は、ねずみもこの映画では重要な役割を果たすが、人間が嫌っている動物にも心があり、ひつじや牛や馬やアヒルと同じように、可愛がってあげなければいけないという動物博愛主義。うがった見方をすれば黒人も黄色人種もいじめてはいけないという白人側の道徳?

Aは、蜘蛛の巣に蜘蛛が文字を書くというアイデアそのものがかなり独創的なだけでなく、蜘蛛が字を書けるわけは無いのに書くという「奇跡」。奇跡はキリスト教の根幹にあり毎日が奇跡、それに気がついていないだけ。生きていることが奇跡という、信仰心。

Bは、蜘蛛は冬に死ぬが、残した卵は春に孵り、命は継承される。生物は死を免れないが、死は世界の終わりではないという輪廻思想。

***

映画としての特徴は、有名な名子役ダコタちゃん。演技がめちゃ上手い。

それに牧歌的な美しい田園風景と、動物に演技させるというCG処理の見事さであろう。

シャーロットの声は米国ではジュリア・ロバーツが日本では鶴田真由、他に高橋英樹がナレーションを勤め、お笑い芸人のカラス役など、吹き替え陣も頑張っている。

豚のつぶらな瞳がとても印象的な佳作。

 

No.75

原爆の子 1952/100分 モノクロ bs 原爆悲話 11.08.08

新藤 兼人 監督   乙羽信子、滝沢修、宇野重吉、北林谷栄

 

広島原爆投下7年後の映画である。

製作当時、国際映画祭で表彰の動きがあったのを、米国が止めたと言われている。

因みに、米国でこの映画が公開されたのは、今年2011年の4月だというから驚きである(59年後)。

米国以外では今でも尚、上映され続けている、原爆映画の代名詞みたいな作品。

その意味でこの映画が果たした社会的意味は非常に大きい。

***

今村昌平の「黒い雨」とか、黒木和雄の「父と暮らせば」など、原爆を題材にした名作は多いが、時を経てからの作品なので、風化阻止の役割に対し、本作は世界で初めて使われた核兵器がどんな爆弾なのかを知りたいと言う、民衆の最初の欲求に沿っているので、かなりの衝撃を与たと思う。

原爆は通常爆弾と違い、時間が経っても原爆症という形でじわじわ命を奪うものであること。遺伝子を傷つけるので、不妊症、体内被曝による子孫への影響など、初めて知った人も多いのではないか。

***

しかし、この作品は反戦、反核だけを声高に叫んでいるのではない。

意外と淡々と語っており、さらに悪い人ばかりではない、いい人も居るんだよ、あきらめずに強く生きようよというメッセージを、教え子の姉の婚姻話のエピソードで語り、単なる悲話話に終わらせていないところも素晴らしいと思う。

***

ウラン型広島原爆は火球の周りの温度が数万度、地表でも3〜6千度と言われている。

爆風は音速を超え、建物をなぎ倒していく。

地獄である。

でもその後、ビキニ環礁で行われたプルトニューム型爆弾の実験では、広島型の千倍の威力が実証された。

このような恐ろしい爆弾が、現在世界には約2万発あると言われている。

冷戦当時は7万発であったから減ってはいるものの(どのように処理したのか不明、廃棄方法が無く多分低温保存しているだけではないか)、依然として人類最大の脅威。

***

ジョン・レノンの「イマジン」が歌われてから40年も経過した。

国境の無い平和な地球を夢見ると同時に、核兵器が将来使われた時の地獄も想像してみよう。

 

No.74

戦場でワルツを 2008/90分 イスラエル、フランス、ドイツ、米 dvd 戦場アニメ 11.08.05

アリ・フォルマン 監督

 

異色アニメである。

カラーだが彩度の高い色を抑え、地味な色彩でまとめている。

そしてこれはドラマではなく、ドキュメンタリーのアニメ化という新趣向。

でも作画技法は稚拙で動きの不自然さは否めず、一こま漫画をパラパラめくった程度にしかみえない。

多分敢えてそんな作りをしたのだろう。

***

1982年イスラエル軍は占領地にあるレバノン難民キャンプで大虐殺をした。

これに参加していた主人公はその時の記憶を喪失してしまった。

心理学的にはよくあることで、悪夢を無意識に消し去る、自己防衛本能らしい。

毎晩不思議な夢をみるので、その解決策として、欠落した記憶を取り戻すべく、かつての同僚をヨーロッパ各地に尋ね真相を究明する筋書き。

これは監督自身の体験とのこと。

***

この作品が賞賛された最大の理由は、イスラエル側からイスラエルを告発したというだけでなく、戦場における兵士の心の奥底に迫ろうとする冷静な姿勢ではないか。

兵士の記憶装置内に起こる、悪夢の修正、捏造、忘却。

戦場のベイルートから一時休暇でエルサレムに帰って過ごす24時間。エルサレムの嘘のような平和なざわめきと、戦場の恐怖との落差感がもたらす狂気。

初めて市街戦に遭遇すると、テレビゲームの感覚で高揚し、これはゲームだからと思い込むことで自己防衛するが、これは現実だと気づかされると恐怖感で人間が狂ってしまう。

などなど、兵士の心理からみた戦争の実態を、インタビュー形式で積み重ねていく。

****

戦争には必ず虐殺がある。アウシュビッツ、ソンミ、南京、ウガンダ、・・・・・。

反戦映画や小説など膨大な告発があるが、どれほどの抑止力があるのだろうか。

ある種の無力感からこのような、異色のアプローチが試みられるのだろう。

***

「人は他人を殺めてはいけない」

ユダヤ教「モーゼの十戒」にも書いてある。

コーランにも5つの大罪に殺人を掲げ、禁じている。

仏教は動物の殺生さえ禁じている。

人は理屈をこねすぎる。殺人を禁じた神の言葉に素直に従えばいいのに、残念である。

 

No.73

塔の上のラプンツエル 2010/101分 米 3D 童話アニメーション 11.07.27 吉祥寺プラザ他上映中

ディズニー プロダクション

バイロン・ハワード、ネイサン・グレノ 監督

グリム童話「髪長姫」のアニメーション。

ディズニーも壁に当たっているのだろう、従来の教科書風な童話から、現代っ子に受け入れられるような軽いテイストも匂う作品。

3Dである。夏休みである。子供でいっぱいかと思いきや、大劇場に12〜3人。子供連れが3組ぐらい。勿体無ぇ〜。

 

連れ去られた王女の誕生日に、国王が空飛ぶ「ランタン」を放つのを皮切りに、国民が無数の「ランタン」を空に放つ。

劇場のあちこちに「ランタン」が飛び交い、手を伸ばして捕まえようとする子供も居る。

3Dはやっぱりアニメが良い。

 

原作が良く、作画がよく、3D、文句無く楽しいし、映画が夢の世界だと言うことを大人も体感出来る。

愛の自己犠牲に神が応える奇跡。

単純だが、不滅の題材。

 

早くも、dvd化されているが、劇場に行って貰いたい。

 

No.72

誰も守ってくれない 2008/118分 dvd 犯罪者家族悲話 11.07.25

君塚良一 監督

佐藤浩市、志田未来、松田隆平、柳葉敏郎、石田ゆり、佐々木蔵之介

最近の邦画はテンポがよく、小気味いい。

出だしからどんどん進み、ぐいぐい引っ張りるのは大したものだ。

忙しく、せっかちな最近の日本人にとって、泰正名画風なスケールの大きい洋画が敬遠されるのも分かる気がする。

ところが、本作はクロージングに難があると言わざるを得ない。

まさかという所で、携帯電話の電源が急に切れるように、突如終わるのである。

ラストから脚本を書けばそんなことは無いと思うのだが、残念である。

やはり全体を俯瞰した構成も意識してほしい。テンポが良いだけにことさら残念。

それに、佐々木蔵之介演じる記者の存在意味がいまいち不明だと思うが。

 

No.71

理由 1995/102分 米 dvd クライム・サスペンス 11.07.21

アーネ・グリムシャー 監督

ショーン・コネリー、ローレンス・フィッシュバーン、ケイト・キャプショー、エド・ハリス、スカーレット・ヨハンセン(子役)

時々ある,観客を騙して無実の罪と思わせて、最後はどんでん返し、実は真犯人だという線。アガサ・クリスティーなど殆どそう。

でも本作はその展開が実に自然な為、誰しも騙されるのではないか、そんな作為に満ちた映画である。

私はこんな映画が面白いと思っている一人だ、監督のマジックに騙されるのも又楽しいから。

アメリカ南部は白人による根強い黒人差別が残っていることが知られているが、警察、検察はその意味で無法地帯で、犯人を自供させるまで痛めつけたり、ひどい場合はこの映画のようにペニスを切り取ったりする横暴さが、物語の根幹にある。(最近はそれほどでもないかもしれないが)

真犯人が弁護人のハーヴァード大学教授を騙して、無実を勝ち取る巧妙さも面白いが、以前別件で逮捕された犯人が受けた屈辱を晴らす為、如何なることも辞さないという筋書きも少し無理があるとは思うが、脚本としては秀逸。

エド・ハリスはじめ役者がそろい、月並みのクライムサスペンスではない。

映画の楽しさを伝える一作である。

 

No.70

胡同(フートン)のひまわり 2005/132分 中国 dvd ホーム・ドラマ 11.07.22

チャン・ヤン 監督

ジョアン・チェン(母親)、スン・ハイイン(父親)、リュウ・ツー・フォン

フートンとは北京旧城内の狭い路地のことで、歴史的建造物が残り観光名所になっているが、四合院作りも何軒かの共同生活の場になっていたりして、庶民の住む下町のイメージ。

強制的な近代的アパートへの立替が進み、古き良き世代にとっては、過去の思い出を失うというつらい状況にあるらしい。

 

この作品は父と息子の葛藤を描いている。

父は息子を深く愛しているが、その愛し方が親の方針を押し付ける一方的なもので、息子を傷つけてばかりいる。

良い父親になることは難しい。子供を自由にさせすぎると、道を過ることもあるし、厳しすぎると反発心で家を飛び出してしまうこともある。

でもここに登場する父親は古今東西、父親のひとつの典型であるから、観客は自分や自分の親に照らし合わせて、いろいろ考えさせられてしまう。

曲がったことの嫌いな厳格な父である。役人への贈賄をして公務員住宅に入ろうとする妻と対立、フートンを動かない。

頑固な父、子供を縛る父、だからと言って子供を愛してないのではない。愛し方が分からないのだ。

 

文化革命で収監されていた父が6年ぶりに帰ってきて、フートンの中庭にひまわりを植える。

20年ぐらい後に、父は家庭を捨てて音信不通になっているが、息子に子供が出来た日に、息子の家の前にはそっと「ひまわり」が置いてあった。

息子の名前は向陽(ひまわり)という。

 

父が友人を失う場面とラストのひまわりのシーンに涙がどっと溢れてくる。

文化大革命から開放路線へと変わり行く中国の社会を描きつつ、ボタンの掛け違いになっている父と息子の夫々の愛を、痛たましく、悲しく謳った佳作であった。

 

No.69

乳母車 1956/110分 モノクロbs ホーム・ドラマ 11.07.14

田坂具隆 監督  石坂洋次郎 原作  石原裕次郎、芦川いずみ、宇野重吉、新珠三千代、山根寿子

父がオメカケさんを作り、子供まで出来ている。母は我慢をしているが、最後は家を出て行く。

オメカケさんもその弟もとても良い人たちで、娘は両者の間で心が揺れる。

状況設定がかなり深刻である。

このもつれた関係を若い二人が解きほぐそうと努力する。

実利的で、自由な若者気質と、人間の割り切れない心情に拘る人情気質を対比させ、世代間の違いが浮き彫りになる。

同時に、男にすがって生きる女性から自立する女性への転換を描き、共に新時代の幕開けを予見している。

要するに、原作がなかなか良く、演技人もかなり魅せる(裕次郎含め)ので、作品として上級なことは間違いない。

昭和31年のデパートの屋上や鎌倉駅、九品仏住宅街など時代をしのばせる画面も今となっては貴重。

あのような時代によくこんなテーマを映画化したものだと驚かされる。

監督は「5番町夕霧楼」の方が有名だが。

 

No.68

バビロンの陽光  2010/90分 イラク他6ヶ国  戦争悲話 銀座シネスイッチ上映中 11.07.08

モハメド・アルダラジー 監督

ヤッセル・ダーブ(アーメッド)、シャザード・フセイン(祖母)、バシール・アルマジド(ムサ)

この作品は筋書きがシンプル過ぎて、物語性が殆んど無い。

ざっくり言えば、イラクの今日的問題を提起した、ドキュメンタリー的作品だから、多くの人に見て考えてもらう趣旨だと思うが、残念なことに広い劇場は閑散としていた。

イラク戦争でフセインが倒れた直後,イラク北部クルド人地区からバグダッドを経て南部のナシリアの刑務所に居るという父を探して、祖母と過酷な旅をする少年の物語である。

 

帰りに寄った憧れのバビロンの夕日のラスト・シーンが唯一美しいシーン。

イラクは何処も、砂漠と破壊されつくされた瓦礫の山らしく、900kのロード・ムービーにも拘らず画面は変化に乏しく、荒涼とした画面が連続する。

それが監督の狙いだろうが、超リアルだからニュース映画のようだ。

 

出演はすべて素人、演技っぽくないのが、荒涼とした風景に似合うのが又、奇妙。

要するに、何もかも荒廃した町や民衆の混乱に慣れた人でないと、画面に馴染まないのではないか、そんな気さえする。

好き嫌いはあろうが、たいした素人達である。

 

フセイン政権(バース党)はクルド人を虐殺し、砂漠に埋めた。その数18万人ともいわれている。

共同墓地といわれる埋設箇所が次々発見され、身元確認が進んでいるが、不明者も多いらしい。

(生死が分からず、白骨化した死体を掘り出し、衣服や認識票で不明者を次々探し歩く親族の群れの姿が写され、胸がつぶれる思いがする)

この作品は米国のイラク侵攻がテーマではなく、フセインのクルド人虐殺に対する告発がテーマ。

それを声高に叫ぶのではなく、フセインに連れ去られた父親を(息子を)探しての過酷な旅と 徒労を描くことにより、間接的に語りかけている。

 

この作品は観た人の評価がきわめて高い。

その理由は、終戦の大混乱の世相の中で、民衆の気持ちも荒みきっているかと思いきや、おっとどっこい、子供達は意外と明るくたくましく生きているし、隣人も困った人に手を差し伸べるなど、やさしい人情がまだ生きている事だろう。

例えば、少年がバグダットで知り合った路上の少年が、置き去りにされた祖母を救ってくれる場面など、誰しも涙を誘われるだろうし、ムサが少年をかわいがり、祖母の面倒を献身的ににみる無償の愛も深く心に残る。

さらに、少年が幼いながらも、他人の世話になる安易な道がいけない事だと悟り、病身の祖母を守る決心をするけなげさに、自立して未来に立ち向かう力強さを感じた。

この作品は表面は悲劇で、ラストは夢も希望もないように見えるけど、私にはイラク社会に希望を感じたし、少年に夢を抱けた。

そんな事が支持されているのだと思う。

 

バビロニアの末裔達はこの困難にきっと打ち勝つだろう。温かく見守りたい。

 

No.67

天空の草原のナンサ 2005/93分 ドイツ ホーム・ドラマ bs 11.07.02

ビヤンバスレン・ダヴァー 監督(「らくだの涙」)

バットチュルーン 一家(犬のツォーホル含む)

モンゴル草原の遊牧民一家の日常を淡々と映像化した異色作。

物語というより、遊牧民の生活を追ったドキュメンタリーと言ってもいいだろう。(俳優は使っていない)

大草原が美しく、3人の幼児がかわゆい。

大草原にはこの一家しか居ないのでツォーホル(犬)を含め、家族は強い絆で結ばれているのが印象的。

上の子は懸命に仕事を手伝い、その「けなげさ」にも胸を打たれる。

この子と犬との交流を主題とした美しい牧歌。

****

一方、この子は仏教の前世の話を聞きそれを信じていたり、黄色い犬の伝説が出てきたりして、霊魂を尊ぶ民の心も描かれる。

厳しい自然に対峙しながら生き抜かなければならない遊牧民の精神的支えにも触れているのだ。

それだけ生活は現実としては過酷であるのだろう。

近年、モンゴル高原にも近代化の波が押し寄せ、この作品にも都会の労働者に転進する遊牧民が紹介されるが、移動して牧畜する人間の営みの基本形が、地球上から消えてしまうことに寂しさを禁じえない。

****

筋書きもないこのような作品が胸を打つのは、都会に住む我々がかつては持ち、今は失ってしまったものに対する、憧憬に似た感情のせいだろう。

遺伝子をくすぐる監督の狙いが成功している。

尚、犬のツォーホルはカンヌ映画祭で、「パルム・ドッグ賞」を獲得したとのこと。

ワンダフル!

 

No.66

トッツイー  1982/116分 dvd  米 ラブ・ストーリー  11.06.22

シドニー・ポーラック 監督

ダスティン・ホフマン、ジェシカ・ラング

J・ラング(写真左端)は本作で助演女優賞を獲得。その後主演賞も獲得し、演技派女優の地位を不動のものにした(49年生まれ、本作は33歳、現在62歳)

D・ホフマン(左から2人目)の女装で話題をさらった。コメディー・タッチで女性になって男性を観察すると色々な事が分る。性別って不思議なもの。アイデアが面白く、意外に美しいホフマンに化粧の力を再認識させられたが、少し退屈な映画に見えたが。どうだろうか。

 

No.65

127時間 2010/94分 米 マウントニアリング・サスペンス 11.06.21 武蔵野館他上映中

ダニー・ボイル 監督

ジェームス・フランコ

「ミリオネアー・スラムドック」の監督である。 

前作は観客受けを狙いすぎの点があったと思うが、本作は映画化しにくい凹凸のない地味な話を、きっちり纏めイヤミが無い。

かつ、面白い!

ファースト・シーンで早朝に、クライミング用具や水や食料等を、大急ぎでザックに詰め込み、駆け出すシーンがあるが、実際には山男はそんなことはしない。

あらゆる場面を想定し、必要品を用意し、点検し、使う頻度に応じた場所にパッキングする、要するに重量と体力と危険度の緻密な計算が総合的に出来ないと、一人前ではない。過酷な岩登りなどは特にそうである。

だから少しこの映画は荒っぽいなと思って、斜めに構えてみていると、突然大音響とともに暗転し事故が発生する。これからぐんぐんシビアーになり、画面に釘付けになる。

軽いテンポの出だしから、デッド・センターへのこの展開の仕方が見事といわざるを得ない。明から暗。地上から地下。

*****

登山中の絶体絶命の事故遭遇からの、奇跡的な生還と言えば2005年の「運命を分けてたザイル」がある。

これはアンデスのクレバスに落ちたパーティーが冷たい氷の壁や水の中をさまよい、何日かぶりに自力脱出するという、物凄い映画だったが、本作も人間の持つ精神力の強さと言う点を描くという点では、全く同じテーマである。

この種の作品は、信じ難い程だが、何といっても実話だから、説得力がある。

映画館を出て、町行く平々凡々とした大衆を見ると、緊張感の無い馬鹿に見えるが、次の瞬間自分もその一人だと言う事に気付かされ、こんな生き方は駄目だ、如何なる困難に負けない強い人間にならなくてはと思い、勇気づけられてしまう。

****

ネタバレになるので、核心に触れられないのは残念だが、canonやsonyも活躍し、中国製のナイフなど「道具」も役割を色々果たすのも面白い。

主役(殆ど一人芝居)のジェームス・フランコも上手い。

 

No.64

旅するジーンズ、19歳の旅立ち 2008/119分 米 dvd 青春映画 11.06.11

サナー・ハムリ 監督

アンバー・タンブリン、アメリカ・フェラーラ、ブレイク・ウイヴリー、アレクシス・ブレデル

 「旅するジーンズ、16歳の夏」の続編だが、監督は異なる。

2匹目のドジョウはハズレが多いが、これは前作を凌ぐ内容だと思う。

そしてこれは決して日本では語れない青春物語でもあるようだ。

要するに日本の青少年は親がかりの中に存在し、ぼんやりと甘やかされて育つひとが多いと思うが、米国では大学の学費さえ自前の人が多く、若者を早いうちから社会にほっぽり出す。

19歳の旅立ちは、自立する為に4人の女性が苦悩し、これから生きるべき道を探す自分探しの試練の物語と言える。

だから、前作の奔放さにプラスして、多少説教臭い匂いはするが、しっかり自分の足で立とうという力強い息吹が伝わってきて心地よい。

今回は妊娠騒動や舞台作りなど新しい趣向も加わり、ギリシャの海も相変わらずきれいで、厭きない。

疲れない映画で、爽やかと言う点では、屈指かもしれない。

 

No.63

裸の島 1960/95分 モノクロ bs 農民悲話 11.06.08

 新藤 兼人 監督・脚本   乙羽 信子、殿山 泰司、田中 伸二

セリフが一切無い実験的映画だが、強烈なインパクトを持った傑作である。

船を漕いで本土に水を汲みに行き、それを無人の小島に運び, 急斜面を天秤棒で担ぎ上げ、畑に撒くというつらい労働のシーンが連続する。

瀬戸内海の小島に一軒だけ家族4人で住んでいる。

子供が釣ったタイを尾道に売りに行く場面があるので、その近くの島だろうが、題名のように木は殆どなく、水場もなく、禿げ上がった土地が、瀬戸内特有の乾燥にさらされている。

母は和船を漕いで毎朝、二人の子供を学校のある島に送り届け、帰りに水を桶2杯汲んで帰る。日中は父親も水汲みに励むから、4杯。

島には電気も無く、自給自足の生活だから、ヤギやアヒルや鶏を飼って、その世話は子供。だから4人家族は物凄く忙しい。全員が生活の為に走り回っている。運動会のようだ。

****

わずかに採れる小麦を向の島に売りに行き、帰りにミソ醤油など生活物資を買って帰る場面があるが、慎ましくて涙を誘う。

でも、この貧しさは、つい50年前まで日本国中にあった。国内では食えず、移民までしていた。あの頃子供達を育てていた世代はもう90才を超えていて、過去になってしまった。

劣悪な土地にしがみついて、家族の犠牲のもとに成り立っていた日本の農業も、石油資源の活用で様変わりした。

この映画で登場する艪こぎは船外機つきの船に代って、又海草を取って肥料に撒く作業も化学肥料に代って、鍬や鋤は耕運機に代って、電気の無い島にも発電機が備えられtvぐらい写るのだろう。

いや、非採算として島での農業を止め、都会の労働者に転進しているだろうか。実際無人島は現在かなり多い。

要するに、効率を求めた結果、貧しさを逃れられたが、代償として家族の結束を失った。家族が協力しなければ生きられない状況からそうしなくても死なない状況に変化した。

離島だから医者が間に合わず、長男を死なす場面がある。母は過酷な現実に身動き出来ず、運んできた貴重な水を畑にぶちまけて、泣き叫ぶが、これをじっと見つめる夫には現状から逃げようとする気配は全く感じられない。

あくまで、この畑にしがみついて、生きる、それだけ。江戸の昔から水のみ百姓は誰もがそうだったのだろう。

*****

人生とは働くこと。労働をすること。労働がすべて。という考えがある。

禅宗の教えも、作務を重要視する。

労働は効率化を図るより、非効率でも励め! 徒労こそ貴重!そう監督は言っているのかもしれない。

程度問題でもあるが、現代はやや行き過ぎたのだろう。

 

No.62

イージーライダー 1969/95分 dvd 青春映画 11.06.02

デニス・ホッパー 監督、主演

ピーター・フォンダ

NHKで座談会をやっていたので、触発されて見直した。エポックメーキングな作品で、既に語りつくされているので、多くを語らない。ただこの映画を観ると、あの頃の自分がとても懐かしく思えてくる。即ち、時代の空気感を今に伝えてくれる貴重な作品なのだ。

大戦後、社会主義という幻影が若者を支配していた。若者は貧しかったが国のあり方を真面目に考えていた。ところが権力者が力を蓄え、保守派が反撃を始め、各国の若者たちと激しく対立する時代に入っていた。パリでは68/5、5月革命で学生が蜂起したが敗北し、日本では69/1安田講堂事件で学生運動が終焉に向かった。アメリカではベトナム戦争の反戦運動や公民権運動などが抑圧され、暗殺テロが横行した。 

アメリカというこれまた幻影のかげりがヒッピーやドラッグという反社会的文化を生み、出口の無い若者の発露がハーレーに乗り、未知の町へ旅するという自分探しに繋がったのだと思う。

「born to be wild」というロックの名曲が流されるが、プロテクトの精神はロックにだけ今日もいき続けているのは、面白い。

アメリカに自由なんてない、自由な人を見るのは特に嫌い。南部の保守的な壁の前に命を散らす二人の青年に、今の若者は何を感じるのだろうか。

 

No.61

悪人 2010/139分 dvd ラブストーリー 11.06.06

李 相日 監督・脚本(「フラガール」)、 吉田 修一 原作・脚本

妻夫木 聡、深津 絵里、岡田 将生、満島 ひかり、樹木 希林、光石 研、柄本 明、宮崎義子

深津さんがモントリオール映画祭で最優秀主演女優賞に、妻夫木さんが日本アカデミー最優秀主演男優賞に輝いた作品。

芥川賞と周五郎賞をとったクロスオーバー作家の原作、脚本。

原作を読んでないので、どうカットしたか分らないが、映画の脚本としては繋がらないシーンがあって、やや期待外れ。

年寄りを騙して金を巻き上げる詐欺暴力団は何の為に登場するのか、又ばあちゃんが繰り返し登場するが、テーマとどこで結びつくのか不明。

弱く善良な民を容赦なく叩く社会の冷たさの延長に、殺人事件の起因があるというのなら違ったテーマで作品が成り立つだろうが、あくまでこれはラブストーリーで、犯罪者とそれを愛してしまった女の愛の心理劇なのだから。

又、母に捨てられた少年の不幸な生い立ちをクドク描きすぎで、お涙頂戴の線が作品の品を落としている。ここはさらりと匂わせる程度で良かったと思うが。

さらに言えば、事故現場を再訪した父親が見る娘の幽霊など、しらけてしまう。

キャスティンだが、殺されて当然のような言葉を吐く役柄にしては満島ひかりさんは純粋過ぎて、かわゆくて、ミスキャストと言わざるを得ない。観客も殺したくなるほどの女優さんがここは欲しかったかな。

****

私はこの作品で2つのカットが気に入った。

一つはイカの生き作りの澄んだ目、自首しようとする犯人の車のフロントグラスを激しく叩く雨粒。

岬の灯台の景色も含めカメラは美しい。

全般的にはテンポが遅いと思うが、ラストへの盛り上がりはすばらしくさすがツボを押さえている。

ところで、題名とテーマがずれているが、違った題名は無いのかな。

 

No.60

カジノ 1995/179分 米 dvd ギャング映画 11.05.29

マーティン・スコセッシ 監督

ロバート・デ・ニーロ、シャロン・ストーン、ジョ−・ペシ

ファースト・シーンが秀逸。

車に仕掛けられた爆弾が破裂し、主人公らしき男が空中をゆっくり回って、タイトルが流される。

これがラストだと誰しも思うが、実は死んではないことが最後に分る。

****

スコセッシがマフィアの裏面を暴いた映画で、ヴェガスの賭博場の金が親分衆に流れる仕組みとか、血の掟の粛清の凄さとか、唖然とさせられる内容。

確かに凄いのだが、作り方が変わっていて、殆どがデニーロ&ペシのモノローグによる過去追想形式のため、ハラハラドキドキが薄く、3時間の長丁場映画でもあるので、中間部が退屈に感じるのは残念。

スコセッシとデニーロは「タクシー・ドライバー」はじめ数多くの作品を作った。共にイタリア系移民ということもあったろうが、こんな濃厚なコンビも珍しい。

デニーロは徹底的な役作りをすることで有名で、役の為に20kg太ったり、頭の毛を全部抜いたり、プロ根性はNo.1。

2度のオスカーにも輝き当代No.1の役者と言っていいだろう。

だから、この人の演技にだけ注目して見れば、本作品も又違った楽しみ方が出来る。

頑張って最後まで観よう。

 

No.59

木漏れ日の家で 2007/104分 モノクロ ポーランド 人生終末エレジー 11.05.30 岩波ホール上映中

ドロタ・ケンジェジャフスカ 監督

ダヌタ・シャワラルスカ(91歳の老女の設定)、フィラ(愛犬)

月曜日、11:30のチケットを買うのに10:30に行ったが長蛇の列。30分並んでやっと切符を手にしたが場内は既に満席状態。連日そうらしい。単館で宣伝もしていないのに珍しい現象である。。(岩波ホールのあと新宿武蔵野館の早朝版にかかる予定)。

列は殆ど年配の女性である。ネットなんか扱えないからクチコミで集まったということだ。おばばのクチコミの力を思い知らされた。

隣に座った夫婦は真面目に見ている妻とは対照的に旦那の方からはいびきが聞こえた。地味な老女映画ということが分る。

***

画面は殆どが85歳の老女優と愛犬。愛犬とのディアローグ。正確には独り言だが、二人とも名演技。

古い建物なのでガラスが歪んでおり、かつ縁をカットしてあるせいで、自分の像が2〜3重にダブり、その一つが若い頃の姿だったりして、過去と現在が幻想の中で絶えず交錯したりする凝った作画がただものではない作品を窺わせる。

ピアノの使い方とか温かい紅茶の使い方など、伏線も考えて緊密度のある構成もさすが。

コントラストの強いモノクロの画面も効果的。

****

老人になると、過去と現在の区別とか夢と現実とかの区別がハッキリしないのであろう。

でもこの老女は耳は良く、頭もさえている。

子供が親の財産を売り飛ばそうと悪巧みしている裏をかいて、慈善団体に贈与して、息を引き取る。

馬鹿にされるだけが老人ではない。気持ちの良い作品である。

 

No.58

やわらかい生活 2005/126分 dvd  ラブストーリー 11.05.27

2007版No.50に掲載済みだが、前回評価☆3.0、今回は☆4.0に。

見直すと、いとこ同士の禁断の恋愛感情が下敷きになっていることが分る。他の登場人物も夫々問題を抱え不幸なのだが、それが解決の見込みのない暗闇のトンネルだから一層やるせない。なんと言っても、傷付いた現代人のやり場の無い孤独感や寂寥感に今の心情がシンクロしてしまった。ラストの銭湯に一人入っている場面も特に良い。

 

No.57

夜明け前 1953/142分 モノクロ cs 11.05.27

吉村 公三郎 監督、  島崎 藤村 原作

滝沢修、小夜福子、宇野重吉、細川ちか子、乙羽信子

女性映画の巨匠と言われた監督の文芸作品。

**

昭和28年の馬籠宿がフィルムに収められているが、復元された今日と違い、さびれ果てた街道筋に驚かされる。

そもそも街道とは何時まで健在だったのだろう。

鉄道も車も無かった時代は、荷物や人の移動はこれ以外無かったのだから、宿の提供だけでなく、替え馬の用意や荷駄運搬用の牛方、飯盛り女など相当な人がこれに関わっていた。原作によれば馬籠には100軒、バックグランドに60軒の家があったとある。

時代は幕末から明治への転換期だから、まだ相当の活況を示していたのに、映画の舞台としての昭和28年の馬籠は淋しい・・・・。

宿場町がさびれたのは、まず鉄道の敷設による。中央西線はまず塩尻〜奈良井が明治42年開通で、全線開通が44年だから、昭和28年からたった42年前の出来事に過ぎない。

でも、同じ42年間でもこの間は激動の時代であった。鉄道や自動車や飛行機が現れ、移動手段に革命が起こった。

****

良く考えれば、宿場町は消えたが街道は拡幅されて、江戸時代とほぼ同じ道筋をトラックが走り鉄道が併走しているので、地形利用のノウハウは不変かもしれない。

だから、街道は時代と人の変遷を縄文の昔から見続けている生き証人だ。

****

翌年作られた、山本薩夫の「荷車の歌」も運搬業の変遷をテーマにした作品で、最早こんな作品を作れる時代考証のできるスタッフは居ない、と書いたが、本作品も全く同じで、今日「映画遺産的」価値を有すると思う。

信州の片田舎で4日も続けられる婚礼の様子、使われる調度品や、食器、納屋や蔵の佇まい、最近作られる時代劇の嘘ぶりと随分と違う。

青山半蔵という馬籠宿の本陣、問屋(といや・・町人と役人の橋渡し役で宿場役人)、庄屋を兼ねた名家の当主の一生(藤村の実父で正樹がモデル)を描いた大作を142分に纏めたので、終盤の気が狂うのがやや唐突にみえるが、基本にあるヒューマニズムはよく描かれていると思われる。

文芸作品は難しいのでダメモト。

原作は読破しずらいので、代わりとして観ればよいのでは。

 

No.56

ジュリエットからの手紙 2010/105分 米 ラブストーリー 渋谷ル・シネマ他上映中 11.05.26

ゲイリー・ウィニック 監督

アマンダ・セイフライド(「マンマ・ミーア」)、クリストファー・イーガン、ガエル・ガルシア・ベルカレ、ヴァネッサ・レッドグレーブ

愛を信じている人、信じたい人は、陶酔感に浸れるだろう。

大ヒット中である。恋愛が最大の関心事と思っている人が多い事は、現代はまだ健全な社会なのかもしれない。

イタリアのヴェローナは「ロミオとジュリエット」の舞台である。

例のバルコニーの下の壁には恋に悩む人びとが悩み事を書いた紙を貼り付けていく。

ジュリエットの秘書と呼ばれる女性たち数人がこれを回収して、返事を書いている。市の援助もあるらしいが粋なはからいである。

壁のレンガの奥に隠れていた50年前の手紙を発見して、手紙を書いてあげた事から再会を果たし、遅ればせ乍ら結婚したというストーリーで、ついでに案内役同士の恋も成就するという「恋愛至上主義」の脚本なのだが、シエナ近郊の丘の夕日など風景がきれいで、登場する車もかわいらしく、50年も変わらない愛の美しさと合いまち、愛に生きようとする迷える民に勇気を与えてはいる。

愛こそ力で、愛こそ人生の宝物ではあるが、これほど難しいテーマも又無い。

愛は憎しみにも変わるし、相手を縛り付けて破滅に向かう悲劇も多い。だからこそ本作のような明るさだけのラブストーリーが、ベタ過ぎて作り物ぽくみえることも又事実なのだ。

レッドグレーヴは65歳の設定だが実際は74歳。少しだが無理があると思う。

介添え役のC・イーガンも目が細く、素敵なロミオ役タイプではないだろう。

ホテルの中庭で見る星空がロマンチック。女性向け映画。

 

No.55

ナチュラル 1984/138分 米 bs 野球物語 11.05.25

バリー・レヴィンソン 監督(「レインマン」)  ロバート・レッドフォード、ロバート・デュバル、グレン・クローズ、キム・ベイジンガー

ロイ・ホッブスという実在の大リーガーの半生記らしい。

高校を卒業し、ピッチャーとしてカブスのテストを受けに行く列車の中で大物打者と乗り合わせ、列車休憩時間に原っぱで勝負し三振に仕留めたほどの天才(nature)。

だがシカゴに着いた途端、女性に拳銃で撃たれ重症、夢破れる。

その後も野球を諦めずに下住み生活を16年も送り、35歳でメジャーに昇格奇跡的な活躍をして(NY ナイツというチーム名になっているが多分メッツ)ワールドシリーズへの道を開いたと言う話。

本当とは思えない遅咲き選手の活躍で、特大ホームランなど漫画チックであるが、ある程度の真実は含んでいるのだろう。

少年の頃、自分で削って作ったワンダー・ボーイ(神童)というバットでホームランを打ったり、それが折れたら可愛がっているボールボーイの手作りバットでホームランを打つなど、やりすぎな点は確かにあるが、少し嘘っぽくてもやはり私は野球映画が好きだ。

大リーガーは少年の夢だし、夢が適ってさらに、チームの窮地を救う逆転さよならホームランを打つなんか最高だ。涙でボロボロになる。

レッドフォードはややふけ過ぎでバットスイングが遅いのでイマイチだけど、野球が好きなことは分る。

野球はドラマであると同時に、選手の私生活が又ドラマなのだ。だから映画になる。

☆4.0をつけたいところだが冷静に平均点におさえた。3.5+というところか。

面白い。

 

No.54

旅するジーンズと16歳の夏 2005/118分 dvd 米 青春物語 11.05.19

ケン・クワピス 監督

アンバー・タンブリン(デイビー)、アレクシス・ブレテル(リーナ)、アメリカ・フェレーラ(カルメン)、ブレイク・ライヴリー(ブリジット)

ただの青春映画ではなく、脚本が良く練られているのに感心する。

まず青春映画は恋愛とかスポーツが多いように思うが、本作は4人のsisterhoodが基本。

それに50箇所以上のロケをしたらしいが、ギリシャ、メキシコ、アメリカ各地にカメラが飛び、飽きさせない仕組みになっていて、それを結びつけるのが幸運をもたらすというジーンズの転送、というアイデアが又素晴らしいではないか。

さらに4人のひと夏の経験が白血病で死にゆく少女との心の交流だったり(デイビー)、母の自殺の影を拭い去れずスポーツに打ち込む自分探しだったり(ブリジット)、臆病で一歩踏み出せない少女の脱皮だったり(リーナ)、親との確執の克服だったり(カルメン)、そのテーマが多彩。

何といっても、この4人の演技が若々しくて清清しくこの作品の大きな特徴となっている。

ひと夏の経験で若者は大きく成長する。それは体験を通して、未来へ広がっていく希望に見える。

この子達はその後どうなっていくのだろう と気になるところだがそれは続編のお楽しみ。(好評だったので続編が作られた)

肩がこらずに、良い映画を観たという気にさせる作品。

 

No.53

若者たち 1967/87分 モノクロ dvd ホームドラマ 11.05.17

森川 時久 監督

田中邦衛、橋本功、佐藤オリエ、山本圭、松山省二、江守徹、栗原小巻、石立鉄夫

貧しさがまだすぐそこにあった時代が懐かしい。

だから当時この作品をみたら、そのテーマに共感を覚え☆5.0をつけただろうが、最早時代が裕福になりやや色あせたものになってしまった感は否めない。

食べる為に必死に働く、その為長男のようにバランスを欠いた人間も出来てしまう。

「人生お金ではないよ」とは現代に通じる真理だけど、では何が大切なのと言う問いかけに対し、当時は隣人も幸せにならない限り自分も幸せになれない、という社会主義的人道主義が存在し、この作品もその基調にのっているが、社会主義志向が否定された今日、若者に対して説得力とはなりえない弱みを持ってしまった。

ケンカが絶えない5人の兄弟でも、仲が良く愛し合っている見事さ。

ケンカするぐらい、お互いを正面から受け止めていた。

こんな風景も遠くに霞んでしまった。

どこかハスに構え自分以外の人と真正面から向き合おうとしない孤独な現代人、そんな状況にある現在の家族の意味を考えさせられる。

***

田中邦衛が強烈に光る。

 

No.52

八日目の蝉 2011/147分 ホームドラマ 新宿ピカデリー他全国上映中 11.05.16

成島 出 監督、 角田 光代 原作、 主題歌 中島美嘉

井上 真央(薫)、永作 博美(希和子)、小池 栄子(千華)、森口 瑤子、田中 哲司、余 貴美子、田中 泯、劇団ひとり

あらすじ:希和子は妻子ある男の子供を堕胎させられ、懐妊中の本妻に「私のお腹は命が宿るの、貴女のお腹は空っぽ」と罵倒され、女としての尊厳を傷つけられる。失った子供への憧憬が本妻の生んだ赤ん坊の誘拐へと発展し、乳児(薫)を連れて逃避行を繰り返し、薫が4歳になるまで親と変わらない濃密な時間を築く。

事件解決後、薫は実母に馴染めず、母も苦しみ、家庭は崩壊していく。

薫は希和子と同じように妻子ある男の子供を宿すが、男と別れ一人で産む決断をする。失われた自分探しも幼児期育った小豆島への再訪に手がかりを得て、未来への希望の兆しを見出す。

原作が女性で無ければ書けない内容だと思う。

男の身勝手、無責任が二代に亘って女性を不幸にする。

女性の気持ちは女性しか分らないものかもしれない。男は罪深いだけか。

***

この映画は誘拐犯でも子供を徹底的に愛し子供もそれに応えて、二人が幸せすぎる4年間を過ごすことの矛盾した愛の姿が、無残にも砕かれていく様が、美しい小豆島の風物の中で淡々と描かれている。

鳥が生まれてはじめて見るものを母親と一生思ってしまうのに似て、実の母親になつかないのもありうる話しで、結果的に誘拐犯、両親、薫、皆不幸になっていく。

夫々どん詰まりの人生に展望が見えないようにみえる前半。

****

その展開役として、小池栄子が現れる。薫は打ち分けられる友人を初めて得て自分探しを始め、幼児期の追体験として共に小豆島に渡り、大切なものを見つける。

この小池栄子が独特の身のこなしで実にユニークな演技。「パーマネント野バラ」でも非凡なところを示したがこの女優さんの成長はすごい。

***

今NHK朝ドラで人気急上昇中の井上真央は、親に理解されず、恋人も気持ちを理解してくれない、そんな行き場の無い淋しい孤独な女性像をこれまた見事に演じており、永作博美さんも、母性としての献身を渾身の演技で演じた。

****

誘拐、裁判、カルト集団生活、小豆島の海、祭り、村芝居、そうめん作り・・・ 、など多彩に変わる画面構成と余貴美子や田中泯などの異色な脇役によって、彫りの深い作品に仕上がっており、原作の力だけでない映画の魅力に満ちていると思う。

2時間半という長い作品で、中だるみもあると思うが、女性視点が際立った個性的な作品として評価したい。

 

No.51

名もなく貧しく美しく 1961/130分 モノクロ dvd ホームドラマ 110515

松山 善三 監督・脚本

小林 圭樹、高峰 秀子、島津 雅彦

聾唖者同士の夫婦愛の物語である。

手話が一般的でなかった時代にこれを世間に広め、聾唖者はどんな場面で生活に困るのかを具体的に知らしめた、社会的意義の高い作品。

地味な題材にしては飽きさせず仕上げているのはさすが。テンポが良いのだろう。

他人にやさしく謙虚な人のいい夫婦だから、何とか幸せに暮らせるように祈りながら見たが、耳が聞こえない為に我が子を死なせたり、トラックの音が聞こえなかった為に妻が先立ってしまったり悲しい出来事が次々起こり、胸がふさがれて救いが無いのにはかなり参る。

単なる美談に終わらせなかった事が、名作の仲間入りした理由だろうから仕方無いけど・・・。

***

世間の人は、障害者に同情はするけど理解者にはなってくれないが、強く残るセリフだった。

 

No.50

逢びき 1945/86分 モノクロ 英 dvd メロ・ドラマ 110508

デヴィッド・リーン 監督:「アラビアのロレンス」「戦場に架ける橋」「慕情」「ドクトル・ジバゴ」・・・

セリア・ジョンソン、トレヴァー・ハワード、スタンリー・ホロウエイ

名監督の初期の作品

ファースト・シーンが素晴らしい。

夜、駅のホームを蒸気機関車が通り過ぎるのを構内ライトが逆光ぎみの光で捉え、白い蒸気が画面いっぱいに広がり、音が遠ざかって行く。

黒と白の見事なコントラスト。夜の冷たい空気感まで伝わってきて、英国の片田舎の駅の中に観客をいっぺんに連れて行ってしまう。

 

監督はきっと長い間考えていたのだろう。この出だしだけでもう参ってしまう。

***

主たる舞台はこの駅の構内。待ち合わせバーの老ウエイター、駅員等が古き良き英国気質を醸し出し、機関車や客車など「鉄ちゃん」ならずともため息を誘う。昔の駅は雰囲気があり、物語があり、人生を見届けてくれる、特別な存在であったことを今思い起こさせる。

言わばこの作品は「ある駅の物語」なのである。

****

昨今、不倫の背徳度は低いが、当時は罪の意識に苛まれるのが普通。

普通の主婦が普通に苦しみ、普通に限度を守り、我慢して日常に帰っていくストーリーに、若い人は違和感を覚えるかもしれない。

でも敢えて、こんな題材を選びドラマチックな逃避行にしなかったことに敬意を評したい。何故なら殆どの人は自制心に従うからだ。

特殊な例だけが、物語の題材ではないだろう。こんなのもありが人生。

***

モノクロがことの他美しい。

 

No.49

ブラック・スワン 2010/108分 米 サイコ・スリラー  ヒューマントラスト シネマ 渋谷他 全国公開中

ダーレン・アロノフスキー 監督

ナタリー・ポートマン(ニナ)、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クンス、ウイノナ・ライダー

N・ポートマンは本作で今年のアカデミー主演女優賞を獲得した。

名作「レオン」の あの少女である。成人してからもスター街道を順調に進み、助演女優賞の候補にもなった演技派であるが、この間驚いたことにハーヴァード大学に進み見事卒業したというから、大変な秀才でもある。再びびっくり。

本作では殆ど出ずっぱりで、一人芝居と言ってもいいぐらいの力作となった。

バレリーナの踊りは専門的な技巧が要求されるが、踊りの場面も多くが代役なしでこなすほど、徹底的に練習を積んだらしく、並みの俳優ではない、相当の根性を持った女性であることを示した。

****

脚本は単純というか、かなり荒っぽく、スリラーでもなくサイコ・ホラーでもなく、ジキルとハイド風でもなく、芸人根性物語でもなく、得体のしれないものだが、ラストの盛り上がりがすばらしいので、作品として鑑賞に堪えるものになっている。

欠点としては:

 

ニナの自傷癖、強要される無理な役作りへのプレッシャー、主役をめぐるライバルへの猜疑心、過保護ステージ・ママへの反発、異性への恐れ

 

、快楽への憧れ等が被害妄想病者の狂気のなかで語られるので、あたかも悪魔的な存在が実在するかのように、観客に恐怖感を抱かせようと

 

している作りがあざとく、謎解き後はそれは無いだろう、幻覚だから何でもありよ、という荒っぽさだけが際立ってしまうことだろう。

「白鳥の湖」のオデット姫は身を投げて死んで涙を誘うが、ニナの死は自業自得にみえて感情移入しがたい。

***

要するに、沢山の要素を詰め込み過ぎて一つ一つの掘り下げが無いために、ニナという人間が単に病人であると言う以外明らかにされて無いのだ。

神経を病み、恐怖と苦悩に満ちたニナの表情が印象に強く残るが、共感を覚える魅力ある女性の一面も描かなければ、「死」が生きてこないのでは。

***

クラシック音楽には終楽章にコーダというラストの盛り上がりがある。

この映画もコーダの効用がいかんなく発揮されている。

 

No.48

それでも恋するバルセロナ 2008/96分 dvd 米 ラブ・ストーリー 110504

ウディ・アレン 監督

スカーレット・ヨハンセン、ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム

ウディ・アレン監督の作品で感動したためしがない。

「マッチポイント」はまあまあだったと思うが、ことごとく嫌いである。

まず起承転結を無視して、締りが無いので退屈。

それにこの人は、多分人間嫌いなのだろう、主人公にさえ共感を覚えさせない作りになっている。

人生や人間を信用していないから、見たあとは不快感さえ残る。

これが新しい前衛的な芸術と勘違いしているのではないか、もういい年なのだから、観客の映画をみる気持ちを察してもらいたい。

****

本作は女性3プラス男性1の四角関係を描いている。

男女関係は複雑だからこんな複雑な関係もありうる話だが、かなりレアケース。それの心理を解きほぐす監督の熱意も又異常。

最後は何も無かったように、世界は元通りに回りました、というくだりにも愛情不信を感じる。

監督は嘘は語ってないと思うが、ロボットが作った作品のようにみえる。

 

 

 

No.47

ザ・ビーチ 1990/118分 米 dvd アドベンチャー  11.04.24

 

ダニー・ボイル監督(スラムドック&ミリオネアー)

レオナルド・デカプリオ、ティルダ・スウイントン

やや退屈な映画。

 

No.46

ツーリスト 2010/103分 米・仏 サスペンス 新宿ピカデリー他上映中 11.04.14

フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督「善き人のためのソナタ」

ジュニー・デップ、アンジェリーナ・ジョリー、ポールベタニー


入る映画館を間違って入ってしまった。シネコンはこんなことも起こるのだ。

 

でも、ベニチアの街を大画面で見れて楽しかった。

そこのNo.1ホテルは「ダニエリ」。このカップルは超スイート・ルームに泊まったが、私も屋根裏部屋みたいな部屋だったが、ここに宿泊したことがあり懐かしかった。

 

A・ジョリーは顔の骨格は異様だが、夢見るような目とセクシーな唇は素晴らしく、アップに耐えうるのは立派。この映画はデップの陰が意外と薄く、彼女の方が目立った。トップ俳優同士は女性の方が勝つものらしい。

 

ハラハラドキドキは殆ど無いサスペンスだが、ラストのどんでん返しはなかなか凝っているではないか。

 

犯人追跡中のパーティー会場に、突如中世舞曲が流れて、輪舞が始まり、取り逃がす趣向などさすがの監督であろう。

 

たまに息抜き映画として、こんなのもあり。

 

 

No.45

秋刀魚の味 1962/  dvd ホームドラマ

小津 安二郎 監督  野田高梧、小津安二郎 共同脚本

岩下志麻、笠 智衆、佐田 啓二、岡田 茉莉子、中村 伸郎、東野 英治郎、三上 真一郎、岸田 今日子、杉村 春子

加藤 大介

脚本の野田氏は「東京物語」よりこちらの方が自信があったそうで、又映画として、こちらの方が良いという人もいるので、見直してみた。

製作された昭和37年当時では、確かに嫁に出す父の寂寥感に真実味があったと思うが、50年後の今日、娘の結婚に他家に嫁ぐという感情は殆ど無いので、イマイチ嘘っぽくなってしまった感は否めまい。

家が崩壊してしまったのは小津の責任ではないので、責められないが。

***

笠智衆は名優か否か:セリフは棒読みに近いし、表情の変化も少ない。でもこの人の持つ雰囲気は他に誰も真似できない。飄々として飾り気がなく、朴訥で善人、稀有の人格である。それに演技臭さが全く無い、自然体そのまんまのところが巨匠に好かれる所以だろう。

東野英治郎:この作品の要は「瓢箪」役のこの人である。教え子に招かれてクラス会に出席し、食べた事も無いご馳走をありがたがって食べている様とか、車の中で飲んでしまった貰い物のウイスキーをまだあると思ってさがしたりする様の演技には、貧乏人の性まで出て秀逸であり、ぞくっとさせられた。

主役の岩下志麻は一応こなしてはいるが、まだ若いので特別の出来ではないと思うがどうだろう。まず女性としての落ち着きやお色気という点で不足は否めないし、観客が感情移入できる魅力的な人物像が作れなかったので、男優陣に食われてしまったと思うが。

当時川崎は工場も多く庶民の町で、大洋ホエールスのホームグラウンドもあった、そんな街の雰囲気が懐かしい映画でもある。

 

No.44

ピンポン 2002/114分 dvd 部活・ドラマ 11.04.10

 

曾利 文彦 監督    松本大洋 原作(「鉄コン筋クリート」) 宮藤官九郎 脚本

窪塚洋介(ペコ)、ARATA(スマイル)、中村獅堂(ドラゴン)、大倉孝二(アクマ)、夏木マリ、竹中直人

ビッグコミック スピリッツ に連載された漫画を映画化したとのこと。

よくあるスポコンものと一味も二味も違う内容だから、掘り出し物であった。

原作と脚本からすれば並でないのは当然だが、まず文句無く面白い。

高校時代の部活に幼少時代の思い出を絶えず対比させ、監督と同じ道を結果的に歩む宿命をスマイルに負わせるなど、二重構造のつくりで厚みを増している。

無敵のドラゴンが仕合前にトイレで一人内向する姿など、スポーツをする人間を必ずしもかっこいい様には描いてないところも好感がもてる。

もとが劇画だから、荒っぽい展開があるものの、個性豊かな役者が夫々、異なった人物像を際立たせ興味が尽きない。

笑わず、他人と会話しない超クールなスマイルは昨今の若者の一つの典型だろうし、ARATAがそれを好演している。

サッカーや野球でなく何故ピンポンなのか、それは個人プレーだからスマイルやペコみたいな超個性的な人間も強ければ在部できると言う事なのだろう。

dvdを借りて損のないお勧め映画である。

 

No.43

東京物語 1953/136分 モノクロ デジタルリマスター版bs ホームドラマ 11.04.07

小津 安二郎 監督  脚本 野田 高梧、小津安二郎

笠 智衆、東山 千栄子、原 節子、杉村 春子、山村 聡、香川 京子、大坂 志郎、東野 英治郎、中村 伸郎

世界的な名画をこの歳になって初めて見た。

私は小津より成瀬が好きだから、小津作品は全部見ている訳ではないがそこそこ見ているつもりなのに、残っていたのが不思議。

どうやら「秋日和」あたりの鎌倉に住んで東京に通う重役の登場する映画を「東京物語」と勘違いして、もう見たと思っていたのだ。

***

小津はハイソサイエティー好みだと思って近づかなかったが、本作を観てすっかりイメージを覆された。

老いた両親が子供に会いに上京し落ち着いた先は、東武浅草線の堀切で荒川放水路土手下の長男宅。パーマ屋をやっている長女の家はお化け煙突が登場するから北千住か南千住あたりか。

要するに場末(昭和28年)の設定になっていて、庶民を描いているのだ。

まるで成瀬作品のようではないか。

***

この作品の最大の魅力は尾道の描写だろう。

小高い丘の上に建つ鐘楼から入り江を行き来する船を望み、海岸べりを蒸気機関車が縫うように走る。黒い甍の波が続く坂の多い街の路地には白い漆喰の壁が続き、子供達が鞄を提げて列を進む。

尾道を舞台にしたドラマはその後多く作られたが、この場所を選んだ慧眼に敬服する。

***

ホームドラマの嚆矢と言われてもいる。

親からみれば何時まで経っても子供は子供であるが、子供は親を捨てて独立するものだ。

上京しても子供は夫々仕事があり、親をかまっていられない。

だんだん親の面倒をみるのが億劫になってくる様を杉村春子があの意地悪そうな目つきで実にいやらしく演じている。

戦前は親が絶対だったが、戦後は子供の家庭が絶対となり、親は淋しくなった。

そんな親の心情を描いた作品なのだ。

***

でも普通の親と違い、笠智衆と東山千栄子は決して愚痴など言わない、淡々とそのまんまを受け入れて、尾道に帰って行く。

そして古女房が死に、一人の老人が残され、「日が長ごうなったように感じますなあ」と呟き、瀬戸の夕凪の暑い夕暮れ、団扇をパタパタと扇ぐ

切り替えしショットでエンディングとなる。

***

この作品は「城敗れて山河あり・・・」みたいな唐詩の感情で描かれていると思う。

流れ去っていくものへのノスタルジーというか、ある種の喪失感にあふれており、それが魅力の根源ではないか。

別の言い方をすれば、方丈記の「いく川の流れは絶えずして・・・」的な仏教的無常観だが、こんな感情を諸外国の監督がこぞって評価したという事実も、新しい発見ではあった。

***

高いロングショットで屋根と屋根の間の隙間を写しボンネットバスがそこをちらっと通り過ぎていく場面や、道のローアングルの正面ショットでは野良犬が3〜4匹向こう側に走り去る場面などは、その後違う映画で見たので、真似されたのだろう。

やはりカメラは秀逸だ。(切り替えしで少し錯覚はするが)

もう一度観たくなる優れた作品である。完敗。

 

No.42

ペールライダー 1985/105分 米 西部劇 dvd 11.04.05 

クリント・イースト・ウッド 製作・監督・主演

マイケル・モリアーティー、キャリー・スノッドグレス

冒頭の馬が疾走する場面の移動撮影の臨場感からぐいぐい画面に釘付けになり、あっとゆう間にエンディングを迎える圧巻の映画である。

筋書きは「シェーン」に酷似している、いやリメークと言っても良いと思うが。

悪漢に追い出されそうになる良民を流れ者のガンマンが救い、ガンマンにほれた人妻を残して、広野に一人旅だっていく。

ラストの「シェーン、カンバック」の少年役が、少女に変えてはあるが、荒野にこだまする声は同じ、名場面。

***

ボスが撃たれ、止めを額に打ち込まれ、傷口がアップにされる。他場面にもあるが額に残る跡を撮る事により銃の残忍さを表現している点では、「銃はかっこいい」的な西部劇と一線を画す。

西部劇の決闘場面は過去色々工夫が凝らされ、新鮮味をどう出すかが難しいところだが、忍者みたいに姿を突如消して目くらましを使った為に少し不自然にはなってしまった。でも水桶の中に空を向いて敵を待つアイデアには意表をつかれた。

正義が悪を倒す爽快感はやっぱり楽しい。

西部劇を楽しさを掘り起こした佳作だろう。

 

No.41

 野獣死すべし  1959/96分 モノクロ dvd クライム・サスペンス 11.04.02

須川 栄三 監督  大藪春彦 原作

仲代達也、団令子、小泉博、東野英治郎、中村伸郎

1980年にリメイクされた松田優作主演作品の方が有名で評価も高いが こちらが本家。

昔の映画で新鮮さを失わないのもあるが、これは少し古臭くなったか。

仲代は冷たい顔をしているからはまり役かと思いきや、何処かひ弱で憎めない面が出てしまい、冷酷無比な犯人になってないと思う。

同情さえ感じてしまう犯人像。

もっとも、犯人らしくないのが現代の殺人事件の特徴で、捜査が難しくなって来ているという筋書きだから、それでいいのだろうがサスペンスのハラハラドキドキを感じさせないという、逆効果を生んでしまったのでは。

カメラは工夫があり、鋭いものを感じた。

 

No.40

スリーピー・ホロウ 1999/98分 米 dvd ゴッシク・ホラー 11.03.29

 

 ティム・バートン 監督

ジョニー・デップ、クリスティナ・リッチ、ミランダ・リチャードソン

Gothicとは:怪奇・超自然などを特徴とする。

ホラーだから血がドバドバとか墓あばきなどの場面が連続するが、観客を怖がらせるという意図がないので、気持ち悪くない。

いや、高価な古い家具が美しいのに似て、気品すらある映像に仕上がっているのは驚き。

***

バートンとデップのコンビが作る、奇想天外なメルヘンは好き嫌いがあると思うが、大の大人が真面目に御伽噺的世界をしつこく作り続けるエネルギーに「物語」の原点回帰を見る思いだ。

物語とはそれらしく作っても、所詮「嘘」なのだ。この開き直りがいい。

現実に縛られない分、映像が自由に作れて幅が広がり、楽しい創造的世界に遊べるから。

***

スリーピー・ホロウとは米国東部の古い小さな町の名前で、そこで起こる連続首なし殺人事件の解決に、デップ警部が科学的究明を図る出だしになっており、ポアロのように論理的解決か?と思いきや、実は本物の幽霊でそれを操るのが魔女だったり、しっちゃかめっちゃかの筋書きだが、そんなことに目くじら立ててはいけない。

昔々の話だったとさで、おしまいなのだから。

 

No.39

エリン・ブロコビッチ 2000/131分 米 dvd 公害訴訟裁判 11.03.25

スティーヴン・ソダーバーグ 監督  ジュリア・ロバーツ、アルバート・フィニー、アーロン・エッカート

ジュリア・ロバーツのワンマンショウ的映画。

本作で、アカデミー主演女優賞を獲得した。ソダーバーグも監督賞にノミネートされたが同年の「トラフィック」の方で獲得した。

p・g社工場の6価クロム垂れ流し事件の集団訴訟事件を映画化したものだが、この種の事件はわが国の方が先輩で、ネタ的に新鮮味が無く、さらにテンポが遅いので、やや退屈な映画となったことは否めまい。

***

公害訴訟は日本では市民運動として捉えられるが、米国では法律事務所が請負、賠償金の60%を持っていってしまうという割り切りに驚かされる。

そんな何でも金で解決してしまう国民性にもびっくりだが、史上最大の和解金を支払っても、p・g社は今日尚優良企業でありつづけるのも、今ひとつ納得がいかない話だ。

でも、訴訟に何年も要するわが国の訴訟より、和解金を払い即刻、水に流す方が被害者にとっても有利である事は確かで、一考の余地を感じた。

 

 

No.38

福沢諭吉 1991/123分 dvd 伝記 11.03.21

澤井 信一郎 監督

柴田 恭平、榎木 孝明、仲村 トオル

 

No.37

わさお 2010/116分 動物ドラマ 11.03.10 T・ジョイ大泉他上映中

錦織 良成 監督(Railway)

きくやまさお(白い秋田犬)、薬師丸 ひろ子、平田 満、甲本雅裕

犬の映画は多く作られているが、訓練犬が演技している。

でもこれは、本人(犬)が出演している。それが逆に作画を感じさせない効果を生んだ。

野良犬相手の撮影でこれだけ自然に作られた苦労に敬意を表する。

***

脚本は一風変わっている。普通は犬のいろいろなエピソードを重ねその苦労と忠誠心を描きクライマックスを迎えるが、これは言わばその縦軸が無く、鯵ヶ沢に住む住民などのそれぞれの人生を、並列的に描き、それぞれの緊密な関連がうすい。

色々な動物や人びとが夫々、懸命に生きているのだよ、ということを描き、その一つに「わさお」を描いただけなのである。

建築で言えば、尖塔を持つ寺院建築でなく公団住宅のような平たい建物のような映画である。

だから評価しない人も多いだろう。

***

わさおは堂々としてかわいい。走る姿も美しいし、見たひとは誰しもフアンになってしまう魅力がある。主演賞をあげたい。(骨1年分)

そして、助演賞は薬師丸ひろ子。この人無くてはこの作品はありえないと思う。

犬好きだから、犬を見る目がとてもやさしいのだ。

***

鯵ヶ沢の観光名所として「きくや食堂」が賑わっているとのこと。国民的なアイドルになった「わさお」だがストレスで病気にならないことを願う。

 

No.36

セントラル・ステーション 1998/111分 ブラジル bs 11.03.06

ヴァルテル・サレス 監督   フェルナンダ・モンテネグロ、マリリア・ペーラ

期待していなかったが、すごい内容に仰天。

調べてみたら、ベルリン金熊賞、ゴールデングローブ外国語映画賞を受賞していた問題作だった。

***

出だしはリオデジャネイロだが、まずその現実にびっくりさせられる。

1998年だから10年以上前で現在とは違うと思うが、この映画から見る限りこの国が近代国家に生まれ変わるには相当の時間が必要と思われる。

成長著しいbricsとかなんとか持ち上げられて、日本人もブラジル・レアル債を競って買っているが、この映画を観れば不安になるかも。

その@ 国民の大多数が教育されておらず、文盲が多い。そのためリオ中央駅構内には「代書屋」がおり、手紙を書く商売が成り立っている。

A 電車に乗る時、我先に席に座ろうと窓からも どどっと なだれ込む無秩序さ。

B 屋台から商品をかっさらい、泥棒!と叫ばれた男を私服警官が追いかけ、捕まえて裁判にも掛けず、その場で射殺してしまう。

C ストリート・チルドレンを保護するとみせかけ、闇市場に売りさばく(殺して、臓器売買仲介者に渡る)。

***

このような無法と暴力が支配する首都でも、地方に行けば敬虔なカソリック教徒の農民が純朴な生活を営んでいる。

この作品の白眉とも言うべき異様なカソリックの祭りの夜の風物に、何か原始宗教の狂気さえ感じるのは、現実逃避せざるを得ない貧しき民の叫びを感じとることも出来よう。

TVで紹介されるリオやサンパウロだけがブラジルではないのだ。

この作品は孤児をつれて遠くに父親を訪ね歩く、ロード・ムービーだから、その落差を感じる事が出来る。

***

この女優さん、既に老女だが、預かった手紙を捨てたり、一度は孤児を売り飛ばしたりしても、残っていた良心に従いこの孤児の為に全霊を尽くし、自分自身不幸な人生を背負いながら、赤の他人に対するやさしさを、ぶっきらぼうに演じて素晴らしい。

又、この少年も名演技ではないか。かわいい。

厳しい社会に健気に生きる二人の人間に心の底から、幸多かれと祈る気持ちが溢れてくる映画だった。

 

No.35

英国王のスピーチ 2010/118分  英・オーストラリア 王室秘話 T・ジョイ大泉他上映中

トム・フーパー 監督

コリン・ファース(ジェームス6世)、ジェフリー・ラッシュ(ローグ)、ヘレナ・ボトム・カーター(皇后)、ガイ・ピアース(エドワード8世)

英国を代表するイケメンでラブ・ストーリーもこなすコリン・ファースだが、今度は国王陛下役。

これが又ぴったりしており、威厳がただよっているではないか。背が高く体もがっしりした男が一度も笑わないのだから迫力がある。

ニタニタ笑ってばかりいるチャールズ皇太子も少しは見習って欲しい。

アカデミー主演男優賞は当然だろう。

****

脚本賞もとったが、まず陛下の吃音というタブーに挑戦した勇気に敬意を表する。皇室裏話はわが国にもあるが、それを映画にする勇気ある人は居まい。

代償として皇室の品位を落とさないようにに描くのは当然として、観客を「吃音」で苦悩するキングに同情させて、結果国王に親愛の情を抱かせるように作られているので、皇室関係者も文句のつけようが無い。

****

それにきわどいセックス描写も殺人場面もない珍しい映画なので、全体としてとても上品な出来栄えだし、控えめなコントロールの効いた演出でお涙頂戴が無いのも、完成度が高い感じになっている。

でも難が無いのが難とこともあるのだ。それは、結果的に言うと観た後はとてもいい映画だと思えるが、2〜3日すると印象が薄れてくるような作品ではないかと思う。

「吃音」というテーマが或いは小さいのかもしれないし、それが大きな悲劇につながるとかの話ではなく、ハッピーエンドだから、どうでも良い話といえばそう思えるように変わっていくのだろうか。

***

それにしても、どもり始めると観客までがドキドキして、どうぞ上手く喋れますようにと祈る気持ちになるので、サスペンス的なハラハラドキドキすらある飽きさせない作品になった。

テンポも非常に良い。

かなりの作品である事に間違いない。

 

No.34

純喫茶磯辺 2008/113分 dvd ホーム・コメディー 11.02.28

吉田 恵輔 監督

宮坂 博之、仲里 依紗、麻生 久美子

基本は軽いお笑い路線だと思うが、まあ普通の映画としても観れる。

使われている小物や室内装飾もけっこう凝っており、俳優の使い方もミッキー・カーチスなんか一言も喋らなかったり、ダンカンや斉藤も個性丸出しの演技で、力作ではある。

***

飾らないリアルな生活感を曝け出してウリにしているが、父親像だけがやや不自然な設定になっているため、親子関係の交流復活とか言われてもピンとこない、というかそんな事はどうでもいようなつくりになっているのは残念。

それに、中盤退屈に感じたのは、テンポが遅いからだと思う。

抑揚をつけて、リズム良く、クライマックスを迎えてもらいたい。

 

No.33

地獄門 1953/89分 dvd 時代劇 11.02.26

衣笠 貞之助 監督・脚本  菊池 寛 原作    長谷川 一夫、京 マチ子、山形 勳

昭和28年のイーストマン・カラー映画。

衣笠は長谷川一夫、山本富士子 を使い続け大スターに育て上げた「娯楽時代劇」の巨匠であるが、戦前に既に欧米に認められた日本人監督第一号でもある。

本作もアカデミー衣装デザイン賞、カンヌ・グランプリを得た。

昭和20年代は映画全盛時代で、多くの名画が作られたが、殆どモノクロであるのに対し、本作は総天然色である。

dvdではややコントラストが強すぎる出来だが、現代の人がみても十分に耐えられる水準の処理。

感心するのは、夜の場面が多く、室内はもとより月明かりでの屋外での撮影が連続し、それがとても美しく撮られていることだ。

当時はまだ高感度フィルムも少なかったことからすれば驚きではないか。

***

平安末期の乱れた世相を題材にした作品が連続して作られ、夫々海外で高い評価を得た事は、外人が不思議な国に住む不思議な日本人のアイデンティティーを其処に見出したと言う事だろうが、現代日本人の気質は室町以降作られたとみるべきで、我々にとっても既に異国的な世界に見えるのも事実。

あまりにも、絵巻物然としている所以であろう。

***

京マチ子の姿形がすごく良い。彼女の出演作のなかではピカイチではないだろうか。

 

No.32

重力ピエロ 2009/119分 dvd サスペンス 11.02.25

森 淳一 監督   原作 伊坂幸太郎

加瀬 亮、岡田 将生、小日向 文世、鈴木 京香

父親役の小日向文世と息子役の岡田将生が抜群に光る演技。

特に父親役、常にクールでありながら、運命を真正面から受け入れる様が、弱弱しくもあり又潔くもあり、捨てがたい味を出して暗すぎる題材の中で、ひときわ救いの光となっている。役場の職員でありながら、どこかの高僧のような高い精神性をかもし出している。

鈴木京香も良かった。

兄弟愛も美しく描かれている。

****

でも、これは原作、脚本のせいだが、エンディングが雑。

芥川賞の候補作だったが、逸したわけも分らないではない。

父親殺しには贖罪が必要だろう。たとえ犯罪者だとしても、口をぬぐって兄弟で蜂蜜採取で終わるのは頂けない。

共に焼死の線のほうが良かった?

 

 

No.31

心のともしび 1954/108分 米 bs ラブ・ストーリー 02.23

ダグラス・サーク 監督

ロック・ハドソン、ジェーン・ワイマン、バーバラ・ラッシー

これまた再度鑑賞。

情けねぇ。

***

この作品は1935年の「愛の光」のリメークらしいが、ドラマティックな脚本にあらためて驚かされる。

ヒーローがヒロインに2重の苦渋をなめさせるというマイナスから、償うというプラスへの転換が見事と言わざるを得ない。

谷深ければ、山高しの法則。

それにしても、後半はよく憶えているのに、前半は又もや憶えていない。

映画と言うのは前半の記憶が薄いように作られているのか?

くやしい!

それにしても、R・ハドソンはハンサムだなぁ。個性派俳優ばかりで、美男俳優が居なくなった今日、色男が懐かしい。

J・ワイマンは演技は上手いが、当時としては珍しく美形ではない女優さん。

年回りも合わないし、カップルとしてはアンバランスだと思う。

50年代のアメ車が素晴らしい。

 

No.30

ソーシャル・ネットワーク  2010/120 米 企業家ストーリー 11.02.21有楽町ピカデリー3他上映中

 デヴィッド・フィンチャー 監督

ジェシー・アイゼンバーグ(イカとクジラ)/マーク・ザッカーバーグ・・フェイスブック創業者、アンドリュー・ガーフィールド(Dr.パルナソスの鏡)/エデゥアルド・サヴェリン・・フェイスブック共同創始者、ジャスティン・ティンバーレイク/ジョンパーカー・・ナップ・スター創業者

facebookの創始者で一躍大富豪となったザッカーバーグのシンデレラ・ストーリー。

会員は全世界で5億人を超え、企業の拡販の手段とかにも利用され、多面的な進展をみせている。

最近の中近東の革命ドミノにも一役かっている。

****

フェース・ブックはSNSの一種。SNSはsociall networking servise のことで所謂「出会い系サイト」のこと。

星の数ほどあるSNSの中でface bookだけがが何故急成長したのか知りたいところだが、この映画では明らかにされて無い。

ハーヴァードの現役学生で女性にもてないパソコン・オタクが 最初はエリート集団である学内の生徒に限り恋人資料掲載的なサイトを立ち上げ、実名募集したところ、あっという間に広がり、次第にアイビー・リーグ全体に、さらに西海岸に、さらに欧州に広がったとのこと。

勝ち組に乗る群集心理が加速し、あっという間に世界基準になる典型。

***

世界には自由にプログラムが書けて、名簿などのガードを簡単に破って盗用したりする、グレーな連中が沢山いる。

日本にも居るが、MSのビルゲイツやグーグルの二人の創業者、ナップスターのジョン・パーカーやフェースブックのザッカーバーグのような成功者は居ない。

英語で書かなければいけないこともあるだろう。

でも、米国発は、発想が大きく、ビジネスに結びつける独創的な起業家魂も凄い。

世界は彼らによって征服されるかもしれない。そんな危険が放置されている。

日本人はチマチマしたことが得意だが、世界を睨んだこの分野は苦手。残念だ。

***

パソコン教育は小学校で始まったばかりだが、使いこなすことが主眼で、大学の数学科に入った段階で初めてプログラミング教育がされる。

若手でなければ日々進歩する世界について行けないのだから、中学、高校からこの分野への道を開いておく必要を感じる。

日本にもオタクが多いから、必ず天才的な人間が発掘される可能性はあるのに。

***

映画はアイデア盗用問題、裏切り、資金問題など、この世界にも人間社会の欲望のぶっつかりあいが凄く、結果的にお金が入っても幸せ感が得られないような、通俗的な作風になっているが、インターネットの広がりの凄さ、ハッカーなど普通という怖さなど、それらをひっくるめてSNSという怪物の存在を再確認させられる意味深い作品だった。

 

No.29

愛と追憶の日々 1983/132分 米 cs 母娘物語 11.02.20

 

J・L・ブルックス 監督

デブラ・ウインガー、シャーリー・マックレーン、ジャック・ニコルソン

 

アカデミー作品賞、主演女優賞。

うっかりこれまた2回目鑑賞だった。前半部分は殆ど忘れていたが、中盤以降のカット場面はかなり気になるほど覚えている。不思議。

私の記憶装置に問題あるのだろうか。忘れている部分と忘れられない部分はどうして生ずるのか?

***

題名とは裏腹に、かなり重いシリアス路線ドラマ。

S・マクレーンは既に憎たらしい感じになっているが、演技はさすがうならされた。

***

娘とセックス話が盛り上がる。極めてオープン。

日本は儒教の影響で、まだ何処か罪悪感がある。とてつもない大きな違いを感じる。

 

No.28

セックス・アンド・ザ・シティー 2008/144分 dvd 米 ラブコメ 11.02.19

マイケル・パトリック・キング 監督

サラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、クルスティン・デイヴィス

全米大ヒット連続TVドラマの映画化で、興業的にも当たり、続編まで作られた。

あくまで大衆向けに作られた作品で、ファッションと恋愛という女性の最大関心事を扱い、分り易く人生を教えている。

くだらないと言わないで、ある意味大衆教育という映画というマス・メディアのもつ特性を生かした作品と評価したい。

***

NYに来る女性の目的は二つのL。一つはLOVE、もうひとつはLEBEL でこの映画は始まる。

アラフォー4人の恋愛とファッションを描いているが、私だけの特異な感想だと思うが次のように考える。

***

女性はブランドものに弱い(ブランド=ラベル)といわれる。ラベルで中身を判断する。中身で判断しているのではない。

でもこれは万人に共通する人間心理だと考えられる。

ファッションだけではない、例えば結婚生活はこのようでなければいけないとか、生活はつつましいほうが良いとか、友達はこのようでなければいけないとか、人はあらゆる事柄にラベルを貼っているのではないか。いわば理想型のラベルを各自もっており、その幻想という色眼鏡を通して、人をみたり物事を判断している。

このラベル縛られて、実体をあまり見ていない傾向があると思う。

高収入、高学歴、背が高いという3高で選んでも失敗するのと似ている。

世間体に縛られる人生もそうだが、結構人間は自分が作ったラベルに縛られ、まちがいを犯している。

***

この映画は相手を理解しないで、結婚こそが目的になり勝ちなアラフォー、果て又、豪華な結婚衣裳を着ることが幸せと勘違いしている女性に、結果がよろしくないよ、式は市役所でいいのだよみたいな ジミ婚をススメて、裸の価値観に戻る大切さを教えてくれている。

***

映画の見方も囚われてはいけない。

音楽もベートーベンだからどんな曲も素晴らしいのではない。

世の中を、ラベルを剥がした「無印」で今一度見直してみる事を忘れないようにしたい。

ラベルに惑わされない人生を送りたいものだ。

 

No.27

白い恐怖 1945/111分 モノクロ cs クライム・サスペンス 110219

アルフレッド・ヒッチコック 監督  サルバトール・ダリ幻想場面製作 イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック  

46年アカデミー監督賞受賞作。

ヒッチコック45歳の作品。

記憶喪失という題材を使ったスリラー。バーグマンがとてもキレイ。

今見ると、スキーの滑走場面がお粗末で、室内で合成されたのがミエミエで気になるが、当時は普通だったのだろう。

最も気になるのは、エンパイヤーホテルのロビーでバーグマンが不気味な男に絡まれるところ。3回もカット割りがあり、これが事件と何か絡むと思わせて、実際は無関係だという、無駄場面には首をかしげる。

このほかにも、冒頭の女性患者をしつこく描いているが、展開上無意味。

秀逸な題材だけに、無駄が目立つ作品だと思う 残念。

 

No.26

銀座化粧 1951/87分 モノクロ cs ホステス・ストーリー    110217 

成瀬 巳喜男 監督  井上友一郎 原作 

田中絹代、花井蘭子、香川京子、東野英治郎、柳永次郎

終戦直後の銀座、築地、新富町など、まだ川が残っていた都心の風情が貴重な資料的作品。

女性を描いた作品なのだが、私には子供を描いた作品に思えた。

当時の子供は活発に集団で遊びまわっており、そのイキイキした動き(走り方など)を監督が、愛情を持って撮っているのが良く伝わってくる。

昔の子供は汚いが、とてもカワイイのだ。新富町には沢山の子供が住んでいた。今、子供はみかけない。

大女優田中絹代さんはお色気と言う点では光らないから、銀座のホステス業という役柄に感情移入しにくい作品となっている。

女優陣より、東野、柳 両氏はじめベテラン男優陣の方が印象に残る演技をしているのも特徴。

 

No.25

余命 2008/131分 dvd ラブ・ストーリー 11.0216

生野 滋朗 監督(「手紙」)  谷村 志穂 原作

松雪 泰子、椎名 桔平、奥貫 薫、かとう かず子、宮崎 美子、橋爪 功

 

妊娠した女性が癌に侵されても、胎盤に護られた胎児には転移しないらしい。

主人公は癌の治療を諦め、子供を産む道を選ぶ。

選ばれた子供は、母の命をついで生きる。

10年目にやっと授かった命ということもあろうが、多くの女性が自分か子供かどちらかを選ばなければいけない時に、下す決断だろう。

****

松雪さんは必死に演技しているが、少し暗すぎたかな。

椎名氏は好き嫌いあろうが、私には軽く流す感じがしたがどうだろう。

 

No.24

食堂かたつむり 2010/119分 dvd 母娘ドラマ 11.02.12

富永 まい 監督    小川 糸 原作

柴咲 コウ、余 貴美子、ブラザー・トム

若い女性監督らしい。

女性の母親との関係は独特なので、女性でなければ作れない映画かもしれない。

親の子にたいする無償の愛のテーマは永遠だが、日常生活ではそれを表に出さず、いやむしろ反発しあうこともあるが、親は陰で目立たず見守っている。母の死後、その思いに気付くところなど、周五郎的な脚本である。ベストセラーだったらしい。

原作を読んでいないので本当のところは分らないが、この映画はコメディー・タッチで作られている。

漫画チックなオッパイ山や白馬に跨ったスナック客などが登場する。

でも、笑いと涙のバランスが悪いのだろう、チープな感じが否めない。もっとコメディー中心に話を進め、チョッコしホロリとさせたほうが収まりが良かったのでは?

料理のもつ神秘的な力とか愛着とか柴崎コウさんの手つきが能弁。

エンド・ロールで材料を吟味し仕入れるサマが初めて紹介されるが、一般人の参考になるレシピ、アイデアの一つぐらい紹介して欲しかったとも思う。

 

No.23

第9地区 2009/111分 米 dvd SF 11.02.11

ニール・ブロンカンプ 監督

シャールト・コプリー、デヴィッド・ジェームス、ジェイソン・コープ

 

奇想天外なSF。

宇宙人難民が押し寄せて、人類が彼らを第9地区に押し込め、アパルトヘイト政策をとるという、非「人」道的対応を批判的に描いている。

舞台が南アのヨハネスブルグというのも、明らかに黒人対白人の対立を意識してのこと

過去色々な宇宙人が創造されたが、この映画に登場する宇宙人はエビにそっくり。相当気味が悪く、口のまわりの動きなど実によく出来ている

あこぎなヤクザや武器商人など人間のきたない面を描き、人類対宇宙人という単純な図式にしていないところが一味違うSF。

宇宙人は強力な武器を持っていて、それは宇宙人DNAにしか反応しないので、地球人はそれを使えるように人体解剖や実験を繰り返しているのだが、そんな武器を持った宇宙人が武器を使うことなくヤクザに押収されたり、奴隷化されたりという話が、どうも不自然。

アイデアものの映画ではあるが、今一度要整理。

エンディングももう一ひねり欲しいか。

 

No.22

エグザイル/絆 2006/109 香港 dvd アクション 11.02.09

ジョニー・トー 監督

アンソニー・ウオン、ラム・シュー、サイモン・ヤム

香港映画は昨今元気が無いが、内容的には前より高いとの説もある。

その代表格がジョニー・トーらしいが、本作も派手な撃ち合い場面は、臨場感というか、立体的なカメラで凄いとは思う。

でも話の筋がなにやら古典的な仲間の友情だから、単純すぎて新鮮味が乏しく、総合的な出来を損ねているのは否めまい。

惜しい。

エグザイルとは「放・逐」と説明されている。

 

No.21

告白 2010/106分  dvd クライム・サスペンス  11.02.05

中島 哲也 監督(嫌われ松子の一生)  湊 かなえ原作(本屋大賞)

松 たか子、木村 佳乃、岡田 将生

この映画はイントロが実に優れている。

一気に観客を惹きつけ、ぐいぐい引っ張っていき、最期まで退屈させない。

それに、私など最近の中学生事情に疎い人からみれば、その荒れ方、いじめ方、狡猾さなど とても勉強になる。

勿論これはフィクションである。でもある程度中学の実体を知らなければ書けないから、当たらずとも遠からずだと思う。

だから、中学生を持つ親が勉強の為に観ても決して無駄ではない。

****

我が子を生徒に殺された女性教師の復讐劇であるが、あくまでも冷静に、緻密に、計画どおりに事を運ぶ女性教師の特異な怨念を、あたかも乗り移ったかのように、松たかこが演じていることも見所である。

少年法により原則12歳未満は殺人を犯しても少年院にもいかないらしい。保護観察処分、即ち実質無罪。犯罪の低年齢化により、改正もされているが、他人の命を奪うことを左程悪い事ではないと思っている子供も多いのは事実。

もっともっと小さい頃から、人を殺めてはいけない、盗んではいけない など基本的な社会ルールを理屈抜きに覚えこませる必要を痛感する。

***

少し変な点:体育館に仕掛けた爆弾で大勢の生徒と一緒に爆死しようとした犯人。女性教師はその爆弾を床下から外し、母親のいる研究室に運んだ。彼が携帯のキーを押すと、マザコン母だけが死ぬ。爆弾を作ったのも、それを爆発させたのも犯人だから、私は関係ない。

そう上手くはいかないのでは、運んだ事で彼女は当然有罪だろう。前提は無罪で復讐を成し遂げることではなかったか。少し変ではないか。

 

No.20

パーマネント野ばら 2010/100分 dvd ラブ・ストーリー 11.02.05

吉田大八 監督   西原理恵子 原作

菅野 美穂、小池 栄子、池脇 千鶴、江口 洋介、夏木 マリ

 

漫画の原作。彼女の絵があまり好きではないので、その作品を敬遠していたが、この作品で再認識させられた。他にも最近立て続けに映画化されているので、それも多分良いのだろう。

(あらすじ)多分、高知県宿毛(原作者の故郷らしい)のある小さな港町にあるたった一軒のパーマ屋。夏木マリが経営しており、出戻り娘が子連れで同居している。この「パーマネント野ばら」が舞台。

パーマ屋には常連のおばはん達が、チンコの昔話で盛り上がっている。表向き平和で平穏な田舎の場景が詩情豊かに紹介される。

ところが男女関係は少しも平穏ではない。夏木も夫に逃げられ、菅野も離婚、池脇も何度も男に捨てられ騙され、小池も男に浮気され金を貢いでいるばかり。要するに、男と幸せに暮らしている女は登場しない。可愛そうな女性ばかりのエレジーというべき作品。

(不幸のパターンと演技)

フィリピン・バーを経営している小池はそんな状況でも、決して落ち込まない。明るく蹴飛ばしながら、逞しく生きている。小池の作品ではNo.1だと思うが、一皮剥けた。素晴らしい。

池脇は徹底的に男運が悪いが、男と一緒でなければ生きれない女、泣きながらも懲りずに不幸を重ねる、ぐじゅぐじゅぶりが又捨てがたい。

主役の菅野は池脇に 私の秘密知っている?先生と付き合っているのよ。・・・うんもう何度も聞いたわよ、うんうん。「私おかしい? 狂ってる?」「狂ってなんか無いよ」・・・・。

先生と温泉旅館に行って、先生が突然居なくなる。ラストでは海岸でプロポーズされたのに急に姿が消える。(これからはネタバレになるので読まないように、普通に見れば気がつかないように作られてはいるが)  実は先生は菅野の在学中に既に死んでいたのだ。

菅野と言う女性は現実を認められず、愛の記憶の中で生きる女性なのだ。菅野の演技はどこか重量感がなくふわふわとしている。これが夢の中にいきる哀れな女性を際立たせ、観たあと涙を誘う名演技となっている。

(田舎)

人が少ないので、一人一人の陰影がはっきりしている。都会は人が多く、その他大勢の中の一人だから、人が霞んで見える。

港町風景が懐かしさをかもし出して、少しでも住んでみたくなるひともいるかも。

等身大の何気なさと、淋しさが同居したような独特のタッチが成功している。

 

No.19

飛べない沈黙 1966/100分 モノクロ ATG作品 cs 11.02.04

黒木 和雄 監督  (処女作)  加賀まりこ、平中実、小沢昭一、永戸裕之、蜷川幸雄、小松方正

前衛的すぎて上映されなかったが、ATGの登場で陽の目を見た作品。

その後、戦争レクイエム3部作という傑作を作った名監督のデビュー作。

カメラが抜群で、それだけで佳作。今観ても、切り取り方が大胆で新鮮。

ナガサキアゲハの幼虫が長崎、萩、広島、京都、大阪、横浜、香港、東京、札幌と旅をするロード・ムービー。

幼虫からみた当時の日本の世相を断片的に捉え(オムニバス)、どうにもならない閉塞感を表現している。

原爆の傷跡、平和運動、旧家の犠牲になる女、サラリーマンの悲哀、戦時体験を引きずった旧軍人、ヤクザの活躍、・・・・・。

基本に反戦、反資本主義、反米思想があり、非人間的な社会の歪みをもたらしている体制を陰で告発しているとも言える。

要するに、政治的な香りを捨てきれない、芸術至上主義ともいうべき作品。

蝶の化身=加賀まりこの代表作かもしれない。

 

No.18

愛する人 2009/126分 米 養女ドラマ ル・シネマ他上映中 11.02.04

ロドリゴ・ガルシア 監督(コロンビア人 美しい人、彼女を見ればわかること)

製作総指揮 アレハンドロ・ゴンザレス・イリニャトウ(バベル、21グラム、アモーレス・ペレス)

アネット・ベニング(母)、ナオミ・ワッツ(娘)、ケリー・ワシントン、デビット・モース

監督、製作は「美しい人」と同じコンビ。

(あらすじ)14歳で女子を出産、親の意見に従い、子供はすぐ養女に出された。何処の親に引き取られたたかは分らない。映画はそれから37年後から始まる。母は毎日、出す当ても無い我が子宛の手紙(日記帖)を書き続けている。子供を捨てた罪を引きずって生きてきた。娘は腕のいい弁護士になっているが、自立心が強い余り周りとうまくいかない。親に捨てられたという恨みが独自の性格を作ってしまった。

母は伴侶の勧めで子供を捜す決心をして、養子縁組の仲立ち事務所を訪れ手紙を置いて帰る。子供も親に会いたくなれば手紙を置いておき、双方の意思が一致すれば会えるという仕組み。

娘は妊娠し、出産間際に手紙を置きに行くが、母の手紙が事務所の手違いで他の書類の中に紛れ込んで、再会は果たせなかった。娘は子供を無事産んだが、本人は命を落とす。身寄りの無い子供は養女として子供の居ない女性に引き取られた。その1年後、事務所の職員が紛れた母の手紙を発見した。連絡を受けた母は事の次第を知り、孫に会いに行く。

孫は娘と同じ目をしていた。母は日課となっている就寝前のベッドでの日記に、幸せそうに暮らしている孫に会ってきた報告を書く。サイドテーブルの上には、おなかの大きい娘の写真とかわいい孫の写真が2枚が飾られていた。

*****

娘は表と裏の顔を持つ。表はやり手のキャリア・ウーマンで裏は奔放な私生活。そして徹底した一匹狼の性癖。上司との不倫で妊娠したのだが結婚も否定、支援も断るような性格が、結果として死を招いた。根底には親に捨てられたという人間不信があり、わがままに生きるしか道が無かった。こんな難しい役どころをナオミ・ワッツがサラリと演じて、魅力的な女性にしているが、イマイチ陰影が薄かったような気がする。

片や、母役のアネット・ベニングは心の動揺など、痛いほど伝わってきて、この映画の主役として十分な出来栄えだったと思う。

特に「他人に完璧を求め、条件の厳しい性格」から、他人を許し優しくなっていく変貌振りが、家政婦とその娘との関係を通して見事に演じられている。

****

とても感動的な作品で、場内からすすり泣きが多く聞かれる、素晴らしい内容だと思うが、唯一の欠点は途中でシナリオの展開が読めてしまう弱さを持っている事だ。

それらしいエサを蒔きすぎたということだが、どうだろうか。

 

No.17

ペルシャ猫を誰も知らない 2009/106分 イラン 音楽青春映画 飯田橋ギンレイ・ホール上映中 11.02.02

バクマン・ゴバディー 監督

ネガル・シャガキ、アシュカン・クーシャンネード、ハメド・ベーダード

 

監督はクルド人でテヘランには住んでいない。

田舎から出てきて、首都で無許可の撮影を続けながら、この映画を作った。

多分手持ちビデオみたいな貧弱な機材を使い、取り直しなく一発勝負みたいなゲリラ撮影だったのだろうが、このお粗末さがドキュメンタリー・タッチの臨場感を生みだして、緊迫した作品を仕上げた。

題材はポップ音楽をイランで行うことの難しさで、官憲の目を逃れながらも若者が必死で音楽を作り、こっそり聴く姿に感動する。

意外と多くの人たちが地下で音楽に携わっており、しかも民族音楽からラップ、インディーズ・ロックまでその内容もなかなか聞かせる素敵なものが多いのにはびっくり。

禁じても人は音楽を止めないものらしい。

イランという国は良く分らない。イスラムでもインドネシアなど制約は無いのに、どうしてだろう。戦前日本でもジャズなど洋楽が禁止だったのと似て、アメリカン・ポップスを若者が聞くと、敵国アメリカに負けたと為政者が感じる気持ちも分らないでも無いが。

それに偽ビザや偽パスポート製造業者が居るということは、国民の海外移動も制限しているのだろう。

さらに不思議なのは音楽の自由をしばり、海外渡航をしばる事への、抵抗映画である本作が平気で海外上映されるルーズさである。

この映画は強烈に現政権を批判しているわけではないが、確かに反体制側の作風である。

でも、秘密裏に作られて、秘密裏に海外に持ち出されて上映されるという、そんなご大層な作品でもないから、多分テヘランでも上映されているのだろう。

旧ブレジネフ体制よりはマシということか。

イラン映画は良作を過去輩出してきた。芸術家が自由に腕を振るえるような環境を期待したい。

いくつか、耳に残るいい音楽があったことを、付け加えておこう。

 

No.16

闇の列車、光の旅 2009/96分 米・メキシコ ドキュメンタリー・ラブ・ストーリー 飯田橋ギンレイ・ホール上映中 11.02.02

ケイリー・ジョージ・フクナガ 監督(カルフォルニア生まれの日系人若手監督)

エドガル・フローレス(写真二人目)、バウリタ・ガイダン(メキシコのTV女優、写真)

中米はメキシコはまだ良いほうで、他多くは極端に貧しい。一般的に識字率も低く、貧富の差も大きく、汚職も絶えず、物騒である。政権も米国傀儡と反米路線が常に対峙し、不安定。

こんな祖国に見切りをつけた人たちが、続々とパラダイス・アメリカを目指し長蛇の列をつくる。

この映画は、ホンジェラスの一家が貨物列車の天蓋の上に乗り、グアテマラ、メキシコを突破して米国に向かうロード・ムービーである。

***

実は昨年、NHKのドキュメンタリーでこの不法移民の悲劇が放映されたので、かなりの人が知るようになった。

その契機となったのがこの映画なのだ。

私もNHKを見ていたが、実体を知るという上では、このTVの方が情報量がかなり多い。移民を助けると称して残る親から金を騙し取る詐欺師組織とか、砂漠横断の難所をガイドすると言って荒野で少年を犯すならず者が常駐している様が暴かれているが、映画では割愛されている。

でも映画では恐ろしい国際的なヤクザ組織の存在が克明に描かれており、違うショックを受ける。

命令された人を殺さないと組織から消される掟は まだ幼い少年に兄貴と慕う人物に銃口を向けさせる悲劇を生む。

そのため、国境の濁流中で必死で戻ろうとする恋人の叫び声が空しく響き、無残な愛の結末を迎える。

***

ケン監督は不気味な刺青集団のヤクザ組織も取材したらしい。組を抜けられないように顔や全身に刺青を施している。敵の組員を捕まえ、殺して肉を犬に食わせる。貧しい移民の群れから金品を奪い取るのも容赦ない。

無事アメリカに渡れるのはかなり少ないらしい。この作品は3人家族のうち、一人は殺害、一人は強制送還、残る彼女だけが成功という設定。

この悲惨な状況を見捨てて置けないとボランティア団体も組織され、途中で無料の食料とか一夜の宿も提供したりしている。

豊かな日本、貧しい中米。安全な日本、危険な中米。同じ人間として見過ごせない落差の甚だしさに、為政者への怒りを禁じえない。

****

映画としての魅力は何といっても、貨物列車であろう。何百人という移民が走る列車の屋根の上に座っている。眠り転げればお仕舞。手を伸ばして枝についた実を取って食べたりもする。

雨が降っても耐えしかない。ギャングが来て逃げる・・・。移り変わる景色。走りながらの撮影は迫力満点。

初の長編映画ということらしいが、世界に情報発信という大きな役割を果たした意味は大きい。純粋に劇映画としてみても素晴らしい。

 

No.15

宇宙戦争 2005/114分 米 dvd S・F 11.01.31

スティーヴン・スピルバーグ 監督、  撮影監督カミンスキー、 原作 H・G・ウェルズ

トム・クルーズ、ダコタ・ファニング、ティム・ロビンス

タイム・マシンとか透明人間とか火星人とかの概念を 初めて創りだしたSF界の巨人による原作を スピルバーグが巨額を投じて映画化した。

でも余り面白く無い。

いかんせんウェルズは古すぎる。(1866〜1946)

彼の死後、科学の進歩につれてSFも ハットいわせるアイデアが続々登場し、我々を楽しませてきたから、物足りなく感じるのだろう。

でも最期のオチは秀逸である。

人類は長い歴史の中で、微生物(バイ菌)と共存してきた。

宇宙人は科学は進歩していても、免疫がなく鳥が撒き散らすバイ菌によって死んでしまうのだ。

****

この映画には2つの見所がある。

一つ目は、名子役ダコタ・ファニング。トム・クルーズより演技は上。 I am samや「美しき人」でびっくりしたが、間違いなく天才。

2つ目はカミンスキーのカメラ。逆行をふんだんに使い画面に奥行きを感じる。「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」で二度アカデミー撮影監督賞に輝いた大御所。

金をかければ、いつも勝てるわけではないような見本の映画。

 

No.14

いのち・ぼうにふろう 1971/121分 モノクロ cs 文芸作品 11.01.28

小林 正樹 監督  山本 周五郎 原作(深川安楽亭)  隆巴 脚本

仲代 達也、勝 新太郎、中村翫右衛門(三代目)、栗原 小巻、佐藤 慶、酒井 和歌子、山本 圭、近藤 洋介、神山 繁、滝田 祐介

周五郎の短編を、膨らませて一本の映画にしている。

周五郎は最も多く映画化されている作家だと思うが、骨格がしっかりしているので、短編を膨らませてもサマになる。これが多数映画化される理由ではないか。しかも殆ど外れない。

この脚本は隆巴、調べてみたら仲代達也氏の妻の宮崎恭子氏だった。女優さんだから素人のはずだが、驚いた すばらしい。

原作は周五郎作品の中ではそう目立つ方ではなく、「謎の酔っ払い客」の過去あぶりだしという、地味な展開になっているが、この映画は捕り物サスペンスに変えてより面白くしたのが成功していると思う。

原作では陰の主人公は「謎の酔っ払い客」だが、映画では定吉(仲代)で人柄がくっきり描かれ、亭の娘おみつ(栗原)との仲まで付加され、壮絶な最期が際立って生かされている。

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名作中の名作「切腹」と同じ小林、仲代コンビの作品である。

カメラ・音楽・配役 等 完璧に近いのではないか。

特筆すべきは勝新太郎。一世一代の名演技。他の作品からは想像もつかない、人生に裏切られた弱弱しい人間模様が絶品。驚愕である。

監督演技指導がよっぽど良かったのだろう。

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すねに傷ある極悪ゴロツキが寝起きしている安楽亭。稼業は抜け荷の運搬業。そんな彼らも自分では獲得できなかった幸せを一人の若者に託して、「いのちをぼうにふって」全員玉砕する様が美しい。 

dvdは未発売。何故だろう。

 

No.13

禅 zen 2008/128分 dvd 伝記 11.01.26

高橋 伴明 監督

中村勘太郎、内田有紀、藤原竜也

開祖と呼ばれる人の生涯は過去かなり映画化されてきた。親鸞、空海、日蓮・・・。

本作品はその系譜にある曹洞宗の開祖 道元の物語である。

永平寺や鶴見の総持寺が有名だが「只管打座(しかんたざ)」・・・ただひたすら座禅せよ が教え。

臨済宗が上級武士など、曹洞宗が下級武士などに広がったらしいが、禅宗の己を捨てる「無私の境地」がその後の武士道の根幹になったことは間違いなかろう。

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日本の仏教は複雑で解り難い。お経が中国語やサンスクリットのままだというのも変なはなしだが、語学の問題を離れても道元の「正法眼蔵」など読んでも理解できる人は殆ど居ないと思われるしろものである。存在論、認識論など哲学書に近い難物。

ポピュラーな「般若心経」でさえ、解説者によって読み方が変わる。

仏教はヒンズーから派生した多神教だから、最初は釈迦如来だけだったらしいが、その後大日如来、阿弥陀如来、薬師如来・・・と色々な如来様をつくり、宗派によってその拝む如来様が異なる事態を招いてしまった。そのため、庶民は本当は何を拝めば良いのか迷ったまま。

あちこちの如来様を拝み、ついでに神社の八百万の神にまで、拝む始末。

その点、キリスト教の方が簡単でうらやましい。

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「死んだら天国に行きたい」ために仏に祈るより、現世で幸せになるべきだ、といのが禅宗の考え方。

浄土概念を否定している。

現世は苦しみが満ちているのを極楽に変えるには?

これは釈尊が説いたように「欲望を捨てる」しかない。欲望の無いところに苦しみは無い。これは真実。

欲望を捨てる方法として、座禅が有効としたのだろう。

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欲望を捨てる事は己を捨てる事。自分の利害概念を消し去る事。

言うはやすし!

でも分っていて道元は座禅を薦めたのだろう。

多くの人が座禅を組み、内省することによって、己の「仏性」に気付くはずだ、それで欲望を少しでも抑えらればよし。

「只管打座」は人間信頼の教えでもある。

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伝記映画を作る意味は、観る人に宗教観を目覚めさせ、大衆に分り易くその教義を教えることにある。

特定の宗教法人の利益の為だけの作品で他宗派をけなすのではなく、宗教界全体の地位向上の為に寄与しなければ意味が薄い。

その意味で、この作品は一定の評価を与えても良いと思われる。

 

No.12

人間失格 2009/134分 dvd 文芸作品 11.01.25

荒戸 源次郎 監督(赤目48滝心中未遂)  太宰 治 原作

生田 斗真、伊勢谷 友介、寺島しのぶ(ツネ子)、石原 さとみ(ヨシ子)、小池 栄子(シズ子)

 

原作:太宰はこれを書いた後、玉川上水で山崎富枝と心中死した。自伝的作品とよばれ、自分の心の内面を吐露した、極めてインパクトの強い作品である。

人は皆 欲の塊で、実体は穢いものだ。でもそれを表に出さず他人を上手に自分の利益に取り込もうとする。だから他人が怖くて仕方が無い。極度の人間不信。誰一人他人を信じることができず孤独で淋しい。何度も心中や自殺を試みたが死に切れない。酒や麻薬で現実逃避するだけの生活を続けた。

社会に生きる術は「道化」に徹するしかない、幼少期からうすうす感じ 皆を笑わせる事ばかり。学校でも人気者だったが、ある阿呆学生に「嘘」を見抜かれ戦慄する・・・・。生涯に一度も「真実」を口にしたことが無いと言っている。「人間失格」は初めて内面の「真実」を書いたのだろう。だから死ぬしか道は無いと勘違いしたのだろうか。

太宰と言えども、これが自伝ですと開き直る度胸が無かったらしく、主人公は漫画家ということにし、ある破滅男の日記から構想を得たことにしている。

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本作品は「赤目48滝心中未遂」の監督である。これも車谷長吉原作の文芸ものだったが、素晴らしい作品だったと思う。特に大楠道代が忘れがたい。(本作にも京橋のバー店主として出演している)

ところが、「人間失格」は失敗作だと思う。

もともと映画化が難しい題材ではないか。

原作を読めば誰しも気付くが、原作は主人公の心の中の描写に焦点が合っており、外の世界の出来事は曇りガラスを通してボンヤリにしか描かれてない。要するに、女性関係や友人関係、自殺や心中や、実家との確執などいろいろ登場はするのだけれども、それらは原作では殆ど実体の無い幽霊みたいな、ボンヤリとした影として登場するのだ。

ところが、映画となるとそうはいかない。それら外部の出来事が主体にならざるを得ない。具体的に焦点を移し変えなければいけないのだ。

結果登場する女達はどんなタイプかを掘り下げないと、彫像にならないのに、勝手にそうすれば改作になってしまい、このような名作ではそれが許されないというジレンマに陥る。

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原作では左翼活動が及ばした生活などが多く書かれているが、映画では割愛している、その事もあってか所謂インテリの悩みみたいなものが感じられず、単に意志の弱いボンボンの零落話に成り下がった感は否めまい。

いずれにしても、文学と映像は違うという事だろう。

 

No.11

踊子 1957/96分 モノクロdvd 文芸作品 11.01.24

清水 宏 監督   永井 荷風 原作  田中 澄江 脚本

京 マチ子、淡島 千景、船越 英二

京と淡島は1924年の同年生まれ。

京は大阪松竹歌劇、淡島は宝塚の出身である。

作品では妹、姉を演じ 二人とも浅草のレビューで踊るが、京は品がなく、淡島は洗練された踊りを見せる。

ことごと左様に、この姉妹は性格や行動が正反対の設定になっている。

自由奔放で自分中心の妹、慎み深く温厚で面倒見の良い姉。よくあるパターンではあるが。

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でもさすが荷風である。妹に盗癖、義兄や監督と不倫、妊娠、・・・などの凝った展開の話にして、こんな妹でも許して援助し続ける姉のマリア的な存在を際立たせた。

そんな姉に惚れ直した夫は一緒に浅草を離れ、とある郊外の幼稚園でともに働く。

うららかな春の午後、校庭で園児たちにオルガンを弾くかつての浅草の楽師に、平和な時間が訪れている。

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この作品は浅草の踊り子たちと親しくして、その生活ぶりを熟知していた荷風の面目躍如たる筆使いだろうが、退廃的な雰囲気は無く、むしろ道徳的といっても良い結末に意外性を感じる。

淡島、船越 ともにとてもよい。気持ちの良い出来と言えよう。

 

No.10

クリスタル殺人事件 1980/105分 BS クライム・サスペンス 11.01.19

ガイ・ハミルトン 監督(007シリーズ)  原作 アガサ・クリスティー

アンジェラ・ランズベリー、エリザベス・テーラー、ロック・ハドソン、ジェラルディン・チャップリン、キム・ノヴァック、

トニー・カーティス、

 

ミス・マープル ものと呼ばれている。ポアロは出てこない。

アマチュアの老婦人が殺人事件を次々に解決していく、シリーズ。

本作は豪華キャストなので、TVチャンネルを回した。

風疹をうつされた妊婦は奇形児を生む可能性がある、ということが解決の糸口。

これもまさかの犯人で、又又やられた。

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史上最高の美女48歳の作品である。かなり年より老けて、がっくり。

ハンサムの代名詞R・ハドソンも精彩が無い。

T・カーチスなど良く観なければ分らない。

年は本当に人を変える。

キム・ノヴァックだけはスリムになって、違う魅力を感じる。エライ。

チャップリンの娘が重要な役を演じているが、魅力に薄いが、良く観ると目は親父さんそっくり。

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ハラハラ ドキドキこそしないが、とても面白い。(原作は余り有名ではないが)

 

No.9

地球交響曲 第7番 2010/ 賢人インタビュー  下高井戸シネマ上映中

龍村 仁 監督

高野 孝子、グレッグ・レモン、アンドリュウ・ワイル

このシリーズは全部観ている。

本作は過去の感動作の数々からすれば、やや平凡だと思う。

でも彼が主張している基本概念を分り易く示したと言う点では、意味がある。

私も彼の考えに前から賛同している。

と言うより、真理だと思っている。

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ここで、あらためて紹介しおく。

宇宙が生まれ、銀河系の中に太陽が生まれ、その周りを回る惑星が生まれ、太陽との絶妙な距離が大気に守られた水の惑星である「地球」を現出させた。

地球環境は一定ではなかったが、適応しつつ生物が生まれ、一番遅れて「人間」が登場した。

人間は5つぐらいの元素で出来ているらしいが、それらは皆、宇宙のビッグバンによって作られたものだ。だから人類は星屑からできている。

それらの有機物は地球環境に適応して発展したものだけが、生物として残った。

要するに、太陽、水、土、など自然が生物を生み、育てたので、人類の母は「地球」そのもの。

「地球」は宇宙運行の原理に存在しているので、「宇宙」の子供とも言える。

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「時間」を作ったのも宇宙、1日24時間、1年365日、太陽が照らし、夜が来る。月が満ち欠けし、海流をつくる。考えてみれば人間の生活は自然の規則の中でしか生きることは出来ない。

朝日を浴びればセロトニンが増える。体内時計が狂えば病気になる・・・・。

食料にしても、元は100%太陽と水と土。石油からは未だに作ることは出来ない。生物は地球に生かされているちっぽけな存在でしかない。

これはあたかも地球が理性を持った大きな生命体と考えることができる。

宇宙や地球は意思を持って生物を生かしている。

地球は個人を生かしてくれるエネルギーを与え続けている。このエネルギーは死後も違う生物を生かしていく。

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 偉大なる母の力を体感し、崇めるのが所謂「原始宗教」、自然崇拝、アニミズム。

日本でいえば「神道」など、太陽や水や風や土や火や石、森や木など自然そのものが信仰の対象となる。

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ワイズ氏、彼は世界各地の原始宗教を尋ね、薬草の使い方から多くのヒントを貰った。

人間は自然治癒力を持っている。瞑想とか心の平安、呼吸法、自然食、水や空気の綺麗な自然で暮らす、など薬物以外で病気が癒されることも発見した。アリゾナ大で心と病気の関係を研究し、毎朝日本食を食べ、近代医学と原始医療の融合をめざしている。

自然を良く観察し、自然に学び、伝統的な生活の智恵に敬意を払い、自然に添った生活をする。

化学薬物は最小限にして生薬を薦めている。世界的ベストセラーもこのような考えから生まれた。

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ツールド・フランスで三度優勝したレモンは、自然と一体になった日本文化を愛し、熊野山中の神社を訪ね歩く自転車のたびを続けている。

多神教は見直されてしかるべき。古くて新しい宗教。

自然を征服し、改良する西洋文明から、自然とともに生きる生物本来の姿を取り戻そうとする。

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北極点を犬ぞりだけで40日かけ、カナダへ踏破した高野孝子は、イヌイットの古老に「この厳しい自然の中で生き抜く術はどうやって学んだのか」と問いかけたところ、「そんなもの自然が全部教えてくれる」という答えに触発され、子供を雪の中のキャンプ生活に放り出す教育を実践している。

自然の中に解答がある。

自然は教師でもある。

自然は母だから君を決して見捨てない。

 

No.8

ジェネラル・ルージュの凱旋 2009/123分 dvd 病院内事件ドラマ 11.01.16

中村 義洋 監督

竹内 結子、阿部 寛、堺 雅人、羽田 美智子、山本 太郎

「チーム・バチスタの栄光」の続編で1年後と言う設定らしい。(バチスタは観てない)

原作者は医師だから、病院内を熟知しており、その抱える問題点を広く世間に知らしめると言う意味も大きい映画。

厚労省のエリート管理官が名探偵というのに作り物らしさを感ずるが、その他はリアリティーも臨場感もあり、とにかく面白いのには驚き。

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観る者の内面に迫るという高尚なことは考えず、娯楽映画としてどうすれば最後まで飽きさせずに引っ張れるか、という一点に集中するのも大事な過程だ。

配役も堺、山本、高島、皆一生懸命ではまっている。

最近の邦画の魅力を集約したような映画、とにかく面白いので、推薦する。

 

No.7

若者のすべて 1960/176分(完全版) モノクロ  dvd ホーム・ドラマ 11.01.15

ルキーノ・ビスコンティー 監督

アラン・ドロン、アン・ジラルド、レナート・サルバトーリ

118分のカット版の方が多分見やすいだろう。完全版は前半がだらだらと長くやや退屈。

ロッコが主人公になる中盤あたりから(それまではロッコは端役)、急に素晴らしい展開となる不思議なつくりの映画である。

60年と言えば、イタリアも相当復興していたと思うが、食えずに故郷を捨ててミラノに出てきたマンマと5人の息子達の生活ぶりは悲惨で、それをイタリアン・リアリズムの伝統できっちり描くので、ややつらいものさえある。

この一家は典型的なイタリアの「家族」の特徴を表し、マンマ中心に一家が纏まっており、何年経っても故郷意識から抜けきれない。

そしてロッコが持ち崩した兄を庇い、己の人生を兄の為に犠牲にする「許し」の態度には、はっきりした宗教の匂いがする。

ビスコンティーは共産党員だったが、家族の血のつながりとか宗教とか、なにかイタリア的なものに回帰しようとしたのだろう。

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一家の故郷南イタリアでは家を新築すると、初めて通る人の影に石を投げる風習があるらしい。

良い家庭をつくる為には「犠牲」が必要と言う事らしいが、身を持ち崩した次男シモーネは結局殺人を犯し家族の外に放り出される。

「悪いマメを捨てる」までに家族が払う犠牲の大きさも大きく、5人のうち幸せを掴めそうなのは結局3人だけという、厳しい現実を提示して幕が下りる。

兄弟で一人の女を愛してしまった恋愛悲劇が招来した出来事だけに出口がなく、まだ子供の末っ子の笑顔だけに救いを探す暗い作品となった

 

No.6

雪国 1957/134分 dvd ラブストーリー 11.01.10

豊田 四郎 監督

池部 良、岸 恵子、八千草 薫

・駒子が2階の窓の傍に鏡台を持ってきて、カバーをするりとめくると、鏡に雪を被った真っ白な連山が、ぱっと写る。

・雪明りの下で松明を持った人の列が遠くに、近くに音も無くゆれる。

・雪がしんしんと降り積もる駅舎のガラス窓越しに、今日も来なかった島村の陰を探す駒子。

映像でなければ表現できない、工夫があちこちに見られさすがではある。

***

島村は画家に改作している。駒子の金銭問題など、設定が具体的になっているので、小説の持つあいまい性の魅力が無くなった事は残念。

ポイントとなっている葉子が映画では、悪者的に扱われ、ラストの火事場面の哀れさが際立っていない

岸はハスッパ芸者になりすぎた。

もっと日本女性の奥ゆかしさを出して、神秘性をかもし出せなかったものか。

池部にも苦悩を感じられない。

雪国演歌の悲恋になってしまった。

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「雪国」は小説も映画も魅力の中心は越後湯沢の雪に埋もれた風物だろう。

一晩で1mも積もる豪雪地帯。今は雪が少ないが小説の書かれた昭和初期、映画が制作された昭和32年の雪景色は見事だったろう。

それに、「高半旅館」の純日本建築の味わい。木箱に入った「お銚子岡持ち」などいまでは探してもないのだろう。失った素晴らしい古きよき日本が、雪景色とともに涙さえさそう。

今となっては、貴重な記録映画になってしまった。

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国境の長いトンネルを抜けると土樽駅。手前の湯檜曽は積雪が余り無くてもあちら側はドカ雪。

清水トンネルは当時日本一の長さ。勾配もある。開通当初から電気機関車が走っている。蒸気機関車は嘘。

 

No.5

 1954/115分 伊 モノクロ dvd 1101.09

 

 フェデリコ・フェリーニ 監督、音楽 ニーロ・ロータ

アンソニー・クイン、ジュエッタ・マシーナ

歴史的な名画を今更論評しても、影響力も皆無なので止めるが、ジェルソミーナの演技は決して話題をさらうほどの名演技ではないのではないか。

何処か白痴っぽくなく、利口な女の匂いを隠しきれてない。

それが為、天使の役割が際立っておらず、ザンパノがラストで善良な心に目覚める必然性が薄くなっていると思う。

それにしても、ラストの浜辺のシーンは見事。

戦後間もない貧しいイタリアを知らない世代からすれば想像できない設定ではあるが、ジェルミーナの自己犠牲は、今逆境にある人たちにとってのひとつのあり方を示した意味合いは残す。

 

No.4

奇跡 デンマーク 1955/126分 モノクロ bs2 宗教劇 11.01.07

カール・テオドール・ドライヤー 監督  カイ・ムンク 原作 ブレベン・レアドーフ・リュエ、ヘンリック・マルベア  ベネチュア グランプリ作品


カイ・ムンクはゲシュタポにより1944年銃殺されたデンマークの抵抗牧師だそうだ。

ただ口で能書きを垂れる堕落した既成権威の牧師ではなく、信者一人一人に生きる励みの言葉を与え続けた、実践的な宗教活動をしていたらしい。そのことは農園主が次男に宗教家として期待していた人間像を語るシーンで物語られている。

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デンマークと言えば哲学者キルケゴールが有名である。

舞台となったボーエン農場の次男も神学の勉強をしていたが、キルケゴールを知るようになり、「気がふれた」事になっている。

だから、キルケゴールの宗教観を勉強しないと、本当は解らないのだろう。

彼は、神を信じれば救われる、救われないのは信心が足りないから、という従来の考えに反論して、絶望(死に至る病)の前には総ては無力、ただ神の救済の可能性だけが残されている、と言ったらしい。

ところが、この「奇跡」と言う映画はラストで、神を信じているとしている「大人達の願い」は聞き入れず、信じて疑わない純真な「子供の願い」を聞き入れて、神が奇跡を起すことになっている。大人は皆エセ信者だ、信心が足りないと言っている。

もしかして、ムンクはキルケゴールと一線を画しているのかもしれない。

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舞台は1930年のデンマークの白夜の候。夏だが冷たい風が吹きつけコートを着ている。

総てが異様な風物である。

本作の原題はデンマーク語でordet(言葉)。

この映画は大農場主一家の物語で、そこの次男が自称キリストとして怪異な行動をとることを縦軸に進行する言わば室内宗教劇である。

その意味で、映像より「言葉」によるイマジネーションを主眼にした作品であるが、北欧の荒涼とした風景がコントラストの強いモノクロで撮影された巧みなカメラ・ワーク、達者な役者達、ドアーの開け閉めで場面を展開してアクセントをつけるなど、映像作品としても超一級であることは疑いが無い。

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異様な風景に死人が生き返るという、これまた得意な設定がどこかベルイマン的な寓意に満ちて、とにかく印象が事の外強い作品である。

ラストは別にして、事件もさして無い日常をこれほど緊張感を持って、描き切る作品を知らない。

日頃神を信心している人も、それは表面だけであることのバケの皮がはがされる事必死。

凡人は神を疑うなと言っても、出来ない。怖い怖い映画である。

 

No.3

病院で死ぬということ 1993/100分 dvd 11.01.06

市川 準 監督   岸部 一徳、山内 明、塩野谷正幸


癌などの告知は相当進んだ。この映画で主張されている末期医療の考え方なども、今は一般的にすらなってきている。

20年近い歳月が、国民の医療意識を変えた。だから今これを観てもあまり感動しないだろう。

「仰げば尊し」の監督、好きな人だが本作は・・・・。

 

No.2

エリックを探して ラブ・コメディー 2009/117分 英・仏他 渋谷ル・シネマ他上映中 11.01.06

ケン・ローチ 監督

S・イヴェッツ、S・ビショップ(リリー)、ジョン・ヘンショウ(ミート・ボール)

「この自由な世界で」で資本主義の矛盾を摘発したケン・ローチが今度は一転ラブコメである。

でも、ヒューグラントあたりの出るラブコメと一味も二味も違う。

普通のラブコメは自分とは余り関係の無い、あちら側の面白さだが、ケン・ローチの本作は何処でも転がっている観客自身の 愛と家族問題をコメディーという夢に包んで、解きほぐしてくれる抜群の「人生応援歌」になっているからだ。

映画のあり方は多様である。

この映画は観終わった後、心の芯からほっとする生理的魅力に溢れている。毎年100本以上の映画を観るが、こんな作品はまず少ない。

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最大の理由は人間は一人ではない、仲間がいるんだという、回帰思想だと思う。

近代国家は個人主義で自立を求める余り、孤独になり心がパサついてしまった。これに対するアンチ。

マンチェスターの郵便配達員は皆、マンチェスター・ユナイテッドの熱烈なフアンであり、お決まりのパブで何時もオダを上げている。結束の固い組合員でもあるのだろう。

仲間の個人問題が自分達の問題になる。大勢でヤイヤイやるのだから、怖いもの無し。

***

エリック・カントナはマンUの花形MF、FW。キングと呼ばれたカリスマである。この映画に主役級として出演して、好演している。

彼の生涯で最も素晴らしかったプレーは、奇跡的なシュートではなく、絶妙なパスだと言う。

パスの相手が思う通りに動かなかったらどうするのか、という問いに対し、どんな時も友を信じていると答える。

***

この単純な回帰論に惹かれる現代人の病巣の深さを今一度、再考する価値がある。

「走れメロス」は未だ死なず。

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プレミアム・リーグではジェラードのいるリバプールが好きだが、この映画を観させてもらったので、マンUも応援することにしようかな(ルーニーは好きではないが)。

 

No.1

いつか晴れた日に 1995/136分 dvd ラブストーリー 2011.1.4

 

アン・リー 監督

エマ・トンプソン、ヒュー・グラント、ケイト・ウインスレット、アラン・リックマン

監督は「ブローク・バック・マウンテン」でカウボーイの同性愛を大胆に描き、大きな評価をえた台湾出身の俊英。

あの時も、東洋人が馴染みの薄いカウボーイ生活を良く描いたものだと思ったが、本作も19世紀のイングランドのカントリーの大荘園の優雅な暮らしぶりをきっちり描き、違和感が無いのが凄いと思う。

例えて言うならば、外国人監督による日本時代劇を撮っているようなものだからだ。

アン・リーはかなりの勉強したのだろう。エライ。

この映画の魅力は@雄大なサウス・イングランドの丘陵と庭園の美しさであろう。ターナーの絵のような見事なカメラにうなされる。特に夕暮れ時のカットには参った。

Aエマ・トンプソンが控えめながら多彩な表情を見事に演じ分け、ケイト・ウインスレットの一本調子の演技を完全に食ってしまった。

 大女優だが、背が高すぎて骨っぽく、女性としての魅力に欠けているきらいがあると思うが、好き嫌いは別にして演技力は抜群(眼差しがやさしい)。

 

B「ゴスフォード・パーク」でも狩猟場まである大富豪邸宅の凄さにびっくりしたが、英国では凄い屋敷が現存しているらしい。ロケに使われたカントリーも、生活ぶりも含めこれも魅力。

 

Cスケールの大きな脚本。結論を急がず、こつこつと積み上げて堂々としている。ラストはあっさり急展開で処理している為、意外な感じは否めないが、ハッピーエンドはこんなものかな。

 

最後に、ヒューは余り良くない、アランの熱演を評価したい。

 

原題はsense and sensibility 邦題は結果が予想できるのでどうかと思う。